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16話 アリサの過去の中の語り部の過去

夏の終わり。日の入りも早くなり

涼しくなって来たとある夕方頃の話である。

ベッドの上で日課の語り練習をしていた時

夢中になっていたせいもあり

いつの間にか左腕の上に乗って歩いている子ゴキブリが

肩の方向を目指し向かっているのを発見したのだ。

成虫がそんな事をしてきたら

ベッドから転げ落ちてしまうが

 

「ああ? なんだ・・まあこいつなら・・」

そう言いつつ、近くにあったティッシュを取り

その子ゴキブリに右手を伸ばす。

その瞬間に、事件は起こったのだ。

 

皆さんもこんな短期間の間に

起こる事件など無いんじゃないか? と思うであろう。

しかし

私の人生を左右する様な事件が起こってしまった・・

 

なんと、逃げ出すと思ったそいつは

両手を私の顔に向け伸ばし

何かをおねだりしている様な仕草をしたのだ。

命を狙われているその瞬間に・・

しかし、その姿を見たのも一瞬。

ブレーキをかける事も出来ずにその子を潰した・・

 

そして

 

「馬鹿な奴め。逃げもせずに止まって

手を上げたりするから潰されるんだ」

 

と思っていた・・しかし・・その後よく考えたら

ある仮説が浮かんできた。それは

まだ生まれたばかりで、自分が

人間から拒絶される存在とも知らない純粋で無垢な子供。

初めて見る私を敵と看做みなせずに私の腕に上ってきたのは

もしかしたら・・もしかしたら!!

 

おにいちゃん、あそぼうよ

 

無欲恬淡むよくてんたんに私におねだりして来た

ただそれだけなのかも知れない・・

 

そんなまさか? と思う方もいるであろうが

どういう訳か私は確信してしまったのだ。

そして、それを知ってしまった私は

 

「なんて事を私はしてしまったのだ

・・馬鹿なのは・・私だ・・」

プルプル・・プルプル・・

そんな子供を躊躇いもなく潰した事を激しく後悔した。

 

そう、手を上げ遊んでほしいというこの子の気持ちを

その短い時間の間で読み取り、

殺意に満ちた右手を止める事が出来たなら

この無邪気な子ゴキブリの命を取らずに済んだのに・・

自分の頭の回転の遅さに悲憤慷慨ひふんこうがい

その子の事を考えて涙したのだ。

そう、人間がゴキブリを潰した後

後悔して泣いてしまったのだ。

 

 男が泣いていいのは親が死んだ時。

と誰かが言っていた。

しかし、生まれた時にも泣いているし

少年時代にも色々あり幾度も涙を流してきた。

 

 そして、その度に私は一皮剥け

一歩ずつ成長してきたと思っている。

その私が、虫に向けて涙する事になるとは

夢にも思わなかった。

こんな事をする人類は私が初かもしれない。

 

ぬ? お兄ちゃんではなく

おじいちゃんの間違いではないかであると?

・・・せめておじちゃんにしてくれないか? 

しかし

思い出話に美化や脚色は切っても切れない物である。

多少の美化脚色は目を瞑ってほしい。ただ

後悔し涙した時。私は

完全に心だけは少年のそれになっていたと思う。

 

 私は、どちらかというと感受性が

普通の語り部よりも高い語り部なのかもしれない。

ありもしない幻想を見ているだけなのかもしれない。

ただ向かってくる右腕に威嚇の意味をこめ

両手を上げただけかもしれない。

それでも・・その瞬間私は感じたのだ。

何せその子には

敵意という物が一切感じられなかったのだから・・

 

 語り部にとって感受性など必要の無い物。

物語の状況を如何に正確に、そして、円滑に進める為に

順序良くしっかりとした道筋を立てて語る。

その為に感情を殺し、論理的思考で語れないといけない。

 

殺人が今正に起ころうとしている現場も感受性が高いと

こうなってしまうかも知れない。

 

「ああああ! ナイフを持った犯人が

女性の首元に勢いよく・・ブオォ!! 

キャー怖いですー血がいっぱーい出てますぅ

誰か語り部代わってーもうやだよー(TmT)

こんな怖いのーあたし帰るー」

 

などと狂乱して語ってしまったら・・

想像するだけで恐ろしい・・

 

 リアクションに目が行ってしまい

物語に集中など出来ない。冷静に

今起こっている事だけを的確に伝える事が

求められる職業。それが語り部なのだ。

 

この感情的な語り部は、ゲームの実況プレイには

適しているかもしれない。皆が知っているゲームを

その感受性の高い語り部が初見でやるとする。

視聴者は既にクリア済である場合が多い。

ストーリーに大きな変化が起こる場面に遭遇し

そこに初見の語り部

オーバーリアクションをしてくれよう物なら

自分が作ったゲームでもないのに

 

「やった! うまいこと引っ掛かった」

 

と視聴者はまるで自分が仕掛けた罠に

まんまと引っかかってくれたと錯覚し、喜んでくれるだろう。

かく言う私もそういった経験があり

その瞬間、ある種の快感を味わう事が出来

その純粋な実況者を好きになった。

この場合、論理的な語り部

冷静にノーリアクションで実況しても

恐らく盛り下がるであろう。

最悪ブラウザバックもありえる。

 

 そう、どちらのタイプにも適材適所があるのだ。

もしかしたら私はここでの語り部失格なのかもしれない。

もしも次回、別の語り部に変わって

ゲーム実況に飛ばされた時の事も考え

今の内にお別れを言っておこう。今まで世話になった。

次の語り部によろしく伝えておいてほしい。

・・だが・・

こんな語り部が一人位いても許してくれないだろうか?

そして時々、そう、2日に一度位でも良い。

こんな

 

『馬鹿たりべ』

 

がいたなと言う事を思い出してほしい・・

 

そして私は、それからと言うもの

子ゴキブリを見つけたらうまい事

空のマッチ箱などに誘導し、それを玄関まで持っていき

外に逃がすと言う面倒な事をする様になってしまった。

 

「もう帰ってくるなよ?」

 

まるで刑期を終えシャバに戻っていく元囚人に

看守が最後に掛ける言葉をいい渡し送り出す。

絶対に戻ってくるなよ? いいか? 

フリじゃないからな?・・と言い送り出す。

 

だが、野に放ったそいつはいずれ成長し

おぞましい成虫になり、行く先々の人に恐怖を与える。

又は帰省本能あり、再び私の所に鶴の恩返しの様に

戻ってくるかもしれない

更に言えば繁殖して倍返しで戻ってくるやも知れない。

 

「そして、あの時私を見逃してくれてありがとう」

と言われても、成虫になって戻って来た時には

躊躇いなく殺虫スプレーを浴びせる事が出来るのだから。

 

私は、人類に迷惑が掛かる事を

現在進行形してしまっているのだ。

 

子供の内に潰しておけばいいのに

と言われても私には出来ない。

だが

 

『それでも私は潰さない』

 

と言うタイトルで一本小説を出し

文壇を震撼させる内容でデビューしてもいいが

今回は気楽な雇われ語り部のままで行こうと思う。

 皆さんは、そんな馬鹿な事を

語っている私を蔑むだろうか?

それとも共感してくれる

マイノリティーはいるのだろうか?

 

今まで何が言いたかったのかというと

私は、小さい時は潰せず

大人になったらあのグロさのゴキブリが

大嫌いという事が言いたかったのだ。

どうせ来週には別部署に飛ばされるであろうから

言いたい事を言わせて頂いた。

しかし・・ほんの少しだけ

長くなってしまった様だな。そろそろ話を戻そう。

 

 しかし、一直線に向かってくるゴキブリを前に

アリサは怯まずに

もう一拳分伸ばせば届く殺虫剤をサッと取り

ターゲットへと向ける。自称正義の味方のアリサが

家の平和を乱す生き物を許す訳もない。

 

「この家は私が守る」

 

心の中でそんな事を言い聞かせていたのだろうか?

一人しかいない。

その逆境が、まだ年場も行かない幼女を女戦士に

否。女勇者へと進化させたのだ!

 

一方ゴキブリも只者ではなかった。

戦国時代。一手一手が必殺の刀が、銃が

人の命を奪っていく時代。そんな時代で今正に

命を落とそうとしている一人の武士の目力、眼力。

本能寺の変で、火を放たれ

最後の戦の覚悟を決める信長。正に背水の陣。

そのゴキブリはその覚悟を見せたのだ!

スプレーには猛毒が入っている。

その事は、彼も本能的に知っている筈!!

だが進路は一切変わらず。

それどころか更に加速する!

 

その鬼気迫る表情を見て

彼の決死の覚悟を感じ取るアリサ。しかし

それでも飛び掛ってくるゴキブリに身じろぎせず

最善の礼節を尽くす。

 

「フッ、あんたとは別の世界線では

お友達になっていたかもしれないわね?

ありがとう。そして・・」

 

キッ(目つきが鋭くなる音)

 

「・・さようなら・・!!」

 

『ありがとう』

 

彼女はこう言った。

これは一体どういう意味なのだろうか?

それは平凡な夏休みに刺激を与えてくれた

ゴキブリへのお礼の意味だったのだろうか? 

それとも、全力で自分に向き合ってくれた覚悟への

お礼なのだろうか? 今となっては誰も分からない。

 

そして・・・発射!! プシュウウウウウウウ。

鋼鉄の缶から吹き出るその煙は

正確に彼の体を包み込んだ・・彼は

初めて受けるその煙に戸惑いつつも

進路を変えず進んでくる。生身での体当たりに対して

科学の力を出し惜しみせずに使うアリサ。

ゴキブリに言わせれば、卑怯だろ! 素手で戦え!! 

