magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

15話 アリサの過去

アリサは気になる所を見て回る。

厨房の天井、床、鍋の裏そして包丁・・・あった・・

包丁の側面に、醜い隆之と鼠のキメラの顔。

これは写真をシールにして貼ってある様だ。

しかし

アリサの部屋のグラスにあったそれとは訳が違う。

色々な食材を切っている内に剥がれない様に

強力なシールを使っている様だ。

 

「あれ? 剥がれない」

アリサが爪で幾ら引っ掻いても剥がれる気配が無い。

あんな男にこんな細やかな配慮が出来るとは

信じられなかった。一体どうすれば・・

この包丁で食材を切るという事は

隠れユッキーが食材に何度も当たってしまう事になる

そんな事があってはならない。

知らぬが仏とは言うけれど知ってしまった以上

この包丁で切られた食材を口に運ぶのは躊躇ってしまう。

何とかして消し去らなくては・・

かつてない使命感に

アリサは脳をフルスピードで回転させる。

キュルルンルン

 

「そうだ!」

すぐに閃く。

 

「ねえお兄さん! この包丁

今一切れそうに無いわ?砥石あるかしら? 

私、生まれつき刃物を研ぐの得意なのよ」

全く切れ味が落ちていない包丁だが嘘を突く。

成程、砥石でシールを磨り潰す魂胆だ。

 

「おお。お嬢ちゃん助かるよ。じゃあこれ砥石ね。

結構高価な物だから割らないでね 

後包丁で怪我だけはすんなよ!」

何故か快諾するコック。

 

「ありがとう大丈夫大丈夫!

♪ゴリゴリ・ゴリラが五里霧中♪

ゴリラの夫婦で五里霧中♪」

パシャリ

撮影した後に、砥石を使いシールの部分を綺麗に落とす。

 

「・・アリサちゃんひどいよ」

 

再びあの声が・・しかし誰にも届いていない。

 

「よーし綺麗になった。はい返すね」

 

「おお小さい割には早いねーお嬢ちゃん!

最近入った新人の代わりにここで働かないかい?」

 

「いえ、まだ小学生なの、労働基準法に引っかかるわ。

後ね? 小さいは余計よ?

その新人さんは小学生よりも使えない人なの?」

 

「いや、そいつ包丁で怪我しちまってね大騒ぎよ

ウインナーに切り込み入れてて

間違えて切っちまうんだもん

同じ肌色だからって笑えないよなー」

 

 そんな話をしている時

悪臭を放ちつつオーナーが厨房に入って来た。

仕事ぶりをチェックにでも来たのであろうか?

皿には、これでもかという程の肉が盛り付けてあった。

 

「おや? お、嬢ちゃ。ん、一。人なの。か?

これで会、うのは3回目になる、と言うのに

私は君の名、前すら知らない。私はさっき

名乗っ、た筈だよね? 教えてくれる、かい?

それと、さっき。から橋、本が居ない。んですよ

どこ、にいるか。知っています。か?」

 

(また来たのか。)

心の中でそう思う。そして何と名前を聞いて来たのだ。

アリサをもっと知りたいと言う事。

何故こんな事を言ってくるのか理解に苦しむアリサ。

あれだけ嫌悪感を抱いているのに

この男には今一通じていない様だ。

まるで遊戯室でマシンガントーク

泣かされて逃げていったあのやり取りを

全て忘れてしまっているかの如く平然としている。

そして、橋本が居なくなった事も話していた

自分のペットの事も管理できないとは・・

これは懲らしめてやらなくてはならない

アリサの脳は急速に回転を始める・・

ギュルルルルンルンルンルンルン

 

----------------------------Second battle start----------------------------

Alisa VS takayuki saitou

 

「花子です」

嘘である。何故そんな事をしたかというと

自分の名をこいつの口から発して欲しくなかったのだ。

本能的にアリサは察している。

こいつは絶対裏に何かあるとどす黒い何かが

・・・すると。

 

「何故。嘘をつ。く? 君はアリ、サだろ? 

