magisyaのブログ

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メデューサ × 図書室? 3

迂闊に呪われた本を触り、取れなくなってしまいました
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「そう言えばこの手があるかもしれないーリ」

「なに? 早く教えて!」

「解呪の呪文を使う―リ。それ以外に方法は無いーリ。誰か使える人はいる―リ?」

「な? 私はそれは覚えてないなあ」

市田さん魔法は得意じゃなかったのお?」

「確かに得意ではあるし、あの魔法は【可能】だけど……【可能】だからこそ嫌なんだよお?」

「何が可能なのよ!! で? 可能だから嫌だ? 何なのよお!!」

「おうよ! 呪文は【可能】だけど、そうしたら【発動しない】から嫌なんだよお。私の法則を完全に無視していて嫌なんだよお」
フム……全く分からぬ……

「もうええわ!」

「あ! そういえば僕使えるニイ! 任せるニイ!」

「本当? 回復だけじゃなくって解呪も出来るの?」

「おうよ! この部屋の魔導書で習得したニイ! 行くニイ!!」
ニイラ男の目つきが変わり、解呪の詠唱を開始する。

「神の寵愛を受けし神聖なる聖霊よ! 数多の呪術を退ける力秘めし聖霊よ! この小さき者の腕に取り憑きし呪物を開放せよ! ジョーカース」
パアアアアア

「わあ! 本が取れた! ありがとう! 住民が全員ゾロゾロ付いて来て面倒だと思っていたけど、今回ばかりはそのお陰で助かったわ」

「どういたしましてだニイ……お! 今のでジョーカースの熟練度が上がったニイ! これで少し下がるニイ」
ぬ? 下がるとは?

「え? 下がるって? 何が?」

「ええとね、熟練度が上がると消費MPが下がるニイ。大体現在の消費量の16分の1の数値が下がるニイ。ジョーカースは消費MPが32だから、30になったニイ 」

「ああ、私の万物調査も何回か使った後、160から10減った事があったわ。16分の1減るのね? 変な仕組みねえ。じゃあ合計16回熟練度が上がればどんな魔法でも消費が0になるのかしら?」

「違うニイ。次は150だとしたらそこから16分の1が減少するんだニイ。それでも減少するのはありがたいニイ」

「そうか、消費MP0はあり得ないもんね……でも今度はしっかりと聞いたわよ?」
ぬ?

「え? 何がだニイ? アリリちゃんって素直にお礼を言えない体質なのかニイ? ここは感謝だけにして欲しいニイ。だって

「今度はしっかり聞いた」

なんてお礼の後に付けて来た人は初めてニイ」

「そう? でもそれは今までの人達が考えが足りないうつけものだっていう事になるわ」

「毒舌ニイ」

「まあ最後まで話を聞きなさい。そうすれば自責の念にかられ反省するから……」

「ま、まさかそんな? ありえないニイ」

「じゃあ教えてあげるね? 私は花の間で眼球を怪我した事があったわね? で妖精の間であなたからホイミイラを受けた。その時に、

【小さき者】

という私を侮辱するワードが、その呪文の発動する前に唱える口上の中に入っていた【かのよう】に聞こえたのよ。でも出血多量で|朦朧《もうろう》としていたからハッキリとは聞こえなかった。だから断定出来ずで、聞き間違いだと思っていたのよ。でもなんかその魔法を受けた後、ずっと嫌な気持ちが残ったままだった。だから、入っていたと思う」

「あ、しまったニイ」

「あらあら、君は素直な子なのねえ? もう少し足搔くと思いきやwそしてもう気付いたの? 賢い賢いwそう、あなた、私に対して

【小さき者】

って確実にほざいていたのよ! それも一度ならず二度までも……あんたさ、この場合、一回疑われてた時点で二度と疑われないよう警戒し、今の意識もはっきりとされている状態の素晴らしく妖艶な美幼女アリリなら間違いなく気付く! だから金輪際言わない様にしようっと! って思わないといけなくない? ところがあんた、別の効果がある呪文だからって事で、同じ禁止ワードが入っている事を無視したのよ。そんなの唱える前に当然分かってた筈でしょ? 何度も何度も呪文書を読んで覚えた訳だから【小さき者】が紛れ込んでいるって事をさあ! それを躊躇わずにそのまま使うのはどうなの? 結局同じ過ちをしたって事なのよ?」

「う、あ……」
 
「な? あれ? 語尾が無いよ? ニイラ君……?」
ぼそっ……
ぬ? 何だ?

