magisyaのブログ

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39話 閃き 迷う

ドアを開けるとそこには

神妙な面持ちの照代が立っていた。

 

「思い出した事があったの。話聞いてくれる?」

 

「そう、わかったわあがって

今日は来客が多いわね」

 

「刑事さんもしかして怒ってる? 

やっぱり帰ろうか?」

 

「大丈夫よ、話を聞かせて。

丁度アリサと事件の話していて詰まっていた所なの」

照代はテーブルの上の悪臭を放つ料理を見て察した。

 

「あ、食事時に来ちゃったのね。申し訳ないわ・・

しかしルームサービスに手を出したの?

あのメニューを見た瞬間頼む気失せてたけど・・」

 

「若気の至りよ・・」

 

「あっおばさんだ!! どうしてここが分かったの?」

アリサが照代に話しかける。

 

「お姉さんよ? あんたを連れ戻す時に

5-3にいくわよって

お母さんが言っていたのを覚えてたのよ」

 

「あ、そういえば言っていたわね」

 

「それよりも話は何?」

 

「実は、あの紙を拾った時の話なんだけど

これと似た様な事をこの記事を見て思い出したのよ」

照代はアリサの持つ暗号を指差しながら

3年前の浅利新聞の記事を見せる。

そこには妙な暗号の予告の後に

火災による焼死体が出たという記事で

その時の犯人はまだ捕まってない様だ。

 

「この事件の犯人まだ捕まっていなくて・・

次は私の番なんじゃないかって」

 

「何でそんな新聞持ち歩いてるの?」

 

「ああ、ちょっとね」

詳しくは教えてくれない照代。

 

「でもその記事の事思い出してあの時汗だくだったんだ」

とアリサ。

 

「ああ、そういえばあの時私、汗だくだったわね。

よく覚えてるわね。その記事の事は頭の片隅にあって

似た様な事が実際自分に起きたから

汗だくになっちゃったのかもしれないわね。

しかし、実際命を狙われた訳だし私が生きている事を

知った犯人はまた狙ってくるかもしれないと思ったら

一人では居られなくなったの

だって脅迫状を送ってきたって事は

私の部屋を知っている筈だし」

 

「そうね、確かに暫くここにいても良いかもね」

 

「本当? ありがとう」

 

ふとアリサが何気なく隣の記事をみた。

すると、見覚えのある文字を見つける。 

戸奈利町の牛丼店の壁に芸術家からの贈り物

というタイトルの記事が

「この記事は何? 戸奈利町って聞いた事あるの」

 

「あ、それ私が書いた記事よ。

しかし、よく戸奈利町って読めたわね」

 

「普通読めるでしょ?」

 

「あら生意気な。でね、戸奈利町の牛丼屋の壁に

誰か知らないけど素晴らしい芸術を描いた人がいるの」 

と写真を見せる。

 

「このグラフィティ、最早芸術でしょ?」

 

「グラフィティってなあに?」 

 

「この壁に描かれた芸術の事よ」

携帯を見せつつ言う。

 

「これがかーへー」

 

「私もしょぼい落書きだったら相手にはしなかったわ。

でもね、これには魂を感じたの。だから 

つい撮影して記事にさせて貰ったわ」

 

「そうか、それでその記事持ち歩いてたんだ。

自分の書いたお気に入りの記事あるから」

 

「まあ、そんな所ね」

 

「でも、それって壁にヤンキーとかが

スプレーとかで描く絵ね? それを

いくら上手だとしても芸術と言うのはおかしくない?」

照代はその言葉にピクリと眉を動かす。

 

「アリサ、そんな陳腐な物と一緒にしないで」 

 

「そういえばおばさん。

何かある度にツイートしてるもんね。

新聞記者はそれの延長線上みたいな物だね。

天職だよね」

 

「そうね、そのグラフィティも100枚近く

携帯に保存しているわ。色々な角度から撮影したり 

朝、昼、夜と時間による変化も楽しみたかったし」

 

「でも何にせよ、個人的意見が多い気がするのよねー。

その町の人や、お店の人はいい迷惑じゃないの?

流石に芸術って言い方は言い過ぎかもよ」

 

「そうよね、誇張している感はあるわ。

それにしてもよっぽどこの絵が好きなのね。

話を戻すけど、あなた 

誰かに命を狙われる様な事をした記憶はあるの?」

照代は頭を掻きながら。

 

「うーん、私は新聞記者、出来るだけ

真実を記事にしているけどね。 

その真実が気に食わなくって

逆恨みするような奴は山ほどいるし

何人に狙われているかも分からないよ。 

でも自分の正義に嘘を突く様な事は絶対していないわ」

 

「でもさー、犯人はどうやって

おばさんに毒を盛ったんだろう?

