magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

ベスト4決定

挿絵(By みてみん)

「まず回答する方は誰でしょうか?」

「はい」

「3番さん!」

『もし鬼に勝てなかったらどうするワン?』 

『そのとキーはおじいさんとおばあさんを鬼に投げつけて戸惑っている間に逃げましょう』

ドッ

「ああ、これって勇ましく鬼ヶ島に進軍しているシーンではなく、犬とサルの作戦会議のシーンだったんですね? ですが……おじいさんとおばあさんは居ないみたいですよ? もしかしてずっと後ろに居るのでしょうか? ですが彼らは投擲とうてきアイテムではないと思うのですが……それに実際は家で待機している筈ですよ? 彼らを連れだしたら鬼退治を達成した桃太郎を誰が迎えてくれるのでしょうか? 偉業を成し遂げた彼を誰一人待ってくれていなかった事を受け、悲しみに暮れた桃太郎は悪の道へと進んでしまう危険性もありますよ? 勝手に物語を改変してはいけないと思うのですが……それに付いて来てくれたとしても、彼らを持ち上げる筋力が桃太郎さんにあるのでしょうか? まだ子供なのですよ? 仮にその力があったとしても、ずっとお世話になった育ての親を鬼に投げる事なんて優しい桃太郎には出来ないと思います。投げつけられた鬼がもし戸惑ったとしてもですよ? それは一瞬でしょう。それに下手したら飛んできた二人をその大きな口で受け止め丸吞みに……ふえぇ……リスクが大きすぎますよぉ。費用対効果は極めて小さく、関節の弱いお年寄り達を投げてしまったら後遺症がエゲツない事になりそうですよ? せめて投げやすい形のキビ団子とか、犬とサルでは駄目だったのでしょうか? ハッつい喋り過ぎてしまいました……すいません……次の方いますか?」

フム、鎌瀬のネタの10倍以上も喋っているな……彼女も文字数稼ぎの一役を買ってくれている様だ。蘇我子、高音、そして新司会。全てが女性と言うのは気になるが、3人寄れば文殊の知恵と言うし、女3人集まればかしましいという諺もある。相乗効果で更に膨大な文字数が稼げる可能性が出て来る。次々増える仲間。そして、繋がる絆。美しい。

「はいっ!」

「6番の彼女!」

『もう少し強い奴おらんのかったのかのう』

ドッ

「お供に対する不満を本人達を目の前に直接言うスタイルですね? でも何かおじいさんみたいな口調ですね? 桃太郎さんらしくないですねえ……あっそうです! 最後が【う】だから、そうするしかないですもんね。ちょっとわざとらしいですねwでも文句を言うのは筋違いですよ? どう考えても彼の責任ですよ? キビ団子を与えたのは他ならぬ彼自身ですからね? いいですよ! 他には?」

やはりこの司会真面目過ぎるな……これはボケなのだ。そこまで重箱の隅を楊枝でほじくる様に突っ込む必要性は無いと思うが……だが文字数はしっかりと……いやしかし……

「はい」

「4番のあなた!」

『もどろう』

ドッ

「思いっきり進軍している様に見えますが? 刀持ってるし? では次です!!」

「はいっ」

「またも4番?」

『もう嫌になってきたよう』

ドッ

「全くそれを感じさせない勇ましい表情ですが、内心悩んでいたんですね。

少年がいきなり鬼退治に行く訳ですからね。気持ちも分かります」

「はい」

「5番の彼!」

『桃太郎って名前、将来トマトの商品名になりそう』

ドドッ

「実際ありますよね、桃太郎ってトマト。私も良く購入しています。そして、桃太郎よりもすごい品種があるんですよ。従来の赤トマトに含まれないシスリコピンを含む橙黄色種。シスリコピンリコピンより体内に吸収されやすいとされ、赤トマトより効率よく機能性成分を摂取出来ます。

