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一か八かの賭け 後編

一旦ここまでです。また完成次第投稿していきます。

一か八かの賭け 後編

「ぷっはあぁあ美味い! 水も良いもんね。体が中から洗われる気分! 少々の塩もいい感じ♪」

 

「うん」

 

「じゃあ続きを読むね」

 

「やったああ😊」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「女! 一体何のつもり?」

 

「織田満里奈祭! ハッ……つい怒りで感情が乱れて……コホン、もう一度……おだまりなさい!」

 

「禁止! おだピーりなさいに言い直して! 特急で! 女!」

 

「どうして? なんなんですかあなたは!! 私は何も間違えていないでしょう? 言い直す必要は無い! そして私は女なんて名前じゃない! もう許せない!」

 

「禁止! 何もピー違えていない! に言い直して! 後さっきのおだピーりなさいも言っていない。早く! 女!」

 

「うるさい! さあ、この者を追い出して下さい! 早く! 抵抗するようなら容赦はいりません!!」

 

「はい!」

乙姫様かなり怒ってます。その怒りに呼応するかの如く、魚の番兵達の覇気も最高潮に到達しています。その数は1000を超えるでしょう。もはや避けては通れない一触即発の空気。

 

「フン! 無駄!!!」

ゴゴゴゴゴゴゴ

しかしその大群に全く怯む事無く泰然自若に精神統一します。すると、膨大な氣のうねりがきんしま太郎を包みます。糸色など一切使わず、完全にむき出しで、誰でも目視確認可能な程に克明な姿の深紅の竜が現れます、その激しい熱気を帯びた闘氣が、灼熱の障壁が、きんしま太郎を守る様に包んでいます。もう戦闘態勢に入ったみたいですね……これは……沢山の死人……いいえ。沢山の焼き魚が出来そうですね……食べ切れるでしょうか? ジュルリ🤤

 

「これだけの数を前にしてよくもでかい口を叩けるな! いいだろう! 皆の者! かかれー!」

番兵はその大きな変化に全く気付いていないようです。いいえ。もしかしたら強大過ぎて竜宮城の赤い背景に溶け込み、気付けないのかもしれません。ドラゴニックオーラ全開の彼は既に一騎ではないのです。一騎当千と言う言葉通りの状況。故に1対1000ではなく1000対1000の対等な勝負と言えるでしょう。何故なら今の彼の防御力は、カメの甲羅よりも固くなります。そしてその防御力に加え、クマを10mも投げ飛ばす力がある竜の血を受け継いだ神聖な人間なのです。果たしてここの番兵程度が束になったところで彼の相手が勤まるのでしょうか?

ドドドドド

魚の番兵達はきんしま太郎に一斉に飛び掛かります。

ジュー ジューウシィー 

 

「あ、熱い アツウウイ……体が、焼けるうう😢」

お魚が焼け、DHAたっぷりの魚油が滴り落ちます。そして、それが焦げるとても美味しそうな……いいえ。

皮膚が焼けただれ、焦げ付いた様な嫌ーな匂いが漂います。ジュルリ🤤

 

「だっ駄目です! 彼の周りにドラゴニックオーラの様な物が張り巡らされていて近づけません!!」

 

「な、なんですって?!! ドラゴニックオーラ? なんですそれ?」

 

「とってもあっつうーい奴です」

 

「で、では早急に退いて! 弓兵部隊! 遠距離から攻撃です」

 

「はい!」

ピュン ピュン ジュ…… ジュ……

ああ、矢がきんしま太郎に届く前に燃え尽きていますね……

 

「そんなの効かない!」

 

「駄目です……」

 

「では槍兵達よ! 中距離から攻めて下さい!」

 

ぎょ意! やああああ」

カンキン カツンコツン 

 

「そんな棒っきれじゃ効かない」

 

「魚ええええ」

 

「ああっ……あの高熱のオーラに耐えられるものは居ないのですか?」

 

「ドラキング!!」 「あっ! あなたはみず/ドラゴン複合タイプのドラキングではないですか!」

 

「奴の闘気など4分の1に抑える事が出来ましょう! お任せ下さい!」

 

「頼もしいですわ」

 

「食らえ! ハイドくちポンプ」

成程。例え耐性があったとしても念には念を入れて遠距離攻撃ですか。確かに、4分の1に抑えられるとて熱気の籠った攻撃性の高いオーラなど触れないに越した事はありません。このドラゴンかなりの切れ者ですね。しかし、その慎重さ加減を見ていて私の姉の事も思い出してしまいました……忌々しい……

 

