magisyaのブログ

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ミイラ男 × 妖精の森? 2

ニイラ男の両手がどこからともなく集まった光で、緑色に輝き出す。そしてそれをアリリの顔に近づける? ほう? これは……まさか呪文では? ホテルでロウ・ガイが使っていた妙技とは少々違いがあるが、恐らくこれもMPを消費する呪文の一種なのだろう。そのホイミイラと言う呪文が、ミイラ男の口から発せられる。すると、緑色の光がアリリの顔を優しーく包み込み、ムクバアドちゃんによって深く刻まれた眼球の爪痕が消えて行く……

「どうだニイ?」

「ふうふう……え? あ、あら? 傷が治ってる? 目が開く……明るいよ? わあ! 世界ってこんなにも明るかったんだ……だって今まで全てが霞んで見えていたから、その明るさに感動を覚えたわ! ありがとう♡凄いね君! アンデッドみたいな風貌なのに♡」

「どういたしましてニイ。でも僕、アンデッドじゃないニイ。ちょっと傷付くニイ……これはただの衣装で、【この役】を演じているだけで、中身は正真正銘の人間だニイ」
うむ。だがしかし、そんな生身の人間が癒しの魔法などを使用出来るものなのであろうか?

「でもなんか気に障るのよねえ」
ぬ? 何故だ? 無償で癒しの施しを受けて置きながら何を言うつもりだ?

「えっ? 何故ニイ?」

「そりゃそうよ。だって呪文の途中であろう事か

【この、小さき命】

って言う禁止ワードを入れていなかった?」

「え?」

「な?」

「それを、私が弱っていて判断能力が著しく低下している時を狙いどさくさに紛れ、ほざいていた気がしたからかなあ? もしこの話が真実なら許せない話よ? 間違いなく侮辱罪に抵触する。そうなれば1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留に抵触するのよ?」

「そ、そんな事言ったかニイ?」(ま、まさかこの子にとってアレ、傷つく事だったニイ?)

「うーん……私も意識が半分飛んでたから聞き間違いかも知れないけどね? でも、だからかは分からないけど何かイライラしてるのよね? だから気のせいではないと思う……あのさ? 試しにもう一度あのやつ唱えて見てくれる?」

「い、いやああれはとても疲れるから無闇には使えないニイ」

「そう……残念……でもね? あの呪文の前の口上? 確か……大いなる森のなんちゃらで、聖霊のあれやこれやってやつさ、あれってしっかりとした定型文があるんでしょ? そしてその口上の中にしっかりと

【小さき命】

って言う卑猥で下劣で見る者全てを悲しませる部分が織り込まれていたんじゃないの? で、それらを一言一句正確に言わないと回復効果は得られない」

「な?」
市田がそのアリリの推理に驚く。

「そんな感じがしたのよね。直感で申し訳ないけどね。でもそれが事実なら許せる話じゃない……こんな最低の呪文を考えた奴……頭がおかしい。探し出してへし折らなくては……」

「うう、そ、それは」(あ、当たっているニイ。え? へし折るって何だニイ? そ、そんな事よりもこの子、一回しかアレを見ていない筈ニイ。それでここまで分かってしまったのかニイ? まさか1を見て10を知る聖徳太子の生まれ変わりかニイ? 弱っている時は気付かなかったけど、この子……相当賢いかもしれないニイ……! 確かにその口上……正しくは【詠唱】だけど……それを正確に言わなければホイミイラは発動しないニイ……まずいニイ……で、でもそれはこの子の姿の事を馬鹿にして言っているのではなくって、聖霊に比べたら人間等は小さい物なんですよ? と、力を貸していただく聖霊に伝えていい気分になってもらうべく、へりくだった表現にしたんだ。と、言う事を呪文書の解説では書いてあったんだけど、それをいちいち説明するのは面倒だし……困ったニイ)

「NO! アリリちゃん! 確かに私もこの呪文はそこまで好きじゃないけど、それは言い過ぎだと思うよ」

「なんでよ? へし折るよ?」 
何をへし折るかは市田には既に定着しているので、敢えて省略するアリリ。

「ブル……ほ、ほら! 傷だって塞がったんだし……」

「うう、確かにそうだけどさあ、小さいは絶対に駄目だし……! それって小さい人間に小さいって言うって事。これは生きている人間に生きるなって言うのとほぼ変わらない訳で……」
そうであろうか?