従来、黄色トマトは食味が劣ると言われてきましたが、

《桃太郎ゴールド》

は、美味しさも抜群です。

何故ならトマト臭の少ないさっぱりとした味わい。これがトマトが嫌いなお子様にも受け入れられ、多くの消費者に好まれています。では次居ますか?」

「はい!」

「2番の彼女!」

『桃太郎ってダサいよな。ピーチ太郎にしよう』

パチパチ

「確かにそうですけど、英語が入ってる時点で日本昔話じゃなくなりますね。次居ます?」

「はい!」

「8番どうぞ!」

『もう少しレベリングしてから行きましょう』

「たしかにいきなり鬼とは戦えませんよね? そこら辺のスイラムなどをプチプチ潰して強くなってからでもいいんですよね? まだ居ますか?……居ないようですね。

では次のお題! 行ってみましょう!!」

「今度はこの曲をお聴き下さい」

ブルーレット押すだけ♪

かなり昔のCMソングであるな。うーむ。これだけでは伝わりずらいと思うので楽譜も添付しよう。

挿絵(By みてみん)

これであのCMを知らない方でもどんなメロディーか何となく分かってくれたのではないだろうか?

「はい! このメロディーに歌詞を付け、面白い言葉をお願いします」

「あっ! こういうの得意かも」

アリサは歌が好きなのだ。オリジナルの替え歌も幾つか作っている。

「はいっ!」

「3番の彼!」

『部活動を見るだけ』

「見学するだけして、結局帰宅部って感じですね……うーん何か足りない気がします。あっ……あの3番さん? 出来ればリズムに合わせて歌う感じでお願いします」

「え? 僕ぅううう?」

「はい。その僕です。たった今決めたルールです」

「そうなんですかあぁぁあああ?」

「では、他にはいますか?」

「はい!!」

「6番の彼女! リズムに合わせた感じでお願いしますね」

『♪ブルーレッドグリーンイエロー♪』

「成程、戦隊モノで来ましたね……あれ? ピンクが足りませんよ? これでは不完全ですね。まあ無理やりピンクをねじ込んでしまったらリズムがおかしくなってしまいますね。それに通常レッドブル―の順ですよね? なのにブルーレッドとテレコになっていますよ? 絶対におかしいです。それに4人では合体ロボの左手と左足パーツが欠けてしまい、上手く戦えませんよ?……これで五体満足の悪のマシーンと対等には戦えないと思いますが……次居ますか?」

「はい!」

「4番の彼!」

『♪ブレースレット研ぐだけ♪』

ドッ

「研いでどうするんですか? 他には?」

「はい!」

「連続で4番いいですね」

『♪武勇ー伝を言うだけ♪』

ドッ

「ヘレニズメンタルラジオのネタですね。武勇伝武勇伝♪武勇ぶゆぶゆぶゆうってね。

では他にありますか?」

「はい!」

「凄いですね3連続です! 4番どうぞ!!」

『♪スカーレットオハラ家♪』

ドドッ

かなりの盛り上がりだ。

「風と共に去りねの主人公のおうちですね? 他には?」 

「はい!」

「2番の彼女!」

『♪スリーサイズ教えない♪』

パチパチ

「そうですね。公共の場では言えませんね。因みに私のサイズは……あ、興味ないですか? では次居ますか?」

「はい」

「5番の彼!!」

『♪泥鰌甕で取るだけ♪』

「ああ私も見ていましたよ。ドラマのワンシーン。面白い程泥鰌が吸い込まれる様に甕に入って行きましたよね? そのシーンが鮮明に蘇ります……では次居ますか?」

「はいー」

「8番の彼!」

『♪ブルードラゴン島山♪』

ドッ

「おお! 相方さんの名前を! いいですね。他に居ますか?」

「……」

「……」

「……」

「……いらっしゃらないようですね。では、次のお題に行きます」

挿絵(By みてみん)

おじいさんが地蔵の頭にかかった雪を取り除きに笠を掛けようとしているシーンだ。これは昔話のかさじぞうか? かと、うの間が空白になっている事から恐らくそうだろう。

「これも先程と同じで中央が欠けている問題です。さあ! どうぞ!!」

「はい!」

「3番どうぞ」

「笠があるぞい? よし……回収完了」

ドッ

「ああ、あのシーン。おじいさんが笠をかぶせようとしているのではなくて、既にお地蔵さんにかぶせてあった笠をおじいさんが回収し終えた所なんですね? そうですよね……地蔵に笠なんか要りません。だって寒さなんて感じませんから……邪魔なだけです。人間が使った方が効率がいいですよね? 所詮石ころですもんね。では、次は居ます?」