「こんな水鉄砲は……えいや! 食らえ!」

なんときんしま太郎。ドラキングが放った水の大玉を、両手で優しく受け止め、ドラキングに流してしまいました。

 

「うわああ」

バタッ 何と言う脆いドラゴンですか……あの慎重さはこの防御力の低さから来たのでしょうね。

 

「ああっドラキングも……他にはいないのですか?」

 

「サニゴー」

ピンク色のサンゴの様な生物が乙姫様にアピールします。

 

「あなたは? あっみず/いわタイプを持っているサニゴーさん! あなたも4分の1に出来ますね?」

 

「その通りサニ。そして僕達は防御の種族値が高い。ドラキングの様にあっさり負けないよ! そしてこの硬さを生かした体当たりなら、あんな奴のドラゴニックオーラを貫通していちころサニー」

 

「ああ、頼もしいです! では、お願いします!」

 

「はいっ! みんな一斉に行くサニー! 高速スピーング」

 

「高速スピーング」

 

「高速スピーング」

サニゴーの大群が、一斉にきんしま太郎を攻撃します。

 

「う!」

ドガンボギン ゴツンメキン 

痛々しい擬音と共に、ギャグ漫画等でよく見られる謎の煙がきんしま太郎達を包み込みます。そのせいで中の様子がよく分かりません。 そして5分後……

 

「や、やりましたか?」

とことこ

乙姫様……それは……それだけは言ってはいけないセリフです……

 

「うおおおおおおお足柄山おろしいいいいい」

ポーイポイポイ

 

「うわあああ」

 

「たすけてえええ」

 

「とばされるううう」

見事にフラグを回収しましたね。煙が薄れ、それと同時にサニゴーがあっちこっちに飛んでいきます。クマですら10m飛んでいくほどの投げ技です。サニゴーはその10分の1程の重さ。故に100メートルは飛んでいます。 そして……ああ、予想通りです。彼らは大口をたたいた割に一切傷を負わせる事も出来ていません。 そうです。彼は待っていればいい。サニゴーは浅はかだったのです。仮に熱を帯びたドラゴニックオーラを破ったとて、本体の堅固な防御力までは想定できなかった。その硬さはサニゴーよりも固く、体当たりは無効。故に、相手に疲れさせるまで攻撃させて、疲弊したら投げ飛ばす。そんなシンプルな戦い方でも良いのです。

 

「ああっそんな……番兵達……ごめんなさい……」

全滅……

 

「僕はカメを助けた恩人なの! こんな事はしないで! 2度と!!!!!!」

想像を絶する熱氣を全身から放ちつつ正論で返します。

 

「うう」

この様子では敗北を認めたのでしょう。あれだけの大群を一人で捌いてしまったこの小さき怪物。 ハイスペックすぎますね。

 

「今回だけはさっきの分は許す! 今の戦いで忘れてしピーった僕も悪いから。不服だけど! でも! これ以上例外は無い! 分かった?」

何を許すんですか? そろそろ教えて下さい……

 

「す、すいm……ピーせん……」

 

「あっ! ギリギリ! しっかりして! 女!!」

 

「クッ……」

ギリギリ 乙姫様は顔を真っ赤にして拳を握り締めます。

 

「きんしピー太郎さん落ち着いて……姫さピーも恐れています。姫さピー……彼はこういう人なんです。何卒ご理解の程よろしくお願いたしピーすカメ」

 

「ほら女! 見て! この亀4回もま……違う、ピー違えずにすらすら言えてる。それに引き換え女は何度もピー違えてる! だから女はカメ以下! ハッキリ分かんだね」

きんしま太郎? あなたも何か言い間違えていませんか? それにその発言、差別発言ですよ! 訂正して下さい!

 

「わ、分かりピーした……(何故こんな屈辱を? ゆ、許せません!!!!)」

 

「あれ? いピー、許せピーせんって思わなかった? だとしたら禁止!!」

え?

 

「ひぃ? めめめめっ、滅相もございピーせん(え? こ、心の中を読まれた? ま……まさか……そんな筈……)」

 

「ぴーた! 心の中を読ピーれた? とピー……ピーさかって思い直して! 迅速に!」

 

「あーれー😢」

おや? きんしま太郎、乙姫様の心を読んでいます……これも竜の血を引く彼の神通力の一種でしょうか? ですが思い直してってどういう事なんですか? 思い直してどうなるんですか? 謎は深まる一方です。うーむ、この太郎、今まで登場したどの太郎よりも無駄にハイスペックですねえ……筋力も高く、動物と会話出来、更には心まで読める? 

