magisyaのブログ

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私の行く先々で事件が起こる件について 37、38話

第10章 推理開始

 

 

 部屋に戻ると、ママも既に聞き込みから戻っていた。

 

「アリサお帰り。しかし、大変な事になったわね。

警察の人が、会場にいた人全員に

外へは出ないで下さいと言っていたわ。

犯人がまだいるかもしれないし、全員が容疑者だから

ホテルから逃がさない為にね」

 

「うん。でね、さっき凄く

かっこいい刑事がいたんだよママ。

しかも240円も貰っちゃったんだ! 

アリサの初恋物語は、今始まったの♡」

はしゃぐアリサ。目がキラキラ輝いている。

恋する乙女の目である。

 

 しかし、その後

1000円をケイトのパパから貰った筈なのだが

何故かそれを言わないアリサ。

多分それを言ってしまうと竜牙が

大した事の無い刑事と思われてしまうから

言えないのであろう。

 

 しかしアリサ……展示室の出来事を一切

言っていないのはどうしてなのだ?

あの筋肉達の勇士。

それこそ一番に伝えるべき事ではないのか?

あれだけの大事件を言わずに

竜牙の事を真っ先に言うとは

これが恋の力という事なのだろうか?

 

 ふむ。まああの恐ろしいトラウマを

再び思い出すのは本能的に嫌なのかもしれぬ

何せそれを話したら、アリサ自身も

そこで倒れた事も話す事になるかもしれない

親にそんな惨めな事を言う事は出来なかった。

そういう事にしておこうか。

そして、思い出したかの様にトイレで拾った

紙切れをママに見せる。

 

「この紙きれのこの上のマークって何かわかる?」

 

「え? なに?」

 

 少し不安そうな顔をして、紙を受け取りつつ

アリサの言葉に引っかかる。

 

「かっこいい刑事って、竜牙刑事じゃないよね?

冷静に考えて? アリサが結婚できる年齢になったら

あの人おじいさんよ。その上

多分仕事が出来ない人だから、一緒になったら

アリサは相当苦労する事になるわ。

当然別の刑事さんよね?」

 

「違うよ! 全く。ママは男を見る目ないなー」

ママは悲しそうな目でアリサを見ながら。

 

「アリサ、あなたはその

男を見る目のないと言ってる母親の娘なのよ……」

 

「え? じゃあ、親父はいい男じゃなかったの?」

 

「アリサ? パパはいい人でしょ! 

ママのナンバーワンよ 聞くまでもないじゃない!

それに何でパパの事を親父って言うの? 

パパママでしょ? その理論じゃ、両親の事を言う時

親父ママって言う事になるのよ? おかしいでしょ?」

 

「おかしくないもん! 親父は親父なの! 

パパって感じじゃないのよね。背も低いし

きっとアリサがこんなに小さいのは

親父に似たからなのよ」

 

「もう! 女の子は小さい方がいいのよ。

可愛くていいじゃない?」

 

「またそれか……でもアリサは

ママみたいな男に生まれたかったよ?」

 

「ママは男じゃないわよ!」

 

「そうじゃなくって、ママみたいに身長が高い上で

男の子に生まれたかったなって話なの。

刑事になって悪い奴等をバシバシ捕まえたいの。

女の細腕じゃ何かと不便だし」

 

「あら、刑事って言っても私みたいに

現場入りする人もいれば、頭を使い机の上で

事件を解決する人だっているのよ。

女子でも大丈夫よ。

アリサはどっちかって言うと後者の方よね」

 

「あのねママ。私では警官になるには

身長が30㎝程足りないのよ」

 

「そういえばそんな決まりあったわね

私は一切気にならなかったけど」

 

「それにそれだと何か違うんだよなあ。

自分で動いて解決したいのよね。

ねえママ? 親父のどういう所が好きになったの?」

 

「そういえば、まだその話はしていなかったわね。

そんなに聞きたいの?」

 

「はいっ!」

 

「そうね、じゃあ話してあげようかな」

ママは天井を見上げ思い出す。

 

ホワンホワンホワンホワーン

え? 何だそれはですって? 