毒はサラダにしか入っていなかったんだよね?」

 

「私はね、犯人の思い通りに毒の入った野菜を

取る様な間抜けじゃないわ。偶然だったのよ・・

って思いたいんだけど、あの暗号の脅迫状よね?

あれが来たせいで無意識の内に犯人の見えざる手によって

あのサラダを取らされてしまったのかもね」

 

暫しの沈黙。そしてママが何かを思い出した。

「・・・もしかして フォーシングを使ったのかも」

 

「フォーシング? 

フォークソングなら聞いた事あるけど」

と、毒を受けている割には冗談を言える照代。

 

「アリサ知ってるよ。マジシャンとかが使う手法よね」

 

「詳しいわね 何でそんな事知っているの?」

 

「アリサはママから教えて貰ったんだよ。

ママは刑事だし何でも知ってるんだ。

男を見る目はないけど」

 

「これ、アリサ」

ブオオッ、ピン ママがアリサにデコピンをする。

 

「あっ」

フラフラ・・ぱたっ

そのまま意識を失うアリサ。

体力が限界に来ていた時に喰らって気絶してしまう。

 

「ちょっと大袈裟よ。そんな芝居通用しないからね?」

あまり心配してない様だ。

いつもこんな事をママにやっているのであろう。

・・・

 

・・・

 

・・・

アリサは夢を見た。

警察署内だろうか? その中で

2人の刑事が相談をしている。

「犯人は出来ないですよ。大丈夫です!

強行突破で行きましょう!」

 

「人質の命が優先だ。そんな事は出来ない」

 

「ですが時間がないんです。人質のあの子は

この薬を飲ませないともうすぐ死んでしまう。

そうなった犯人は、人質を失い暴走しかねません。

ここは強行突破一択です」

刑事ドラマのワンシーンの様だ。

病弱な人質が犯人に囚われ立て籠っている。

そこへ強行突破して助けるかどうか揉めている 。

 

「窓もカーテンで遮ってあり狙撃も無理だ。

2階のあの部屋まで到着する前に

人質が無事でいられる保障はあるのか?」

 

「ですが・・このまま何もしなくても

人質は病気で死んでしまう・・犯人だって近くで

彼女の様子を見ていて、ただ事ではないと感じている筈

そして苦しむ彼女に情が出て来ていると信じます」

 

「しかし、そんな不明確な理由で出撃命令は出せない」

 

「くっ・・一体どうすれば・・」

 

「私にお任せください」

 

「君は?」

 

「私は、特殊能力課配属の時 止芽流とめるといいます」

 

「はい事件解決」

 

「おわっちゃったよ! 急展開過ぎるわ!! ハッ」

そこでアリサが目を覚ます。

 

「アリサ大丈夫? ごめん力加減間違えたわ。

そんなに効くとは思わなかった」

心配そうにアリサを見ていたママ。

 

「眠って体力回復したから大丈夫。で、何の話だっけ?

それにしても変な夢だったなあ

でも、時を止めるなんて反則だろぉが」

ブツブツ文句を言う。

「フォー何とかの話よ」

照代が教える。

 

「ああそうそう、刑事だから何でも知ってるんだよ。

でも男を見る目は・・やばっ!」

また同じ事を繰り返す所であった。

 

「アリサ、もう忘れてよあの話は」

 

「いやいや。刑事だからって・・それって

マジシャンの用語でしょ?

刑事さんはマジックとかやっていたの? 

それとも誰かから聞いたの?」

 

「私も母親から聞いたのよ。まだ生きてるとは思うけど

いろいろな所を転々としていて、なかなか会えないわ。

結婚してからは、アリサが生まれた時に

一度会って以来もう会っていないわね」

 

「ふーんそうなんだ。

でも、あれだけの料理の中からフォー何とかで

ピンポイントで狙えるって言うの? それに

途中で私以外の誰かが取っちゃったらどうするの?」

と照代が聞く。

 

「そうよね。でも犯人は、サラダのテーブル付近で

待機して、会場を見渡して

照代さんがこちらに向かっている時だ

トングでサラダを取る振りをして

毒入り野菜を足す。で、照代さんが無視して離れたら

また自分の皿に戻す。これを繰り返しているとすれば

かなり狙いは絞れるわね。現にその時

シェフは一人欠勤でサラダとスープの場所を

スープのシェフが掛け持ちしていたらしいし

隙はある筈だわ」

 

「しかしそうだとしても、なんでそんな

回りくどい事をしたのかしら?

それで偶々通った時に無意識で取るという事なの? 