 

……ああっ!! 発作が……意図的に話を逸らしたくなる発作が……皆様すいません……誠に申し訳ございませんがこれからほんの少しだけ意図的に話を逸らします。発作なので仕方ないのです……では、行きます……

昔話には太郎が沢山出てきますね? 例えばももたろう、浦島太郎、金太郎、三年寝太郎。そして、マイナーな物であか太郎とかもあります。どの太郎も個性的ですが、金太郎だけ群を抜いている気がするんです。竜の血を引き継いでいて、クマにも相撲で勝ててしまう程の怪力の持ち主。それに引き換え三年寝太郎なんてただの寝坊助ですし、桃太郎はそこそこ強いみたいですが、あか太郎なんておじいさんとおばあさんの垢をこねて作った人形に命が宿ったと言う設定です。このように様々な太郎が活躍する小説の事を総称し、

 

【たろう小説】

 

と言います。1999年7の月に、小説家にたろうと言うサイトが誕生しましたが、そのサイトこそがたろう小説の発祥の地と言われています。今日この瞬間も新しいたろう作家が新たなたろう達の活躍をその筆で生みだしてくれるのでしょうね。皆様も要チェックです。しかしたろうって……小説家にたろうって……変なサイトです。 ハッ私は一体? 数分前の記憶がございません……ええとでは、続き行きます……

 

「とっ取り合えずさっさとおもてなしして、さっさとお帰りなさっていただきピーしょうカメ!」

露骨です。

 

「そ、そうですね……タイ―ヒラメ―」

 

「呼びましタイー?」

 

「呼ばれたヒラメ―?」

 

「さあ舞い踊って! 早く!」

 

「禁止! ピーい踊って! に言い直して! 女! お願い!」

 

「ああ…… ピーい踊って! (早く帰って……あっそうだわ! あれを……)きんしピー太郎さん少々席を外しピーす」

 

かわや? 大なの? 大なの? ねえ大なの? じゃあ早く済ピーせてきて! 早急に!! お願いだから!」

うわあ最低です……

 

「そ、そうです(な、何て痴れ者……もう許せない! 絶対に天罰を与えなくては……!)」

とことこ

乙姫様は何かを取りに自室に戻ります。

 

「天罰? 僕はそんなの受けない! 天が僕をピーもってくれているんだから!」

まーた勝手に心読んで……

 

「ルンルン」

 

「ランラン」

タイとヒラメは見事に踊ります。

 

「すごいすごい88888888」

きんしま太郎もご満悦ですね。

 

「これは海藻スープです! どうぞ召し上がれ!」

 

「ありがとう!」

ズズッ

 

「これはいいものだ! お代わり欲しい!」

 

「ただいま持ってきます」

 

「禁止! ただいピー持ってきピーす! 言い直して!」

 

「すっすいピーせん……ただいピー持ってきピーす」

 

「合格!」

 

「クックソ!!」

ダダダダダ

悔しそうに走っていくウエイター。しかしこのウエイター、あのやり取りで瞬時にきんしま太郎の言葉の謎の法則を理解してしまいました。ですが私には未だに理解出来ていません。ですがいつか解明して見せますのでご期待下さい!

 

「お代わりお持ちしピーした!」

 

「ああ! ありがとう! ズズッ うーん絶品!」

 

「戻りピーした」

乙姫様は綺麗な箱を小脇に抱え戻ってきました。一体中には何が入っているのでしょうか?

 

「お帰り! 手は洗った?」

 

「は、はい」

 

「でも手が濡れてない! そんなに早く乾くの?」

 

「うっ、しっかりとタオルで拭いたので(本当は洗っていないのよね……あっこれ筒抜けかも!!)」

 

「じゃあしっかり洗う! 汚いの駄目!」

ひー

 

「ひー」

乙姫様もウンザリです。氣は優しくて力持ちで他人の心も読む事の出来るハイスペックな太郎ですが、この性格では女の子にはモテないでしょうね……

 

1分後

 

「洗ってきピーした」

 

「うん綺麗! そして合格!」

 

「しかし感情が高ぶってしピーったとは言え、番兵をけしかけた事は反省致しておりピーす。申し訳ありピーせん……お詫びにこの箱を差し上げピーす(どうか受け取って! 私の心が込もった煙をあなたに……)」

あっ! これは怪しいですね。しかし心を読む事が出来るきんしま太郎には通用しなさそうですね。

 

「なにこれ?」

 

「たま……たピー手箱です」

 

「今ギリギリだった! 気を付ける!」

 

「す、すいピーせん。で、ではどうぞ……」

 

「ありがとう」

おや? すんなり受け取ってしまいましたね? 何故でしょう?