何度も言いますけれどもわかりません。

 

「丁度12年前。今と同じ季節。暑い日だったわ。

まだママが17才の時だったかな。

高校生で、バイトをしていた時の話よ。

ママのお母さん。アリサのおばあさんはね

仕事の関係上、世界各地を飛び回っていたの。 

でも日本に来た時に、気に入って

2年位留まったの。日本の高校に入れて貰って

八郎君とも同じバスケ部で汗を流していたわ。 

丁度夏休み入って間もない頃母と喧嘩して

家を飛び出したの。それで、何も持ってきてなくて

住み込みでコンビニで働かせて貰ったの」

 

 ウイーン。ピンポンピンポン。 

コンビニの入り口の開く音と共に

160センチ位で、金髪の男が入ってきた。

 

「やあ、17茶はどこだい?」

 

 店員は二人居たのだが

態々奥のママの方に声をかける男性刑事。

 

「奥のウォークにあります」

 

「ハハハッ、何か駄洒落みたいだね。

あれ冷蔵庫じゃないんだ」

と言いつつウォークにウォークしながら取りに行く。

 

「そうですね。確か人が出入りできる位

大きい冷蔵庫。みたいな意味があるらしいですよ

実際はウォークインと言うんです」

 

「へえ物知りだね。はい、この4本を売ってくれ。

この時期本当に暑くて一本じゃ足りなくてね

僕は刑事なんだが、張り込みが長引きそうだ。

そこで水分が足りなくなると困るので多めに買うよ」

 

「へえ、刑事さんなんですね?

でも、張り込みといったら

アンパンに牛乳じゃないんですね」

 

「それは刑事ドラマの見すぎさ。まあ

そんな刑事もいるが、あれじゃ栄養は補えないよ。

僕の場合は、17茶だけで十分さ。四本もあるんだ。

合わせて58茶だよ? 

それさえあれば僕はもう無敵だよ、ガハハハハ」

痛恨の計算ミス! しかし刑事は気づいていない。

 

ママはちょっと考え。

「あのー17×4って事は、68茶の間違いでは?

そもそも17茶は、幾つあっても成分的には17茶ですよ。

掛けたからといって、成分は増えないと思いますよ」

 

 刑事の計算間違いと、17茶を掛け合わせれば

成分が増えていって更に健康になれるという

思い込みを違うと指摘するママ。

 

 「ハハ……は……」

笑いが終息する。

 

「はい。じゃあ今、袋に詰めますね」

先程まで豪快に笑っていた刑事。

口は相変わらず開いたままだが

顔はほんのり青ざめている。 

それを見て、少し笑いを堪えながらも

淡々と仕事をするママ。それに気づいた刑事は

 

「あ、あのだな、たった今だな、連絡があってだな

動きがあったみたいなんだな。早く詰めてほしいんだな。

急いで! ハリーアップ!! ハリーアップ!!!

早くしないと僕の顔が真っ赤になる。

やだ、赤くなるのやだ! 急いで早く早く」

 

 既に顔だけでなく耳までも真っ赤な刑事が

電話が来た様子もないのに突然おかしな事を言い出す。

その刑事の狼狽ぶりに堪えきれず。

 

「すいません。わ……笑います」

と断り。

 

「ぷ、あははははっ」

屈託無く笑うママ。そして申し訳なさそうな刑事。 

しかし、ママの笑顔に釣られ

 

「ガ、ガハハハハ参ったなこりゃ」 

と、ヤケッパチである。

コンビニに二人の笑い声が響き渡る……

 

「それがパパとの出会いよ。その後

何度かレジでお話している内に仲良くなったわ。

何て言うかね彼ね、全てが可愛いのよ♡

そして、5回目位だったかしら。

パパは真剣な表情で私の前に来たわ。

そしてこう言ったの。

 

『あー、あなたは重大な罪を犯してしまった。

私が計算が出来ないと言う秘密を知ってしまった。

よって逮捕する。心の牢獄に永久にね。これは逮捕状だ』

って婚姻届を持って来たの。きゃっ(///照///)」

ママが少女の様に顔を赤らめて言う、その刹那。 

 

「ぎゃああああああああ」

アリサが蕁麻疹じんましんを顔面に出しつつ叫んだ。

これまでもママの少女マンガのヒロインの様に

キラキラした瞳を見る度に

蕁麻疹が吹き出るのを何とか押さえ聞いてきたが

ここで限界に達した様だ。

 

「親父……ここであの心の牢獄か、点と点が繋がったわ

親父……臭いよ、臭すぎる!!