人間って単純ね・・まあ実際に取ちゃったけど」

 

バン

 

悔しそうにテーブルを叩く照代。

そうね、それであの暗号をビュッフェが始まる前に

照代さんが解いてたとしたら

助かっていたかもしれないって事になるのよ」

 

「そういう事になるわね。

犯人は何の為にこんな事をしたのかな?

これが分らない」

 

「でもさー、サラダのシェフが休んでいなかったら

こんな事出来ないよね?」

 

「確かにそうよね。

偶然シェフが休んでなければ隙も出来ないし

そもそも暗号を照代さんに見せる必要も

野菜に毒を入れて狙うなんて事も出来ないわね。

だとすれば」

 

「この計画の為に

サラダのシェフを足止めしたって事?

それってこういう事になるわよ? 

犯人は、このホテルの内部事情に相当詳しく

私に恨みがある人間って事よね」

 

「そうね、その線で探っていくしかないわね。

犯人は、照代さんが生きてる事を

知っているのかしら?そうならきっと

次の手を打って来るかも分からないわ」

 

「そうよね・・どうしよう・・刑事さん・・」

 

「まあこの部屋にいれば

命を狙われる事は無いと思うけど・・

犯人にここを突き止めているとしたら

毒ガスとか流されて3人もろとも・・」

 

「いやあああああ」

最悪のケースがママの口から語られる。

その言葉に照代も悲鳴を上げてしまう。

そんな中アリサは、一人俯いて腕を組み考えている。

そして左手人差し指を眉間に向ける。

 

「アリサ? 人差し指を眉間に当てたりして・・まさか

サンダーフレークを撃つつもりなの?」

 

「惜しいけど違うわ。タオバイバイの

ドドンペを撃とうとしていたのよ。ってなんでやのん? 

うち、真剣に考えてたんやで?

この場面で部屋に電撃撃つアホおるん?」

何故か関西弁を使ってノリ突っ込みするアリサ。

 

「ごめんなさい、そりゃ突然関西弁にもなるわね。

人差し指から出るビームといったら

グレェトマジンガーのサンダーフレークなのよ世代的に。

邪魔してごめんね」

 

「もう」

怒りながら再び考えようと例のポーズをとろうとした。

しかし、突然その時が訪れた!

 

「・・!! あ、アリサ閃いたかも。え? 嘘でしょ?

でも、あれがあるから・・・

あの人以外考えられない・・うーん」 

悩むアリサ。しかし、その人物が犯人であれば

ここで起こった色々な疑問の回答は全て出来るのだった。

水を浴びせられた子犬の様に

思いっきり首を振り、迷いを振り切る!!!

 

「やっぱりそうだわ。そうなるとやっぱり

あの人以外考えられない。犯人が動き出す前に

こっちから仕掛けないと

広間に行ってみんなを集めて」

 

「え? まさかアリサ?」

得意満面の表情と思いきや、何故か

うっすらとかげりがあるアリサ。

しかし、その翳りを振り払い、空元気で叫ぶ。

 

「ええ、わかったわ。謎は・・・アレ以外解けた!!」

ズコー

決め台詞にしては情けない響きに

ママも照代も倒れてしまう。

 

「アリサ・・そこは全て解けたって言いなさいよ。

分からない事があるなら

別にそれを解決してからでもいいのよ?

焦らなくてもいいじゃない?」

 

「そうよ。どんな刑事ドラマだって

全ての謎を解き明かしてから解決編を行う物よ。

中途半端はいけないと思う」

照代もママに賛成する。

 

「いえ、そんな事言ったら、色々な人に怒られるわ。

それにそうも言っていられないのよ。

またおばさんが狙われる危険性がある今

未だに分からないあの暗号は後回しよ。

また犯人が動き出す前に、先制攻撃よ!」

 

「成程、それもそうよね。あの暗号はターゲットへの

 警告であり、既にもう終わった事だもんね。

うっかりしてたわ。じゃあアリサは

あの暗号以外は分かっちゃったって事なの?

犯人も、照代さんに毒を盛った方法も」

 

「そうよ、今はアリサを信じて。

でも間に合うかしら?

さっきの夢みたいに時が止められる能力が

アリサにもあれば良いのに

ううん。そんな事を言っている暇なんかないわ。

実際は時は巡る。絶対止める事なんて出来ない。

ならば私が急ぐしかない。そうよ! 

考えながら、会場へ行くのよ!!」

 

アリサは脳をフル回転させる。

 

「分かったわ急ぎましょう」

 

https://novelup.plus/story/200614035

https://estar.jp/novels/25602974

https://ncode.syosetu.com/n3869fw/

私が書いている小説です。

ブログより先まで投稿してあります。

 

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