magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

メデューサ × 図書室? 2

前回の続きである。
「さあ疲れは取れたでしょ?」

「ええーリ」
 
「よし、ミスティックワードの意味をそろそろ教えてくれるよね?」

「うむ、その本には読み仮名がおかしい漢字。特に漢字検定一級に登場する理不尽な感じのする漢字をまとめた本だーリ。例えば|飯匙倩《ハブ》の様に漢字で3文字なのに、読み仮名が2文字の漢字とか、逆に|閄《ものかげからきゅうにとびだしてひとをおどろかせるときにはっするこえ》 と、一文字で異様に長い物などもまとめているーリ、アリリの言った|慮《おもんぱか》るも入っているーリ。漢字に読み仮名負担を掛け過ぎた物を分かり易く解説しているーリ! 一冊6万円ーリ」

「高いwへえ? でも漢字に負担とか初めて聞いたーリww……でもさあ、この答え、200文字位よ? ちょっと頑張れば言えなかった? これを次回に引っ張る事あったあ?」

「そういう問題ではないーリ。ワシは疲れたんーリ。このウイッグ、結構重くて首に負担がかかるーリ。20キロほどあるーリ」

「そんなに? 20キロって言ったら私を乗せて歩いてるような物じゃん。すごいねメデューリさん。でも重いなら取ったらいいじゃん?」

「これはワシの衣装だから無理ーリ」

「へー。異常に重い衣装かあ♡幸林小子を思い出すわねwでも材質を軽いものに変えるとか工夫は無いのねwま一いいわ。首が鍛えられて首の太い系女子になれるからねwよし! 次も完璧に表紙から内容を完璧に推理しちゃうぞおおおお……次は? えーと……シークレットサイン? 何この本? 意味は……秘密の署名? 合図? 符合? 大体そんな感じでしょ? 気になるうううう」    

「ギブアップーリ?」

「秘密の……駄目だあ……今回は諦めてあげる」

「なかなか潔いーリ。そのシークレットサインっていう本は、芸能人の、特に親しい人にのみ送られるサインをまとめた物ーリ。およそ200人のサインを掲載しているーリ。公に出ている物とは異なっていて、それをまとめるのは至難の業と言われているーリ。かなり高価な本ーリ。これは一冊96万円ーリ」

「へえ、そんな本が? すごーい♡……ミスティックワードの比じゃないじゃんww16倍ね? ってかってか芸能人のサインにも何種類かあるんだねw初めて知ったわwてか1年悩んでも分かる訳ないわそんなのw」

「そうーリ」

「確かに芸能人に複数サインがあるかどうかを知る事って相当レアよね? 何回かもらった人がある回数を超えた時に

「この人は親しい!」

ってその芸能人の匙加減で特別なサインを書き始めるって事でしょ? そうでないとその違いって気付けないもん。元々親しい人には始めから親しい人用の特別なサインしか渡さないもんね……まあSNSとかに始めから親しい人と一般人が同時にサインの画像を投稿していた場合でもその違いに気付く事は出来るかもしれないけど、その場合って、なんで同じ人のサインなのにこんなに違うんだ? ってなるもんね」

「確かにーリ」

「その謎を解明してようやくこの本を出そうって思い立つのよね。需要があるか分からないのに採算度外視で」

「まあトリビア的な物を好む人専用の本―リ」

「で、その親しい人を調べる。これは結構簡単に出来る筈。
で、分かったとしても、その人にサインを渡したかどうかは不明な訳でしょ? だから持っているかを確認し、なければまた別の知り合いを探して、持っている事を確認したら初めてそこから許可を取って見せてもらって、更には掲載可能かどうかの許可まで取らないと作れない本だもんねえ。手間を考えたらとんでもない時間が掛かるわねwそれを200人分かあ♡気が遠くなるーw♡wそれじゃ高価なのも納得ねえwじゃあ私は有名人に運良く出会ってサインを貰えたとしても、その特別なサインは書いて貰えないから、シークレットサインと貰った奴を見比べて悔しがる事が出来るんだ。やったあ♡」

「そうーり、とても悲しいーリ。まあ忙しくてくれない場合もあるーリ。貰えるだけ感謝―リ」

「そっか、そうだね。じゃあ次ね……キョロキョロ……あっ」
アリリが何かを見つけたと同時に市田が声を掛けてくる。

「アリリちゃんこの部屋の感じはどうだい?」

「まだ見てる最中でしょ? まあ中間報告とすればあ……本棚ばかりでお化け屋敷に相応しいかはちょっと思えない。でもこの中に恐ろしい本があるとすればお化け屋敷としての役割を果たせると思うよ」