例えるなら世界各地の臭いう○こを混ぜ合わせて 

3週間発酵させた位臭いよー」

酷い言われ様である。

 

「ちょっと! 

これから良い所なのに変な事言わないでよ。アリサ! 

これ位のサプライズは、誰だって隠れてやってるの!

まだまだ子供ね。体こそ小さくとも心は大人が

あなたの座右の銘でしょ? もっと大人になりなさい」

 

「十分大人よ。それにしてもあいつ

よくあんな赤っ恥かいた後なのに

再びママに会いに来れたわね……身の程知らずが」

 

「それは思ったわ。メンタル強いなーって

でもアリサ、パパをあいつとか

身の程知らず呼ばわりしちゃ駄目よ

次言ったら、心の牢獄に閉じ込めるわよ!」

 

「何か迫力あるわねその言葉……

いいのよあんなの。私がそんなミスしたら

二度とママのいるコンビニだけは使えないわ」

 

「でもねアリサ。これ位の事、企画出来なければ

人生なんて詰まらないわ。

ただ毎日を惰性で生きていて何が楽しいの?

せめて人生の一大イベント位

何から何までオリジナルで行きたいって考えは

誰だってあるでしょ?

例えば結婚式にゴンドラで登場する芸人が居たり

ラブソングを歌って滑った芸人も居たわ。

でも彼らも本気だったのよ。だから涙を誘ったのよ。

対照的にこういう人だって居るわ

ウエディングプランナーさんに全て任せっきりで

結婚式をこなして来ました。っていう奴! 

こう言う奴一番嫌いなのよ。

本当こういう人は心の牢獄に閉じ込めたくなるわ

でもパパは違ったわ!

私一人の為に、誰もやらない事を一人で必死に考え

もしかしたら私に笑われるんじゃないかって悩んだ末

それでも私に届けてくれたのよ!! 

だって彼、逮捕状(婚姻届け)を見せている時

それを持った手は震えていて、涙目だったもの!!!

身長差15センチの大女に笑われるかもしれないって

いう恐怖。生半可じゃなかった筈よ!!!! 

それでもその恐怖を乗り越え、私に思いを届けてくれた。

そこまで私を愛してくれた。

その気持ちが届いたから受け入れたのよ。

5回程度で、結婚の申し込みは早いとは思ったわ。

でも、会った回数なんて関係ない!

そこん所肝に銘じておきなさい。

少なくとも私は嬉しかった。心が温かくなった。

優しい気持ちになれた。ただ普通に

 

「結婚してくれ」

 

指輪の入った入れ物パカッじゃ 

アリサはこの世に生まれていなかったわ。

産んだ私が断言する。 

アリサはパパの企画構成力の高さに感謝しなさい!!

それにあんた松谷修造のファンじゃなかったっけ?

このパパの熱意を感じ取れないなんて

あんたは真の松谷修造のファンじゃないわ

あんたが本当の松修ファンなら

ママの言葉から間接的でも伝わるパパの熱意を

容易く読み取り感じ取れた筈。

それが出来なかったあんたはひょっとして

にわかなんじゃない? もっと熱くなりなさい!!!!

そんなパパの気持ちも汲み取れず

臭いの一言で片付けて大人ぶっているアリサ。

あんたはまだまだまだまだまだまだまだま子供ね!!

しかも、言うに事欠いてう○こなんて

お下品な言葉なんか使って……

男の子でもそんなお下品な言葉言わないわ

あんたも一応乙女なのだから言葉遣いに気を付けなさい

後、リアクションがオーバー過ぎるわ。

リアクション芸人にでもなるつもりなの?

刑事になるのが夢なんじゃないの? 