レセプシ、ョンで君のお母さ。んが

アリ、サ行くわよっ(裏声)て言ってい、たぞ」

そういう事はしっかり覚えている記憶力の高い隆之。

 

「うわ、あんた私の名前知っていたのかよ。

何て言うか今は、花子って気分だったのよ」

そんな時もあるだろう。

 

「そう。さ、でも遊戯室で直、接紹介された。訳でも

無いのにアリ。サちゃんなんて言っ、たら

気味悪がら、れるだろ?何で知っ、ているんだ。って

だから知って、いたけど敢え。てここで聞い、たんだ

何か。問題でも?」

聞けば聞くほど耳障りな声に

そして内容が全く無くつまらない話に、そして

鼻を塞いでもこじ開けて入ってくる強烈な口臭に

だんだんイライラして来るアリサ。

 

「さっきも言ったけどお前の口臭は

全ての人間に合っていないのよ。もう喋るな

初めて会った時から大嫌いでした。

金輪際私に話しかけないでくれ。

これから会う事も無い人に名乗る必要もないし

私の名を知っているのに

態々私の口から言わせようとするこの感じ

最高に気持ち悪い。死ねばいいのに」

折角シャワーも浴びて綺麗になったと思ったら

またその臭いに汚されてしまうのかという焦燥感。

言葉を選んでいる場合ではない。

一刻も早く追い払いたいという気持ちがそうさせる。

 

「私は死なん。後100、年生きる。

生き、て生きて生き続ける。

し、かし何だこ。の変な、気持ちは?」

 

 

流石に、二回目ともなると泣かずに

耐える事の出来た立派な隆之。

しかし、例のごとく9割は頭に入っておらず

最後に言った言葉のみに反応する

瞬間記憶力の皆無な隆之。

そしてアリサに罵倒された時

再び不思議な感覚が隆之に襲い掛かる。

 

今回のアリサの攻撃は殆ど通じていない様だ。従って

--------------------------------End of battle--------------------------------

Alisa lose 経験値0獲得! 0G獲得!

何一つ獲得できず終了。

 

「憎まれっ子世にはばかる」 

 

この男の為に生まれた言葉なのではないだろうか?

 

「これと話していても何も得るものは無いわね。

場所変えよっと」

もう、これ呼ばわりである。アリサは空腹のため

隆之との戦いから逃げる事にして場所を移す。しかし

隆之は、暫くこそこそとアリサの後ろを付いて来たが

アリサが本気で睨むと消えていった。

 

「さて、折角松茸ご飯食べたかったのに

あの黒くて臭いじじいのせいで・・邪魔だなあれ。

うえーまだあの臭いが残ってる。折角洗ったのに

絶対ここには2度と行かないわ。

あいつは、このホテルの事を思うなら

自室に引っ込んでいた方が良いのよ。

何でああやって表に出て来るんだろう?」

そして、アリサはふと昔の事がよぎってきた。

 

ホワンホワンホワンホワーン。

え? なんだそれはって? わかりません。

 

小4の夏休み、アリサは夜中トイレに起きて

ついでにアイスクリームを取ろうと台所に行った時

ゴキブリと対峙した事がある。

奴は、冷蔵庫の上の方のドアの前をうろついていたが

アリサの存在に気付くとぴたっと止まった。

アリサを敵と看做みなしたのだろう。

 

「くそーあいつが居ると冷蔵庫のアイスが

取れないじゃないどこかにいかないかなあ。あっ」

 

幸いテーブルの上

アリサのすぐ傍に殺虫スプレーがあり

少し手を伸ばせば届く所にあった。

そして金鳥・・っと失礼。緊張の一瞬。

 

トクン トクン 

 

アリサは自分の心臓の音を感じ取る。私は今生きている。

そしてこれからも生きなくてはいけない。拳に力が入る。

そして、奴も生きている。そして明日も生きるつもりだ。

それを証拠にピクリとも動かずに

敵であるアリサから一切目を離さない。

アリサも奴を好敵手と看做し全力で相手する事を決める。

アリサに明日はあるのか?

明日は、亜明日聖也ああす せいや君との楽しい

殺虫剤談義の予定があるのだ。 

 

「私は待っている人が居るの。だからこんな所で

死ぬ訳には・・いかないっっ!聖也君、私を守って・・! 