 

「じゃあそろそろ帰る。お土産ピーでありがとう!」

 

「お元気で」

 

「また来るよ」

 

「ひー……え? あっw 禁止! ピーた来るよでしょ? 言い直して下さい! 特急で!」

乙姫様? なぜですか? とても嬉しそうですよ?

 

「あっごめん!! ピーた来るよ」

どうして言い直すのですか?

 

「合格! いえいえ、こういうのは一回きりだからこそ美しいんですよ。だから……その……」

 

「ねえ! ふピーんそうな顔しない! ピーた来てもいいでしょ?」

 

「すいピーせん。ピーた来て下さいね……」

 

「合格!」

何すかこの会話……

 

「じゃあカメ帰ろう!」

 

「はいですカメ」 (もう戻ってこないで下さーい)

こら! 乙姫様! また読まれますよ!

 

ーーーーーーーーーーーーーー数日後ーーーーーーーーーーーーーー

 

家に帰ったきんしま太郎。帰ってきても玉手箱は開けずに相変わらず動物達と遊んでいます。 そしてお母さんにも決して開けてはいけないよ! と念を押していますね。 しかし、とても強いので、おすもうも、かけっこも、負けませんでした。 力の象徴である熊も、泳ぎの達人の鯉も、きんしま太郎には敵いません。 学校給食で誰もが一度は見た事のある筈の、あのばんのう君の様にスポーツ万能なのです。

ですが、彼は強いだけではなく、優しいのです。 お母さんの目が悪くなってしまった時はおんぶして、目の効能のある温泉まで連れて行きます。

 

「い、いつもすまないねえ……」

 

「禁……何でもない!」

おや? 禁止と言おうとしたようにも思えますが途中で止めましたよ? なぜでしょう? そしてある時は山に嵐が来て、友達の動物達が木に押し潰されていた時も

 

「大丈夫?」

 

と、得意の剛腕で木を持ち上げて助けてあげました。

 

「た、助かりm……ピーした」

 

「ギリギリ! 気を付けて!」 「はっはい!!」

口癖のように禁止を連呼するような気難しい一面はあれど、こういう優しい一面もあるから完全に嫌われることは無いのです。

 

「今日もすもうを取る! イノシシ! 勝負だ!」

 

「この突進耐えられるイノー?」

ドドドドドド そんな当たり前の日常に、とある変化が起こりました。それは、足柄山の近くに、お侍さん達がやってきたのです。その日は曇り空。山の上にも赤い雲がかかっています。それに気付き……

 

「むむ? あれはなんだ?」

山の中へと入っていきます。そこで見つけたのは、きんしま太郎と動物達でした。 丁度、イノシシ🐗の双方の牙を左右の手でしっかりと掴み、投げ飛ばす直前でした。 ぽい!

 

「痛てて相変わらず足柄山おろしは対策が見つからないイノ……」

 

「そう! これぞ最強の技!」

それを見て、侍の長、源頼光みなもとのよりみつが言いました。

 

「強いな! 私の家来と勝負してみないか?」

 

「いいよ」

 

「ちょっ? ちょっと! こんな子供と私が?」

 

「お主、見ていなかったか? イノシシを投げ飛ばしたのだぞ?」

 

「それが何ですか? 驚く事でしょうか? 私も日々の訓練を怠っていません。負ける訳がないでしょう?」

 

「禁止! 怠っていピーせん。ピーける訳ないでしょう! に言い直して! 絶対に!」

 

「な? 何を?」

 

「禁止だから! 急いで急いで!」

 

「うるさい! 黙れ!」

 

「禁止! だピーれに! 言い直して! 後、怠っていピーせん。ピーける訳ないでしょう? も一緒に! 早く!」

 

「馬鹿め! 誰が直すか!」

 

「ぬ! 分からずやは遠くへ投げ飛ばす!」

 

「こい!」

 

「うおおおおおお足柄山おろしいいいいいい」

 

「うーわー」 投げられてしまいました。

 

「なんと! だが奴は四天王の中で最弱……行け! 二人目の家来!」

 

「だ、だが、最弱とはいえ四天王だぞ? この子、油断出来ない! 本気で行きます」 ぬりぬり ぬりぬり ぬりたくりーの おや? 何かを塗っていますねえ。一体何でしょう?

 

「禁止! 行きピーす! に言い直して! この通りだから!」

 

「問答無用!」

ダダダダダ

 

「ぐっ!」

ガッ  がっぷりよつに組みます……ところが?

ツルリンコ!