「でも私はこの魔法だけは嫌いだからなるべく怪我をしない様に努めているけどね」

「ま? そこまで嫌いなのぉ?」

「おうよ!」

「どうしてぇ?」

「だって、二か所もあるのに変えられないんだから……」
何だ? 何を言っておる?

「成程なあ……ってどういう事? 詳しく!」

「NO!」

「うわっ、ムカつくウウウウ」

市田さんアリリちゃん! 喧嘩は止めてニイ! と、とにかくアリリちゃんの眼球の痛みは無くなった筈ニイ……だからそこまで深く掘り下げないで欲しいニイ」(今は弱っているからこの程度だけど、もしも全快したらどうなってしまうんだニイ? ブル)

「それはそれ! で、もしそれが真実だとしたら確実にへし折っていたと思うし……」

「へし折……る? さっきも何回か言っていたから今聞くけど……な、何をへし折ってくれるんだニイ? 相手の鼻っ柱とかかニイ?」
おや? 心なしか彼の巻く包帯が青ざめているような気もするな。まあ気のせいであろう。

「え? 何だ……あんたはまだ知らなかったっけ? しかし鼻っ柱ってwwwwそんな甘っちょろいもんじゃないわwwwwwwww」

「ブル」

「ブル」
ニイラと市田が同時に震える。

「じゃあ教えてやろう。そんなの分かり切っている。へし折ると言ったら目玉しかないでしょ? あんたは馬鹿なの?」
アリリの中ではこれか背骨が常識の様である。あーあ……こりゃホイミイラが効いて来たようであるな。そう、元のアリリに戻りつつある。だってさ? 

【目玉をへし折る】

が出てきたらほぼ完全回復しているって証拠なんだもん……ブル

「ひぃ? きっ、気のせいだニイ……」
おお! 皆さん! お気付きだろうか? 彼の包帯が完全に青くなった。真っ青だ。空よりも、海よりも、母なるEARTHよりも青い……この包帯、装備者の感情に合わせ、変色するタイプの包帯らしいな。面白い!!
ならば怒った時や恥ずかしい時は赤色。そして今のように恐怖の感情の場合は青色。そして、カレーうどんを食べた時は黄色に変わるのであろうな。これは便利である!

「ブル」
市田もその理不尽で慈悲の欠片もない言葉に震え始める。

「そうか、そうよね? 気のせいよね? この私にそんな事言える人類なんか居ないもんねwよかったよかった。君、命拾いしたね♪」

「そ、そうだよ! え? ……この私って? アリリちゃん? そんな言い方はちょっと横柄じゃないか?」
全くその通りである。

「なんで? よく考えて見て? 私はボケ人間コンテストの優勝者よ? その上ここのアドバイザーを無料でやってやっているんだからそうもなるわよ」

「そ、そうか? でもこの屋敷の入場料も無料にしたんだし食事もお風呂も提供したんだよ? お互い様じゃないかい?」

「NO! お米1年分と1000000円!」
おお、百万円と言わず、それをアラビア数字変換し、5文字も多く稼いで、その偉大さを市田に伝えておる。これは賢いアリリだ。

「そ、それを言われると弱いよ……わ、分かったよお。この話はこれで終わりだ」(うわあ真似してきたあ……しかもNOは私の物なのに……気が強い子なんだなあ)

「でも傷、治って良かったニイ? 痛みはないニイ?」

「んー、でも、ちょっとフラフラする」

「ああ、それは、傷は治せるけども流れた血液までは元に戻せないニイ。まあ血液なんて骨髄から生成される液体だから気長に待つニイ」
血液が骨髄のみから作り出されていると言う話、実はそうではない。研究によると、骨髄からも作られてはいる。だが、腸からも血液は生み出されている様だな。
故に食事等で消化の為に腸を働かせすぎると血液生成の速度も落ち、更には病気にもなり易くなるのだ。腸内環境を整える事は超大事。
野菜やきのこ類、海藻類を避け、肉やお菓子、スイーツ、インスタントやレトルト食品を満腹になるまでどか食いをし、睡眠時間が6時間以下、運動が嫌いだと最悪である。
これは私が小学5年生の頃の友人……? いや隣の席に居ただけの隣人と言った方が正しいか……その隣人である|馬渕高志《まぶちたかし》君が全て該当しており、そんな所にも脂肪付くう? と言うところにまで贅沢に潤沢なる贅肉が付着している男子で、アナグラム。つまり名前を組み替えると……

まずは、ま ぶ ち た か しを平仮名に直すと分かり易い。これを並び替えてみよう。
後ろの二文字を前に持って来て、か し ま ぶ ち た。
次にぶとちを入れ替える。すると……