と言われそうではある。

だが卑怯と言われようが関係ない。

何故なら、時代は戦国時代ではなく令和。

今はゴキブリにトラウマを持つ者達が

何代にも渡り試行錯誤を繰り返し

必死にそいつらを撃退する為だけに考え抜いた

魔法の薬があるのだ。

そして、これは相手から仕掛けてきた真剣勝負。

その割りには何も用意せず原始的な体当たりという

手段を選択してきた直情径行な彼の方が悪いのだ。

 

「フッ・・終わった! 

やっぱりかがくのちからってすげー」

 

アリサは目を閉じ

唇の端を釣り上げ、勝利の余韻に浸る。

しかし、まだ終わってはいなかったのだ。

ゴキブリは、アリサから飛散される

謎の成分に意識を失いかける。

 

真一文字に結んでいた唇はだらしなく開き

羽ばたいていた羽は止まる

それでも彼の勢いは急には止まらない。

彼が羽ばたいたエネルギーは未だに残り

アリサの顔面を目指していた道筋より少し弱く

それでもまだアリサへと向かう。

 

 その時、アリサは右腕を前に出し

斜め45度でスプレーを構えたまま

勝利の余韻に浸っている。完全に油断しているのだ。

そして、少し開いている

自分のパジャマの胸の右側のポケットに

流石のアリサも気付けなかったのだ。

 

1 ゴキブリの飛行速度の低下。

2 アリサが勝利を確信して目を閉じている事。

3 開いてしまったパジャマの右ポケット。

これらの3要素が全て重なり合い

アリサ史史上最悪のシナリオが始まってしまう。

 

「ヒュポッ♪」

 

軽快な音だ、一体何の音だろうか? 

ファミマコンピューターソフトの 

スーパーマリアシスターズに登場する

ワリボーやナカナカを踏んだ時に響く音に似ている。

しかし、その内容はおぞましい物である。

 

「!?」

 

右胸に、何かの塊が軽く当たる衝撃。

なんと! アリサのパジャマの右ポケットの中に

それは入り込む・・! そして・・!!

 

「じたばた♪ じたばた♪」

 

そして、意識は無くても

奴は最後の力を振り絞り暴れる。

モケットポンスターというゲームに登場する

モケポン達の使うの技の一つに

じたばたという技がある。

体力が低い時に使うと大ダメージを与えられる技なのだ。

そう、今正に瀕死の状態で使用している

ゴキブリのじたばたはアリサの胸ポケットに

最大ダメージを叩き出している!!

 

「何これ? え? ま、まさか??」

 

アリサは、胸のポケットの中で大暴れする者が

ゴキブリであるという事実を知ってしまい・・

 

「☆@〇$㊥Ж?ぎゃああああああ」

 

慌ててパジャマを脱ぎ捨て、上半身裸でトイレに隠れ

ママを呼び何とか助かった訳だ。

 

例え小さな虫でも、相手を見て、自分なら勝てると

本能的に思うと

何時もなら逃げ回っている小さな存在でも

普段行わない様な事をして来る。

そう、アリサは隆之につけられた時

あの出来事を思い出したのだ。

まるでゴキブリに飛び掛られる様な

不快感を巻き○そ型の人間から感じたのだ。

 

因みに、その後パジャマは

ゴキブリが入ったまま庭で火葬された。

アリサは泣き叫んだ。

「オー。マイフェイバリッツパジャメスト!!」

『お気に入りのパジャマが』と言う意味らしい。

 

そして燃え行くパジャマを見て

泣きながらドナドナの替え歌で鎮魂歌を歌うアリサ。

♪メラメラメーラーメーラー ゴキブリのーせーてー 

ひっぐぃ

メラメラメーラーメーラー パジャマが燃ーえーる♪ 

ひっぐぅ

この出来事は、アリサの中で

右ポケットの怪と言う名で語り継がれるのであった。

えっ? 勿体無い? 

何で洗って再利用しないんだ。だと? 貴公正気か?

 

ンーワホンワホンワホンワホ

え? なんだそれはですって? わかりません。

 

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15話 アリサの過去

アリサは気になる所を見て回る。

厨房の天井、床、鍋の裏そして包丁・・・あった・・

包丁の側面に、醜い隆之と鼠のキメラの顔。

これは写真をシールにして貼ってある様だ。

しかし

アリサの部屋のグラスにあったそれとは訳が違う。

色々な食材を切っている内に剥がれない様に

強力なシールを使っている様だ。

 

「あれ? 剥がれない」

アリサが爪で幾ら引っ掻いても剥がれる気配が無い。

あんな男にこんな細やかな配慮が出来るとは

信じられなかった。一体どうすれば・・

この包丁で食材を切るという事は

隠れユッキーが食材に何度も当たってしまう事になる

そんな事があってはならない。

知らぬが仏とは言うけれど知ってしまった以上

この包丁で切られた食材を口に運ぶのは躊躇ってしまう。

何とかして消し去らなくては・・

かつてない使命感に

アリサは脳をフルスピードで回転させる。

キュルルンルン

 

「そうだ!」

すぐに閃く。

 

「ねえお兄さん! この包丁

今一切れそうに無いわ?砥石あるかしら? 

私、生まれつき刃物を研ぐの得意なのよ」

全く切れ味が落ちていない包丁だが嘘を突く。

成程、砥石でシールを磨り潰す魂胆だ。

 

「おお。お嬢ちゃん助かるよ。じゃあこれ砥石ね。

結構高価な物だから割らないでね 

後包丁で怪我だけはすんなよ!」

何故か快諾するコック。

 

「ありがとう大丈夫大丈夫!

♪ゴリゴリ・ゴリラが五里霧中♪

ゴリラの夫婦で五里霧中♪」

パシャリ

撮影した後に、砥石を使いシールの部分を綺麗に落とす。

 

「・・アリサちゃんひどいよ」

 

再びあの声が・・しかし誰にも届いていない。

 

「よーし綺麗になった。はい返すね」

 

「おお小さい割には早いねーお嬢ちゃん!

最近入った新人の代わりにここで働かないかい?」

 

「いえ、まだ小学生なの、労働基準法に引っかかるわ。

後ね? 小さいは余計よ?

その新人さんは小学生よりも使えない人なの?」

 

「いや、そいつ包丁で怪我しちまってね大騒ぎよ

ウインナーに切り込み入れてて

間違えて切っちまうんだもん

同じ肌色だからって笑えないよなー」

 

 そんな話をしている時

悪臭を放ちつつオーナーが厨房に入って来た。

仕事ぶりをチェックにでも来たのであろうか?

皿には、これでもかという程の肉が盛り付けてあった。

 

「おや? お、嬢ちゃ。ん、一。人なの。か?

これで会、うのは3回目になる、と言うのに

私は君の名、前すら知らない。私はさっき

名乗っ、た筈だよね? 教えてくれる、かい?

それと、さっき。から橋、本が居ない。んですよ

どこ、にいるか。知っています。か?」

 

(また来たのか。)

心の中でそう思う。そして何と名前を聞いて来たのだ。

アリサをもっと知りたいと言う事。

何故こんな事を言ってくるのか理解に苦しむアリサ。

あれだけ嫌悪感を抱いているのに

この男には今一通じていない様だ。

まるで遊戯室でマシンガントーク

泣かされて逃げていったあのやり取りを

全て忘れてしまっているかの如く平然としている。

そして、橋本が居なくなった事も話していた

自分のペットの事も管理できないとは・・

これは懲らしめてやらなくてはならない

アリサの脳は急速に回転を始める・・

ギュルルルルンルンルンルンルン

 

----------------------------Second battle start----------------------------

Alisa VS takayuki saitou

 

「花子です」

嘘である。何故そんな事をしたかというと

自分の名をこいつの口から発して欲しくなかったのだ。

本能的にアリサは察している。

こいつは絶対裏に何かあるとどす黒い何かが

・・・すると。

 

「何故。嘘をつ。く? 君はアリ、サだろ? 

レセプシ、ョンで君のお母さ。んが

アリ、サ行くわよっ(裏声)て言ってい、たぞ」

そういう事はしっかり覚えている記憶力の高い隆之。

 

「うわ、あんた私の名前知っていたのかよ。

何て言うか今は、花子って気分だったのよ」

そんな時もあるだろう。

 

「そう。さ、でも遊戯室で直、接紹介された。訳でも

無いのにアリ。サちゃんなんて言っ、たら

気味悪がら、れるだろ?何で知っ、ているんだ。って

だから知って、いたけど敢え。てここで聞い、たんだ

何か。問題でも?」

聞けば聞くほど耳障りな声に

そして内容が全く無くつまらない話に、そして

鼻を塞いでもこじ開けて入ってくる強烈な口臭に

だんだんイライラして来るアリサ。

 

「さっきも言ったけどお前の口臭は

全ての人間に合っていないのよ。もう喋るな

初めて会った時から大嫌いでした。

金輪際私に話しかけないでくれ。

これから会う事も無い人に名乗る必要もないし

私の名を知っているのに

態々私の口から言わせようとするこの感じ

最高に気持ち悪い。死ねばいいのに」

折角シャワーも浴びて綺麗になったと思ったら

またその臭いに汚されてしまうのかという焦燥感。

言葉を選んでいる場合ではない。

一刻も早く追い払いたいという気持ちがそうさせる。

 

「私は死なん。後100、年生きる。

生き、て生きて生き続ける。

し、かし何だこ。の変な、気持ちは?」

 

 

流石に、二回目ともなると泣かずに

耐える事の出来た立派な隆之。

しかし、例のごとく9割は頭に入っておらず

最後に言った言葉のみに反応する

瞬間記憶力の皆無な隆之。

そしてアリサに罵倒された時

再び不思議な感覚が隆之に襲い掛かる。

 

今回のアリサの攻撃は殆ど通じていない様だ。従って

--------------------------------End of battle--------------------------------

Alisa lose 経験値0獲得! 0G獲得!

