magisyaのブログ

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本棚の秘密

☆★前回のあらすじ★☆

いつの間にか家にあった本棚から不思議な物語が生み出されることが分かった鏑木家に住むアリサちゃんとアリサちゃんのお母さん。 

二人は色々と本棚について語り合っていますよ? 

「この本棚は、嵐来のツレソに出てくる合成のかめみたいな物なのよ! だから色々と本の合成を試してみよ?」 

嵐来のツレソ? ああ、10000回遊べると言われている、入る度に迷宮の形や落ちているアイテムの種類や場所が変化するローグライク系のゲームの話ですね? 

「そうね」

 

「でも一つ不満なのがあるのよ。あの甕さ、入れる事は簡単に出来るのに、取り出す時は割らなきゃいけないってのは理不尽よね?」

ん?

 

「確かに」

 

「その衝撃で中の武器や防具が破損したらどうすんのよ!! それに割った時にその甕の破片とかも武器や盾に付着してる可能性だってある訳でしょ? それが手に刺さってアイタタタってなったらツレソが可哀想!」

 

「大丈夫でしょそれはw想像力豊かねえw」

 

「で、吸い出しの魔導書だったら割らずに吸い出せるのよね……なにそれ? 一体どんな魔法よ!! 入れられるのにどうして取り出せないのよ! そのまま取り出せるやろがい! なんやあれか? 入れた瞬間に口がしぼんでまうんか? で、取り出せへん? なんやそれ? ありえへんやろ! 常識的に考えて!」

ちょっと話がズレてきていませんか? いつの間にか本棚の話からゲームの話に変わってしまいました。速やかに話を戻して下さい! 後、突然関西弁にならないで下さい! そして最後にあなたは3才児です。もう少し年相応な言葉を使って下さい。それを聞き続けていると私の一般の3才児に対する常識が崩れてしまいそうで怖いのです。思えば一番初めに使った「ママーお話読んで」以外のセリフは、どれもこれも大人びた喋り方ばかりですよ? アリサちゃんは化けの皮をはがすのが早すぎますって……そこら辺の調整も何卒お願い致します!

 

「確かにwでもまあそこは大人の都合なんでしょうね? 仕方ないわよ。アリサ! 製作者側が定めたルールぐらいは従いなさいwでもあの甕、合成前のアイテムはベースの装備に吸収されて無くなるわよ? でもこの本棚、合成前の2つが残るんだよね?」 

「あっ!」

 

「ほら! ももたろうも浦島太郎も本はしっかり残ってるわ? それってすごい事よ?」

 

「そういえば!! しかも絵も描いてあるし、文字も印刷してある! この紙とかインクとかの用意も全てこの本棚がやってるんだよね? で、1円も費用が掛かっていない! 一体どうやって出してるんだろうね?」

 

「そうよね。しかもセットさえすれば何回でも出てくるんでしょうね。まだ分からないけど」

 

「ホントよ! あっ! これを利用すればいくらでも本を量産できる! そして元手はタダなのに売れる! これを繰り返せば……億万長者やでえ……ギュギゲゲゲww」 

3才の笑い方は奇抜ですね。アリサちゃん? 悪い事を考えている時の心が、そのまま笑い声に出てしまっていますよ? それには清潔感は一切なく、耳触りは最悪で、嫌悪感を覚え、吐き気がします。

 

「じゃあ試しにやってみましょ!」

 

「はいっ!」

ももたろうと浦島太郎を差し込んでみました。 ピカーン

 

「出てきた出てきたw……うん、中身もしっかりある! すご!」

 

「やっぱり! ……でも、よく考えたら内容が無いようなら売れないわよ?」

 

「あっそうかあ😢大した内容では無かったし、これが売れるかどうかまでは分からないわよねえ……」

そんな事言わないで下さいよ……さっきはBBBBBBの所が面白いって拍手までしてくれたじゃないですか……あれは嘘だったって事ですか? 女の子って怖いです…… 

 

「でもアリサは細かい事に気が付くわねえ。でもこれ一応売れるかどうかヤスオクに出品してみよ……あ、あれ? モラしま太郎は?」

 

「え? あ、あれえ? さっきまであったのにィいいいいい異?」

どうやらいつの間にかは分かりませんが消えてしまったのでしょうか?