か し ま ち ぶ たとなり、漢字変換する事で

【菓子待ち豚】
と変換まで出来てしまう程お菓子好きの太った少年なのであった。彼は只者ではない。袋を傾け、菓子を口に流し込む、

【袋菓子は飲み物】

芸を得意としており、学校でも休み時間に披露してくれていた。何が凄いと言えば普通、

【シャリシャリ】

と言う音を立てて食べる菓子を

【ゴクッゴクッ】

と言う擬音を立てて食べるのだから凄まじい。高志の喉の筋肉は常人の20倍はあるのだろう。喉で物を飲み込む時に使用する、喉のみの力である|嚥下力《えんげりょく》で菓子を砕いている訳だ。流石におせんべいは苦戦していたが、ぱっかカニせんやたまごローポ等は余裕でイケる! だが、その当時は面白い芸だと思って視聴していたが、今思えば彼はその芸をやる度に命を削っていたのだと言う事を思い知らされる。例えば喉噛みの砕き方が甘くて、鋭い破片に変わってしまう場合もある。それがのどに刺されば痛いし、大量に流し込めば窒息も考えられる。だのに、拍手し、アンコールまで要求する輩もいて、調子に乗って、もう一袋! もう一袋! と、彼をおだて、額から

【大量の馬渕高志汁】

を滝の様に噴き出しているのを目の当たりにしていると言うのに、更なるカロリーを与えていた事実もある。もはやおだての皮を被った虐待だ。本人が喜んでいると勘違いし良かれと思ってアンコールを求めた輩全員が共犯だ。彼があんな姿になり果てたのは、彼だけのせいではなく、私達と、高カロリーの菓子を罪の意識も無く乱造し続けたお菓子メーカーも同罪なのかも知れぬ。
まあ、アナグラム出来る事に気付いたのはつい最近の事ではあるが、だからかーと納得している自分がいる。人とは、名前に関連する行為を止められない止まらない傾向にあるからな……悲しい事だ……そんな彼は、体重が70キロもあり、授業中いつもふうふう言っていた。そう、この域に到達すると、日常生活をしているだけでも辛くなる事が可能となるのだ。かけっこもクラスで一番遅く、50メートル走でも20メートル地点でスタミナが尽き、わき腹を押さえながら苦悶の表情 (>M<)で歩行する程であった。こうはならない様に皆さんは逆馬渕高志君を目指すのだ! 

「成程ね。詳しいね。もしかしてあなたは医学を学んでいるの? だとしたらこんな傾きかけたお化け屋敷のお化け役なんて辞めて病院で働きなよ!」

「いや、もう戻りたくないニイ」

「戻りたくない? え? まさか? 君、元医療従事者なのお?」

「昔ちょっとだけ二イ。特に包帯を巻くのは得意だニイ。でも今はここの従業員だニイ」

「ふーん。そっちの方が収入は良かったんじゃない?」

「そうだニイ、でも僕は医療という現場が嫌いになったんだニイ」

「どうして?」

「彼は……聞いてしまったんだ……」
市田がニイラの代わりに話し始めた。

「あっこれ長くなりそう! でも知りたいからいいか」

「彼は研修医だった頃聞いてしまったんだ。病気を症状の重い物からランク分けし、低いランクの病気を治しても満足出来ない医者の独り言を……」

「え?」

「その【馬鹿】医者はこう言っていた……

『僕はこんな低いランクの病気の為に自分の時間を使いたくないんだよね。まあ仕事だから行くけど、本当は行きたくない。もっと高ランクの……この僕にしか治せないような病人を【持って来て】くれよ』

とね。そしてニイラ君はその言葉を聞き、とても嫌な気分になったそうだ」

「うわあ」

「そうなんだニイ……【持ってきてくれ】ってどう思うニイ? ……まるで、人を物の様に扱っている感じがしたニイ。
そして、もっと強い相手じゃないと満足できない戦闘狂みたいで嫌いだったニイ。その戦闘狂の医療従事者バージョンじゃないかニイ? 医療は平等になされるべきで、低いランクの病気だからと言って無視していてはそこから更に悪化していく事もある筈ニイ。そんな事も分からない馬鹿が『先生』と呼ばれ、ちやほやされていると思うと包帯が煮えくり返るんだニイ」
それを言うならはらわたであろう……まあ言いたい事は何となく分かるが……包帯がそうなるか? まあ良い。

「へえ、まあどんな病気を低いランクってほざいていた? とか深くは聞かないわ。事細かに聞いていたら時間も足りなくなっちゃうし。でも血液まで戻すなんて欲張り過ぎよね。傷が塞がっただけでもありがたいし……大分楽になったニイ♡あらあらw伝染っちゃったw」

「そのままでもいいですよ? なんならずっと……語尾を永遠に……すなわち語尾フォーエバー」
ぬ? 市田が何やらおかしい事を呟いている。何故アリリに語尾を言わせ続ける必要性があるのだ?