「ん? まあいい。仏の顔は3度まで。でもアリリの顔は1度までなのね? 知ってるよね?」 

「そんな事初めて聞いたよ……」

「ほ、ほらまた! いけないんだよお」

「2、私の決めた事なの! この瞬間に覚えておきなさい! だから2度目を言ってしまった時点で神罰が下るのは確定したのね? さあどうしてくれようかしら?」
ぬ? 2とはなんだ?
キュルルルル 
そして、頭を回転させ始めるアリリ。

「あ、あのねアリリちゃん? これは呪文書にそう唱えないと効果が発動しないと書いてあったんだニイ。一言一句正確に唱えないと君の呪いは解けない仕組みなんだニイ。だから、君を悪く言うつもりは全くないんだニイ……それにずっとあのままだったら困るニイ? お願いだからそれだけは信じてほしいニイ……グスッ」
顔の辺りの包帯がびしょ濡れである。恐らく号泣しながらアリリ様に許しを懇願しているのだろう。そう思うと少々可哀相になってくる。だが、助けた相手が悪かった。そいつは素直にお礼を言うだけではないのだ。おかしいなと思った所は恩人であろうと容赦なく突っ込んで来るぜってぇにヤベー奴なのだ。ニイラがあの時取るべき行動はたった1つしかなかった。それは、メデューリに使えるか聞かれた時、実際は使用可能だとしてもそれを敢えて黙って置き、アリリが呪い装備を外せずにのたうち回る姿を鑑賞しておけばよかったのだ。そうすればこんな理不尽なお説教を受ける事も無かったし、いつも生意気なアリリがもがき苦しむと言う面白い瞬間が見れたかもしれないのだ。故にこれはお人良し過ぎるニイラが完全に悪い。

「うーん……呪文だから仕方ないと言うけれど、それってこういう事よね?」

「え? どういう事?」

「あ、また語尾を……」
うむ、やはりだ。市田が聞こえるか聞こえないかギリギリの声で何かを言っている。

「3、例えば間違った情報だけど、それを知らずに本当の情報と信じ込み、一生懸命覚えた。
そして更に他の人に教え続ける事までして逆に迷惑をかけてしまっていても、本人はそれに気付かないまま生涯を終える」

「き、急に、何を言っているんだあ?」
急速に包帯の色が青く変わる。鯖よりも青鬼よりも真っ青だ。

「ちょっと! そこまで言わないなんて……これは言い易い所じゃないかよお……それは絶対ダメだよお……」
やはり何か不満があるようだが……小声で誰にも聞こえていない様子。

「4、要するに、あなたは自分で何も考えられずに与えられた情報を自身で嚙み砕く事無く受け入れ、妄信してしまった。ただの愚かな思考停止人間って事なのよ。今回の場合ね? 

【小さき者】

という

【≪最低≫】

の響きを、本当に小さい人が聞いたとして、とってもとっても傷付くんじゃないか? と、自分の頭で考え、このままではいけないと思い直し、似た意味の別のワードに変えて唱え、同じ効果が発揮出来るのかな? って実験を行う事も出来た訳よね? それには柔軟な思考が必要なのよ? これ位さ、常識なのよ?」

「そ、それは……」

「ちょっとニイラ君……さっきから何回か語尾を忘れちゃってるよお……ここは、そ、それはニイ……って言わないと……」
しびれを切らした市田。今度は皆に聞こえる位の声で指摘した様だ。

「……5、あなたはその常識的な実験を一度でも行った事はあるの? 恐らくは一度もない筈。その、一度覚えた呪文書に依存、執着、固執し、それを疑わずに使い続けた筈。だって回復の効果は間違いなく得られるんだからね。そして、その無慈悲な響きを機械的に唱え、この地球上で、私を含めた何千億人と存在する小さい者達に悲しい気持ちを与え続けてしまった筈。それも無自覚で!」
2023年現在の地球上の人口は80億人位であるぞ!