 

「ないわ? キョロキョロ」

 

「ここにもないしあっちにもない……キョロキョロ」

もしかしてこの本棚から生まれた本は、一時的に姿を現し、役目を終えると消えていく物だと言う事なのでしょうか? 世の中そう甘い話はないと言う事です。そうなんです。これは本としてこの世に留まれる時間には限りがあると言う事です……そしてある程度の意志があり、自分の使われ方が本来と違った用途で使われるのかもしれないと言う邪悪な思惑を感じ取ると、その存在を自らの意志で瞬時に消す事も可能と言う事なのでしょう。悲しいけれどこの本棚から生まれた合成本は、いつまでも読み返す事は出来ない泡沫うたかたのような存在。だからこそその儚さも価値があるのかもしれません。 そして、ついさっき生まれたばかりのもう一冊の未読のモラしま太郎ですらも一緒に消えてしまっています。 これはアリサちゃんの邪悪な気持ちを本自体が感じ取り、逃げるように現世から消え失せた。のかもしれないですね。はあ~上手く出来ていますねえ……ですが、存在が消えたとしても、それを読んだアリサちゃんとママの頭の中には永遠に残り続けるでしょう。 あっと……私とした事が一番大切な事を忘れていました。それと、これを読んで下さった大切な大切な読者様の脳内にも、ね……フッw  

 

「もういいか。じゃあ次の新しい話を考えましょう?」

普通の人なら怖くて手出ししないか、怪奇現象に強そうな霊媒師にでも頼んでお祓いしてもらうのが普通でしょうに……この二人はとても好奇心旺盛な女性達の様ですね。

「うん! どの本を組み合わせてみようかな? あっ、じゃあこれとこれにしてみよっと」

アリサちゃんは本棚の傍に転がっていた六法全書金槐和歌集をセットしようとしていますよ? どんな話になるのでしょう!? ちょっと待って下さい? え? ……何でそんな本が置いてあるんでしょう? 六法全書ってあの法律のむっずかしいいい奴でしょ? それに金槐和歌集は全く分かりません。中学生の時に国語だか歴史だかどちらかの授業で名前だけは聞いたことはありますけど……どんな内容なのかはさっぱり分かりませんし……この家は一体? 確かアリサちゃんは流石刑事ね! とママに対して言っていました。 刑事のママが六法全書を読む? あれは司法試験に挑む人が読む本じゃないのでしょうか? 刑事から裁判官とか検事とかになろうとしている? うーん頭がこんがらがってきます……この話はここまでにしましょう……

 

「スロット1 六法全書セット完了!」

なるほど。上の段の中央部分をスロット1と命名したようですね。では下の段の中央はスロット2でしょうね?

 

「下の段の中央! 金槐和歌集差し込み完了!!」

おやおや? 私の言葉が聞こえていたのでしょうか? それを回避する様に違う言い回しに変えましたよ? かなりのひねくれものであまのじゃくで負けず嫌いですね、このアリサちゃんって娘は。

「どうなるのかしら? ドキドキ」

 

「わくわく」

アリサちゃんのママも無邪気な顔で本棚を見ます。 ガタガタガタ……ペッ ドサッ ドサッ コンッ♪

「いてっ」

 

何と本棚が震えたと思ったら、吐き出してしまいました。そして、それが運悪くアリサちゃんの足の小指にぶつかってしまったようです。可哀想に……

「あらあら? どうなっているのかしら? セット位置を間違えたのかな? じゃあ今度は金槐和歌集が上で、六法全書を下にしてリトライしてみて!」

 

「分かったわ。いててて……この乱暴本棚め……傷害罪で訴えるわよ!」

 

「あら? アリサ? ちょっと言葉が抜けてるわよ?」

いいえ。抜けてなどいません。逆に私は多いとすら思いました。だって足の小指に本がぶつかっただけなのですから【いてて】だけで済む筈でしょう? アリサちゃん、傷害罪がどうのこうのと言っていましたよ? そこから一体何が抜けていると言うのでしょうか? それに、傷害罪って言葉を何故3才児が知っているのでしょうか?

 

「なにー?」

 

「傷害罪だったら、刑法204条傷害罪で訴えるわよ! ここまでがセットよ?」 

え? なんすかそれ?