何一つ獲得できず終了。

 

「憎まれっ子世にはばかる」 

 

この男の為に生まれた言葉なのではないだろうか?

 

「これと話していても何も得るものは無いわね。

場所変えよっと」

もう、これ呼ばわりである。アリサは空腹のため

隆之との戦いから逃げる事にして場所を移す。しかし

隆之は、暫くこそこそとアリサの後ろを付いて来たが

アリサが本気で睨むと消えていった。

 

「さて、折角松茸ご飯食べたかったのに

あの黒くて臭いじじいのせいで・・邪魔だなあれ。

うえーまだあの臭いが残ってる。折角洗ったのに

絶対ここには2度と行かないわ。

あいつは、このホテルの事を思うなら

自室に引っ込んでいた方が良いのよ。

何でああやって表に出て来るんだろう?」

そして、アリサはふと昔の事がよぎってきた。

 

ホワンホワンホワンホワーン。

え? なんだそれはって? わかりません。

 

小4の夏休み、アリサは夜中トイレに起きて

ついでにアイスクリームを取ろうと台所に行った時

ゴキブリと対峙した事がある。

奴は、冷蔵庫の上の方のドアの前をうろついていたが

アリサの存在に気付くとぴたっと止まった。

アリサを敵と看做みなしたのだろう。

 

「くそーあいつが居ると冷蔵庫のアイスが

取れないじゃないどこかにいかないかなあ。あっ」

 

幸いテーブルの上

アリサのすぐ傍に殺虫スプレーがあり

少し手を伸ばせば届く所にあった。

そして金鳥・・っと失礼。緊張の一瞬。

 

トクン トクン 

 

アリサは自分の心臓の音を感じ取る。私は今生きている。

そしてこれからも生きなくてはいけない。拳に力が入る。

そして、奴も生きている。そして明日も生きるつもりだ。

それを証拠にピクリとも動かずに

敵であるアリサから一切目を離さない。

アリサも奴を好敵手と看做し全力で相手する事を決める。

アリサに明日はあるのか?

明日は、亜明日聖也ああす せいや君との楽しい

殺虫剤談義の予定があるのだ。 

 

「私は待っている人が居るの。だからこんな所で

死ぬ訳には・・いかないっっ!聖也君、私を守って・・! 

やあー!」

 

アリサがスプレーに手を伸ばした瞬間・・!

 

「バサバサバサバサバサッ」

 

なんとそのゴキブリ、アリサに真っ直ぐと

飛び掛って来たのだ。

ママが一緒にいる時は、逃げの一手だった者が。

驚くべき事に、捨て身の体当たりを食らわせに来たのだ。

一点の迷いもなく。唇を真一文字まいちもんじに結い

双眸は真っ直ぐとアリサを見つめる。

そのトリガーにはその行動

と紐付けられているかの様に・・

精密なマシーンの如く

本能的に察し、ミリ単位の狂いも無くアリサを目指す。

 

しかし、所詮はゴキブリ。

体当たりだって実際食らってもほぼダメージ0

むしろ下手すれば、当たり所が悪くて

衣服などに足を引っ掛ければ

自分の足を持って行かれたりする危険も孕んでいる。

そう

自分がダメージを受けてもおかしくない行為なのだ。

噛む力もなく、サルモネラ菌などの

病原菌の運搬などはするが猛毒は無い。

武器らしい武器はあの外見だけなのに、あの外見は

大人も泣いて逃げ出すグロテスクさ。

こいつは自分の使い方を良く分かっている。

括弧不抜かっこふばつの自信で

 

「こんなチビはちょっと飛び掛れば逃げちまうぜ!」

 

と確信しているのだ。そして自分より遥かに大きい

人間が悲鳴を上げて逃げ出すのを見て

優越感に浸る。虫の分際で。

 

 しかし、こいつは考え様によっては

色々と役に立つ事もある。

 

「一体どういう事だ?」 

 

「あんなものに使い道なんて無いわ!!」

 

という人もよく聞いて欲しい。

例えば、平々凡々な退屈な毎日を惰性で過ごしている人

そんな人でも奴と遭遇する事で

一気に強烈な刺激を受ける事になる。

ボーっと音楽を聴いている時に

ちょろっと天井に奴が現れたら貴方はどうするだろう? 

もし誰かがいるなら助けを呼びに逃げ出す事も出来る。

しかし、あなた一人しかいなかった場合は?

言うまでも無く一気に戦闘態勢になる筈。

殺虫スプレー、丸めた雑誌などを用意する為に

辺りを見回すであろう。

 

そう、あいつに会った瞬間に貴方は

ゴキブリを討伐しなければいけない定めを背負った

戦士となるのだ。

 

それは、16歳の誕生日に母親にお城へ連れて行かれ

唐突に王様からラバモスを退治してくるのだ。

と50Gと棍棒と布の服を渡され、未成年でありながら

酒場へ行って良いと許可を王様直々に受けた

ちょっぴり羨ましい・・否! 

けしからん勇者よりも理不尽で

それは、韓国の徴兵制よりも強制度合いは強く

抗う事は絶対に出来ない。

何故なら放って置くととんでもない事が起こるという

強迫観念があなたの頭の片隅に必ずある筈なのだ。

 

「やばい、今あいつを逃したら

何倍にもなって帰ってくる。やるしかない・・!!」

 

恐らくこんな考えが浮かんでくると思う。

 

 今から約3億年前から、小型軽量化してしまったが

基本的なグロさは変えずあの形のまま

今も生きている生きた化石。恐らくその当時も

周りの他の生物から嫌われていただろう姿のままで・・

 

 だから、そいつに出会った瞬間。

ピザポテコロングを食べつつアニメを見てる青年だって。

バイト疲れで帰宅し今にも深い眠りに就こうとしている

中年男性だって。そして・・夏の夜に

冷蔵庫のアイスを取りに来ただけの

平凡な11歳の女の子だって、戦士になりえるのだ! 

いや、なるしかないのだ!!

 

 今起きているのは私しか居ない。そして

あいつを今逃がしたら何倍にもなって帰ってくる

という強迫観念から恐怖を凌駕出来るのだ! そう

忘れかけた闘争本能をあいつが呼び覚ましてくれる。

争いからかけ離れた昨今

この体験はかなり貴重な物で

時々刺激しないとだらけた人間になってしまうのだ! 

これは老若男女問わず

研ぎ澄ませなければならない物ではないだろうか? 

平和な日本。それはとても良い事である。

だからといって心がだらけ切ってしまって

いざ戦になってしまった時

臨機応変に対応出来るのであろうか?

 

 因みに、私の母親など、掃除機を構え

飛行中のあれを吸い込み退治する技を習得している。

私には決して真似は出来ない。

 そして、身近に恐怖という物があるという事を

幼い内から知る事が出来る。

そう、危機管理能力を養う事が出来るのだ。

温室育ちのセレブには絶対に分からない。

恐怖をゴキブリを通して知る事で世の中は

優しい世界ではないと早い内から知る事が出来る。

 

 私は、妖怪と言ったら

木木しげるのゴゴゴの鬼次郎位しか頭に浮かばぬのだが

その数多あまたの妖怪達の中でもゴキブリと言う存在は

姿形といい恐怖という一点に於いては

かなりの上位に入る姿をしているのではないだろうか?

どういう事かと言うと

例えば一旦もめんやスリカベ、夜泣きじじい

布団かけババア、電気ねずみ男等の妖怪と比べた所で

ゴキブリの方が圧倒的にその姿は怖いのだ。

 

最近の黒豹娘なんか、妖怪なのに萌え要素を含んでいて

彼女が天井にひょこっと出ようものなら、退治する為に

殺虫剤に手を伸ばすどころか、男性なら

脇の下の汗を制汗スプレーで誤魔化し

鼻の下を伸ばし、袖の下を渡すであろう。

例え、絶世の美メスゴキブリが出てきても

絶対にそんな事はしないであろうに。

 

そう、妖怪ですらあの外見のインパクトを

超える者は少ないのだ。他にも西洋の

ドラキョラやフラソケソシュタイソ等と比べても

やはりトップクラスに入る怖さといえるのだ。

 

そしてそれらの妖怪達より小さいからまだいいもので

あれがそれこそジゴラの様に巨大化してしまったら

正に最強で最凶の生物になりえるのだ。

 

そして、こいつが自分の家に出ると言う事は

自分なりには綺麗にしていると思っていたが

まだまだ足りないと言う事を知る事が出来

あいつ再びを出さないように台所を

特に水周りの衛生面を徹底し、夏場は空調を整え

湿気を少なくする様になる。

 そして、ゴキブリ嫌いの伴侶と一緒の時に

少し関係が悪くなっていたなら

仲良くなるチャンスである。

例えば、ひょっこり出た奴に悲鳴を上げ

助けを求める伴侶の期待に応え

奴を勇敢に撃退出来れば

冷え切っていた2人の関係は

修繕され、更に深まる筈。その瞬間ゴキブリは

ちょっと小さくグロテスクな黒いキューピッドとなる。

 

 この様に、どんな物でも見方を変えれば

何かの役に立つと言う事なのだ。

外見が怖いから嫌いというのは分かるが

視点を変えれば人間にここまで貢献している虫は

他にはいないのではないだろうか?