「ま? なら大丈夫だね」

「へえ、やっぱりそういう本があるって事ね?」

「おうよ!」

「でも59分と言う中途半端な制限時間がある中で、もし怖い本があったとてそれをじっくり読む事は出来そうにないでしょ? 素通りするのがふつうね。だってこの部屋もスタンプ台を探して押せば終わりな訳じゃない? リキの部屋みたいに台に鍵が掛かっていないから見つけさえすればこの部屋は用済みな訳でしょ? だったらそれを探している道中で何かハプニングがあって、お客さんを驚かさないとダメだと思うのよ。だけど、この部屋の性質上、本棚にある本をお客さんが能動的に意識して取らないと恐怖が味わえない。それ以外にギミックが無いんでしょ? そういう変な仕組みだから、ランダムで設置されている恐怖の入った本を取らないと恐怖を味わえない。だけどそれは強制ではない。更にはわざわざ取って読んだ本に怖い内容が無ければ駄目でしょ? だからお化け屋敷の部屋としては成立していないと思うね」

「そういう事でしたかあ。全く気付かなかった……」

「むう、魅力的なタイトルの本を沢山置いておるからお客さんもその本に夢中になると思っていたーリ」

「まあそれもそうだけど制限時間内クリアの賞品の方が魅力的だと思うし」

「うっかりしてたーリ」

「でもさ市田さん? こういう質問はこれで最後にしてね?」

「な? どうしてです?」

「だってそれっていつもは部屋を大体見終わってから聞いてくる事でしょ? それを今まさに見回っている途中で聞いて来たって事はルール違反なのよ? 2回脳を使う事になる。今血が抜けていて辛いの。わかった?」

「お、おうよ!」

「……次はこの本かあ……エルダーレコード? どういう意味? エルダーは年上とか高齢者とか年長者って意味でしょ? そのレコード? 高齢者の記録? 何かしら?」

「これは、とある老人ホームでのカラオケ大会ののどかな風景を記した本-リ。
ほっこりした気分になるので心がすさんだ時に読んでるーリ♡このおばあさんの表情良いと思わないかーリ?」
表紙の老婆を指差し微笑むメデューリ。

「ふーん何でそんな状況を記しているんだろう? ……あっ、ちょっとメデューリさん!! まだ考えてすらないのに! すぐに答えを言わないでよぉ!」

「あっうっかりーリ」

「ダメだなあメデューリちゃんは! でもその一つ抜けた所がメデュ……」

市田さんもうやめて」

「な?」

「お願いだから」

              <懇> <願>

「ブル」
アリリのまっすぐ見つめるまなざしにすら震える市田

市田語キャンセルーリ」

「な? 市田語キャンセル? なる! そ、そうだよね……キャンセルされたんだよ……こんな中途半端な所で中断させられると蕁麻疹が出るよおおお」
ぼりぼり ぼりぼり

「そう? じゃあ無限に蕁麻疹を出し続ける機械と化し、未来永劫搔きむしり続けてなさい。血がちょっと出た位で中断しちゃダメよ? 肉が|抉《えぐ》れ、骨が見えても掻きむしりなさい♡で、お次はぁアルス・マグナ? 初めて聞く……ちょっと調べてみよ。メデューリさんちょっと待ってよ?」
携帯でそのワードを打ち込む。

「ふむふむ……大いなる術、大いなる学芸を意味する。って書いてあるわ?」 

「これは凄い本ーリ。とある王国の王子様が小学校で奴隷の役をした時の記録ーリ」

「もう! 待ってって言ったのにいい……考えさせてよー♡……まあ考えても分からないわね。もういいや……へえ、王子様が庶民以下の奴隷の役を演じたって事かあ。それは凄い記録ーリ。あっ! これってただの学芸会の記録じゃない? 王子様だからって記録に残すのぉ? 下らない……読むに値しないわ。完全に名前負けよアルス・マグナなんてね」

「グフフーリwご名答ーリw」

「うっかりしていたわ。こんな悔しい事ってこの世に存在するのね……他に見た事無い本は……この隣の……グラン・グリモア? ふむふむ、これは大いなる教書、大魔法書と訳されるらしいけど……」

「それは英国の帝王学の本ーリ。私も全く読んでいないけどかなり難しい本ーリ」

へーちょっと興味あるわ。キープかもね。次はぁ? ドグラ・マグラね? アルス・マグナに似ているからちょっと心配ね……これも調べてみよっと……ふむふむ……魔術や幻術の意味って書いてある」

「それは14世紀に記された手品のタネの完全解説本ーリ。これを現在の世界中のマジシャンもアレンジして使っていると言われているーリ」

「へー、これも読みたいけど見回りもあるし時間が無いわよね。でもメデューリさん? もう答えを言うのが当たり前になって来ちゃっているよ?」

「ワシもお節介なのかもしれないーリ」

「ねえ、この本後で貸してくれない?」

「いいーリ」

「やっほう! 私のママも手品ちょっと得意なのよね楽しみィ。で、|金烏玉兎集《きんうぎょくとしゅう》? これも調べてみよう。どれどれ? 金烏が太陽で? 玉兎が月で歳月を表すみたいね。ここから推測するに、それぞれの地域の太陽と月の呼び方でもまとめた本かしら?」