「た、確かニイ」

「ニイラ君……今度は語尾は付けてくれたけれど、語尾略しちゃってるよお……この場合は確かにニイだよお……これじゃあ困るんだよお。いい加減にしてく……」

「6……これはもう駄目ね。あんた凄いわ……やれやれ……まだ……気付けないの? 市田!」
すると謎の数字をカウントアップした後にアリリが市田の言葉を遮る……

「な?」

「な? ではないの。それはこちらが言いたい気分。ここは抑える所でしょ? 確かに私ですら、この子、語尾付けてないわあ。緊張すると付けない時もあるのね? クソワロタ。とは思った。でもそれは彼が真剣に話を聞いている証拠でもあると考え直し、ニイラへの指摘を飲み込んだ。それと同時にあんたが横でゴショゴショ言っていたのも……ね。でもいつまで経ってもそれを続けそうな様相を呈していたから教えてあげるね」

「わ、私は何かおかしいのかい??」

「そうだ。だが老いたその身では分からん。だから老いた者専用に分かり易い言葉で教えてやろう。
今はな? 私がニイラにお説教している真っ只中なのだ。そんな事すら気付けずに厚顔無恥に枝葉末節な横槍を入れていたな? さっきからずっと我慢していた私の苛立ちを感じ取れなかったんだな? 結果、機嫌が悪くなりそのうっぷんをニイラにぶつけていたかもしれぬ」

「酷いニイ……」

「私を取り巻く独特の空気って物があるだろう? 私が発するお説教をする時に出してしまう特有の、

【説教の覇気】

を。それをその体で感じ取る事は出来なかったのか? かなり分かり易く出していたのだが? そして、それに触れてしまえば例え泣きわめく赤子でさえも、お腹が減って泣きわめく子猫でさえも

「迷惑をかける事は出来ないバブ!」 

「これはまずいにゃん。今だけはお口チャックにゃん」

と、気を使い遠慮する程に分かり易く顕在化した物を出していた筈なのだがなあ……全く……鈍感なのだな……これも加齢による説教の覇気レーダーの劣化から来る悲劇か……このタイミングでこの状況を割り込む知的生命体がいるなんて初めて知ったぞ。在り得ない。常識は無いのか? しかも6回もやるなんて……想像を絶する程に古い老人よ?」

「ブル」

「またそれか……ちょっとでも怖くなればすぐ震える……こんなにも年老いた醜い男がな……困った時のブル頼み……極めて|醜悪奸邪《しゅうあくかんじゃ》、|牛鬼蛇神《ぎゅうきだしん》、|鶏皮鶴髪《けいひかくはつ》……何と悲しすぎる男か……恐怖を体験した場合、電動歯ブラシの様に震えてブルと言えば許されると思っている……貴様はあのアイタタイタニアの魔力をも物ともせぬ程の高密度の魔力の持ち主ではないのか? あの時のお前はスッゲエ輝いていた……その時だけは私もお前に敬意すらを感じていたと言うのに……そんな男でもここまでメンタルが脆くブルブルブルブル言っている……貴様はブルに依存し過ぎなのだ……もう読者様も飽き飽きであるぞ?」 

