magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

12話 宴会場2

「そうだわ! ブラックカレーを使いましょう。

さっきどこかで見た気がするわ。

後サラララランラップも欲しいわね」

 

「何じゃと? ん? ほう、よく分からんが

持ってくるぞい待っていろ」

アリサの考えは読み取れずじまいであるが走り出す。

2分後ブラックカレーと

サラララランラップを持ってきたロウ・ガイ。

「これ位でいいかの?」

 

「うん! ありがとう、これをこうしてっと」

器用にブラックカレーをラップに包みボール状にする。

 

「ロウ・ガイ、あの顔の真ん中にこれを当てる事は?」

 

「器用な事をするのう。ふーむ、遊戯室で見せたあの技を

もう一度使えば可能じゃが?」

 

「お願いあれに当てて?」

クネクネしながら可能な限り可愛らしくおねだりをする。

女の武器を使ってまで消し去りたいと言う気持ちが

ロウ・ガイにも伝わった。

 

「しょうがないのう。MPミョウギポイントを結構使うし

あの怪物を見ながらの詠唱になるから相当疲れるのじゃが

可愛いアリサの頼みじゃて、やってみるか」

ロウ・ガイも首を縦に振る。

 

「やったあ」

ピョンピョン跳ねて、喜びを表すアリサ。

ロウ・ガイはブヨブヨした

カレー入りのラップボールを

慣れない手付きで持ちながら

遊戯室で唱えたあの呪文を詠唱する。

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ

ぬおおおおお。穢れし天井の悪よ! 消えされぇえぇい」

びゅおおおおおおん

凄まじい音と共に上にボールが飛んでいく。

しかし、すんでの所で重力に従い落下してくる。

ロウ・ガイはそれを割れない様に優しくキャッチする。

 

「くうっ・・届きそうな所まで行ったのじゃが

この玉を割るまでには至らんかった様じゃ・・

かなり柔らかい物じゃから持ちにくくてのう・・」

狙いは完璧だったのだが

ぶよぶよしている物を投げるという行為は初めてで

うまく投げられなかった様だ。

 

「え? じゃあ無理なの?」

本気で悲しそうな顔をするアリサ。

 

「今のままではな・・じゃが・・!!」

ロウ・ガイはラップボールを額に近づけ集中する。

 

「仕方ないのう、筋力を増強させる妙技も

おまけで追加するぞい!

二重詠唱はあまりやった事が無いからの、いけるかの?

否!! やるんじゃ!!! そうじゃな? アリサ」

 

「はいっ!」

 

「お、良い返事じゃ。わしも頑張れそうな声援じゃ!」

 

「ハッ!」

合掌し、気合を入れなおすロウ,ガイ。

辮髪べんぱつが湧き上がる闘気が放つ上昇気流に乗り

上向きになる。

 

マハリクマハリタ

コッビチノキトタイナハノイワコモトッモ」

 

ロウ・ガイの両腕が金色に光り、見る見る腕が太くなる!

そして腕からは浮き出る血管が太くなる。

さらに命中増加の詠唱を続ける!!

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ

行くぞォユッキーィィィィィ!!」

 

ギュオオオオオォ!

 

ラップに包まれたブラックカレーボールは

一直線に、先程と段違いの轟音と共に、怪物へと向かう。

そして、ユッキーの鼻にヒットし、その瞬間ラップが破れ

ブラックカレーを撒き散らした!!

 

 しかし・・何という事だ・・粘着力が足りず

破れてユッキーに当りこそしたのだが

ぽたぽたと床に落ちて来る。殆ど黒く染まっていない。

 

「なんと! これだけでは粘着力が足りんのか・・」

2度目の失敗に落胆したのか

それともMPの使い過ぎで疲れたかは判らないが

がっくり肩を落としながら言う。

 

「じゃあ桃矢の『殿! ごはんですぞ』とか混ぜて

粘着力を増して再挑戦してみましょう」

時間はないのだが、決して妥協せず

最善策を探し出そうとするアリサ。

もう空腹で歩くのも大変な筈だが

食べ物を食べずに

黒く粘性のある物を作る事だけに集中している。

何故ここまでストイックになれるのだろうか?

 

「成程、それと黒ゴマのペーストや

黒砂糖等も粘性は上がるぞい」

 

「黒ゴマのペーストに黒砂糖ね?・・あれ? 