「うわ!! すべる? なんで?」

 

「フフフ勝負あったな!」

 

「でも……」

ガッシ

 

「え? 砂を?」

 

「うおおおおおお足柄山おろしいいいいいい」

ピューン

 

「うわあーい」

二人目の家来は、全身に油を塗りたくって投げずらくしていましたが。一瞬の隙を利用し家来から離れ、地面の砂で天然の滑り止めをこしらえ、投げ飛ばしました。 きんしま太郎は戦いの最中でも状況を把握し解決するセンスも持ち合わせていました。結局頼光の家来は次々と投げられ、誰も勝てませんでした。

 

「あっぱれだ……」

 

「あれ? これで終わり?」

 

「私は勝てない戦いをするつもりはない。そうだお主、都に来ぬか?」

 

「駄目! お母さんを置いていけない」 きっぱりと断ります。 「むむむ……! 彼を立派な侍として教育するのでどうか!」

ですが頼光は諦めません。きんしま太郎のお母さんに直談判しました。

 

「分かりピーした。ですが無理はしないで下さいね」

 

「感謝いたす!」

それからのきんしま太郎は、頼光から「坂田金時」という新しい名前をもらい、四天王と呼ばれる立派なお侍さんの一人になりました。

 

「で、何をする?」

 

「良い質問だ! 実はこの都に悪い噂が立ってな」

 

「どんな?」

 

「ふむ……金時! 言葉遣いが目上に対するものではないぞ?」

 

「僕はこのやり方で行く!」

 

「そ、そうか。確かに無理に連れてきた手前強くは言えぬ。うむ、このままでよい!」

 

「禁止! このピーピーで良いに言い直して! お願い!」

 

「グッ……そういえばこんな奴だったな……このピーピーで良い!」

 

「合格!」

 

「面倒な奴だ……強くなければこんな奴絶対に使わないぞ……」

 

「で、噂は?」

 

「それがな? 都に妖魔……おっと……妖怪が出るようになってな」

 

「どっち? 妖ピーなの? 妖怪なの?」

 

「本来妖ピーだ。だが妖怪に言い換えた。お主とのあのやり取りが面倒なのでな」

流石頼光! 賢いですね。

 

「そう! なら今回は許す!」

誰なんすかあなた?

 

「そいつらは夜な夜な人を襲い、金品や作物を奪っていく」

 

「それは駄目!」

 

「そうだ! だから夜間の見回り……違った……パ、パトロールするのだ!」

 

「禁止! 見ピーわりに言い直して! 速攻で!」

 

「だからパトロールって言い直したじゃないか!」

 

「でも見ピーわりって発言した! その罪は絶対に消えない! 故に言い直して! 特急で!」

 

「ググギギ……見ピーわりするのだ!」

 

「合格!」

相手はあの源頼光ですよ? もう止めて下さい……吐き気がします……

 

「暗くなってきたな。そろそろ出るぞ? 気を付けろ!」

 

「御意!」

 

「♪夜な夜な夜ーなー夜ーなー人々おーそーいー♪夜な夜な夜ーなー夜ーなーお宝うーばーう♪」

おや? 何やら物騒な歌詞の歌を歌う人がいますねえ。

 

「出た! 妖魔……いけねっ妖ピー」

 

「禁止!」

 

「そんな暇はない! 来るぞ!」

 

「なんだお前らは? これから人を襲ってお宝を集めるんだあ邪魔するなあ」

 

「禁止! おピーえらは? と、じゃピーするなあに言い直して! 急いで!」

 

「なんで? と言うかお宝奪うな! とか、人襲うなっていうのが普通じゃないの? そんな事だけでいいの? じゃあおピーえらは? と、じゃピーするなあ。これでいいか? じゃあ仕事するからこれで」

 

「合格!」

 

「金時! 合格じゃないだろ! 成敗開始だ! うおお!」 頼光は刀で妖魔を切りつけます。しかし!

スカッ

 

「あっ? き、効かない?」

 

「そんなものは効かん。黙って見ていろ!」

 

「禁止! だピーって見ていろに言い直して! はよ!」 「黙れ! 妖魔様に指図するな!」

ドガ

 

「いててて……なんて攻撃力……」

カメの固さを誇っているきんしま太郎にすらダメージを与えました。流石妖魔だけの事はありますね。

 

「……あっ! いピーおピーえ三回も言った! あんな短いセリフに!! 許さない! だピーれ! 妖ピーさピーに指図するな! に言い直して!」

 

「本当に言うと思ったのか? ままままままままままままままままw どうだ? ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーピーに言い直してっていうのか? ほれ! どうなんだよ? オラ!」 ど、どうしたのですか? 妖魔がおかしくなりました。いいえ。多分おかしいのは私でしょう……妖魔はきんしま太郎のあの法則を見抜いた末、彼を怒らせる為に敢えてこういう事をしているのかもしれません。私がこの法則を見抜いていさえすればこの妖魔の奇行を解説できたのですが……情報が足りなさすぎます……