 

 一般的に蜂は、蜂蜜を作り益虫とされている。

しかし、その反面毒針を持ち

人を攻撃する害虫ともなりえるのだ。

益虫とされている虫でも色々種類があり

同じ蜂でもスズメバチはそれを駆除する業者までいる。

 

 他にも、蜘蛛もゴキブリを退治してくれる。

見掛けは気持ち悪いかもしれないが益虫である。

しかし、当然毒蜘蛛もいる訳で

全ての蜘蛛が益虫ではない。ゴキブリも

益虫でこそないが、人命を脅かす程でもない。

そして厄介な事に、幼虫のゴキブリは

初めて見た時はゴキブリの子供とは思えない程に

小さく可愛らしいという事である。

 

 初めて見た時

親に聞くまでそれは全く別の虫と

勘違いしていた程である。そして

私は、とある事件をきっかけにその子ゴキブリを

潰せなくなってしまったのだ。

長くなるので割愛するが・・

いや・・もしかしたら共感してくれる人も

いると思うのでやはり語ろう。

 

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13話 宴会場3

「そういえばアリサよ、遊戯室で

心に決めた人がいると言っておったが誰の事じゃ?」

 

「うーん頑張ってくれたし教えてあげるね。

修ちゃんだよ」

 

「周ちゃん? 周富沢か? 何じゃ、あの料理人か? 

年もわしと同じ位じゃぞ

ならわしでも良いじゃろ。同じ料理人じゃし」

 

「そうそう帽子を取るとつるっぱげで

とってもチャーミングなの・・って字が違う! 

遠藤周作の周じゃなくて、修験者の修で修ちゃんよ」

 

「わしゃ周富沢しか知らん」

 

「じゃあ、これ以上は秘密ね」

 

「なんじゃつまらん」

 

「ざわざわ。ざわざわ」

 

「おい、なんか変な音しなかったか?」

ビュッフェに来ている客はその爆音に

上を見てみるが既に黒く塗り潰されていた為

死傷者は一人もいなかった。

しかし、世直し行動を一部始終見ていた一人の客が

ロウ・ガイに声をかける。

 

「すいません。おじいさん

天井に食べ物を投げてはいけないんですよ。

あんなに天井や床を汚してしまって。

器物損壊でホテルに訴えられても知りませんよ」

 

「なんと! 日本にはそんな決まりがあるのか? 

でもよく考えてみい。損壊と言うても

何も破壊しておらぬ。なので大丈夫じゃと思うぞい」

 

「ああ。そう言われて見ればそうですね。

変な言い掛かり付けてすいません」

 

「そうよ。それに

あの天井の真の姿を知ってしまったら

天井の汚れはなくなったとしても

床一面に皆の吐瀉物としゃぶつで一杯になるわ

それ程危険な物を私達がこの世から消し去ったのよ」

知っている者のみが分かる天井の隠れユッキーの恐怖。

 

「そんなにも酷い物が・・小さいのにありがとう

それが本当なら恩に着ます」

 

「もう、小さいは余計よ!」

 

 意外とあっさり引き下がる客。しかし

器物損壊罪は、仮に人の所有物を壊してなくても

その品物の機能を損なう行為。

例えば、絵画に汚れを付けて見られなくしてしまい

その物の価値を損なってしまうと

それも器物損壊罪として適応される事例がある。

今回のユッキー黒塗りも、これから別の客が撮影し

割引きになる筈の物が塗り潰されて

機能を損なっていると主張されれば

ロウ・ガイは3年以下の懲役

または30万円以下の罰金に処されてしまうのだ。

しかしアリサなら

こんな凶器を消して罪になり

お金まで払わなくてはいけないと言うのなら

払ってでも消し去ってやると言うに違いない。

 

「全く何が器物じゃ。あんな落書き・・

おお旨そうじゃのう、お礼にこれをくれ。

これでMP回復じゃ」 

アリサが途中まで盛っていた炊き込みご飯の丼を奪い

更に追加でよそった後、食べ始める。

ガツガツ!ガツガツ!!

 

「うーむ、なかなか、いや、しかし」

ロウ・ガイ、弟子たちの作った炊き込みご飯を

自らの舌で分析中。

 

「あ、ちょっと私のだよそれ、まあいいわ。

世界平和の為に頑張ってくれたものね

また別の丼もってくればいいだけだし。

しかし、ロウ・ガイそこで食べるの? 

席で食べなさいよ、お行儀悪い。

そういえばロウ・ガイ弟子がどうのこうのって

5階の廊下で言ってたよね?」

 

「おお! アリサは記憶力が良いのう。そうじゃ

ここの料理人は、全員わしの弟子じゃ。

じゃからわしの料理の教え

ロウガイズムを受け継いでおるか

今正にこの神の舌で見極めておるのじゃ」

 

「髪の下? 見極める? 何か髪の下に隠れている?

まさか頭皮? 分かった! ロウ・ガイはカツラなの?」

聞き間違いではないが解釈を間違ってしまった。

 

「そうじゃ。最近抜け毛が激しくって

もう嫌になってきたから

全部剃り落としてマイカツラをって・・・これ!」

コテコテの乗り突っ込み。

 

「ほんにアリサは惜しいのじゃが違うのじゃ

頭は見ての通りフサフサじゃ。勿論地毛じゃぞ?」

 

「でもつるつるじゃない」

 

「この髪型は辮髪べんぱつと言って

真ん中以外は剃ってはおるが

よく見てくれれば分かるじゃろうが 

剃り跡も禿げていないじゃろ?

そして、付けている毛は付けヒゲだけじゃ。

因みに弟のキチ・ガイは、M字禿げじゃが

それに悲観せず健気に生きておる。

M字禿げの鑑じゃ。アリサもそう思うじゃろ?」

自分の髪を引っ張りながら言う。

 

「M字禿げって、明らかに実年齢より

老いて見える様になるよね。河童みたいな

O字禿げよりも酷いと思う。

O字の方は背が高ければ普通に話している分には

ばれないけどM字は対面だと隠しようがない

どうしてもそっちに目が行っちゃうよね・・

だから禿げ方の中では一番酷い禿げ方だと思うわ」

辛辣な子供の意見。

 

「その言葉、キチ・ガイが聞いたら泣くぞい・・」

弟思いのロウ・ガイ。

 

「そういえばアリサ、この前

スキンヘッドの人見かけたんだけど

よく見たら頭頂部はつるつるで

極細まで退化していたのだけど

その周りにはうっすらとまた芽吹こうとしている

髪の毛達が見えたのよ。

剃り残しちゃったみたいなの。その時思ったわ。

彼は、お洒落でスキンヘッドにしてるんじゃなくて

そうせざるを得なかったんだって。

だってその髪の毛が生えてきたら

落ち武者の様になってしまうもの」

 

「何じゃと? 

要するにキチ・ガイもその者の様に諦めて

つるっぱげにした方が良いと言うのか? 

アリサ、それはいかん。キチ・ガイは信じておるのじゃ 

自分の可能性を・・いつかきっとM字の空白の部分に

自らの髪の毛が生い茂るという奇跡をな

育毛サロンに通いながらな」

 

「ロウ・ガイの弟でしょ? って事は相当な年でしょ? 

もう無理かもね。諦めるように言ったら?

・・でも、M字禿げならAGAの可能性もあるから

薬で治せるかもね」

 

「ん? 何じゃと? 薬じゃと? 

何か危なそうじゃのう」

 

「AGAは男性型脱毛症の事を言うのよ

M字、O字禿げの男性の9割がAGAなの。

男性ホルモンの確か・・

ジヒドロテストステロンのせいで運悪く

M字部分とO字部分の毛が細くなる症状ね。

でもね、何故か後頭部とかには

そのホルモン作用しないらしいの。

凄い嫌がらせよね・・

抜けてはいけない所だけを抜けるように

作用するホルモン。

名前にジヒは付いてるのに慈悲は無いのかしらね?

あら偶然おしゃれな駄洒落が出来たわ

メモランダム、メモランダム」

携帯に何かを打ち込むアリサ。

 

「確かにお洒落じゃろうが禿げとる当人にとっては

一切笑えんシャレじゃろうな・・」

 

「注意してほしいのは、毛根が死んでいる訳じゃなくて

極めて細い毛は生えていて残っているって事ね。

それこそ顕微鏡で見ないと見つからない位細い毛がね。

でも、髪が細すぎるせいで頭皮がむき出しに見えて

禿と言われてしまう。

全員フサフサなのよ?

でも毛の太さでそう見えてしまうの。

 普通髪の毛って、5~6年掛けて太くなってから

抜けて髪が生え変わるの。

そしてまた同じ位の太さの髪が生えてくる。

でも、AGAだと数ヶ月から一年位で成長が止まり

抜けてしまうの。

髪の毛から体毛程度に細くなった状態で

サイクルが起こってしまう。

 この症状に幾ら良いシャンプーを使ったって

育毛サロンに通ったって

頭をイボイボの器具で叩いたりしても

逆立ちして頭の血行を良くしても

マッサージで頭皮をほぐしたって、ワカメとかの海藻類を

沢山食べても効果は無いのよ。

薬で男性ホルモンを抑えると簡単に薄毛は直るわ

風邪ひいた時薬飲むでしょ? あれと同じ感覚でいいの」

 

「ほほうどんな薬じゃ?」

 

「フィナステリドとミノキシジル

フィナステリドは、毎日1ミリグラム飲み

ミノキシジルは薄い所に朝晩2回塗る。

たったこれだけで9割の男性の髪は太くなるわ

フィナスで男性ホルモンの働きを押さえ

ミノキでその隙に細くなった毛を太くする

二つ揃って初めて効果を発揮する訳ね

でも、9割の男性がAGAなのにその治療をせず

マッサージとか効果の無いシャンプーや

髪の毛が生えてくるという光を照射する高額な機械。

フィナステリドが一切入っていない薬を売りつけ

ハゲから半永久的にお金を搾り取ろうとするのが

育毛サロンなのよ。酷い話よね。

知識のないAGAの人達は

ハゲたまま更に金だけ失うという負の連鎖」

 