黒砂糖は色は茶色だけれど?」

 

「水に溶かせば黒くなるのじゃ」

 

「そういえばそうよね分かったっ!!」

そう言いつつビュッフェ内を走り出す。

ここには色々な食材がある。

黒い物など幾らでも見つかるのだ。

 

「殿! ごはんですぞは流石に無いと思うから

和食の所に岩のりの佃煮が置いてないか探してみよう」

 

和食の炊き込みご飯の所に居たアリサ。

すぐ側に佃煮を発見

近くにあった丼に入れて次の黒砂糖を探しに走る。

 

「黒砂糖は黒糖黄粉ドリンクっていうのがあるわね。

ゴクリ・・ああ、おいしそう

はっ、駄目駄目。これは飲み物じゃなくって

世直しの材料なんだから!」

・・いや・・普通に美味しい飲み物なのだが・・

強い使命感からか

殺しのパーツにしか見えなくなっている。

そんな物を飲む事は出来ないアリサ。

コップが幾つか並んでいて一番黒っぽい物を選ぶ。

 

「本当だ黒い液になってる。これを混ぜて・・よし!

後は黒ゴマペーストと無くなっちゃった

ブラックカレーをこれに混ぜないと」

 

洋食のコーナーのシェフに

黒ゴマペーストの場所を聞いてみる

 

「え? そのままは置いていないなあ。

黒ゴマペーストは大体プリンとか

パンに練りこんで使う物だからね」

 

「そうなのね・・せっかくの粘着力が・・」

落胆するアリサ。

 

「粘着力? そうか

夏だし、スタミナがつく物が欲しいんですね?

粘着力が必要なら納豆とかならあるけど?」

 

「うーん、色が黒くて粘着力があるものがいいの

出来れば細かくなっているものがいいわ。

それと、包むラップも欲しいわ」

 

「じゃあ、めかぶを細かくミキサーで砕いてあげる。

これなら黒くて粘着力はあるよ

しかし色々なリクエストが来るなあ。

まあ食べ方は人それぞれだからね」

 

「ありがとう」

ラップを受け取り、次に丼を差し出し

めかぶをミキサーした物を入れる。

 

「よーし後はブラックカレーね」

 

洋食のコーナーに大きな寸胴に

ブラックカレーがあった。それを丼に入れる。

ぐーきゅるるる。

 

「お、お腹も減ってきたわね。

よし、早く戻って混ぜましょう」

ロウ・ガイの待つ和食コーナーに戻る。

 

「役者は揃ったわ。

今度こそ見ていろよあの妖怪め!」

戻ると少し顔色が悪くなっているロウ・ガイが

水を飲みMPを回復していた。

 

「戻ったよ」

 

「うむ」

丼のブラックカレーを混ぜ合わす

 

「あ、こねている内に少し粘りが多すぎて

固まってしまいそうね」

 

「そうじゃな、ではここにある黒ウーロン茶を入れて

少し緩和させるか?」

ウーロン茶を注いだ。すると色が薄くなってしまう。

 

「うーん、もう少し黒くしないとあいつは消せないわ」

 

「そうじゃな、ではイカ墨などどうじゃ? 

ある程度の粘り気も取れるし色も付く」

 

彼らは、年は50以上離れているが、一つの目的に向かい

まるで理科室で実験をしている小学生の様な

キラキラした目でトライ&エラーを繰り返し

少しずつだが、確実に最適解に近づいてゆく。

 

「成程ね。よーし、行ってくるわ」

疲れているであろうロウ・ガイを気遣い

率先して動くアリサ。

 

「すいませーん イカ墨スパゲティの

イカ墨だけ欲しいんだけどいいですか?」

 

「え? 別に構わないけど味付け前でいいの?」

 

「いいよ」

 

「はいどうぞ」

パスタのコーナーにいたシェフは

少し不思議そうな顔をしながらイカ墨を皿に入れる。

 

「ありがとうこれで夢は叶うわ」

深くお辞儀をし、溢さない様に慎重に歩いて戻る。

 

「?」

シェフもイカ墨にここまで喜ぶ幼女を見るのは

初めての様で戸惑っている。

 

「戻ったわ。これを混ぜれば完成ね」

皿を傾け丼に混ぜる。

暫く掻き混ぜ・・ついに・・!