まあアリサは絶対無理ね。この腐れう○こが!!」

 

 相当怒っているようだ。無理もない。

プロポーズの美しい思い出を、排泄物で汚されたのだ。

クールに、そして長い付き合いで、アリサの

嫌がるであろう言葉を網羅しているので

それら全てを重ねて反論する。そしてトドメは

目には目を、歯に歯はを

そして、う○こにはう○こで締める。

 

「グスッ、うえーん。

ママも大人気ないよー。可愛い一人娘を

腐れう○こなんて言い方はないよー。

しかも、まだまだまだまだっていっぱい

言ってた所さ、最後【ま】で終わっていたよ

後で訂正しろって

コメント付くかも知れないじゃん!

コメント稼ぎが目的なの? 露骨だよー。

誤字脱字は無くて当たり前。

分かっていてそのままにするなんて邪道だよー。

畜生、畜生ォォ! 親父のせいで

清楚なアリサのイメージが崩れた。

う○こなんて、した事も、見た事もないのに」

 

 涙目で滅茶苦茶な事を言うアリサ。

既に巻き○そや一本〇そなどの言葉を

何回も言っているアリサに、清楚のイメージは無い。

 

 ママは、言いたい事は沢山あったが

アリサの言葉を完全に無視して進める。

これがアリサに一番効く攻撃と分かっているのだ。

 

「それでね、パパね

 

「これは手錠だっ」

 

て言って手作りの鎖で繋がれた2つの指輪の

内の片側を、私の左の薬指に嵌めてくれたの。

そして、もう片方を自分の薬指に・・嵌める時

ガチャって自分で効果音を付け足していたわ。

かわいいでしょ?」

 

ここでママの両目が潤んでくる。

 

「頼む……もう……止めてくれ……」

 

 オチも大体予想が付き

その先は聞きたくなくなったアリサは、懇願する。

 

「ここで止まる訳ないでしょ!!

こんな所で止めたら

私自体が心の牢獄に閉じ込められるわ」

 

「汎用性高いのねその言葉……何にでも使えて

羨ましい……」

 

「でね、私、二つ返事で

ぐすっ……不束者ですが宜しくお願いします』

って涙目で、顔くしゃくしゃにして

言っちゃったのよ(///照///)

もうちょっと焦らした方が良かったかもしれないけどね

あの時は若かったから・・」

 

「何即答してるのよ? 

それに逃げなかったの? 逮捕されちゃうんだよ?

前科者になるんだよ? 高校生だったんでしょ?

これから就職するのに、不利になるんだよ?

全力で逃げなきゃ駄目だよ!!」

 

「それは、パパの心の牢獄に私の心の牢獄が

閉じ込められたからに決まっているでしょ?」

 

 こやつ……何を言っておるのだ?

恋は盲目と言うが、もはや末期ではないか……

 

「心の牢獄に心の牢獄が閉じ込められる? 

意味が分からないわ……お願い詳しく教えてよ」

 

「秘密って言っているでしょ! 

それに彼、背が低くて頭頂部が

少し薄くなっていたのが見えたの

そう、私に禿がばれる覚悟でも告白してくれたのよ

その勇気素敵じゃない?

これを受けなければ絶対駄目って気がした。

アリサも分かる時が来るから……」

全く納得のいく答えが帰ってこず不満なアリサ。

白黒はっきりさせないと気が済まない性格なのである。

 

「でも、12年前もハゲとったのかあいつ

若ハゲの上にチビとか……悲しすぎる……

確かによく考えたら

逮捕状も婚姻届も似た様な物よね。

相手に拘束されるには変わらない訳だし

それが家か留置所かの違いよね」

シビアな事を言うアリサ。

 

「まあ、結婚のイメージは人それぞれよね。

で、1ヵ月後には結婚したわ。

彼は、私の7つ上。でも彼、私の事を

年上だと思っていたらしいの。失礼しちゃうわね。

まあ身長が大分違ったしそう思われても仕方が無いわ。

でもねアリサ。恋愛には身長なんて

全く関係ないなって思ったわ。そしてこの事は

一応家族にも言わないといけないなって思って

久しぶりに家に戻ったの。そして謝って

パパを母親に紹介したわ。そしたら

17歳で、しかも刑事なんて危ない仕事に就いてる人を

旦那にするのは止めた方が良いって言ってきたけど

その言葉を跳ね退け一緒になったの。

それでね、私も彼の話を聞いている内に

彼と同じ職業に自分もなりたいって思ったの。

アリサを身篭っている間も

パパに勉強を見て貰いながら採用試験を受け続け

4年後に警察官になったわ。

パパの教え方、テキスト選びが良かったのかもね。

そして、交番勤務を経て25で刑事になった訳。

パパには感謝しているわ。だから私は

自分では男を見る目はあるって思っているよ」

 