 

「き、さ、ま……ゆ、る、さ、ん」

噴火寸前の活火山の火口付近のような深紅の瞳に変色し、妖魔を睨みつけています……もはや止まる事は無いでしょう。

 

「金時……おピーえもきさピーって言ってるぞ……」

 

しかし金時にその言葉は届いていません。

 

「これは使うつもりはなかった。でも妖ピー、おピーえは僕を怒らせた。死よりも辛い苦しみを味わってもらう。泣いて謝ってももう遅い」

シュルシュル……パッカ……モクモクモクモク

 

そう言うきんしま太郎の両手にはいつの間にかきれいな箱がありました。あの箱はもしかして乙姫から貰った箱でしょうか? その箱の紐を解き、蓋を開けると紫色の煙が妖魔達目掛けて漂い、包み込み始めます。 

 

「はははははwなんだその貧弱な煙は? 何も怖くないぞ! その背中のまさかりは飾りか?ww」

そんな挑発には一切耳を傾けず直立不動のきんしま太郎。煙は生き物の様に妖魔達のみを包み込みます。得意の投げ技やまさかりを使わないのは頼光の刀が通用しなかった事を見たばかりです。彼と同じ轍を踏まないと言う事でしょう。彼はタダの脳筋ではなく、引き際を知っている様ですね。 そして、その煙は2分位包み込んだ後に箱に戻っていきます。また使えるようですね。とっても便利! そして煙の中から出てきた物は?

 

「よ、ヨボヨボ妖魔ー」

 

「ふ、フラフラする妖魔ー」

 

「腰が、足の関節が痛い妖魔ー」

なんと! 妖魔達はおじいさんに変わってしまいました!!

 

「金時? 一体これは?」

 

「乙姫のくれたたピー手箱!」

 

「乙姫? たピー手箱? ピー、ピーさか金時、あの伝説のお方に会ったのか?」

 

「合格! 伝説? そんな大した女じゃなかった。奴は心を読ピーれているのを知った筈なのに、たピーて箱の秘密を心の中でばらしていたw 間……ピー抜けで馬鹿な女だった。でもそのお陰で僕を陥れる筈の箱が、僕の最大の武器になったの!」

 

「成程、金時は心も読めるのか……」

 

「そう! だけどけっこう頭使うからずっとは出来ない!」

 

「そうか! よしこの調子て妖怪どもを一網打尽にするぞー」

 

「おう! 妖ピーは一匹残らず駆逐する! この箱の力で!! あっあそこにも3匹いたぞー掛かれー」

ドドドドドド

 

こうして玉手箱の力を借り、きんしま太郎こと坂田金時は都で大活躍しましたとさ。 めでたしめでた……ちょっと待って下さい! 成程。たった今……フフフ……いいえ。 【たったいピー】 ですよ……ね? 分かりました。どうやらピーに合ったようですね……ギリギリでした……この流れでようやくきんしま太郎が今までやっていた奇妙な行動の全てが分かったのです。 はあ、語りの女神カタリナとしてこれを気付けないままで完結させてしまっては語りの女神の名が泣きます……私はずっとこの疑問を抱えつつ語っていましたが、この真実に辿り着き溜飲が下がる思いです♡え? あんた本当に女神なの? ですか? 正直にカタリナさいですって? フフフwお上手ですね……分かりました。本当は秘密にしていたかったのですが、とても面白い冗談が聞けたので今回特別にお教えしましょう。コホン……では語らせていただきます……

 