「な? 読者? そ、それは一体?」

「かまととぶるな……本当は知っているであろう? 誰でも知っておるぞ! 常識だ。それを知らない振りをする姿は非常に浅ましい。それに読者ではない。読者様だ。あの方々の功績は貴様程度のハゲでも十分に分かっておろう? 貴様程度が呼び捨てにする資格などないのだ! 敬意を決して忘れるな! 二度と呼び捨てにするでないぞ?」

「お、おうよ……」

「今のやり取りもそうであるが、貴様は空気を読めず割って入って来る……どこまで融通が利かぬのだ……|時世時節《ときよじせつ》を理解せず、|臨機応変《りんきおうへん》、|当意即妙《とういそくみょう》に行動出来ず、いかなる時も我を通し、異様なまでに|慇懃無礼《いんぎんぶれい》。考えても見ろ。私のありがたい説教を真摯に聞いている男が、こんな年老いて|浅学菲才《せんがくひさい》で|口尚乳臭《こうしょうにゅうしゅう》な男が放った聞こえるか聞こえないかの小さな声を優先して聞き受ける筈ないだろう? 無視されて然るべき。
それはこうとも言い換えられる。ニイラはそこまでお前を敬服していないと言う証拠なのだ。だが、普段は素直に語尾を付けている時もある。が、緊迫した状況では付ける事は出来ずに|周章狼狽《しゅうしょうろうばい》しつつ私の説教を聞くしか出来ない。と、言う事は? そう、表面上仕方なしに従っているだけ……従業員の立場上、雇い主には逆らえない。首にされる位なら……と、仕方なくな。当然横でもじょもじょ言っていればその聞き取れこそせずとも感じ取れる耳障りな雑音+周辺視野に映りこんでしまったお前を否応なしに気付く事となろう。ここで本当に貴様を尊敬していたならば、どんなに小さい声でもそれを感じ次第、私の説教を振り切り真剣な眼差しでお前の言った事を優先し従う筈。だがそれを対応せず私の説教を優先し聞いていたのは、貴様などどうでもよいと言う事。そして、私の説教の方が後の人生に役立つと判断したから聞いた。そう、分かっていて敢えてお前をガン無視しただけの話だ。考えても見ればこんなおかしな性癖を持っている男に心底敬服してくれる人物が存在する筈は無いな。説教されている時のニイラの態度を見れば分かるだろう? 貴様など一切眼中に無いと言う事がな……いい加減に幻想から目覚め、現実と向き合う時では? 憐れ……もういい、お前は引っ込んでいろ」
アリリー! 君さ、現在自分が何歳か分かってるのお? 11歳って事すっかり忘れてるよお? でも文字数がとっても沢山稼がれているなあ。それならいっか♡

「お、おうよ」(アリリちゃんが一杯三字熟語を言って来たよお……どういう意味なんだよお? 全部分からないよお)
おいおい市田よ……何故一つ減らした感じで言うのだ? それに臨機応変位は分かるであろう? 貴公は小説家ではないのか? ある程度は四字熟語を知っておかねば小説家は務まらないのではないか?

「い、今のは何だニイ? ……日本語なのかニイ? ブル」

「あれは市田に言った言葉。君には全く関係ない事だから気にしないでね? で、ニイラ君? 回復の魔法中に禁止ワードを混ぜて言っちゃう行為、それってとっても悲しい事だと思う。確かに体力回復や解呪の効果はある。素晴らしい効果だし、この私も管轄外。故に君にしか出来ない。でもそれと引き換えに唱えられる度にその呪文を受けた者は心に傷を負う。自分は小さくて憐れなんだってね」

「あ、憐れまでは言っていないニイ」

「うるせえ。だけど癒しや解呪の恩恵を受けてしまったから強くは言い出せない……そうよね? 今まで誰にも言われなかったんだからね? 君も調子に乗っちゃうよね? それが日常になっちゃうよね……そしてその暴言を受けた相手も、ちょっと心に引っかかるワードを聞いてしまって傷付いたけど、それを受け入れ日常生活に戻る……そして、ふとした時に、思い出す。