「ほう、詳しいのう

しかしアリサ、何故そんな事を知っとるのじゃ?」

アリサは呆れた表情で

 

「オヤジが薄くなって来てて、このままじゃ

MとOが繋がってΩ字禿になるよーって

悲しんでいて、ユーチューブで

勉強したらしいのよ。

その戦いの記録をアリサに嬉しそうに語るのよ。

もう耳タコよ耳タコ。

ミノキは、錠剤もあるけど全身の体毛が濃くなるから

塗り薬にした方が良いってしつこいのよ

私は男性ホルモン少ない筈だし、まだ若いのに」

 

「娘思いの良い父親じゃな」

 

「そうかしらねえ? まあ女の人でも

薄毛の悩みがある人もいるみたいだけど

この若さでそんな先の事気にしてたら

それこそ禿げるわ」

 

「そうじゃな、病は気からと言うしのう」

 

「そうそう。薄くなってきても気にせず

堂々としてる方が抜け毛は少ないって

データもあるみたい。オヤジ調べではね。

それと、ある程度は生えて来たら

ミノキは中断しても良いらしいわ

でもフィナスは、一生飲み続けないと

いけないらしいのよね」

 

「ふむ、そうなのか」

 

「そうそう、生きてる限り男は、男性ホルモンを

出し続ける訳だから、飲むのを止めると

折角太くなってきてもまた細くなるらしいわ。

だから60とか過ぎて

ああ、もう年だし禿げても良いやって思った

その瞬間が、フィナスの止め時って事ね。

試合終了のホイッスルを鳴らすのは

自分自身って事になるわ

だから、今フサフサの男の子は

禿よりもすごく得しているって事なのよね。

だからフサフサは、禿の事を見たら笑うんじゃ無くて

号泣して謝らなくちゃいけないと思うの

自分だけこんなにフサフサでごめんなさーいってね」

 

「成程、AGAとやらは直せる事は直せるが

蓋を開けて見ると結構厳しいようじゃのう。

一生薬漬けとはの・・男はつらいの・・

よし、今度キチ・ガイに教えてやるかの・・

薬漬けでふさふさな人生を選ぶか

髪の毛の事は諦めて

頭も心も明るく生きるかどうかの

選択を教えてやるか・・

キチ・ガイはどっちを選ぶのかのう・・

って髪の下の頭皮の話じゃないぞい。

神、GOD、神様の舌。料理人の命の事じゃ」

二度目の乗り突っ込み。

 

「自分の事を神って言っちゃう大人の人って・・」

 

「まあアリサにはわしの血の滲む様な

修行を見ておらんから仕方ないのう。

修行の為とは言え

舌に釘を打ち抜いたりもしたのじゃ。

舌の先、舌の奥、両サイドにも2箇所ずつじゃ。

あれは痛かった痛かったぞおお!!」

 

「人は幾ら血の滲む修行をしても人なのよ・・

それにそんな修行じゃ舌は鍛えられないわ。

時間の無駄よ」

何故か悟っているアリサ。

釘を舌に刺しても味覚が洗練されるとは思わない

だがロウ・ガイは物凄く思い込みが強く

それさえやれば神の舌を習得出来ると

確信したのだ。そして

見事鉄の意志で神の舌を体得できたのだ。

良い子は絶対に真似をしてはいけない。

もう一度言う。良い子は絶対に真似をしてはいけない。

二回も言ったから大丈夫であろう。

生半可な覚悟では怪我を負うだけなのだから。

 

「わかったっ! そうじゃったそうじゃった

うっかりしておった! 人の鍛えに鍛えた舌じゃ! 

これで文句は無いじゃろう。

この、人の鍛えに鍛えた舌で

わが弟子どもの料理を見極めに来たのじゃ。

料理はの、作っただけでは駄目なのじゃ

しっかりと相手が美味しいと言ってくれる所を見て

一つの料理は完成なのじゃよ

それに人によってはレシピ通りに作っても

口に合わぬ事もある。全ての人が同じ味覚なら良いが

そういう訳にも行かぬ。

例えば、関西の人は薄味を好むと言われておる。

だから関西の人と分かったら

少し味付けを少なめで作った物を勧めるなどの

心配りが必要なのじゃ。

初めて来るお客様とは会話をし

どこの出身かを見極めてから料理を作ったりもしておる

その心をしっかり受け継いどるか

わし自らが客となり確かめに来たのじゃよ」

さすが元総合料理長。料理の事になると熱く語るのだ。

 

「人の鍛えに鍛えた舌じじい」

子供は冷徹。

 

「ふぉっ? 成程な、やっぱりそうなるよの。 

明らかに響きおかしいもんの。

アリサの様な子供なら馬鹿にしてしまうよの。

神の舌じじいとは言わぬのに

人の鍛えに鍛えた舌にはつっかかるもんの。

アリサの為にMPを使い頑張ったのに酷いぞい・・

子供は怖いのう。傷ついたわい。

今後アリサを見かけたら話しかけないで

スルーするべきかもしれんの。

ほんに、アリサは嫌な子じゃ! い、や、な子じゃ!!」 

そして、言い終わると同時に頬を伝う涙。

 

「おい、じじい涙拭けよ。それでその自慢の舌で

弟子たちの料理の結果はどうだったの?」

 

「くすん。結果か? 塩味が濃いかの、不合格じゃな」

 

「おい、涙の味も混ざってないか? それ」

鋭いアリサ。

 

「む、そうじゃったか。うっかりしておった

って誰のせいじゃと思っておる!

アリサの為に妙技を使ってやったと言うのに・・・

お主などこうじゃ!」 

アリサの脇の下をくすぐり始める。

 

「きゃあ! や、止めろエロジジイ」

咄嗟とっさに髭を引っ張る。すると、スポッ

髭が取れた。付け髭の様だ。

エクステの様で本来は15センチ程だった。

 

「わー」

アリサは驚き、それを遠くへ投げ捨てる。

ポーイ

ロウ.ガイの変装が解ける。

 

「ぬううっ、いかん!!」

ロウ・ガイは顔を隠そうと手で覆う、だが

時すでに遅し。数人のシェフがテーブルから抜け出し

ロウ・ガイの元へ歩み寄る。

 

「あっ、あなたはまさか総合料理長!? 

ロウ・ガイさんじゃないですか?」

 

「あっ本当だわ! 一体何時から居たんですか? 

お懐かしい。また一緒に働けるのですか?」

周りにいたシェフたちが、ロウ・ガイに声をかける。

 

「これアリサ! お主のせいで変装が解け

弟子共にばれてしまったではないか!」

しかし、付け髭一つでここまで

隠し通せるとは・・只者ではない。

 

「じじいのせいだもん」

もっともな反論であるが、アリサのせいでもある。

 

「し、しょうがない。弟子どもの仕事ぶりを

完全には見れんかったが、今日の所は引き上げじゃあ」

ロウ・ガイは瞑想しつつ、ぶつぶつと何かを唱える。

 

テクマクマヤコンイイチモキ

ハノルシハヲチミイナツトヒシイコデシダハ」

ビキビキッ

すると 足から蒸気の様な物が立ち上がり

両太ももの筋肉が膨れ上がる。

ダダダダダダッ 

その場で激しく足踏みし足の動きを確かめる。

そして、ダダッ

付け髭を拾い、逃げていった。

還暦を過ぎた老人とは思えないスピードだった。

髭は、また日をおいて再利用するのだろう。

 

「あっ待ってください料理長ー」

シェフ達も追いかけるが、到底追いつけないと諦める。

 

「早っ、しかしあの呪文といい

一体何なんだ、あのじいさんは?」

 

ここまでお読みいただきありがとうございます

次週の木曜に次を投稿しますが

こちらに行けばすぐに続きが読めます

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12話 宴会場2

「そうだわ! ブラックカレーを使いましょう。

さっきどこかで見た気がするわ。

後サラララランラップも欲しいわね」

 

「何じゃと? ん? ほう、よく分からんが

持ってくるぞい待っていろ」

アリサの考えは読み取れずじまいであるが走り出す。

2分後ブラックカレーと

サラララランラップを持ってきたロウ・ガイ。

「これ位でいいかの?」

 

「うん! ありがとう、これをこうしてっと」

器用にブラックカレーをラップに包みボール状にする。

 

「ロウ・ガイ、あの顔の真ん中にこれを当てる事は?」

 

「器用な事をするのう。ふーむ、遊戯室で見せたあの技を

もう一度使えば可能じゃが?」

 

「お願いあれに当てて?」

クネクネしながら可能な限り可愛らしくおねだりをする。

女の武器を使ってまで消し去りたいと言う気持ちが

ロウ・ガイにも伝わった。

 

「しょうがないのう。MPミョウギポイントを結構使うし

あの怪物を見ながらの詠唱になるから相当疲れるのじゃが

可愛いアリサの頼みじゃて、やってみるか」

ロウ・ガイも首を縦に振る。

 

「やったあ」

ピョンピョン跳ねて、喜びを表すアリサ。

ロウ・ガイはブヨブヨした

カレー入りのラップボールを

慣れない手付きで持ちながら

遊戯室で唱えたあの呪文を詠唱する。

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ

ぬおおおおお。穢れし天井の悪よ! 消えされぇえぇい」

びゅおおおおおおん

凄まじい音と共に上にボールが飛んでいく。

しかし、すんでの所で重力に従い落下してくる。

ロウ・ガイはそれを割れない様に優しくキャッチする。

 

「くうっ・・届きそうな所まで行ったのじゃが

この玉を割るまでには至らんかった様じゃ・・

かなり柔らかい物じゃから持ちにくくてのう・・」

狙いは完璧だったのだが

ぶよぶよしている物を投げるという行為は初めてで

うまく投げられなかった様だ。

 

「え? じゃあ無理なの?」

本気で悲しそうな顔をするアリサ。

 

「今のままではな・・じゃが・・!!」

ロウ・ガイはラップボールを額に近づけ集中する。

 

「仕方ないのう、筋力を増強させる妙技も

おまけで追加するぞい!