ンーワホンワホンワホンワホ

え? なんだそれはって? 再三再四言うけれども

分からないのです……

 

38話 薫るメニュー

 

 ここでアリサは初めて

両親の出会いの話を真剣に聞いた。

そして、厳しい評価を下す。

 

「まあ素敵な出会いのエピソード……うっとり

等と言うとでも思ったか? この戯け者めが!

刑事なのに、掛け算も出来ないなんて致命的よ。 

やっぱり男を見る目ないんじゃない?

それにお付き合いもせず、数回レジ前で話しただけで

いきなり結婚って……絶対に重いと思うわー。

しまいには、コンビニに婚姻届を持ってきて

芝居がかって逮捕状だとか言って

 

『逮捕する』

 

キリッだなんてキモい事もするし。重いし臭いわ。

私にもその血が半分流れていると思うと

ぞっとするわね。忌々しい。

まだまだアレをパパとは言えないわ。親父止まりね」 

 

「アリサ……この戯け者めがって……

どこで覚えたのよ……その言い回し」

 

「そんなの一々覚えていないよ?

何かの本で見たとしか言い様がないわ

1ヵ月に50冊は読むからねアリサ。

学校の図書室はもう制覇しちゃったし

近所の児童会館の方に足を伸ばすという

プランを立ててて……って

そんな事はどうでもいいの

ママ! この事は私以外に誰にも言っちゃだめよ?

生き恥を晒すだけだからね!!」 

きっぱり言うアリサ。

 

「はぁ……そうよね。予想通りの反応だわ。

言うんじゃなかったかな……わかったわ

この話はお墓まで持っていくわ。気を付ける

でもパパをアレ呼ばわりはしないでよね」

 

「そうね。素直でよろしい、でも指輪の所だけはさー

不覚にも、私もこんな事されたいなー

なんて思っちゃったかなー。ほんのちょっとよ?」

 

「あらあら……でしょ? でしょ? 

なんだかんだ言ってもママの子供じゃない!

アリサも可愛い所あるぅー」

満面の笑顔で、ぎゅう。突然抱きしめられる。

 

「ちょお、ママ苦しいって」

 

「照れるな照れるな小さい頃は

よくやってあげたでしょう? うりうりー。

でもアリサ、あなた小さい頃は

パパに付きっ切りだったのよ? ママが嫉妬する位に」

更に力がこもる。

 

「痛いって。すごい腕力ね

アリサを締め落とそうとしてるの?

よもや、さっきの事根に持ってない?

抱擁にしては痛すぎるよー

それにママ、人は時と共に変わるのよ。

今の親父は駄目ね。

娘の私に、髪の毛が生えただの減っただの

全く興味のない話しかして来ないんだから

でもさ、イメージしてみたんだけど

鎖の長さにもよるけど、もし短すぎた場合は

お互いの左手薬指に鎖付きの指輪を

嵌めて向かい合った状態だと、一緒に歩く時

どちらかがマイケル・ジャウソソみたいに

ムーソウォークしないといけないよね? 

そう考えたら間抜けだなって思っちゃったわ」

 

「ププッ、そういえばそうだった。

鎖が30センチ位しかなくって

めちゃめちゃ動きづらかったわね。

でも、お互い外すのも嫌だったし結局、パパが

後ろ向きでコンビニ出て行ったの思い出したわ。

あの時、もう一人いた先輩に

一部始終見られちゃったからね。その人に

後の事を任せて、店長に今までお世話になった

お礼も言わずに出て行っちゃったっけ」

 

「そうか、オヤジもどうせ断られると思って

成功した後に一緒に移動するって事までは

頭で描けなかったか。だから鎖は

指輪同士を繋げる事だけを考え更に

普段使っている手錠と同じ位の長さにした訳ね。

一緒に嵌めた時の事とか体の位置関係等は

眼中になかったんだね。

この深謀遠慮しんぼうえんりょの無さは、刑事にとって致命的よね」

 

「アリサ、あなた凄いわね。深謀遠慮?

