magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

私の行く先々で事件が起こる件について 39,40話

39話 閃き 迷う 

 

ドアを開けるとそこには

神妙な面持ちの照代が立っていた。

 

「思い出した事があったの。話聞いてくれる?」

 

「そう、わかったわあがって

今日は来客が多いわね」

 

「刑事さんもしかして怒ってる? 

やっぱり帰ろうか?」

 

「大丈夫よ、話を聞かせて。

丁度アリサと事件の話していて、詰まっていた所なの」

照代はテーブルの上の悪臭を放つ料理を見て察した。

 

「あ、食事時に来ちゃったのね。申し訳ないわ……

でもあのルームサービスに手を出したの?

私は腹ペコだったけど

あのメニューを見た瞬間頼む気失せたけどね」

 

「若気の至りよ……」

 

「あっおばさんだ!! どうしてここが分かったの?」

アリサが照代に話しかける。

 

「お姉さんよ? 相変わらず目が悪いわね

その若さで本当に可哀想……小さい上に目が悪く

私の様に美しい物をくっきりと見る事も出来ず

みじめに死んでいく……哀れね……」

 

「言い過ぎじゃない? 後小さいは余計よ

で、どうしてここが分かったのよ」

 

「あんたを連れ戻す時に

5-3号室にいくわよって

お母さんが言っていたのを覚えてたのよ」

 

「あ、そういえば言っていたわね」

 

「それよりも話は何?」

 

「実は、あの紙を見つけた時の話なんだけど

これと似た様な事をこの記事を見て思い出したのよ」

 

 照代は、アリサの持つ暗号を指差しながら

3年前の浅利新聞の記事を見せる。

そこには妙な暗号の予告の後に

火災による焼死体が出たという記事で

その時の犯人はまだ捕まってない様だ。

 

「この事件の犯人まだ捕まっていなくて……

次は私の番なんじゃないかって」

 

「何でそんな新聞持ち歩いてるの?」

 

「ああ、ちょっとね」

詳しくは教えてくれない照代。

 

「でもその記事の事思い出してあの時

怒っていたんだ」

とアリサ。

 

「ああ、そういえばあの時私、

ほんの少しだけきつい言葉遣いだったわね。

よく覚えてるわね。その記事の事は頭の片隅にあって

似た様な事が実際自分に起きたから

そうなっちゃったのかもしれないわね。

しかし、実際命を狙われた訳だし

私が生きている事を知った犯人は

また狙ってくるかもしれないと思ったら

一人では居られなくなったの

だって脅迫状を送ってきたって事は

私の部屋を知っている筈だし」

 

「そういえばそうよね、うっかりしてたわ

じゃあここで暫くいなきゃ駄目ね」

 

「本当? ありがとう」

 

「そういえばまだ救急車来ないんだ」

 

「あ、そういえば虎ちゃん呼んでる筈なのに

まだ来ていないわ。おかしいわね……」

 

 ふとアリサが何気なく隣の記事をみた。

すると、見覚えのある文字を見つける。 

戸奈利町の牛丼店の壁に芸術家からの贈り物

というタイトルの記事が

 

「この記事は何? 戸奈利町って聞いた事あるの」

 

「あ、それ私が書いた記事よ。

しかし、よく戸奈利町って読めたわね」

 

「普通読めるでしょ?」

 

「あら生意気ね。でね、戸奈利町の牛丼屋の壁に

誰か知らないけど素晴らしい芸術を描いた人がいるの」 

と写真を見せる。

 

「このグラフィティ、最早芸術でしょ?」

 

「グラフィティってなあに?」 

 

「この壁に描かれた芸術の事よ」

携帯を見せつつ言う。

 

「これがかーへー」

 

「私もしょぼい落書きだったら相手にはしなかったわ。

でもね、これには魂を感じたの。だから 

つい撮影して記事にさせて貰ったわ」

 

「そうか、それでその記事持ち歩いてたんだ。

自分の書いたお気に入りの記事あるから」

 

「まあ、そんな所ね」

 

「でも、それって壁にヤンキーとかが

スプレーとかで描く絵ね? それを

いくら上手だとしても芸術と言うのはおかしくない?」

照代はその言葉にピクリと眉を動かす。

 

「アリサ、そんな陳腐な物と一緒にしないで」 

 

「そういえばおばさん。

何かある度にツイートしてるもんね。

新聞記者はそれの延長線上みたいな物だね。

天職だよね」

 

「そうね、そのグラフィティも100枚近く

携帯に保存しているわ。色々な角度から撮影したり 

朝、昼、夜と時間による変化も楽しみたかったし」

 

「でも何にせよ、個人的意見が多い気がするのよねー。

その町の人や、お店の人はいい迷惑じゃないの?