二重詠唱はあまりやった事が無いからの、いけるかの?

否!! やるんじゃ!!! そうじゃな? アリサ」

 

「はいっ!」

 

「お、良い返事じゃ。わしも頑張れそうな声援じゃ!」

 

「ハッ!」

合掌し、気合を入れなおすロウ,ガイ。

辮髪べんぱつが湧き上がる闘気が放つ上昇気流に乗り

上向きになる。

 

マハリクマハリタ

コッビチノキトタイナハノイワコモトッモ」

 

ロウ・ガイの両腕が金色に光り、見る見る腕が太くなる!

そして腕からは浮き出る血管が太くなる。

さらに命中増加の詠唱を続ける!!

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ

行くぞォユッキーィィィィィ!!」

 

ギュオオオオオォ!

 

ラップに包まれたブラックカレーボールは

一直線に、先程と段違いの轟音と共に、怪物へと向かう。

そして、ユッキーの鼻にヒットし、その瞬間ラップが破れ

ブラックカレーを撒き散らした!!

 

 しかし・・何という事だ・・粘着力が足りず

破れてユッキーに当りこそしたのだが

ぽたぽたと床に落ちて来る。殆ど黒く染まっていない。

 

「なんと! これだけでは粘着力が足りんのか・・」

2度目の失敗に落胆したのか

それともMPの使い過ぎで疲れたかは判らないが

がっくり肩を落としながら言う。

 

「じゃあ桃矢の『殿! ごはんですぞ』とか混ぜて

粘着力を増して再挑戦してみましょう」

時間はないのだが、決して妥協せず

最善策を探し出そうとするアリサ。

もう空腹で歩くのも大変な筈だが

食べ物を食べずに

黒く粘性のある物を作る事だけに集中している。

何故ここまでストイックになれるのだろうか?

 

「成程、それと黒ゴマのペーストや

黒砂糖等も粘性は上がるぞい」

 

「黒ゴマのペーストに黒砂糖ね?・・あれ? 

黒砂糖は色は茶色だけれど?」

 

「水に溶かせば黒くなるのじゃ」

 

「そういえばそうよね分かったっ!!」

そう言いつつビュッフェ内を走り出す。

ここには色々な食材がある。

黒い物など幾らでも見つかるのだ。

 

「殿! ごはんですぞは流石に無いと思うから

和食の所に岩のりの佃煮が置いてないか探してみよう」

 

和食の炊き込みご飯の所に居たアリサ。

すぐ側に佃煮を発見

近くにあった丼に入れて次の黒砂糖を探しに走る。

 

「黒砂糖は黒糖黄粉ドリンクっていうのがあるわね。

ゴクリ・・ああ、おいしそう

はっ、駄目駄目。これは飲み物じゃなくって

世直しの材料なんだから!」

・・いや・・普通に美味しい飲み物なのだが・・

強い使命感からか

殺しのパーツにしか見えなくなっている。

そんな物を飲む事は出来ないアリサ。

コップが幾つか並んでいて一番黒っぽい物を選ぶ。

 

「本当だ黒い液になってる。これを混ぜて・・よし!

後は黒ゴマペーストと無くなっちゃった

ブラックカレーをこれに混ぜないと」

 

洋食のコーナーのシェフに

黒ゴマペーストの場所を聞いてみる

 

「え? そのままは置いていないなあ。

黒ゴマペーストは大体プリンとか

パンに練りこんで使う物だからね」

 

「そうなのね・・せっかくの粘着力が・・」

落胆するアリサ。

 

「粘着力? そうか

夏だし、スタミナがつく物が欲しいんですね?

粘着力が必要なら納豆とかならあるけど?」

 

「うーん、色が黒くて粘着力があるものがいいの

出来れば細かくなっているものがいいわ。

それと、包むラップも欲しいわ」

 

「じゃあ、めかぶを細かくミキサーで砕いてあげる。

これなら黒くて粘着力はあるよ

しかし色々なリクエストが来るなあ。

まあ食べ方は人それぞれだからね」

 

「ありがとう」

ラップを受け取り、次に丼を差し出し

めかぶをミキサーした物を入れる。

 

「よーし後はブラックカレーね」

 

洋食のコーナーに大きな寸胴に

ブラックカレーがあった。それを丼に入れる。

ぐーきゅるるる。

 

「お、お腹も減ってきたわね。

よし、早く戻って混ぜましょう」

ロウ・ガイの待つ和食コーナーに戻る。

 

「役者は揃ったわ。

今度こそ見ていろよあの妖怪め!」

戻ると少し顔色が悪くなっているロウ・ガイが

水を飲みMPを回復していた。

 

「戻ったよ」

 

「うむ」

丼のブラックカレーを混ぜ合わす

 

「あ、こねている内に少し粘りが多すぎて

固まってしまいそうね」

 

「そうじゃな、ではここにある黒ウーロン茶を入れて

少し緩和させるか?」

ウーロン茶を注いだ。すると色が薄くなってしまう。

 

「うーん、もう少し黒くしないとあいつは消せないわ」

 

「そうじゃな、ではイカ墨などどうじゃ? 

ある程度の粘り気も取れるし色も付く」

 

彼らは、年は50以上離れているが、一つの目的に向かい

まるで理科室で実験をしている小学生の様な

キラキラした目でトライ&エラーを繰り返し

少しずつだが、確実に最適解に近づいてゆく。

 

「成程ね。よーし、行ってくるわ」

疲れているであろうロウ・ガイを気遣い

率先して動くアリサ。

 

「すいませーん イカ墨スパゲティの

イカ墨だけ欲しいんだけどいいですか?」

 

「え? 別に構わないけど味付け前でいいの?」

 

「いいよ」

 

「はいどうぞ」

パスタのコーナーにいたシェフは

少し不思議そうな顔をしながらイカ墨を皿に入れる。

 

「ありがとうこれで夢は叶うわ」

深くお辞儀をし、溢さない様に慎重に歩いて戻る。

 

「?」

シェフもイカ墨にここまで喜ぶ幼女を見るのは

初めての様で戸惑っている。

 

「戻ったわ。これを混ぜれば完成ね」

皿を傾け丼に混ぜる。

暫く掻き混ぜ・・ついに・・!

ドロドロドロ・・

 

「うっぷ・・これか?」

ロウ・ガイはアリサの持つ黒くドロドロとした物が

入った丼を見て言う。

もはや料理として食べる物で無くなっているが

目的を果たすには十分の黒さ、そして粘着性。

これこそがアリサたちの研究成果。

 皆さんは、食べ物をこんな風に

粗末にしている彼女たちを見て

いけない事じゃないか? とお思いであろう

だが、上を見てその衝撃に耐えられる人間は

アリサ以外にはいないのである。

今はまだビュッフェの食べ物に

集中しているであろう客達も、お腹一杯になった時。

 

「ふぅ食った食った」

 

と鼓腹撃壌の内に言った後、仰向けになり

椅子の背もたれに寄り掛かった時にふと

天井に目が行ってしまうであろう。

その時あれを見てしまえば

当然命の保障はないのである。

その人は満腹で最高の瞬間に終焉を迎える事が出来

まだ幸せであろうが

その異変に気づき、つられて上を見てしまい

まだ満腹にもなっていない人も

連鎖的に命を落とす事になる。

今も、客たちの腹に次々と料理が入っていく。

その時を迎えるまでにあまり猶予は残されていないのだ。

急ぐのだアリサ! 

この物言わぬ黒い救世主も最高の状態で

奴の凶行を止める準備は出来ている筈なのだから!

 

「ああ、いけるか?」

 

「フッw誰に言っている? 元総合料理長じゃぞ?」 

 

「フッwそうであったな」

かっこいい二人。

もうそこにはこれ以上の言葉は要らない。

手際よくブラックカラーボールを完成させるアリサ。

それが終わる頃には、ロウ・ガイは既に

筋力増加の詠唱は済ませてある。

息ぴったりの二人。

そして・・・!

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ」

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ」

 

アリサも加わっての同時詠唱・・! 

これにはロウ・ガイも

 

「フッ、アリサめ! やりおるやりおる!! 

しかし・・ここからはわしのオリジナルじゃ。

わしは鼻を狙う。が、今のままでは

飛散した後にどこに飛ぶかは分からぬ。じゃが

今から使う妙技で飛散した先を固定出来るのじゃ! 

念の為に聞く。どこがいいのじゃ?」

なんという素晴らしいスキルであろう。

この老人只者ではない!

 

「え? それは・・鼻でしょ? 

だったら当然、目と口かしら?」

 

「そう言うじゃろうと思っておったぞ。

イエッサー!

エロイムエッサイムイタミンモエラドハタカイイノ

ーザーレグンミーホノコリノノータスバンガノボロパス

 もう失敗は無い・・! さらばだユッキー。

虚空の狭間へと消えろォ!

はぁああああああああああああああああ!! 

ダアァッ!!!!!」

 

ぎゅるぉぉぉぉぉぉおおおおおおん!

 

金色に輝き、増大した右腕に

極太の血管が脈打っている!!

ロウ・ガイの手を離れたそれは

余りの勢いに分身している様に見える。

しかし、目標に近づくにつれ

目標への最短距離を描き・・・

 

ぱぁあああああん!