何その言葉。ママも知らないわ。

しかもそこまで克明に言い当てるなんて。

パパ、全く同じ事言っていたのよ。 

鎖、手錠と同じ長さにしたんだとか。

後の事は考えて無かったとかほぼ全部よ。前言撤回する

アリサはきっと良い刑事になるわ」

 

「な……?」

突然褒められどうして良いかわからないアリサ

と、照れ隠しに。

 

「そ、そういえば、当時ママは家出娘。

そして相手は一応馬鹿ではあるけど公務員。

大袈裟かも知れないけど、玉の輿に乗れたんじゃない? 

公務員将来安泰だもんね」

 

アリサの言葉に意味深に微笑み。

 

「フフッ、意外と逆玉だったりしてね。

なんてね。あ、なんでもないわ。

で? この暗号ね? 

カタカナのさとすが組み合わさってるわね。

見当もつかないわ、これは?」

 

「この紙、あのおばさんが事件が起こる前に

見つけたらしいの。気味悪くなって

ゴミ箱に捨てたらしいんだけどその話を聞いて

アリサが拾ってきたの」

 

「へえ、じゃああの人がもしかしたら

この紙を送った人に狙われてたって事になるの?

でも、ビュッフェでターゲットに

毒を盛るのは相当大変よ。毒は調べた所

あの人のサラダにしか入ってなかったんだから。

だから、警察もこのホテルの評判を落とす為の

無差別殺人だって考えだし 

さっき洋食のコーナーに行って

シェフから話を聞いたんだけど

怪しい人間はいなかったって話なのよ。

ただ、一人無断欠勤したシェフがいて

その穴埋めとして、サラダのコーナーと

スープのコーナーが近くなので

スープ担当のシェフが行き来している

いう話は聞いたわ」

 

「うーん、じゃあ下のこの文字は何か分かる?」

は危険が赤い文字。な香り、が緑の文字。 

この6文字を指してアリサは聞いた。

 

「これかあ、いかにも何か意味はある筈だろうけど

さっぱりだわ。でもこの暗号

もしビュッフェの始まる前に解いていたら

危険な香り=毒? を、照代さんは

回避出来たのじゃないかしら?

……犯人は照代さんをどうしたかったのかしら

……わからないわ」

 

暫しの沈黙。そしてアリサが思い出す。

 

「ママーお腹減ったよー

アリサぶっへで何にも食べてないよー」

 

「あらそうなの? そういえばママもよ。 

仕方ない、悔しいけどルームサービスでも頼むね。 

会場の料理は全処分らしいし」

 

「えー? 勿体無いねー

アリサちょっと位毒入ってても食べたいよ」

 

「ママも同じ気分よ」

しかし、0・1ミリで鯨が死ぬ程の猛毒である。

 

「ルームサービスのメニューはどこにある?」

 

「そうね……あ、電話の傍にあるわ。

どんなのがあるのかな?」

 

 メニューを見る二人。

すると……どす黒いオーラが漂っている。

一体どんな内容が記されているのだ?

 

ブルーチーズの盛り合わせ 2500円

 

ドリアンサラダ 3000円

 

くさやお茶漬け 1100円

 

おにぎり (具。は7。種類から、選べま。す) 

くさや タラコくさや 山葵くさや 梅くさや

鮭くさや おかかくさや 昆布くさや 各1100円

 

シュールストレミングスカツカレー 2600円

 

ホンオフェ丼 2900円

 

サンドイッチ 2800円

(シ。ー。チキンはく。さや、で作ってありま。す)

 

食べられる美味しい土入りコーヒー 1000円

 

鍋焼きうどん 3000円

(く、さやを、うどん。に練り。込んでま、す)

 

隆之見大福 10円

 

まき○ソフトクリーム 5円

 

ブリブリ君 4円

 

おじいちゃんのべたべた焼き

(超人。気、の、お。煎。餅、で。す) 1枚 2000円

 

 他にもあり得ない内容で

あり得ない値段の品々が羅列している。

カッコの中のおかしな所で

句読点が打ってある注意書きは

隆之が書いたと思われる。よく見ると

一階売店のアイスクリーム等も混ざっている

この中ならつい買ってしまいそうな値段だ。 

 

「どれにする? アリサ」

 

「どれにする? じゃないわよ。目が見えないの?