流石に芸術って言い方は言い過ぎかもよ」

 

「そうよね、誇張している感はあるわ。

それにしてもよっぽどこの絵が好きなのね。

話を戻すけど、あなた 

誰かに命を狙われる様な事をした記憶はあるの?」

照代は頭を掻きながら。

 

「うーん、私は新聞記者。

出来るだけ真実を記事にしているけどね。 

その真実が気に食わなくって

逆恨みするような奴は山ほどいるし

何人に狙われているかなんて分からないわ。 

でも自分の正義に嘘を突く様な事は

絶対していないわ」

 

「そうなんだ意外にかっこいいじゃん

でもさー、犯人はどうやって

おばさんに毒を盛ったんだろう?

毒はサラダにしか入っていなかったんだよね?」

 

「私はね、犯人の思い通りに毒の入った野菜を

取る様な間抜けじゃないわ。偶然だったのよ……

って思いたいんだけど、あの暗号の脅迫状よね?

あれが来たせいで無意識の内に犯人の見えざる手によって

あのサラダを取らされてしまったのかもね」

 

暫しの沈黙。そしてママが何かを思い出した。

「……もしかして フォーシングを使ったのかも」

 

「フォーシング? 

フォークソングなら聞いた事あるけど」

と、毒を受けている割には冗談を言える照代。

 

「アリサ知ってるよ。マジシャンとかが使う手法よね」

 

「詳しいわね 何でそんな事知っているの?」

 

「アリサはママから教えて貰ったんだよ。

ママは刑事だし何でも知ってるんだ。

男を見る目はないけど」

 

「これ、アリサ」

ブオオッ、ピン! ママがアリサにデコピンをする。

 

「あっ」

 

フラフラ……ぱたっ

そのまま意識を失うアリサ。

プールで体力を既に使い果たしたアリサ

デコピンを一発喰らっただけで気絶してしまう。

 

「ちょっと大袈裟よ。そんな芝居通用しないからね?」

あまり心配してない様だ。

いつもこんな事をママにやっているのであろう。

……

 

……

 

……

 

アリサは夢を見た。

警察署内だろうか? その中で

2人の刑事が相談をしている。

 

「犯人は出来ないですよ。大丈夫です!

強行突破で行きましょう!」

 

「人質の命が優先だ。そんな事は出来ない」

 

「ですが時間がないんです。人質のあの子は

この薬を飲ませないともうすぐ死んでしまう。

そうなった犯人は、人質を失い暴走しかねません。

ここは強行突破一択です」

刑事ドラマのワンシーンの様だ。

病弱な人質が犯人に囚われ立て籠っている。

そこへ強行突破して助けるかどうか揉めている。

 

「窓もカーテンで遮ってあり狙撃も無理だ。

2階のあの部屋まで到着する前に

人質が無事でいられる保障はあるのか?」

 

「ですが……このまま何もしなくても

人質は病気で死んでしまう……犯人だって近くで

彼女の様子を見ていて、ただ事ではないと感じている筈

そして苦しむ彼女に情が出て来ていると信じます」

 

「しかし、そんな不明確な理由で出撃命令は出せない」

 

「くっ……一体どうすれば……」

 

「私にお任せください」

 

「君は?」

 

「私は、特殊能力課所属の時 止芽流とめるといいます」

 

「はい事件解決」

 

「終わっちゃったよ! 急展開過ぎるわ!! ハッ」

そこでアリサが目を覚ます。

 

「アリサ大丈夫? ごめんね……力加減間違えたわ。

そんなに効くとは思わなかった」

心配そうにアリサを見ていたママ。

 

「眠って体力回復したから大丈夫。で、何の話だっけ?

それにしても変な夢だったなあ

でも、時を止めるなんて反則だろぉが」

ブツブツ文句を言う。

 

「フォー何とかの話よ」

照代が教える。

 

「ああそうそう、刑事だから何でも知ってるんだよ。

でも男を見る目は……やばっ!」

また同じ事を繰り返す所であった。

 

「アリサ、もう忘れてよあの話は」

 

「いやいや。刑事だからって……それって

マジシャンの用語でしょ?