やあー!」

 

アリサがスプレーに手を伸ばした瞬間・・!

 

「バサバサバサバサバサッ」

 

なんとそのゴキブリ、アリサに真っ直ぐと

飛び掛って来たのだ。

ママが一緒にいる時は、逃げの一手だった者が。

驚くべき事に、捨て身の体当たりを食らわせに来たのだ。

一点の迷いもなく。唇を真一文字まいちもんじに結い

双眸は真っ直ぐとアリサを見つめる。

そのトリガーにはその行動

と紐付けられているかの様に・・

精密なマシーンの如く

本能的に察し、ミリ単位の狂いも無くアリサを目指す。

 

しかし、所詮はゴキブリ。

体当たりだって実際食らってもほぼダメージ0

むしろ下手すれば、当たり所が悪くて

衣服などに足を引っ掛ければ

自分の足を持って行かれたりする危険も孕んでいる。

そう

自分がダメージを受けてもおかしくない行為なのだ。

噛む力もなく、サルモネラ菌などの

病原菌の運搬などはするが猛毒は無い。

武器らしい武器はあの外見だけなのに、あの外見は

大人も泣いて逃げ出すグロテスクさ。

こいつは自分の使い方を良く分かっている。

括弧不抜かっこふばつの自信で

 

「こんなチビはちょっと飛び掛れば逃げちまうぜ!」

 

と確信しているのだ。そして自分より遥かに大きい

人間が悲鳴を上げて逃げ出すのを見て

優越感に浸る。虫の分際で。

 

 しかし、こいつは考え様によっては

色々と役に立つ事もある。

 

「一体どういう事だ?」 

 

「あんなものに使い道なんて無いわ!!」

 

という人もよく聞いて欲しい。

例えば、平々凡々な退屈な毎日を惰性で過ごしている人

そんな人でも奴と遭遇する事で

一気に強烈な刺激を受ける事になる。

ボーっと音楽を聴いている時に

ちょろっと天井に奴が現れたら貴方はどうするだろう? 

もし誰かがいるなら助けを呼びに逃げ出す事も出来る。

しかし、あなた一人しかいなかった場合は?

言うまでも無く一気に戦闘態勢になる筈。

殺虫スプレー、丸めた雑誌などを用意する為に

辺りを見回すであろう。

 

そう、あいつに会った瞬間に貴方は

ゴキブリを討伐しなければいけない定めを背負った

戦士となるのだ。

 

それは、16歳の誕生日に母親にお城へ連れて行かれ

唐突に王様からラバモスを退治してくるのだ。

と50Gと棍棒と布の服を渡され、未成年でありながら

酒場へ行って良いと許可を王様直々に受けた

ちょっぴり羨ましい・・否! 

けしからん勇者よりも理不尽で

それは、韓国の徴兵制よりも強制度合いは強く

抗う事は絶対に出来ない。

何故なら放って置くととんでもない事が起こるという

強迫観念があなたの頭の片隅に必ずある筈なのだ。

 

「やばい、今あいつを逃したら

何倍にもなって帰ってくる。やるしかない・・!!」

 

恐らくこんな考えが浮かんでくると思う。

 

 今から約3億年前から、小型軽量化してしまったが

基本的なグロさは変えずあの形のまま

今も生きている生きた化石。恐らくその当時も

周りの他の生物から嫌われていただろう姿のままで・・

 

 だから、そいつに出会った瞬間。

ピザポテコロングを食べつつアニメを見てる青年だって。

バイト疲れで帰宅し今にも深い眠りに就こうとしている

中年男性だって。そして・・夏の夜に

冷蔵庫のアイスを取りに来ただけの

平凡な11歳の女の子だって、戦士になりえるのだ! 

いや、なるしかないのだ!!

 

 今起きているのは私しか居ない。そして

あいつを今逃がしたら何倍にもなって帰ってくる

という強迫観念から恐怖を凌駕出来るのだ! そう

忘れかけた闘争本能をあいつが呼び覚ましてくれる。

争いからかけ離れた昨今

この体験はかなり貴重な物で

時々刺激しないとだらけた人間になってしまうのだ! 