このメニューは、あのじじいが監修しているな

……ママ止めようよ」

ビュッフェには介入出来なかったが

ルームサービス位は臭いのキツイ料理にしようと

頑張った結果がこのメニューである。

自分のホテルとはいえ一般大衆には

受け入れられない内容である。更に値段が高い。

 

「でも腹ペコなのよ私は。くさやは食べ物よ

鼻を摘まんで食べれば死にはしないわ」

 

「でもケイトちゃんのスキルで

私はくさやが食べられない体になっているの」

 

「ケイトちゃん?」

 

「そう、一階で迷子になっていて

アリサが助けたのよ。その子が私に

くさやが食べられない様にスキルを使ったのよ」

 

「そんな嘘まで突いて食べたくないなら

アリサの分は頼まないわよ?」

 

「じゃあブルーチーズを……

タンパク質は重要だし……

あのじじい・・許さない!!」

嫌々頼むアリサ。

 

「分かったわ」

電話を取り連絡するママ。

「これとこれとこれお願いね」

 

暫くするとルームサービスがやってきた。

 

「失礼しま……うっぷ」

 

 ルームサービスは鼻をつまみながら持ってきた。

臭いはキツイ。だが、空腹は最高のご馳走

世界で一番旨い物に見えた。

しかし、これを運ぶはめになった

不幸な星の元に生まれたボーイは

 

「こんな注文来たの初めてですよ。

厨房でも皆苦しみながら、涙を流し

咳込みながら最後には

ゲロを吐きながら作っていましたよ。

こんなゴミ二度と注文しない欲しいもんですよ!!

このアホンダラ!!」

と捨て台詞を言い残し去っていった。

 

バタン!!

「もう!! 口の悪いボーイね!」

 

「そんな事いいわよ。じゃ、いただきまー」

ピンポーン 誰かが来た様だ。 

 

「は?」

ママはイラつきながらドアを開けた。

 

すると、八郎が少し驚いた様子でママを見ながら

 

「この部屋だったんですね? 探しました

と言ってもすぐでしたが」

 

訳の分からない事を言う八郎。

 

「え? どういう事?」

 

「先輩が泊まってる部屋を探していたんです」

 

「何か驚いてるようだけど?」

 

「そうなんです。先輩とは、4階で降りて別れましたが

どの階に泊まっているかはわかりません。

なので、5階から最上階まで虱潰しに

探そうとしていたんですよ。

そしたら5階の3番目の部屋にいたので

あっという間に見つかったなあと」

 

「そうだったのね? 下手すれば

何時間かかるか分からない冒険に出た訳ね? 

勇者ねー。で、何の用かしら?」

 

「そうです。まあこういう作業は好きなので

平気でしたけど

それに絶対に見つかると信じていたさ!!」

おかしなテンションの八郎。

 

「そ、そうなの」

(情緒不安定ね)

 

「……うっ? そういえばこの部屋臭いませんか?

オイラの鼻が馬鹿になったのかな?」

 

「あっ……それはその……」

 

「まあいいです。実は彼女と喧嘩してしまって

口喧嘩ですけど。こんなホテルに泊まったばかりに

怖い目にあったと……それで追い出されて……

今外をうろついていたら危険ですよね? 

それで頼れるのは先輩しかいないと思って

ここにお邪魔しようと思ったんです。

鍵も内側からかけられてしまって……

謝ろうにも電話も出てくれずで……」

 

「そうなの? 仕方ないわね上がっていいわ」

 

「助かります」

 

「こんばんは八郎さん」

 

「こんばんわアリサちゃん、この臭いで思い出したけど

うん○く斉藤の臭いは取れた?」

 

 うん○臭い斉藤の事をうん○く斉藤とは

かなりのダジャレである・・

こやつ……ダジャレの達人であるな……!!