刑事さんはマジックとかやっていたの? 

それとも誰かから聞いたの?」

 

「私も母親から聞いたのよ。まだ生きてるとは思うけど

いろいろな所を転々としていて、中々会えないわ。

結婚してからは、アリサが生まれた時に

一度会って以来もう会っていないわね」

 

「ふーんそうなんだ。

でも、あれだけの料理の中からフォー何とかで

ピンポイントで狙えるって言うの? それに

途中で私以外の誰かが取っちゃったらどうするの?」

と照代が聞く。

 

「そうよね。でも犯人は、サラダのテーブル付近で

待機して、会場を見渡し

照代さんがこちらに向かっている時だけ

トングでサラダを取る振りをして

毒入り野菜を足す。で、照代さんが

その野菜を無視して離れたらまた自分の皿に戻す。

これを繰り返しているとすれば

かなり狙いは絞れるわね。現にその時

シェフは一人欠勤で、サラダとスープの場所を

一人で掛け持ちしていたらしいし隙はある筈」

 

「しかしそうだとしても、なんでそんな

回りくどい事をしたのかしら?

それで偶々通った時に無意識で取るという事なの? 

人間って単純ね……まあ実際に取ちゃったけど」

 

バン

 

悔しそうにテーブルを叩く照代。

「そうね、それでもしあの暗号をビュッフェが

始まる前に照代さんが解いてたとしたら

助かっていたかもしれないって事になるのよ」

 

「そういう事になるわね。

犯人は何の為にこんな事をしたのかな?

これが分らない」

 

「でもさー、サラダのシェフが休んでいなかったら

こんな事出来ないよね?」

 

「そうね。皿に野菜を戻そうとすれば止められるわ

偶然シェフが休んでなければ隙も出来ないし

そもそも暗号を照代さんに見せる必要も

野菜に毒を入れて狙うなんて事も出来ないわね。

だとすれば」

 

「この計画の為に

サラダのシェフを足止めしたって事?

それってこういう事になるわよ? 

犯人は、このホテルの内部事情に相当詳しく

私に恨みがある人間って事よね」

 

「そうね、その線で探っていくしかないわね。

犯人は、照代さんが生きてる事を

知っているのかしら? だとしたら

きっと次の手を打って来るかも分からないわ」

 

「そうよね……どうしよう……刑事さん……」

 

「まあこの部屋にいれば

命を狙われる事は無いと思うけど……

もし犯人にここを突き止められているとしたら

毒ガスとか流されて3人もろとも……」

 

「いやあああああ」

 

最悪のケースがママの口から語られる。

その言葉に照代も悲鳴を上げてしまう。

そんな中アリサは、一人俯いて腕を組み考えている。

そして左手人差し指を眉間に向ける。

 

「アリサ? 人差し指を眉間に当てたりして……まさか

サンダーフレークを撃つつもりなの?」

 

「鋭いやん! でもな惜しいけど違うんやでぇ。

うちな? タオバイバイのドドンペを撃とうとしたんや。

ってなんでやのん? うち、真剣に考えてたんやで?

この場面で部屋に電撃撃つアホおるん?

みんなビリビリーなってもうて感電死やねんで?」

 

何故か関西弁を使ってノリ突っ込みするアリサ。

 

「ごめんなさい、そりゃ突然関西弁にもなるわね。

人差し指から出るビームといったら

グレェトマジンガーのサンダーフレークなのよ世代的に。

邪魔してごめんね」

 

「もう」

 

 怒りながら再び考えようと例のポーズをとろうとした。

しかし、突然その時が訪れた!

 

「……!! あ、アリサ閃いたかも。え? 嘘でしょ?

でも、あれがあるから……

あの人以外考えられない……うーん」 

悩むアリサ。しかし、その人物が犯人であれば

ここで起こった色々な疑問の回答は全て出来るのだった。

水を浴びせられた子犬の様に

思いっきり首を振り、迷いを振り切る!!!