「違うーリ。これは日本の陰陽師の戦いの本ーリ」

「へえ、安倍晴明とか?」

「そうーリ。安倍晴明と道摩法師の戦い記録ーリ」

「へえ、まあこれは興味ないからいいや。で、これはブルーブックリポート? ホント携帯電話君大活躍ねえ。なになに? 米軍と宇宙人の接触のレポートって書いてあるわ? 本当に宇宙人とかって存在するのかしらねえ?」

「実際に見たことはないーリ。自分で見た物のみを信じるーリ」

「他には? ネクロノミコン? これは死者の掟の表象あるいは絵の意味だって。何か怖い本ねえ」

「これは私は読まないけど市田さんはよく読むーリ。アリリちゃんも試しに読んでいいーリ? あっ、そうそうこの本の場合、そこの手袋を装備してからにするーリ」
入口のドアの横に机があり、その上に手袋が。この本だけ何故だ?

「えー? 何で手袋なの?」

「いいから付ける―リ」

「面倒だからいいや!」 

「後悔するーリ?」

「そんな訳ないじゃんwwでも読まないなら何で置いておくのよ! 本なんて読む為にあるんでしょ?」
ガッ 
メデューリの警告を無視し、素手で触るアリリ。

「本にはそれ以外にも使い道があるーリ」

「そうなの? 例えば?」

「言いたくないーリ」
言いたくない? どういう事だ? 漬物石代わりにするとか、枕代わりにするとかそんな程度であろう? 言えばいいではないか……

「なんか気になる言い方ねえ。まあいいわ。ちょっと怖いし止めとくね」
ネクロノミコンと言われた本を本棚に戻そうとする。すると……

「あ……れ? ちょっと? 手から離れないよ? これぇ! 誰か助けて!?」

「あらあら、予想道理ーリw私も外し方は知らないーリ。暫くそうしているーリ」

「えーーーーーー? 怖いよ―――――――」
※アリリは腕にネクロノミコンを装備した! 攻撃力444上昇し、賢さが444上昇し、運が444下がった※ 

「似合ってるーリww」

「そう? でも何か賢くなってきた気はするwもう十分だってw こうなっちゃうのか……メデさんもっと強く手袋勧めてよー。手袋しないとこうなるよーって事まで言わなきゃ!」

「そうだったーリ。うっかりしてたーリ」

「折角ついちゃった事だし読んでみようかなあ」

「たしかそこには死の魔法や呪いの魔法等が記されている筈ーリ」

「死の魔法? って死の呪文とか? そんなのでしょ? 例えばあハデスタナトスチョベリバモルスΘアヌビスガビーンオシリスセケルΔアジャパーヤマチェルノボグΩオタンコナスミクトランテクートリオーディーン∂オッチョコチョイネルガルイシュタムξスットコドッコイヘルプルートνヘベレケモートホロンΦギャフンエルシュキガルナムタル§エンガチョはぁーデス! とか?」
なんだあこれはあ?

「な? 今のは何だいアリリちゃん?」

「な、なにーリ? 今のは一体何-リ??」

「死の呪文っぽい言葉を言ってみただけでしょ? 私なりの!」

「オ、オリジナルワードーリ?」

「パッと思い付いただけの話よ。そこの所は毎日……いえ? 毎秒鍛えてるし」
簡単に言うが、どういう鍛錬方法なのだろうか? まあ今アリリは賢さが相当上がっているからこんな複雑な文字列も難なく語れるのかもしれない。

「だ、だって普通死の呪文って言ったらデスゥとかザキィとかでーリ?」

「まあ浅い経験からならその程度しか出てこないわよねwwでも、デスゥなんて

「私はアリリデスゥ」

みたいに使う|所謂《いわゆる》丁寧語と響きが同じだし、ザキィなんて山崎ィさんとか篠崎ィさんの略語みたいじゃんw迫力も威厳もないし、私のイメージした死の呪文の方が荘厳だと思うよ?」

「確かに本来の死の呪文はもっともーっと長いーリ。それはそこにだけ記されている【神施魔法】ーリ」

「へぇ、ちょっと読んでみよっと」

「もしかしたら習得出来るかもしれないーリ。でも自己責任ーリ?」

「はいはい……なになに? へえこの魔法により絶命すると確実に地獄に飛ばされる? 怖wそんなのあるんだwで? 十字架が必要なんだwしかも逆さに持って使うのね? で、死神の……?」

「ちょ! ここで読み上げては駄目ーリ!!」

「大袈裟ねえ。十字架が無いと発動しないのよ?」

「それでも駄目ーリ!」

「じゃあ黙読ならいいの?」

「それもお勧めはしないーリ」

「ちぇっ、まあいいか。でも、早くこの本外したいなあ。誰か外せる知り合い居ないのォおおおお怒?」
アリリは呪われてしまった様だな。だが、これで【3つ目】なのだ。
そう、既にもう【2つ】の呪いのアイテムを【所持】していると言う事実を、彼女は知らない。