酷い言い草である。

「はい!」

「8番の彼! どうぞ!」

『カジノですっちまったからこの地蔵を売って再挑戦しましょう』

ドッ

「そうですね。こんなに並んでも邪魔なだけですし、幾つか減っても気付きませんよね。他にいますか?」

さっきからこの女……心が無いのか? 言い方があろうに……

「はいっ!」

「6番の彼女!」

『カルシウム食べましょう』

ドッ

「ああ、あの頭にかかっている雪の様な物は実はカルシウムのサプリメントだったという事なのでしょうか? そして、それを頭に乗せているという事は、お地蔵さんは口ではなく頭からカルシウムを吸収するという事なのでしょうか? しかし、お地蔵さんにカルシウムは必要なのでしょうか? では次!」

「はいっ!」

「また6番ですね。どうぞ!」

関東甲信越地方』

ドドッ

「え? あの地方ってこんなに雪が降るんですか? どうしちゃったんですか? 成程! 分かりました! 100年に一度の大寒波に見舞われているんですね?」

「ならば! はい!」

「3番の彼!」

『かかっ、関西地方!!』

パチパチ

「あっ? 6番にかぶせてきた! 他にはいますか?」

「はい!!」

「4番の彼!」

鎌瀬さんよお! ネタを噛んじゃ駄目だぜwそれは芸人として致命的だぜwそれにな? かぶせとしてはちと弱いな! だが、俺のネタのお膳立てとしては完璧だぜえ! もしかしたら俺達、別の世界線ではいいコンビになってたかも知れねえな!! 打合せ無しでここまで完璧に温めてくれるとはな……」

「え? 僕ぅうううぅぅうぅうぅ?」

「そうだ、そこの僕ちゃんだ! ありがとよ! あんたはそこのチビの言っていた通り、サポーターに向いているな。これからもその道で頑張って欲しいw」

「でしょでしょwでも小さいは余計よw」

「な、何だってぇ~? 一体君は何をするんだ?」

「かぶせの……お手本だぜ! 俺はな? 正しいかぶせ方ってやつを、エリートの鎌瀬さんに教えてあげようって言っているのさ。さあ、お客さんが冷えちまう前に……とどめだああああ! はいっ!」

ニイッ

不敵な笑みを浮かべる白川。

「4番! どうぞ!」

「馬鹿な! エリート中のエリートの僕に教える事なんてある筈がない!!」

『カッ……カルホルルニア州』

ドドドッ

会場が沸く。

「ぷ、あははははっ……ハッ!! 今のは発声練習よ? 笑ってないから! 無しノーカンノーカン!」

そしてアリサも思わず笑ってしまった。

「なんと! 6番の選手、4番のネタに笑ってしまいましたああぁああ!!」

「だから違うって言ってるでしょ? もう白川さん! カリフォルニア州でしょwwクッソww噛んじゃ駄目って言ったそばからw」

「それはフリだ。その後しっかりと噛んだ。更にはわざと面白い感じにな! お笑いのお約束だぜ? おめえも笑ったろ? これは相当自信があったぜ? でもよ、わざと噛むって意外とむずいんだぜ?」