 

「やっぱりそうだわ。そうなるとやっぱり

あの人以外考えられない。犯人が動き出す前に

こっちから仕掛けないと

広間に行ってみんなを集めて」

 

「え? まさかアリサ?」

得意満面の表情と思いきや、何故か

うっすらとかげりがあるアリサ。

しかし、その翳りを振り払い、空元気で叫ぶ。

 

「ええ、わかったわ。謎は……アレ以外解けた!!」

ズコー

決め台詞にしては情けない響きに

ママも照代も倒れてしまう。

 

「アリサ……そこは全て解けたって言いなさいよ。

分からない事があるなら

別にそれを解決してからでもいいのよ?

焦らなくてもいいじゃない?」

 

「そうよ。どんな刑事ドラマだって

全ての謎を解き明かしてから解決編を行う物よ。

中途半端はいけないと思う」

照代もママに賛成する。

 

「いえ、そんな事言ったら、色々な人に怒られるわ。

それにそうも言っていられないのよ。

またおばさんが狙われる危険性がある今

未だに分からないあの暗号は後回しよ。

また犯人が動き出す前に、先制攻撃よ!」

 

「成程、それもそうよね。あの暗号はターゲットへの

 警告であり、既にもう終わった事だもんね。

うっかりしてたわ。じゃあアリサは

あの暗号以外は分かっちゃったって事なの?

犯人の正体」

 

「多分ね、今はアリサを信じて。

でも間に合うかしら?

さっきの夢みたいに時が止められる能力が

アリサにもあれば良いのに

ううん。そんな事を言っている暇なんかないわ。

実際は時は巡る。絶対止める事なんて出来ない。

ならば私が全力で急ぐしかない。そうよ! 

考えながら、会場へ行くのよ!!」

 

アリサは脳をフル回転させる。

 

「分かったわ急ぎましょう」

 

40話 心理戦

 

第11章 犯人は……?

 

 ママは、アリサの言う通りに会場に警察を集め

竜牙にある事を報告していた。そして、暫くした後

ビュッフェに参加した客全員がこの会場に集められた。

ロウ・ガイや八郎とその彼女

あの500人の筋肉達もいる。

 

 そして、被害者の照代も目立たない様に

私服警官2人に護衛されつつ人ごみに紛れている。

 

「がやがや がやがや」

 

「何ですか? 早く帰してよ

もう寝る時間じゃないですか」

 

「確かに眠いぞい」

時計は夜11時を回っている。

文句を言われても仕方がない。

 

「忙しい所お集まり頂きありがとうございます。

今からこのビュッフェを

滅茶苦茶にした犯人をこの場であぶり出します」

 

「鏑木さん何をするつもりなんですか?」

竜牙が不安そうに聞く。

 

「それは娘から皆さんに話があるので。聞いて下さい」

 

 アリサは、覚束おぼつか無い足取りで

人だかりの中心まで歩いていき

そして……叫んだ。

 

「犯人は……あなたかあなたかあなたです!」

ビクゥゥ

 

アリサは、無作為に3人を選んで指差した!

突然指を指された3人はびくっとなる。

 

(自分は何もしていない!)

と無言ではあるが、アリサに目で反論する。

しかし、指された3人は

過去に何か思い当たる事があるのだろうか?

強くは反論は出来ない。

何かしらの悪事をやっているのであろうか?

それが例えピンポンダッシュだとしても

小学校の頃やった好きな子への

スカートめくりだとしても

誰しもそういう経験は一度や二度はある。

指された瞬間に克明に思い出し

俯いてしまったのかもしれない。

 

それを一瞬でアリサは見抜いた……と言う事なのか?

そして、それ以外の人々は静まり返っている……

 

「アリサ? 何を言っているの?」 

予想だにせぬ娘の行動に戸惑うママ。

 

「アリサの作った決め台詞だよ? 

全由一とか名探偵ユナソでもあるじゃない。

謎は半分以上解けたとか真実はいつも2つ

とかあのかっこいい奴、私はこれで行くつもり」

 

 確かに決め台詞は覚えて貰う為には必要であるな。

だが……あまり格好良くないのではないか?

それにその決め台詞には欠点があるぞ?

もし容疑者が2人の場合はどうするのだ?

 

「かっこ良くないわよ。一人に絞りなさい」

 

「出来ないよーアリサまだ小5だよ?

それにこれを超える決め台詞の

インパクトは無いと思うの。物凄い発明だよ?

だって探偵って普通一人に絞ってから

解答編に行くでしょ?

それを二人追加いいすか? って言っているのよ?