「私って、小さくて憐れな者なんだリキ……しょんぼリキ……」

ってね。その切っ掛けを与えたのは紛れもなく君なのね? でも君は良かれと思ってやっている。永遠にこの悲しみの連鎖を止める事は出来ない。君は今までずっと治療行為をやっていたと勘違いしていて、その中に秘められた心を穿つ暴言を吐いている自覚は無いし、リキュバスも癒して貰ったと言う引け目から横槍を入れてはいけないと、自分の受けた苦しみをあなたに伝える事を躊躇い飲み込むしかないの。
そう、リキとニイの想いは平行線。決して交わる事が無い。伝えたくともそれを伝えてしまえばいたずらにニイラを傷付けてしまうかも……最悪絶望し、

「もう人を癒す行為は止めるニイ」

となってしまうかも? と深謀遠慮の末、切り出せない。だから黙って受け入れる。体は癒えたし文句はない筈なんだけど、小さいと言われ、心を痛め付けられ折角頑張って成長しようとしているリキの足を引っ張ってしまう最低最悪の行為なの。そんな事を無自覚で行えるなんてどう考えても非人道的だと思うのよ。ねえ? ニイラ君? 今までそんな事一度たりとも考えた事なかったでしょ?」

「ちょっとアリリちゃん! リキはホイミイラは受けた事無いリキ。故にそんな事は一言も言われていないリキ!!!!!」

「ア、アリリちゃん? さっきのしょんぼリキって所さ、しょんぼリキではなくってしょんぼりリキじゃないのか? そうでないと語尾略で……」
信じられない市田。先程散々怒られて尚、何一つ変わらぬテンションでアリリに突っかかる……彼には自制心と言う物が無いらしいな。

「リキュバスさんごめんねw小さくて憐れな存在って何かなあ? って考えたらつい君が頭に浮かんじゃってw」

「酷いリキ!!!!!!!」

「でも市田? まだ言うの? で、どうせ次に取る行動はブルなんだろ?」

「ブル……ーブックリポート」

「ん? ブルの後に何か言葉を付け足した? まさか別の言葉に変換したのか?」

「確かにそう聞こえた二イ。ブルーブックリポートかな?」

「ウム。そしてブルと言った事実を誤魔化そうとした? マジか? 何の意味があるwwwそういえばさっきの本にそんな名前があったなwフッwそれで私の予想を回避したつもりかw浅いw薄いw正に予定調和だなwここまで分かり易い奴は見た事無いぞwもう突っかかって来るなよ?」

「おうよ……」

「ま、まさか……今までやってきた癒しの行為の中に人を傷付けてしまう要素が紛れ込んでいたと言うのかニイ……た、確かに、この術を受けた人の中には、落ち込み気味の表情をしながらお礼を言っている方も居た様な気がするニイ……まさかこのワードで心に傷を?」

「そうよ。そして、これからもそれを平気で続けようとしている君を、私が今止めてあげたのよ。これは洞察力の鋭い私にしか出来ない。分かる? 私が救ってあげたの」

「あ!」

「そう、この私の直感でおかしいと思った事を伝え、君はどう思った? 何を感じた? 言ってごらんなさい?」

「分かるニイ……ああ、僕は……なんて最低の人間なんだニイ……」

「大丈夫。安心して? あなたはもう気付いた。確かに今までは最低だった。だけど、この瞬間からそうじゃなくなったのよ? これからはちょっとその禁じられし部分を君のセンスで変えて、新バージョン……いいえ? 違うわ。新ヴァージョンのワードを使用し、癒しの魔法が成功するか試して行きなさい。そう、あなたが新しい呪文を開発していくの。誰も傷付けない口上のみで紡がれる優しい呪文を……ね……1000年前の先人が残した膨大な量の書物がある現代で、それらのワードを分析し、それぞれの口上の特徴を掴み、この部分は似ているけど同じ意味だ! だけど禁止ワードが入っていないニイ! とかそういう癖を見抜き、全魔導書を読み終え掴み取った【優しきワード】を、禁止ワードの所に上書き、本文と少し異なった表現になってしまうけどそれでも効果が得られる場合もあるかを実際に唱えて調べ、研究、精査し、別の口上でも同じ効果の得られる呪文を完成させる事なんてさ、あんた程の天才が出来ない訳ないじゃない!」 