「そうだけど……悔しいいいい。私アメリカ人だし、アメリカ系のネタは弱いのよねえw」

アリサは金髪で、そう言われれば信じてしまう方もいるかも知れないが、アメリカが大好きなだけで、実際はアメリカ人ではない。

「まあ、なんだその……ライバルを笑わせる事が出来たってのはちょっと嬉しいぜ。

ちょっとだけだぜ?」

「あら? 私がライバル? 他にプロの芸人が居るのに?」

「その中でもおめえが一番骨があるかなあ?」

「言ってくれるねえ……俺達は駆け出しの芸人以下ってか……まあ今のところ爪痕残せてねえもんな」

そう言い火村は悔しそうにアリサを見る。

「白川さん見る目はあるじゃない。あれ? なんかいい奴に見えてきちゃう……白川さんは敵なんだからね! ……デへへ」

鼻の下を伸ばすアリサ。

「く、くそっ! 寄ってたかってこの僕様を馬鹿にしてえ! エリートの真の力を見せてやる! はいっ!」

僕様とは……

「3番の彼!」

カンザス州!!』

鎌瀬は、はっきりとそう言った。と、言うより言ってしまった。と、言った方が正しいか……

シーン

「え……」

「嘘……」

「ちょっと……」

唖然とする観客。

「おっと……これは……怒りで後先考えずに言っちまったか……」

唖然とする白川。

「え? みんな? 笑おうよ? たった今、エリートが放った面白いネタだよぉおぉおおぉお?」

唖然とする鎌瀬

鎌瀬さん……今のは無いわよ……今の、【だけ】は……無い……」

悲しみの表情……いや、憐れみの表情で鎌瀬を見るアリサ。

「どうしてだああぁぁ? 瞬時にこんな面白い事を思い付いたのにィィィ……ハッ、まさか? マイクが入っていなかったのかなぁああ? なるほどなあ」

ヴォンヴォン

「あっるぅえええええ? 入ってるよぉぉおお? 電源んんんんん?」

しかし、鎌瀬がマイクに触れれば当然手の触れた音は響いてしまう。故障はしてはいない。そう、していなかった……全く……現実とは上手くいかない物だ……実際鎌瀬が喋る直前に故障し、そのネタが客に届いていなければどれだけよかった事か……

「それは白川さんのカルホルルニア州を聞いた後に便乗しただけでしょ? それを、【思い付いた】とは言わないの……」

根っからの便乗厨の定めなのか……何でもホイホイ便乗しちゃうからこんな結果に……

「う……」

「それに、カンザス州って聞いて、ぱっと思い浮かべられる物や建物ってある? カンザス州に住んでいる人達や、そのファンの方々には悪いけど、特筆大書する所なんて一切無いでしょ? カンザス州って言ったらあれだよねって物、鎌瀬さん……一つでも言える?」

アリサよ……酷い言い草だな……

「……無いよ……思い……付かない……僕様は、カンザス州について、何も、知らない……知らない、知らな……」

私様も恥ずかしながらカンザス州の事を何も知らない……そして、それを調べようという興味も湧かない……

カリフォルニア州北アメリカ大陸の西海岸にあり、海岸の風景や、暖かいイメージがあって、皆にも定着しているわ。温かいイメージの地域が、あんな大寒波に見舞われている様に見えるから、そのギャップで面白いって感じるのよ! かぶせるなら、それよりも分かり易くて、面白いワードを言わなきゃ駄目だと思うの……」

「うう……」

「あなたが今やった事って、風景とか何もかもを無視して、白川さんの言った【カリフォルニア州】以外のアメリカの州の中で偶然、かと、うの間に当てはまり言葉になる物を、勢い任せで言っただけなのよ……」

「そんな……で、でも確かに……あの時僕様の頭の中は、人を笑わせようなんて気持ち全く無かった……ただ、白川さんに言われた事にむきになって……」

「あなたは、かと、うの間に言葉を当てはめて言葉を作りましょう! って言う小学校の国語の穴埋め問題をただ解いただけなんだもん。それも答えが薄く点線で書いてある様な優し目の問題集の一つの問題を点線通りなぞっただけ。そんなうわべだけの言葉のパズルを大勢の前で解いたからって、お客さんを笑わせる事なんて出来ない……タイミング的にも最悪よ! 白川さんが笑いを取った直後にそんな事するなんて……私、芸人としてはまだまだだけど、これだけは無いって分かっちゃったもん」

涙目になるアリサ。そう、滑ったのが自分ではないにしても、会場がここまで冷え切ってしまい、否応なく出てきてしまう涙。彼女は今正に本物の芸人なのだ……

「グ……が、がはぁっ!!」

何故か吐血する鎌瀬。余程ショックだったのだろうか? 