面白いじゃないwwww」

こういう時だけ幼さをアピールするアリサ。

会場はざわつき始める。

 

「ざわざわ ざわざわ」

 

「こんなシチュエーション

一生に一度あるかないかだよ?

何か決め台詞を考えないとって一生懸命考えて

搾り出したんだから許してよー」

会場内はどよめきが納まらない。そして一人の客が。

 

「あのー、まさかこの親子漫才を見せる為に

私達をここに集めたんですか? 

そういうのは身内でやってくださいよ

それに滑ってましたよ?

まあ小さいから今回だけは許してあげますけど」

 

「小さいは余計よ!」

 

「……今のはあれです、み、皆さんの中の誰かが

犯人って事を言いたかったのよねアリサ?」

 

「そ、そうよ、みんなに見られて緊張しちゃって……

変な事言っちゃったかも知れないわごめんなさい」

 

「しっかりしてよね全く……」

ここでアリサは、ママに耳打ちをする。

 

「ママ。何とか会場の皆を大人しく出来る?

今の茶番は、犯人を油断させる為

わざとポンコツの振りをしていたの。

こんな子供じゃ絶対に無理だって思わせる為にね」

 

 犯人には、アリサが万全の準備をしている事を

悟らせない為に、大勢の前で緊張している子を演じる。

そう、自称心臓に毛の生えた神の子が

この程度の枝葉末節な事で心が揺らぐ筈も無い

高々数百人に囲まれた程度では緊張などしないのだ。

 

「成程。分ったわアリサ」

そして、ママは頷き皆に伝える。

 

「そ、そう、皆さんを和ませる為にやった事です

気にしないで下さい。では本題に入ります」

何とかアリサのポンコツぶりを

自然に植え付ける事に成功。しかし、思い出して欲しい。

遊戯室でオーナーを

完膚無きまでに言い伏せたアリサの事を。

あの216行に及ぶ、お説教のガトリング砲を

今はそれを完全に隠し、犯人の隙を伺っているのだ。

そして皆ママの言葉で何とか落ち着いてくれた様だ。

 

 会場には沢山のテーブルが用意され

その上には2つのグラスが置いてあり

中に赤い飲み物が入っている。

そして片方の席には警官が座っている。

 

「皆さん。空いてる席にお座り下さい。

そこで警官が問いかけて来ます。

直感でどちらかのグラスをお取り下さい。

片方はトマトジュース

もう片方は激辛トマトジュースになっています」

 

会場はざわつき始める。

 

「おいおい、こんな事で犯人が分かる訳無いだろ!」

 

「そうだそうだ」

 

「マジだるー帰っていいー?」

 

「ジュースジュースww辛い辛いww」

 

口々に不満を漏らす客達。 

 

「お願いします。協力して下さいすぐに終わります。

これで犯人は分かりますから」

 

「失礼で。すが私、もでしょう。か?」

オーナーがアリサの不意を突き

彼女のパーソナルスペースにまで進入してくる。

 

「うぐっ……ガアッ……。そ、そうだよ

後、橋本にも一応飲んでもらうからね?

終わればすぐに帰れるから早く終わらせよ」

 

 突然の不意打ちで、かつて無い程の近距離で

悪臭を受け止めるアリサ。

凄まじい臭いに気を失いかける。しかし

こんな所で死ぬ訳にはいかないと必死に堪えるアリサ。

 

「分。り、ま。し、たおい、で橋。本」

オーナーも分ってくれた様で、橋本を呼ぶ。

 

そして、他の客にもママとアリサが説得して回る。

 

「協力して下さいお願いします!!」

 

「あ、あのお方は神様じゃないか! 神様の言う事には

従わなくっちゃ」っちゃっちゃっちゃ(エコー)

ビュッフェに向かうエレベーターで同乗し

共に踊った仲間であり

アリサ教の信者の幹部でもある彼は、快諾し

一般客への協力を手伝ってくれる。

 

「ここは控えめな身長の彼女の言う事を聞くべきだ! 

さあ!! みんな」みんなみんなみんな(エコー)

 

「そうだよ! 

唯一絶対神アリサ様の言う事は絶対なんだ

小さいけど凄く怖い神様だからね? 

彼女に従わないと確実に目玉をへし折られるよ?