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私は2000年に生まれた比較的新規の女神です。何せ語りと言う狭い分野の女神ですので……で、元は人間だったんですよ? しかも日本人でした。 神になる前の名前は土方ひじかた、土方理奈と言う名前でした。そう、ヒジ【カタリナ】なんです。 女神になる前はコギャルでした。当時ピチピチの17才でした! 知っていますか? コギャルって? 足はダルダルのルーズソックスと言う靴下をはいて、顔を黒くしてポケベルやデコレーションした携帯をいじる人のことです。ですが私はただのコギャルではありませんでした。当時毎日、美菜と有紀と言う友人と私の三人で、ギャル語を考えていたのです。 ギャル語とは、白けるならホワイトキックとか、超ベリーバッドならチョベリバとか、とてもムカつくならがっぺんムカつくとか……そういうギャルが好んで使う言葉ですね。それを部室で1日中考えては出来た作品をまずはクラスメートに実験的に使っていました。結構好評でそれがいつしか口コミで広がり、全国に広まりまして、何とテレビでも紹介されました。その活躍を見ていた神様が、私をヘッドハンティングに来ました。初めは戸惑っていましたが、神になれば寿命が延び、沢山の言葉を作れるかもしれないよ? と言う誘惑に負けて同意したと言う経緯がありました。 ……美菜と有紀には反対されました……ですが、一度きりの人生。何か大きい事をやりたいと考えそれを振り払いました。 そして、神殿に招かれ本名を言ったところ、それじゃあ迫力がないな! 外国人の女性っぽくカタリナにしようとなったんです。 こうしてギャル語発明王土方理奈から語りの女神カタリナに転職した訳です。意外でしょう? 日本人の女子高校生が一夜にして神になってしまったのです。そう、もしかしたら北欧神話に登場する雷神トールも実は日本人の○○とおる君が神になった時にノリでカタカナ表記に変えられただけなのかもしれませんね。 で、元々27だった握力が2700まで上がっていたんです。あー神になるってこういう事なんだーって感じましたね。そして脳内に直接神様がこれからやるplanを送り込んでいただき、早速仕事に取り掛かりました。まずは語りに関する様々なルールを考えました。大変でしたがとても楽しかったです。そして伝えていきました。これから職を探し始める方々に。こういう仕事もあるんだよってね。彼らは意外と早く集まってくれました。共に語り道を切磋琢磨し昇華していく日々でした。 そして、共に作ったカリキュラムを終え、いよいよ語り部として色々な部署へと派遣されていきました。 しかし、派遣先での仕事ぶりを天界から見ていましたら、皆で定めた筈の掟を平気で破り、オリジナリティを主張する【裏切り語り部】が後を絶たず、そう言う者に直々に【おしおき】をしていました。そのおしおきとは、掟破りの裏切り語り部には二度と語って欲しくないと言う気持ちを込め、喉を握り潰すと言う厳しめのおしおきをしていたのです。 そして、ニギリンコした後は、神病院に連れて行き、治療を施すと言う流れで終了致します。 それを受けた方は、のどにある程度の後遺症が残り、二度と語り部に戻る事はありませんでした。そんな事を繰り返している内に、仲間は次々と去り、結局私自身しか語りのスキルを有している者が居なくなり、やむを得ずこのお話の担当語り部として頑張っているところです。 その当時は若く、急ごしらえで作ったルールで荒も多く、更には徹底的に取り締まりを行っていました。ですが、それではいけないと考えるようになりましたので、これからはルールを見直し、緩和していきます。ですので、皆さんの中で語り部を目指してみたい! と言う方は挑戦されてはいかがでしょうか? 心より歓迎いたします。一緒に新しい語りを、一度きりの青春をかけて、開発、実行していきませんか? え? 別にいいですか? 残念です……私、時々思うんです。語りの女神としてちゃんと仕事が出来ているのかなあって? もしかしたら私以外の別の誰かが務めた方がより良い語り部が生まれていて、もっともっと盛り上がっていたんじゃないかなあって……もしもあの時私が断ってて、【神なんか】にならずにコギャルとして生きていたら、その先の私はどうなってたのかなあ……なんて……もしも、もしも昔に……コギャルの頃に戻れるとしたら……ちょっと戻りたい……かなあ? ……スン……ミナポン……ユキユキ……あの頃の様にまた一緒にティラミスの美味しい店巡ったり、オシャレしたり、プリクラ撮ったりシール交換したり……ギャル語たーくさん作って作って作りまくって……で、大好きなダイスケ先輩にアタックしてお付き合いして、結婚して、2人の子供に恵まれて……ずっとずっと幸せに、おばあちゃんになった時に、ホワイトキックって言葉、私が作ったんだよって孫に教えて……幸せに……くすん……あーあ……このお話をする前に絶対に泣かないって誓っていたのに……グスッ……何か……目から水が……出ちゃいます……とまれー! とまれったら!! バカバカ!!! ご、ごめんなさい……ちょっとセンチメンタルになってしまいました。 あ……今の話、ホワイトキックでしたか? だとしたらチョベリバでがっぺんムカつきます。 いいえ。私はもう土方理奈ではなく語りの女神カタリナでした。もう涙は見せません!! 涙なんて人だった時に既に捨てて来たんです! 皆さま! 最後感情的になってしまった事を訂正してお詫び申し上げます。さあ、私の話はこの辺で……ですがこんな昔話を最後までお聞きいただき感謝しています……

 