「あ……大丈夫? 鎌瀬さん!?」

(あ、言い過ぎたかしら……)

少し後悔するアリサ。

「心配ない……よ」

と言ってはいるが、目の下にクマが出来ている。

ここで天丼とかぶせの違いを語っておこう。

天丼とは、一人目が放ったネタと全く同じ事を言い、笑いを取る事。

比較的簡単な手法だ。ただし、タイミングを間違えればスベってしまう。そのタイミングは、芸人のセンスによるものがあるが、忘れた頃に言うのが最高のタイミングであろう。だが、注意して欲しいのは完全に客が忘れてしまっては意味がない。忘れかけた頃が最高のタイミングだと言えよう。

その微妙な瞬間を見極めるのも、芸人のセンスが関係して来るであろう。

そしてかぶせは、一人目の放ったネタのニュアンスを汲み取り、自分でアレンジして放つ手法で、似て非なる物だ。

今回のお題でアリサが【関東甲信越地方】とボケ、鎌瀬はそれにかぶせ【関西地方】と言った。

しかし、それではかぶせとしては弱い。と、白川の指摘もあったな。正に彼の言う通りなのだ。

だが、もしこれが逆ならば、恐らく笑いは起こった筈だ。何故こんな事になったかは簡単である。

それはアリサの答えより、鎌瀬の答えがグレードダウンしているから。

別にこれは関西地方が関東甲信越地方より下と言っている訳ではなく、ネタとしてのグレード。

考えやすさ、思い付き易さに大きく違いがあるという事である。

いや、鎌瀬は、思い付くと言う行為すらしていないのだ。お分かりだろうか? 説明していこう。

皆さんも想像してみて欲しい。雪国で地蔵に傘を掛けようとしている老人のシーンと、かと、うの間が空いている虫食い問題を見た時に、瞬時に関東甲信越地方と思い付けるだろうか? かと、うの間に

【んとうこうしんえつちほ】

と言う文字を瞬時に埋めたのだ。知識と柔軟性を備えた脳でなくてはこのワードは出てこないのではないだろうか? 皆さんはどんな答えを思い付いただろうか? 私は

『かなりさむそう』

位しか思いつかぬ。私は地蔵に触覚があると想定し、おじいさんがそれを不憫に思い、雪をどかしてくれている情景を思い浮かべ、こういう答えを考え出したが、地方の名前をあのシーンからは絶対に思い浮かべる事は出来なかっただろう。私の頭はそこまでガチガチなのだ……それを想像すると、相当の難易度になると思わないか? その時アリサは、北海道に比べたら雪国になりそうにない地域かつ、かと、うの間を埋めたら地方の名になる条件を満たした物を考えた。そう、関東甲信越地方と言う答えを。その若い脳みそで瞬時にな。その時使われたイメージ力は途方も無いであろう。

これが、【思い付く】と、言う事なのである。そう、元のネタは、昔話のかさじぞうなのだ。

その先入観を取っ払い、この答えに到達出来る人はどれだけ居るのだろう? 相当少ない筈。子供の頃聞かされた不思議なお話。その思い出を全て排除し、いかにすれば笑いが起きるかだけを考え産み出されたネタだ。

ぬ? 流石にアリサを褒め過ぎではないかであるだと? 確かにそうかもしれない。だが私は感じてしまっている。関東甲信越地方こそが、

【か○○○う】

と虫食いされていて、おじいさんが地蔵に笠を掛けようとしている画像のボケの【真の正解】なのではないか? という事を……理由を語ろう。確かにアリサのネタよりも白川のネタの方が多く笑いを取った。だが、その内容はアメリカの州の名を噛んで起こった笑い。そこで考えて欲しいのは、事の発端は何だったか? という事だ。地方名を一番初めにひねり出したのは紛れもなくアリサが切っ掛けである。もしもそれが無かったら流石の白川でも地方名のジャンルでは思い付けなかったであろう。結局鎌瀬の便乗に隠れていただけで、白川もアリサの答えに便乗し笑いを取ったという事実があるのだ。そう言う経緯がありこの考えに至った訳だが、流石に褒め過ぎであったな……自重しよう。