悪い事は言わない。言う事を聞くんだ!」

そして、あの若者信者もアリサに協力する。

 

「え? この若さで目玉はへし折られたくないよ

わかりました! 従います」

 

「あんな小さいのに……怖いなあ

ちっ、しゃあねえなあ」

 

「めだまめだまw 折れないし、決して折らせないww」

 

脅しの様な説得も効果があり

信者以外の会場の皆も、信者に続き

言う事を聞いてくれる様になった。

 

「……お前達……やるじゃない。ありがとう。

立派な信者に育ってくれて嬉しいわ

でも小さいは余計よ!」

 

被害者の照代以外の全員が席に着き、実験は始まった。

 

その実験とは、テーブルの上に

2つのグラスが乗っていて警官が

 

「グラスを取って下さい」

 

という指示に従い、被験者はグラスを取る。

その後同時にジュースを飲む。

普通に考えたら2分の1で

どちらかが激辛ジュースを飲む事になる。

ところが

アリサは事前に必ず被験者が激辛ジュース飲むよう

仕組みを組んで警官に指導してある。

尚、被害者の照代は当然その実験から外される。

 

「ではスタート」

警察官が被験者たちに質問する。そして

ごくごく

 

「このジュース辛すぎやしねーか?」

 

「うわーんww辛いよママーww」

 

「何と言う辛さじゃ。しかし、一切臭いではわからん

どういう技術じゃ? こんなに辛み成分を入れるとは

配分した奴は全くキチ・ガイじゃな」

 

「え? あ! ちょっと君!!」

 

「ごーっほごほなかなかやりますねぇ」

 

「水をくれ何でもしますから」

 

「トマトが辛くてなぜ美味しー?」

 

「筋肉強化にはカプサイシンが有効とはいえ

過剰摂取なのでは? ゴホゴホ」

 

「モトューンモトューン」

 

「ごほごほっ、こんな事で一体何が分かるのよ? 

まじだるー」

アリサの思惑通り、次々に被験者は

顔を真っ赤にして咳き込み水を飲む。

 

「がゃ。ぐ。ぶぃぐ、ぶぅ」

 

 オーナーは、人の出せる音ではない音を

連続しつつ苦しむ。

臭い物にはめっぽう強いのだが

激辛な物に弱いらしくトイレに走って行った。

そして、焦っていたのかステーンと転んでしまう。

 

「アイー」

 

オーナーはもがき苦しんでいる。

まるで芋虫だ

そして、一旦仰向けになり休憩する。

すると再び天井に

隠れユッキーが塗り潰されているのを発見する。

 

「あ。っ、私の隠れユッ。キーが黒、く塗り潰されて

いる?誰がこ、んな酷い。事を……」

 

 一度見た筈なのだが、すっかり忘れて

初見のリアクションを取るオーナー。

しかし、起き上がり

めげずにまた立ち上がり走り出す。

兎に角この辛い物が体に残っている事が

苦しくて仕方の無いオーナー。 

しかし、5歩位走ってまた、ステーン。

ボヨーン……ポロリン。 

2度目の転倒では

腹が地面でバウンドして少し跳ねてから倒れこむ。

 

「アイー!」

痛がってもがいている様だ。まるで芋虫だ

そして起き上がる体力がないので胡坐あぐらをかいて

休み始める。と

オーナーの姿に異変が起こっている事に気づく。

そう、頭部の『アタッチメント』が

一回目の転倒では耐える事が出来たのだが

流石に二度目の転倒での激しい衝撃に

留め具が耐え切れずに外れ

床にコロリンと落ちてしまったのだ。

 

 冒頭で、奴の髪が

フサフサに生え揃っている事に疑問を抱いていたが

たった今、その疑問が解決された。

確か私は、以前神様はおっちょこちょいと

暴言を吐いてしまった。

だが神は、おっちょこちょいでも何でもなく

斉藤隆之をしっかりと完璧に仕上げていたのだ。

 

 それを私とした事がカツラいう外見に騙され

髪が生えていると勘違いしてしまった。

これに関しては神に謝罪しなくてはならない

神よ許してほしい。

 

そうなのだ、オーナーは金を持っている。

その金で、冬空の寒さから

頭皮と、人の目から身を守る為の

『アタッチメント』をアートネーチャンに

開発依頼を出していて完成したその『アタッチメント』を

今までずっと装備していただけなのだ。

 