 

見事顔面の中央の鼻に命中! そして

耳をもつんざく程の炸裂音と共にラップが破れ

黒い液体がそいつに向かって飛散する。

その黒い液体は中心の鼻を黒く染めた後

綺麗な逆三角形に飛ぶ。

そして、ロウ・ガイの宣言通り

目と口に向かって飛散していた!!!

そいつの輪郭や耳こそ残ってしまったが

目、鼻、口を消す事に成功したのだッ!!!

 

「・・ひどいよ・・ぼくらはそんなことのために

うまれたわけじゃないのに・・」

 

どこからとも無く誰かの悲しみの叫び声が・・

しかし、誰も聞き取れなかった。

 

「やったぁ! ありがとうロウ・ガイ」

拍手するアリサ。そして

彼女が見せるこれ以上にない最高の笑顔。

ヘトヘトである筈のロウ・ガイも

それを見ると和らいでくる。

 

「ふうー 疲れたぞいッ!!」

パン

二人でハイタッチ。

言葉とは裏腹に、全く疲れていない様子で言う。

この時、一人ではどうしようもない戦いも

力を合わせる事で

必ず上手く行くという事を知るアリサ。

 

「ふぅ・・3重詠唱は長年生きて来たが初めてじゃ

危うく意識が飛ぶ所だったわい。人間初めての事も

意外とすんなり出来てしまう物なのじゃな。

これが限界突破かの? 

新たな自分を見つけられた気分じゃぞい。

LVアップじゃあ! なんてのww

因みにの、わしは呪文を唱えぬと発動できぬが

妙技団のプロは違うのじゃ。

唱える事なく頭の中で瞬時に詠唱し

すぐに効果を発揮できるのじゃ。

料理人がメインじゃしのわしはこれが限界じゃぞ

しかし、礼には及ばん。

わしもあんな物に見下ろされたくないからの

これですっきりしたぞい」

 

「うん、じじいなのにすごいかっこよかった!」

 

「ほほほ相変わらず口が悪いのう。

しかし、そこが可愛いのじゃ。でも、驚いたぞアリサ。

あの呪文をわしと同じタイミングで詠唱するとはのう。

ビックリして変装が解ける所だったわい」

 

「何回も聞いているもの。もう言えるわよ。でも

イダョシの部分がまだちょっとむずいけどね」

 

「フォフォフォ惚れ直したじゃろう?」

まるで実の孫と話している様に

嬉しそうに笑うロウ・ガイ。

今までのアリサは、自分の力だけで

全てを片付けようとしていた。しかし、今回の件で

それだけでは駄目なんだ。協力して消してもいいんだ。

呼びかければ答えてくれる勇士はいる!

一人で背負う事なんか無いんだと思い知る。

共に一つ目標に向かった二人の絆は深まった。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます

次週の木曜に次を投稿しますが

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小説のタイトルについて

この小説のタイトル、私の行く先々で事件が起こる件について

と言うタイトルにしましたがその前に決めていたタイトルがあります

 

それは

なぞなぞを15年作っている人間がミステリー小説を書いた結果こうなった

です

どちらかと言うと、後者の方が読み手の気を引くタイトルだと思うのですが

どうでしょうか? 自分は客観的に見ても

2つのタイトルが本屋で並んで売っていたら

後者の題名の本を手にとって見ると思います

皆さんもそうじゃないですか?

ですが、あえて前者を選択しました。

 

このタイトルわたモテ

(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)

というガンガンで連載されている漫画のタイトルを参考にしました

パクリ気味だし後者のほうが

インパクトを与えられるじゃないかとお思いかもしれません

では何故こっちを選択したかと言うと

 

先日投稿した小説の中で主人公が

このタイトル自体を台詞で言うシーンを書いたと思います

そう、主人公が自然にタイトルを言えるようなワードにしたんです

2つを比べてどちらが台詞に組み込みやすいかと言う観点から考えると

圧倒的に前者ですよね

この先も何回かどさくさにまぎれて主人公がタイトルを

言うシーンを書いています。

事件が起こった時さりげなく言ったり

主人公がまだ用事を終わらせていないけれど

時間がなくて母親が無理やり主人公を脇に抱えて

連れて行こうとするその最中

どさくさにまぎれて

「あーもう、私の行く先々で事件が起こる件についてー」

と連れて行かれている途中でジタバタしながらタイトルを言い

それを母親が

 

「こら! どさくさにまぎれてタイトル回収しちゃ駄目でしょ」

と怒られるやりとり。 

これ、結構面白くないですか?

これが

なぞなぞを15年作っている人間がミステリー小説を書いた結果こうなった

に変換し先程のシチュエーションで言わせても

あまり面白くないどころか強引過ぎるからつまらない

と思いますよね?

なのでこれからもこのタイトルで行こうと思います。

 

 

私の書いている小説です

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11話 宴会場

54階宴会場は、40階の植物園と同様

54階の全てを一つの広間としている為相当広い。

和、洋、中と一通り料理は揃っていた。

寿司、刺身、丼物、天ぷら、トンカツ

カニの入った味噌汁、茶碗蒸し

松茸入りの具沢山の炊き込みご飯

餃子、焼売、春巻き、フカヒレスープ

北京ダック、ホイコーロー

マーボーナス、棒棒鶏青椒肉絲

ステーキ(牛、豚、羊、山羊)ザウアークラウト

アクアパッツァ、フランスパン、チーズフォンドュ

アイスバイン、ブラックカレー、ビーフストロガノフ

 更には、世界三大珍味も揃っている。

和洋折衷色々な香りが混ざり合う異様な空間。

 

天井にはシャンデリアが7灯あり、一つの大きな物が中央に

それを等間隔で6灯の小さいシャンデリアが囲んでいる。

 

このホテルのビュッフェは 

シッティングビュッフェという形式で

会場の中央に食事する席が並べてあり

それを取り囲む様に3層に長方形の料理を乗せる

テーブルがコの字型に並べられていて 

内側が和食、一つ外側が中華、一番外側が洋食である。

客は、好きな料理を自由に選ぶ事が出来る。

しかし、いつまでもと言う訳ではなく

2時間という制限時間が設けられている。

 

それぞれのテーブルには、シェフがおり

少なくなった料理は

会場にある調理場から補充してくれる。

皿が一杯になるまで盛り付け終わったら 

真ん中の席で食べるという感じである。

 

「うわーいい匂い、どっれからたっべよっかなー♪」

鼻をひくひくさせて会場内を見回すアリサ。

 

「アリサ、こういう所は初めてだと思うから

忠告しておくわ。ここではお皿を持って移動するのよ。

しっかり持っていきなさい。わかったわね? 

後、アリサはご飯が大好きでしょ?」

 

「はいっ!それとたこ焼きも好きですっ!」

 

「今は、ご飯とたこ焼き好きのアリサを

心の牢獄に閉じ込めなさい」

 

「何で? ママ何で?? 後、心の牢獄って何?

そんなのウィキペディアでも見たこと無いよ??」

 

「それは秘密よ。後ね、何を食べても料金は同じなの。 

だから、お米とかたこ焼きは

すぐお腹一杯になっちゃうわ。お持ち帰りは出来ないし

冬眠する前の熊の如く出来るだけ多く、そして

高価な物を選び抜き食べるのよ、いいわね?」

 

「へえー でもね、あの松谷修造もお米食べなさい!!! 

って言ってるよ? エネルギーの源だよ

カーボンハイドレートゥ」

 

「・・・今はその人も心の牢獄に閉じ込めなさいっ!」

 

「はいっ!」

(また言った、これで2度目だ

オヤジにも言われた事ないのに・・!)

 

「しっかしアリサは返事が綺麗よねー。

じゃあ行って来なさい」

ダダダダッ!

 

アリサを見送ると、彼女を連れた八郎が声をかけてきた。

 

「こんばんわ先輩! あれ? アリサちゃんは?」

 

「八郎君こんばんは、彼女さんも初めましてこんばんは

アリサなら今走り出していったわ。」 

お腹もすいてるみたいだし」

 

「・・は 初めまして」

彼女も俯いたままおどおどと挨拶してきた。

 

「すいません彼女、人見知りが激しくて」

 

「いいのよ、でも可愛い彼女じゃない。

八郎君には勿体無いわ」

 

「いや先輩全くその通りです、そうだ先輩 

彼女との出会いの話聞きます? 

これがめちゃくちゃ泣ける話なんすよ

アリサちゃんには話したんですけど号泣していました」

軽い嘘を突く八郎。

 

(このこ うざいわね) 心の中で思いつつ笑顔で

「いえ、遠慮しておくわ。

私も重い荷物を持って歩いてて腹ペコなのよ

のろけ話でお腹いっぱいにしたくないわ」

 

「へ? そうですか・・オイラ本気で悔しいです。

15時間は語れたのになあ」

(15時間て・・あぶないわね。うっかり聞いていたら

ビュッフェの時間終わってまうわ、後オイラて・・

こんな子だったかしら?)

心の中で思い、八郎達と別れる。 

 

一方その頃、アリサは全力で走っていた。

少しでもカロリーを消費する為に。

そして、アリサは走りながら辺りを見回し分析した。

少しでもカロリーが少なく美味しく高価な物を・・

そして、アリサなりの結論が出た。

辿り着いたのは和食のコーナー。

松茸の・・・炊き込みご飯だった・・・

アリサは、松谷修造の

 

「お米食べなさーい」

 

と言う言葉を毎晩動画を見ていて

常に聴いてきている。

そう、潜在意識にまで刷り込まれていて

結局無意識にお米を選択してしまうのだ。

アリサは返事はいいのだが

興味がない話は半分も聞いていない。

 

「これならママも納得するわね」 

と得意満面で丼に山盛りに盛っている。

 

「おお、アリサじゃの。又会ったのう」

炊き込みご飯を盛っている途中のアリサに

ロウ・ガイが声を掛けて来た。

 

「あっ、ロウ・ガイだ。何しに来たんだ?」

 

「何じゃと? ・・アリサ、相談なのじゃが

出来ればフルネームで呼ばないで欲しいのじゃが

ガイさんなんてのはどうじゃ? 