 

「うん、また付けられちゃったけど

それもプールで落としきれたわ」

 

「アリサ? プールにも行っていたの?

それ初耳よ? あんた泳げるようになったの?

それに、またって?

2回もあの臭いを浴びたの?」

 

「そう、厨房に生意気にも私の許可も無しで

入ってきて、そこで勝手に私の名前を聞いてきて

その時浴びせられた・・2度目だけど

その悪臭は一切免疫も付く筈もなく、私の体を蝕んだ。

いいえ、飯を食った直後だから更に更に強化されてた

その絶望的な臭いに心も体もダメージを受けたわ……」

 

「そんな酷い事があったのね……」

 

「プールは浮き輪を借りたから平気よ

ちょっと水に入り過ぎて寒気がするけどね」

悲しそうな顔で答えるアリサ。

 

「アリサ……竜牙刑事に会う前にも

その後にも色々あったのね?

ケイトちゃんとかプールとか厨房とか

初耳の出来事が多すぎるわ。何で全部話さないの?」

 

「文字数が多くなっちゃって大変だから……」

うんうん

 

「そうか、なら仕方ないわね……って

文字数ってなあに?

それに大変って? 誰が大変なの?」

 

「乙女の秘密!!」

 

「なら深くは聞かない」

 

「そうだ先輩。事件はどうなったんですか?

不安で仕方なくって……」

 

「そう、丁度その話したら八郎君が来たのよ」

 

「そうなんですか……

それで犯人の目星は付いたんですか?」

 

「それが全く……アリサが5階のゴミ箱拾った

暗号みたいなのが解けなくて……

これなんだけど八郎君は分かる?」

 

「へえ、そんな物が……どれどれ?」

と受け取り見てみる八郎。

 

「何か不思議な暗号ですね。

そして、下にも色が付いた文字が?

これは分からないなあ……

これが被害者に届いたって事ですよね?」

 

「そうなの」

と、その時

 

プルルルル

 

八郎の携帯が鳴る。

 

「ん? あ、彼女からです。ちょっと失礼。

もしもし、あ……こっちこそ本当にごめん

もうあんな事は言わないから……」

 

「何て言ってたの?」

 

「逆に謝られました。そして、戻ってきてと」

 

「そう、よかったわね。そうだお土産に

このおにぎりどう? くさや山葵味だけど」

 

「いえ、これから彼女に会うのに

口臭を酷くはしたくないので。この臭いで話したら

また追い出されますよ。気持ちだけ頂いときます

臭いの原因これだったんですね?」

 

「ま、まあね」

 

「それ食べるんですか? オイラも

ルムサビのメニュー開いた瞬間気持ち悪くなって

破り捨てちゃいましたよ」

 

「ルムサビって……何でも若い子は略すのねー

でも一時的な感情の昂りで

ホテルの備品を破っちゃ駄目よ」

 

「そうでしたね。後でガムテで補強しときますよ」

 

「また略した! でもセロテじゃないと

内容が見られないんじゃない?」

 

「どうせあんな物、内容が分かった所で誰も頼みません

全品悪臭が漂っているんですから。悪意しかないです」

 

「う……食べようと思ったけど……止めようかな」

 

「そうですよ。やめた方がいいと思いますよ

もし食べたら軽蔑します。

じゃあこれで失礼します」

 

去り際にキツイ事を言う八郎

 

「じゃあね」

 

バタン

 

「ママー、食べないの?」

 

「一日位食べなくても大丈夫でしょ?

八浪もした後輩に軽蔑されるのは嫌だし」

 

「でも、7000円位無駄にしちゃったね(´・ω・`)

 

「はあー何でこんな物買っちゃったんでしょう

じゃあもう早いけどシャワー行って寝ましょう」

 

「はいっ!」

ただ、今シャワーを浴びて綺麗になっても

薫る食品達のせいで、また臭いが体に

纏わり付くのではないだろうか?

 

すると

 

ピンポーン

 

また誰か来たようだ。

 

私の書いている小説です

 

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