「う、うおおおおお」
興奮するニイラ。

「フッその意気よ! その研究が完遂された時、本当に心も体も癒せる、

【マジモン】

【スーパーヒーラー】

になれるから! それってさ、君の大切な人生を費やすのに十分に相応しい事だと思わない? そう、優しさの、研究……!」

「優しさの……はい!!」
ニイラの表情が尋常ではない。これはネットで繋がりがあり、実際に会ってみたらイメージ通り。もしくは期待以上の相手だった時に出す様な至高の表情…… 

「いい返事! そしていい目! 君なら出来る! 大丈夫!!」
ポン
優しく、そして全力で完璧に背伸びをし、うなだれているニイラ男の肩を叩く。

「マジモンの……スーパー……ヒーラー!!!!! ハイ! し、師匠……! アリリ師匠!!」
パァアアアア

ニイラの包帯が金色に輝き出す……包帯は彼の感情に合わせ変化する事は何回か見て来た。そして、恐らく何か決意を固めた瞬間は金色に変わると言う変化が起こるようだ。彼は今、新たなステージに進もうとしているのかもしれない。期待しよう。
だが、今彼を売却すれば1億円位にはなるのではないだろうか? もうニイラは既にアリリの所持品の様な物だ。故にすぐにでも売却も可能なのだぞ! 早くしないとその光は失われてしまうぞ? 急ぐのだアリリ!

「精進なさい」
★お知らせだよ★
ニイラ男がアリリの軍門に下ったよ!
☆★テテーン★☆

まーた勝手に弟子を増やす……当然彼女に癒しの力は使えない。故に師匠となっても癒しの術の修業は見てくれないし成長もない。ただ先程の様な薄っぺらい人生観を教える事位しか出来ない。だが、それでもその口の巧さと謎のカリスマ性で次々に従順な信者を作り出してしまうのだ。彼女の悪い癖である。前々回のお話では肉親を含む100人近い信者をも獲得しているし……本当にアリリはカリスマ性が高いんだから!

「な? ニイラ君? 語尾を忘れているよ? 何度目だよお……勘弁してくれよ」
市田よ。その言葉そっくりそのままお返ししよう。

「あっ! すいませんニイ」

「もう! 市田の事は無視なさい! それにニイラ君? 師匠だけでは足りないでしょ?」

「えっ? 師匠? 一体どういう事ニイ?」

「アリリ最高峰のお師匠様でしょ? 目上の方を呼び捨てては駄目! へし折るよw♡w」
おやおや……すっかりアリリであると認めてしまっているな。思い出すのだ! 貴公の本名はアリサであろう? 全く……嬉しい事があって浮かれた結果、本質を見失っておる……本当に愚かな娘である。

「はいニイ!! アリリ最高峰のお師匠様二イ!!!」
なんとも語呂の悪い気がするな。

「うむ」

「これ! ワシの部屋で勝手に弟子を作るでない」

「でへへー」

「アリリちゃん? ここはどうでした?」

「うーん……(さっき一度聞かれた奴を差し引いたら今の所19でしょ?) だから18かしらね」

「そうですか……だから? それは一体なんです?」(歯がゆいなあ……まだ教えてくれそうにないよ)

「こっちの話よ」

「その数字の意味、何度聞いてもリキには全く分からないリキ」

「18の意味はいつ教えてくれる―リ?」

「フッ……愚かな女だ……」

「時が来たら……ね。じゃあ次の部屋。それで最後よね?」

「おうよ!」


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ジョーカースはトランプのジョーカーではなく、浄化+カース(のろい)を合わせた呪文です。