どうも老害呼ばわりされている気がして嫌じゃのう」

 

「やだよ。ロウ・ガイだって弟さんの事

キチ・ガイってフルネームで呼んでいるでしょ?

実はキチガイ言いたいだけでしょ?」

 

「そ、そんな事はないぞい」

(相変わらず鋭い子じゃのう・・)

 

「あ、ちょっと動揺してるじゃない。

私もやはり言い慣れたロウ・ガイが一番呼びやすいわ

しかしロウ・ガイは

もう飯を食う年でもないだろうに。

まだこんな所にくるんだな」

かなり空腹の時に食事の邪魔をされたので

口が悪いアリサ。

 

「ぬう? アリサよ、わしが仙人で

霞以外食べないとでも言いたいのかの?

まだその域には到達できんわ。後200年位はかかるかのう」

 

「ロウ・ガイは後200年も生きるつもりなの? 

それで、そこまで生きれば仙人になれると思っているの?

どこ情報よそれ? まあ何となくだけど

ロウ・ガイなら行けそうな気もするわ

せいぜい頑張る事ね。あ、わああああああああああ」

アリサが何気なく天井を見て悲鳴を上げる。

 

「何じゃ? アリサ、どうしたのじゃ?」

 

「う、上に化けもん」

アリサは、涙目になりながら上を指す。

 

「はて?」

ロウ・ガイが天井を見上げると

もはや隠れユッキーとは言えそうに無い程

なんとまあでっけえユッキーが

下界の民を見守る神様の様な優しい笑顔で

見下ろして下さっている。

大きさは、4平方メートルはある。

天井を見上げればすぐ分かる程の圧倒的な存在感。

これでは

 

『頼むから見つけてくれユッキー』

 

と改名すべきである程のでかさだ。

都会のイーグルスノーホテルのみに存在し

見つけた者の精神を攻撃する悪魔との5回目の遭遇。

一回目とは比べ物にならない大きさで圧倒する。

幾ら優しい笑顔といえど

アリサは既にその薄っぺらい内面を知っている。

そんな彼女に言わせれば

その笑顔も気持ち悪いの一言である。

このユッキーはプラネタリウムのユッキーと同じ

上にいて、一方的に攻撃してくるタイプの強敵である。

 

例えば、好きだった人気お笑い芸人の親が

息子が相当稼いでいるのに

生活保護を受けていたというニュースを見た直後

そのお笑い芸人のネタの全てが

嫌いになるというケースもある。

 私は高校の時、お笑い番組の漫才の部分だけを録画し

何度も見ていた時期がある。

当然、そのお笑い芸人のネタも幾つも録画していたが

そのニュースを見たとたん一切笑えなくなり

その芸人の出ている部分だけ

別の芸人のネタで上書きした程だ。

当然何度見ても面白かったネタだったのだが

そのニュースを見たとたん急にである。

そう。イメージが如何に大切かと言う事が分かる。

どんなに才能を持っていようが

面白いネタであろうが関係ない

一度でもそういう事を耳にしてしまうと

急に冷めてしまうのだ。特にテレビに出ている人

全般に言える事ではないだろうか?

 

そして、アリサはかつて無い強敵との対峙に

戦慄が走る。

「ぬおっ? 何じゃあれは? 確かに強烈じゃのう

ぐうう何か気分が悪くなってきおったぞい」

口から一筋の血を流すロウ・ガイ

 

「あれは隠れユッキーよ! 私は少し耐性があるけど

一般の人はきついわよ。あんまり直視したら駄目よ

私は平気だけどロウ・ガイは早く休んだ方がいいわ」

ロウ・ガイもかなりの鍛錬を積んでいる筈なのだが

隠れユッキーに対する耐性は、アリサ程ないようだ。

 

「うむ、あんな物が

このホテルの至る所にあると言うのか。恐ろしいのう」

 

「一応撮影してと、あ! そうか分かったぞ。

ユッキーって言うのは隆之の之から取ってたのか。

タカユッキーじゃ語呂が悪いもんね」

何の意味の無い知識が増えてしまった。

 

「あんな物可愛く言っても人害を与えるぞい。くっ」

 

「はあ、全く、それにしても

私の行く先々で事件が起こる件について

一体どうなっているのかしら?」

 

「ん? なんじゃ? いきなり事件とな? 

成程、この上の化け物の事じゃな?

しかし、件についてとは変わった言い回しじゃのう

お主22ちゃんネラーか」

 

「違うよ、そういうタイトル・・あっいけねっ。

漫画の全由一とか、命探偵ユナソとかも同じ悩みを

抱えているのかなあって思っちゃって。

あの人達も行く先々で事件に遭って大変でしょ?」

 

「でもな、あやつらは事件が起こらねば

誰にも読んで貰えぬのじゃ

口には出さぬじゃろうが事件よ早く来い

と思っていそうじゃな。

そして、自分が引き寄せとる事も十分承知の上なのじゃ

じゃからいつも同じ場所で事件が起こっては

読者を飽きさせてしまうから

色々な所に行っている気がするぞい」

 

「そうなの? でも言われてみればそうね。

やるわねロウ・ガイ」

 

「奴らは事件が起こる事が当たり前になっておる。

アリサの様に疑問を感じない方がおかしいぞい。

アリサはやはり賢い子じゃな」

 

「でへへ」

アリサ・・・こんな所でタイトル回収するとは流石だ。

そう。事件とは人が死んだりする事だけではないのだ。

こういう化け物を見る事自体もこの少女にとっては

一つの事件であり何一つおかしい事ではないのである。

 

 それにしてもあんな化け物を見た後だというのに

しっかりと撮影している抜け目の無いアリサ。

何度もこういう場面に遭遇している内に

反射的に怖い物を見たら撮影!

というスイッチが脳内で形成されたのかもしれない

常人ならその恐怖から撮影なんて到底出来ないであろう。

だが母親の為に少しでも割引の助けになればと協力する

健気な少女である。

このホテルの欠点と言っても過言ではない

隠れユッキーを自分の携帯の中に

データとは言え残す作業。苦痛であるに違いない。

 

「うーん。しかし、これはどうすればいいんだ?」

 

アリサは撮影してからすぐ

その巨大な化け物を塗り潰す方法を考え始めた。

何事も決して諦めてはいけない。それは

アリサの尊敬する松谷修造から教えて貰った金科玉条きんかぎょくじょう

天井までは9メートル以上はある。

テーブルの上に脚立を乗せて背伸びしても届かないし

大人5人位に縦に肩車して貰わなければ届きそうに無い。

そんな高い所での世直し行動は、高所恐怖症のアリサに

出来るかは分からない。

それならアリサが大人達に指示を出し

やって貰えばよいのでは? と

考える方もいるであろうが

一番重要な消去は、自分でやらなくては気が済まない

そういう責任感が強い女の子なのだ。

それに、耐性が無い大人が頑張っても結局

消している途中で気絶してしまうだけであろうし・・

 

 色々低回を繰り返すが、結局結論は出ず

途方に暮れるアリサ。

 

「アリサよ一体あれをどうしたいのじゃ?」

ロウ・ガイも漠然とは分かっているが

念の為にアリサに問う。

 

「・・りたい・・」

ぶつぶつと独り言の様に呟くアリサ。

 

「ん? 何じゃって?」

 

「完全に、黒く染めて、消し去りたい」

 

     Щ ゴウッ Щ 

 

燃え盛る正義の心。

 

「ほほう。物凄い熱量が今お主の体から

放たれた気がするのう。

うむ、かなりの使い手になりそうじゃな

確かにアリサの気持ちは分かる。

わしも体で感じた。あれは危険じゃ

しかしのう、あんな所までは筆は届かんぞい」

 

「はっ!」

ピカーン

アリサは頭上に電球の様な物を出し、何かを閃く。

一体何を閃いたと言うのだ?

 

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小説内の踊りについて

昨日投稿した小説の中で

主人公がビュッフェのことをぶっへといってエレベーター内で

踊るシーンを書きました。

実はこれ実体験と、ある芸人のネタを混ぜたもので

オリジナルではないんです。

うちの会社では会社のみんなと一年に一度4月の初めに

東京の大きいホテルの宴会場で開かれている

ビュッフェに連れて行ってもらいます。

そのとき社長のお孫さんもご一緒されていたんですが

4歳くらいで舌足らずでビュッフェのことをぶっへと言って踊り狂っていたんですね

その様がかなり面白くて印象的でした

それにペナルティのワッキーのネタに

乳首がずれてるポリスメンというネタがあってそれと混ぜ

主人公にやらせました

 

そのネタは初めは一人で踊っているんですが

それを注意した人がどんどん釣られて踊っていき

最終的には全員が壇上で隊列を組み踊っていると言うネタで

自分の中でもお気に入りです

その二つを融合させただけですね。それでも

見る人にとっては全く新しい物を見た感じになると思います

正直あのネタをイメージだけで作り上げることは不可能です

かなり前に書いた

 

魔技者流 なぞなぞの作り方 中級2 - magisyaのブログ

 

ここにも書いてある

イデアとは

既存のものと何かを組み合わせたものと書いてあります

そうなんです、実体験が多ければ、そして使えそうなものなら

それも利用してもいいと思うんです

お孫さんが何かに取り憑かれるように踊ったのは

まさかとは思いますが自分にこのネタを提供するための

神様が下さった偶然のような必然だったのかもしれません。

 

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私が書いている小説です。

ブログより10話分位先まで投稿してあります。

 

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