 

「あー忘れてたー!」

 

「次からはこれを合わせて言わなきゃ駄目よ?」

 

「でもこれめんどくさーい!」

 

「これを聞いた相手は、あんたがどんなに小さかろうとその言葉の力強さに委縮する筈よ? 力強い言葉は、あんたを守る盾となるの! 分かった?」

 

「87回目だよそれ」

 

「そんなこと数えている暇があるならそろそろ理解しなさい! 要は慣れだからね。あんた憶えるのは得意でしょ? 多分私よりも記憶する力は数段上の筈。だから横着せずにセットで憶える事を意識する! いいわね?」

 

「ぶー」

な、何ですかこの親子? で、ですがこれでアリサちゃんがちょっとばかり大人びている理由が分かった気がします。 この母親にしてこの娘ありと言う事なんですね……でも言われてみれば確かに……このアリサちゃんはとても小さいです。悪者に狙われやすいと言える存在です。ママは刑事らしいので今は家にいてくれますが仕事に行ってしまえば彼女を守れません。そして、刑事だけあり犯罪者の恐ろしさを知っている。だから自分の身を自分で守る手段を、ですが小さい体では護身術までは使えない。だからこそ言葉で身を守る手段を幼い頃から教えている? 小さくて非力ながらも悪に対抗できる手段を教えている? と言う事でしょうか? 娘想いのお母さんなんですね。

 

「じゃあもう一度入れて見よっと。今度は六法全書が下だよね?」

さしこみさしこ…… ( ゚д゚)、ペッ ドサッ ドサッ 

 

「あぶねっ」

ヒョイ 先程よりも反応が早いですね。差し込んだ後あまり確認する事もなく一瞬で出てきました。まるで同じものが入ってくる事が会話の流れで想定済みで、それを見越して即座に吐き出したようにも思えます。ですが流石にアリサちゃんも同じ手は食らわず光の速さで回避し、足の小指をぶつける事はありませんでした。

 

「もう!!」

 

「これも駄目みたいね……あっ! 今六法全書が逆さまだったわwちゃんと向きを正して入れてみましょう!」

 

「なるほど! これじゃ本棚さんからしてみれば【ょしんぜうぽっろ】になっちゃうもんねwはいっ!」

逆さから元に戻し戻しーのからのーさしこ……ガツン☆

「え?」

 

「どうしたの?」

 

「え? ちょw止まってる? スロット1の幅がさっきよりも狭くなっているよ? さっきは入ったんだよ?」

あらら? 

 

「そんな事あるの? 気のせいじゃない?」

 

「ホントなの! でもなんでー? 私の言う事を聞け―!! 私を……この、私を……受け入れろぉおおおぉおお怒!!!」

ぐいぐい

 

「あっ! こら! 選ばれし者にしか使えない封じられた伝説の剣に認められようと試練に立ち向かう主人公風に本棚に語り掛けてもだめよアリサ!」

 

「うるせえ! 何これ? クソウ……何が足りない? 私では力不足だと言う事か? それともまだキーアイテム不足か? それともどこかのイベントスイッチを踏んでいなかったって事か? 仕方ない……もっと世界を回らなくては……」

こら! ママに向かってうるせえは無いでしょう!

 

「どんだけ染まってるのよ……」

 

「駄目だわ……じゃあ絵本とか薄い本とかそういう一般的に薄いと言われている物を入れるしかないのかなあ?」

こら!

「そうかもね」

 

「そういえばさっきのモラしま太郎の中身って結構しょぼかったよね?」

こら!!

 

「うん」

 

「だから多分だけどこの本棚には誰かが入ってるのよ! それでそいつは一応物語を書く事は出来るけれど、あまり頭が良くないの! で、そいつの理解出来ない物、脳のキャパをオーバーしてしまうような難解な内容の本が入ってきた場合は全て拒絶するのかもしれないわ!! で、本棚のスロットが急に狭くなったのも、あまり複雑でページが多すぎる物が入ってくる想定がなされていなくて油断して広く保っていたけど、急にそう言う物が入ってきて、やべえ! と思って防衛本能が働き、無意識にスロットを狭くした……と、言う事……か……なるほどね」

合っているかそうでないかは別として凄まじい推理力です……この奇怪な現象を全く物怖じせずに論理的に受け止め、理路整然と頭の中で整理しています。末恐ろしい子供です……

「それで六法全書金槐和歌集を吐き出したんだww」

 

「うんww育ちが分かるわね」

しかし、アリサちゃん本当にその2つの混ざった本を読みたかったのでしょうか? 私は読みたくないです。どうせ金槐和歌集の恐らく俳句とか短歌に法律をミックスさせたようなものが書き連ねられるだけでしょうし……そんな事よりその本棚の中にいる謎の人物に対して恐怖はないのでしょうか? 肝の据わった女性達ですね。