 それは、年齢も考え白髪にしての作成であった。

そのお陰もあり、辛うじて

完全な巻き○そを回避出来ていたのだが

現在のオーナーの姿

全身はこげ茶色で統一されていて

頭は先端が尖ったこげ茶色。まるで巻き○その先端。

そして胡坐をかいて一休みする姿は

胸周りが上から2段目、腹周りが上から3段目

胡坐をかいているその足が4段目で構成されている

4段巻き○そそのもの。

 

 そう、オーナーは、今まさに完全体となったのだ。

頭は、先端が尖がっていて、髪の毛と思っていた所は

異様に伸びた頭頂部でありアタッチメントの形も

工事現場に置かれている赤いコーンの様に

尖がっている三角帽子の様な形になっており

頭の長さは60センチ以上もある男だったのだ。

なので冒頭では6頭身と言っていたが

それは、髪の毛の部分を除外していての

六頭身であり、頭の長さが60センチで

身長が170位でも3頭身位しかなかったのだ。

禿げているだけでなく頭が異様に伸びている事も

恥ずかしかったこいつは、薄く、頭の形にフィットする

カツラを造らせていた。そして3頭身を6頭身と

見て貰える様に捏造していたのだ。

浅ましい男である。そんな事をする位なら

全身整形して人間らしくなればいいものを

 

 しかし、頭の事に関しては少し疑問が残る。

プールでのユッキーの内部にあった

頭蓋骨を見た時、普通の人と同じ様に

頭は尖がっていない普通の頭蓋骨だった。

健康な普通の頭蓋骨中央には無いヒビまで

再現されている事から

作成者は本人のレントゲンを見ながら

頭蓋骨を描いていた筈。

なのにあの様に頭が伸びているのは

どうしてだろう?

 

 もしや! 駱駝のこぶの様に脂肪が

頭の先端に蓄積されて、奇麗に尖がってしまったのか? 

要するに頭の上に伸びた脂肪の上に

かつらをした状態だったと言う事だ。

そこまでして神は、この男を外見だけでも

巻き○そに近づけたかったのであろうか? 

神よ貴方様は……何と恐ろしい……恐ろしすぎる!!

そして、展示室で幼少期の手形はあったが

本人の写真が一切無かった事も納得行く

子供の頃から当然頭は伸びていて

髪の毛は、脂肪の部分には生えず、飛び出ている状態。

 

        /\

      /   \

    髪髪髪髪髪髪髪

    耳  目 目  耳

図にするとこんな感じである。

それをばれたくない一心で展示出来なかったと言う事だ

 

 

そして、黙っていれば良いものを

 

「あ、あっ私。のカツ、ラが落ちて。しまった! 

早く拾、わな、いと」

 

と言い、周囲の注目を浴びてしまうのである。

 

一方その頃

アタッチメント君は

久しぶりに臭い隆之から離れる事が出来て

至福の瞬間を味わっていた。

 

「なんて空気が素晴らしいんだ。

ああ……こんな世界があったなんて知らなかった……

僕に足があったなら、このまま広い大地を駆け回って

色々な所を見て回れるのになあ

今からでも遅くないよね? 

僕の第二の人生は、これから始まるんだ!

思いっきり楽しんでやるんだ!!」

 

……束の間の幸せ……しかし

茶色い男の手が、既に迫ってきている事に

アタッチメント君はまだ気づいていなかった……

 

 皆、奴の無様な姿を見た。だが

最早奴が禿げてようがどうでも良い。

例えば、アイドルのSMOGの木村竜也が

カツラだった事を知ってしまったなら驚くだろう。

だが、こんな物の髪が有ろうが無かろうが

本気でどうでも良いのだ。

そう、誰もこの男とはこれから関わる事も無い。

未来永劫。そんな男がカツラをつけて

オシャレをしようが眼中に無い。

う○こにカラースプレーで青い色に変えても

結局臭いは変わらない。それと同じだ。

 

そう

二回も転んだのに愛犬の橋本どころか

誰も駆け寄ってもくれないで放置された男。

まあ橋本は、まだ辛くてうずくまっているから

仕方ないのかもしれぬが

その時隆之は、自分は孤独な存在だと強く思い知る。

そして……この時隆之は過去を思い出す

忌まわしい過去を……

 

アイーアイーアイーアイー

 

ぬ? 何だそれはですって?

この後の話を見ればかると思います。

 

私の書いている小説です

 

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