「こんなのフォーエバーに続ける訳ないでしょ? 私はニイラ男か? いいえ? ニイラ美少女ね! ニイって語尾を使うって事はそういう事だろ?」

「う……」

「何がすなわち語尾フォーエバーだ! 日本語とフォーエバーのミスマッチ具合が酷いw お前はフォーエバーと言う英単語とすなわちと言う日本語に謝れ! 土下座してな。そして2度と使うな! これより市田のみにフォーエバー禁止令を発令する!」

「NO!」

「うるせえ! 何がNOだ! それ、かっこいいとでも思っているのか? 馬鹿かお前wwそれにずっと語尾にニイニイ付けていたら読者さんが飽きちゃうでしょうしw」
おいアリリ! 目上の人間に馬鹿とは言ってもいいが、お前呼ばわりだけは絶対にいけないぞ?

「ですよね……でもアリリちゃん? 読者様と言う架空の偉大なる存在を出し、私を威圧してまで語尾をやるのを拒むんですね? なんか浅はかで軽薄で最低で軽蔑します」
語尾をやってくれない? 一体この男は語尾を何だと思っているのだ? それは第三者の拘りや押しつけや強制で言わせる物ではないだろう? 私の認識する語尾とは、本人の人柄、人格、人間性から自然と表れる物だと考えている。そこを強制してしまったら、個の埋没が著しいのでは? そう、上が言ったから従う。そうなれば一部の人間の指導の下、その考えを刻まれた人間達だけで溢れ返り、その考えをコピーした自我を持たない人間のみが生存を許される退屈過ぎる世界が誕生する。それではただの支配世界に陥ってしまうぞ? ウーム……一本筋が通っていて好感が持てる男ではあったが、この部分に関しては共感出来ぬな。

「そうね、潔く諦めな。でも、軽蔑される筋合いはないわ。尊敬してね? でもさっきまで瞬きすら出来なくて、私、このままドライアイで死ぬんだ……って思っていたから、目を閉じれるという素晴らしさを感じているw素晴らしい瞼! 瞼ありがとう! そして瞼フォーエバー!」 

「大袈裟ニイ」

「な? フォーエバーは禁止の筈ですよ」

「私はオッケーなのね? あんた話ちゃんと聞いてたの? 市田さんだけ禁止なの。でも今言ったよ? 禁止してるのに言ったよ? やっぱり加齢による記憶力低下が……」

「まあこの記憶が定まらないところも私の欠点でもあり、良いところでもあるんだ」

「またそれ? まあいっか今機嫌がいいから! それ位嬉しいの! ヒャア!! その悩みが消えただけでも嬉しいし、安心したわw♡wありがとミイラさん♡♡」
今までフラフラだったが、この男に施された秘術ホイミイラにより元気を取り戻したようだ。それが証拠に言葉の途中で★☆ヒャア!!☆★などと言ってしまったり、言葉の最後にはハートを付けると言う謎の作業を再開してしまっている。一旦怪我をしている時は大人しく少々可愛らしかったが、再開するとは思わなかった……忌々しいものだ。
なぜそんな意味不明の作業をしているのかは不明だ。そして、こんな生意気な娘は少々弱々しい位が丁度いいのだが……

「当たり前の事をしただけだニイ」

「彼はこんな風貌だけど、この館の中では最も心優しい男なんだよ? 後ミイラじゃなくニイラね?」

「へえ」(何でニイラなの? どう見てもミイラじゃない……さっきもネズミみたいな奴をネズニって言ってたし)

「で、何の用だニイ? まさかこの子の怪我を治しにここに来たって訳でもなさそうだニイ」

「ああ、そうだったそうだった。それもあるけど本来の目的はまだだったねw実はこれからこの娘にこの中を見て貰うよ。
もしかしたらお客さんが来ない原因はここかも知れないんだ」

「え? どうでしょう? 良く分からないニイ。でもそんな事は絶対に無いと思うニイ」
そしてついに内部をチェックするようだ。