これは老若男女問わず

研ぎ澄ませなければならない物ではないだろうか? 

平和な日本。それはとても良い事である。

だからといって心がだらけ切ってしまって

いざ戦になってしまった時

臨機応変に対応出来るのであろうか?

 

 因みに、私の母親など、掃除機を構え

飛行中のあれを吸い込み退治する技を習得している。

私には決して真似は出来ない。

 そして、身近に恐怖という物があるという事を

幼い内から知る事が出来る。

そう、危機管理能力を養う事が出来るのだ。

温室育ちのセレブには絶対に分からない。

恐怖をゴキブリを通して知る事で世の中は

優しい世界ではないと早い内から知る事が出来る。

 

 私は、妖怪と言ったら

木木しげるのゴゴゴの鬼次郎位しか頭に浮かばぬのだが

その数多あまたの妖怪達の中でもゴキブリと言う存在は

姿形といい恐怖という一点に於いては

かなりの上位に入る姿をしているのではないだろうか?

どういう事かと言うと

例えば一旦もめんやスリカベ、夜泣きじじい

布団かけババア、電気ねずみ男等の妖怪と比べた所で

ゴキブリの方が圧倒的にその姿は怖いのだ。

 

最近の黒豹娘なんか、妖怪なのに萌え要素を含んでいて

彼女が天井にひょこっと出ようものなら、退治する為に

殺虫剤に手を伸ばすどころか、男性なら

脇の下の汗を制汗スプレーで誤魔化し

鼻の下を伸ばし、袖の下を渡すであろう。

例え、絶世の美メスゴキブリが出てきても

絶対にそんな事はしないであろうに。

 

そう、妖怪ですらあの外見のインパクトを

超える者は少ないのだ。他にも西洋の

ドラキョラやフラソケソシュタイソ等と比べても

やはりトップクラスに入る怖さといえるのだ。

 

そしてそれらの妖怪達より小さいからまだいいもので

あれがそれこそジゴラの様に巨大化してしまったら

正に最強で最凶の生物になりえるのだ。

 

そして、こいつが自分の家に出ると言う事は

自分なりには綺麗にしていると思っていたが

まだまだ足りないと言う事を知る事が出来

あいつ再びを出さないように台所を

特に水周りの衛生面を徹底し、夏場は空調を整え

湿気を少なくする様になる。

 そして、ゴキブリ嫌いの伴侶と一緒の時に

少し関係が悪くなっていたなら

仲良くなるチャンスである。

例えば、ひょっこり出た奴に悲鳴を上げ

助けを求める伴侶の期待に応え

奴を勇敢に撃退出来れば

冷え切っていた2人の関係は

修繕され、更に深まる筈。その瞬間ゴキブリは

ちょっと小さくグロテスクな黒いキューピッドとなる。

 

 この様に、どんな物でも見方を変えれば

何かの役に立つと言う事なのだ。

外見が怖いから嫌いというのは分かるが

視点を変えれば人間にここまで貢献している虫は

他にはいないのではないだろうか?

 

 一般的に蜂は、蜂蜜を作り益虫とされている。

しかし、その反面毒針を持ち

人を攻撃する害虫ともなりえるのだ。

益虫とされている虫でも色々種類があり

同じ蜂でもスズメバチはそれを駆除する業者までいる。

 

 他にも、蜘蛛もゴキブリを退治してくれる。

見掛けは気持ち悪いかもしれないが益虫である。

しかし、当然毒蜘蛛もいる訳で

全ての蜘蛛が益虫ではない。ゴキブリも

益虫でこそないが、人命を脅かす程でもない。

そして厄介な事に、幼虫のゴキブリは

初めて見た時はゴキブリの子供とは思えない程に

小さく可愛らしいという事である。

 

 初めて見た時

親に聞くまでそれは全く別の虫と

勘違いしていた程である。そして

私は、とある事件をきっかけにその子ゴキブリを

潰せなくなってしまったのだ。

長くなるので割愛するが・・

いや・・もしかしたら共感してくれる人も

いると思うのでやはり語ろう。

 

https://ncode.syosetu.com/n3869fw/

私が書いている小説です。

ブログより10話分位先まで投稿してあります。

 

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