 

「じゃあこの子が理解出来そうなおこちゃま向けの童話にしましょうねwwwww」

 

「あらアリサ! あんまり本棚を馬鹿にしちゃあ駄目よ? 折角不思議で楽しそうなお話をタダで見せてくれているんですから!」

 

「はいっ!」

 

「じゃあ何にする?」

 

「その前にこの本棚に名前を付けましょう」

 

「そうね」

 

「不思議な本棚でいいかな?」

 

「ありきたりだけどそれでいいわね」

 

「ム? そう言われると私の本氣のインスピレーションが爆発しちゃうよ? 奇をてらった奴考えちゃうよ?」

アリサちゃんは普通とか典型的とかありきたりと言うワードを言われると嫌がる性格の様ですね。 普通が一番なんですけどねえ。

「そこまで真剣にならなくてもいいの!」

「じゃあ不思議な本棚で決定ね? じゃあ不思議棚さんに仕事をしてもらうかあ」

早速オリジナリティ溢れる略語を使用します。

 

「何入れる?」

 

「うーん……さっきは日本昔話だったでしょ? だから外国の童話にしようっと」

 

「ナイスアイディア! じゃあさっきは男の子が主役だったから」

 

「じゃあ女の子が主人公ね……まずスロット1に入れる本は……海外の童話で世界中の子供達が一番に読むと言われている定番のあかずきんで」

それは偏見でしょう。

 

「……次は……スロット2に入れるのは……私の美しさを見て作者がパクったと言われているシンデレラかなあ?」

アリサちゃん。それはずっと昔のお話ですよ? ふざけないで下さいね?

「いい選択ね。じゃあセットしてみて?」

 

「いくわよ! デデデンデデデデン! デデデンデデデデン!! ハッ! スロット1! あかずきんセットコンプリート!! 後は任せたわ! ママ!!!!!」

勇ましいメロディを口ずさみつつ、あかずきんをスロット1に差し込みました! そしてどういう訳か母へとたすきを繋ぎます! しかし、これ分担する必要性はありませんよね? これは先程までアリサちゃん一人でも出来た行動の筈ですよね? まあ気分が盛り上がってしまったのでしょう。おとなしく見てみましょう。

「ででで……(///照///)」

おや? ママはアリサちゃんの様に歌えていませんね……流石にこれを真似するのは恥ずかしいのでしょうね。仕方がない事です。別にアリサちゃんのやり方はセットする時の正式な答えではないのです。無理に真似する必要性はないでしょう。普通に差し込んで下さい。

「こらー!! ママ!!! 何照れてるのよ!! これじゃ不思議棚だって気持ちよく仕事してくれないよ? ママ! 恥を捨てて! ここで止まってちゃ人生何一つ変わんねえんだよおおおおお怒!!」

そこは拘泥せずともスッと差し込めばいいんですよ! 大人にそんな恥ずかしい行為を強要してはいけませんよ! アリサちゃん!!

「アリサ! 私が間違っていたわ! もう迷わない! 任せて!! うおー! デデデンデデデデン! デデデンデデデデン!!」

ああ、無理しない方が……それでもママの意志は固いようです。アリサちゃんからシンデレラを力強く受け取り、アリサちゃん作曲のオリジナルメロディを見様見真似で叫びます!

「ハッ! スロット2! シンデレラセットコンプリート! レッツゴー!」

うわあ……なんかださいです……私達は一体何を見せられているのでしょう……皆さんも聞きましたよね? 一児の母であり、成人している女性が、 【☆★レッツゴー★☆】 と言いました!!!! 

人と言う生き物は、初めて二つの本を所定の位置に設置する事で新しい物語を出してくれる不思議な本棚から未知の物語を乞う場合、最終的にレッツゴーと言う形で願いを込めてしまうのでしょうね……なんか愚かですね……しかしまさかこの二人、毎回こんな事やるんじゃないでしょうね? この先が不安でいっぱいです。 ピカーン 

「あっ出て来たああ!♡!」 

ゆっくりとあかずきんとシンデレラの合成された本が中央の本棚から現れます。

「タイトルは? あか……ンデレラ……?」

 

「あかンデレラ? どんな話だろう? 楽しみいいい」

 

「そうね」

 

「じゃあママ! 読んで!! その奇麗な声で!」

 

「了解! じゃあ、あかンデレラ! はじまりはじまりぃー」