そして、鎌瀬のやった事はどうだろう? 実際に彼がその関西地方と言うワードを1から思い付いたと言えるだろうか? 私はそうは思わない。アリサの答えからアレンジしたのだ。流石に同じ事を言う事は出来なかっただろうから少し変えて……な。

アリサの苦労して産み出したネタを、少々ランクを落としてアレンジしただけだ。それを、思い付く。とは到底言えない。奴は、アリサの感じた産みの苦しみを一切感じる事無く、地域のヒントを彼女から受け取り、それを自分がさも思い付いたかの様に言ってしまった。嚙みながら、な……

その為、これを見た観客は、

関東甲信越地方を聞いた後だったら、私でもそれ位思いつくわ」

となってしまう。故に笑いは生まれなかったのだ。笑いとは、観客の予想を上回る事を見聞きした時に、初めて起こる物。

観客の頭に、次にどんなネタが? 何が来るか? と考えさせてはいけないのだ。

それと同じで、カンザス州は悪手以外の何物でもない。それどころか、厳しい事を語るが【ネタ】ですらない。

これは、関東甲信越地方、関西地方、カルホルルニア州の3段落ちで、見事に白川が爆笑をかっさらった直後に、混乱気味の鎌瀬が引き起こしてしまった大事件、大惨事である。白川の見事なアレンジを、鎌瀬の蛇足で静まり返らせてしまったと言う結果である。

無謀としか言い様がない。【自称エリート】のせいで、会場は水を打った様に静まり返ってしまった。ここはお笑いの会場なのに……葬式会場? 病院の待合室? と言わんばかりの静けさ。

鎌瀬は両親共にお笑い芸人だが、彼自身にはうっかり便乗してしまう癖があるという事を、両親から教えて貰っていなかった様だ。幼少の頃からずっと見ていて気付いていたのだったらはっきりと教えてあげないと、こうやって大勢の前で恥をかいてしまうのだが、敢えてそうしなかったという事なのか? それとも獅子が千尋の谷に我が子を突き落とす様な厳しい育て方なのであろうか? 芸人の子、更には言われずとも自らの意思で芸人となった鎌瀬。だからこそ敢えて教えず自分自身で気付いて欲しいという親心で黙っていたのか? まあ真実は分からぬが、白川に負けじと頑張った結果、最悪の事態になってしまった。彼の気持ちも分からなくは無いが、もう少し考えてから発言するべきだったと感じる。

「何か静まり返っちゃいましたね……では、次の方いますか?」

「……」

「……」

「居ないようですね。では、今までの回答数を集計しています」

「どうでしょうか……? 出ました。4番が6つ 3番が5つに 6番が4つ、8番が3つで5番と2番が2つずつでした。

よって勝ち抜いた方々は、3番と4番と6番と8番です!」

「……おめでとう。同じ女性として勝ってよね」

「勿論だよ!」

「悔しいがおめえら2人は抜き出ていたな……お笑いの泥鰌掬いのやり直しだぜ……来年こそは!」

梓と金賀も負けたとは言え、爽やかに送り出す。

「ヘッ当然だ! 後はたった2回勝ち抜けば賞金とテレビ出演かw人生って楽なもんだぜww」

「その2回がどれだけ遠いと思ってるのよ! 気を抜かない!」

「最後に相方の力を借りちまった。でも勝ちは勝ちだ。今日この日を、じゃない方卒業宣言とするぜ!」

「僕様だって……サラブレット……エリート……くそう……勝ち抜けたのに全然嬉しくない……」

だがお気づきだろうか? 鎌瀬はアリサのポイントより上で、二位で抜けて行った。滑ってしまったあのカンザス州もそのポイントの中に入っているという事だ。笑いの量は間違いなくアリサの方が上だった筈ではあるが、どんなネタでも1とカウントされるルールに救われた結果だったな。

「では、10分間の休憩です」

控室に戻る4人

私の書いている小説です

リンク先はブログより4話ほど進んでいます。先が気になる方はご覧下さい。

https://estar.jp/novels/25771966

 

https://novelup.plus/story/457243997

 

https://ncode.syosetu.com/n1522gt/