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そして、彼のお母さんが言っていた事も同時に分かりましたよ? 彼女は、【ま】と言う文字だけを言う事も出来ないし、第三者がそれを言った場合、【ピー】に言い換えて再び発言し直させようと考える女性なんです。そうです! それを言った人を徹底的に取り締まる【ま】警察なのでしょう。面倒くさいですね。 そんな教えを受けてきたきんしま太郎自身ですが、【ま】が入ったセリフをお母さんの前で何度も言ってしまって怒られていました。 故に、まだ取り締まっている本人ですら時々言ってしまう場合があると言う事なのでしょう。要するに半人前の【ま】取り締まり男なのです。何故かは分かりません。ですが、彼は母が言う事を盲目的に信じ続け、【ま】を禁止している太郎だったのです。これがこのお話のタイトル回収ポイントだったと言う事でしょう。皆さんは私よりも先にこの仕組みに気付く事は出来たでしょうか? そしてクマに言い負かされた時の涙の理由も分かりました。彼は熊よりも力は強いけれど頭の良さは熊よりも劣っていた。と、言う事実を突きつけられてしまったから泣いてしまったのでしょうね。 きんしま太郎の歌を歌っていた時もそれを何度か発言しているみたいですね。しかし、お母さんが目を悪くして温泉に行った時にうっかりミスをしてすまないねえと言った時の事を覚えていますか? あの時、禁止と言う言葉を飲み込み許していました。彼はルールを守る為なら何でもすると言う程血も涙も無い訳ではないようですね。 そしてこれは、ここからは私だけが気付いてしまった事実です。それは、彼の名前についてです。 彼は竜の父親にきんしま太郎と言う名前を考えてもらったと推測します。あくまで推測ですが。 私個人的にはこのネーミングセンスに吐き気がしますが、実は意味が込められているのです。 この子には竜の血を引き継ぎ、聖なる力を秘めている。そう、退魔の力を。あらゆる魔を退ける力。それを発揮するには名前に、【魔を封じる】と言った意味を込めた言葉を入れなくてはいけない。名前にはそう言った不思議な力がありますから。だから恐らく漢字でこの名前を表記すると 【禁止魔太郎】 と書く筈です。前掛けの文字が禁だった事実からも間違いないでしょう。彼の名前に、魔を禁止する男の子に育ってほしいと言う意味が込められたのです。きんしま太郎。彼は、太郎の中では群を抜いたスペックを誇っていました。ですがそれは元から魔物と対峙するため。その役目を果たすに相応しい力を持っていなければならなかったと言う事なのでしょう。彼は太郎の中でも最も崇高な目的のあった太郎なのです。だから乙姫様の率いる魚の兵隊ごときに負ける筈がない訳ですね。 そして、竜は単身赴任前にお母さんにこう教えた。彼が【ま】と言う字が入った言葉を使用する度に、 【禁止】 と言って、ピーと言い直させるんだ。そして母親の君も大変だろうが【ま】をピーに言い換えて暮らしてくれ。と、言う事を。 理由は幼い内から躾けられ習慣化する事で、【ま】=【魔】はいけない物なのだと言う事を、禁止しなくてはいけない物なのだと言う事を教えていたのでしょう! お陰で少々ルールに固執する嫌な子供に育ってしまいましたが、その教育のお陰で結果都は平和になりました。そしてその平和が続いていく内に、彼も自然と【ま】の入った言葉も口に出来る日が来るのかもしれません。その時が、本当の意味で平和になった。と言う事なのでしょうね……ああっそういえば私、途中で遮ってしまいましたね……申し訳ございません……では本当に……めでたし、めでたし。

 

「はいおしまい! 長かったわあ」

 

「8888888今回は特別褒める所は無かったけど、考えさせられる内容だったなあ」

 

「何が?」

 

「もし現実にこんなやばい奴がいたら、従わざるを得ないじゃない? そんなの屈辱で、皆も必死に断ろうとしていたけど、結局力づくで言わされていたじゃない? あんな世界、まっぴらごめんよ。現実でなくてよかったなあって思ったわ」

 

「そうね」

 

「でも本当にそういう世界が来た時どうしたらいいか? っていう事を考えさせられる話だった。今の内に危機管理能力を養いたいよね」

 

「うんうん。因みにどうやって回避するの? もう思い付いちゃったりしてる?」

 

「うーんまだ何も……力ではまず勝てないよね。でも逃げ回っていても追いかけてくる。見つからないように隠れるしかない? でも見つかったらどうする? ああ分かんなーい」

 

「でもそんな世界が来ないように私も刑事として頑張るから心配しないでね!」

 

「はいっ!」