ドロドロドロ・・

 

「うっぷ・・これか?」

ロウ・ガイはアリサの持つ黒くドロドロとした物が

入った丼を見て言う。

もはや料理として食べる物で無くなっているが

目的を果たすには十分の黒さ、そして粘着性。

これこそがアリサたちの研究成果。

 皆さんは、食べ物をこんな風に

粗末にしている彼女たちを見て

いけない事じゃないか? とお思いであろう

だが、上を見てその衝撃に耐えられる人間は

アリサ以外にはいないのである。

今はまだビュッフェの食べ物に

集中しているであろう客達も、お腹一杯になった時。

 

「ふぅ食った食った」

 

と鼓腹撃壌の内に言った後、仰向けになり

椅子の背もたれに寄り掛かった時にふと

天井に目が行ってしまうであろう。

その時あれを見てしまえば

当然命の保障はないのである。

その人は満腹で最高の瞬間に終焉を迎える事が出来

まだ幸せであろうが

その異変に気づき、つられて上を見てしまい

まだ満腹にもなっていない人も

連鎖的に命を落とす事になる。

今も、客たちの腹に次々と料理が入っていく。

その時を迎えるまでにあまり猶予は残されていないのだ。

急ぐのだアリサ! 

この物言わぬ黒い救世主も最高の状態で

奴の凶行を止める準備は出来ている筈なのだから!

 

「ああ、いけるか?」

 

「フッw誰に言っている? 元総合料理長じゃぞ?」 

 

「フッwそうであったな」

かっこいい二人。

もうそこにはこれ以上の言葉は要らない。

手際よくブラックカラーボールを完成させるアリサ。

それが終わる頃には、ロウ・ガイは既に

筋力増加の詠唱は済ませてある。

息ぴったりの二人。

そして・・・!

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ」

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ」

 

アリサも加わっての同時詠唱・・! 

これにはロウ・ガイも

 

「フッ、アリサめ! やりおるやりおる!! 

しかし・・ここからはわしのオリジナルじゃ。

わしは鼻を狙う。が、今のままでは

飛散した後にどこに飛ぶかは分からぬ。じゃが

今から使う妙技で飛散した先を固定出来るのじゃ! 

念の為に聞く。どこがいいのじゃ?」

なんという素晴らしいスキルであろう。

この老人只者ではない!

 

「え? それは・・鼻でしょ? 

だったら当然、目と口かしら?」

 

「そう言うじゃろうと思っておったぞ。

イエッサー!

エロイムエッサイムイタミンモエラドハタカイイノ

ーザーレグンミーホノコリノノータスバンガノボロパス

 もう失敗は無い・・! さらばだユッキー。

虚空の狭間へと消えろォ!

はぁああああああああああああああああ!! 

ダアァッ!!!!!」

 

ぎゅるぉぉぉぉぉぉおおおおおおん!

 

金色に輝き、増大した右腕に

極太の血管が脈打っている!!

ロウ・ガイの手を離れたそれは

余りの勢いに分身している様に見える。

しかし、目標に近づくにつれ

目標への最短距離を描き・・・

 

ぱぁあああああん!

 

見事顔面の中央の鼻に命中! そして

耳をもつんざく程の炸裂音と共にラップが破れ

黒い液体がそいつに向かって飛散する。

その黒い液体は中心の鼻を黒く染めた後

綺麗な逆三角形に飛ぶ。

そして、ロウ・ガイの宣言通り

目と口に向かって飛散していた!!!

そいつの輪郭や耳こそ残ってしまったが

目、鼻、口を消す事に成功したのだッ!!!

 

「・・ひどいよ・・ぼくらはそんなことのために

うまれたわけじゃないのに・・」

 

どこからとも無く誰かの悲しみの叫び声が・・

しかし、誰も聞き取れなかった。

 

「やったぁ! ありがとうロウ・ガイ」

拍手するアリサ。そして

彼女が見せるこれ以上にない最高の笑顔。

ヘトヘトである筈のロウ・ガイも

それを見ると和らいでくる。

 

「ふうー 疲れたぞいッ!!」

パン

二人でハイタッチ。

言葉とは裏腹に、全く疲れていない様子で言う。

この時、一人ではどうしようもない戦いも

力を合わせる事で

必ず上手く行くという事を知るアリサ。

 

「ふぅ・・3重詠唱は長年生きて来たが初めてじゃ

危うく意識が飛ぶ所だったわい。人間初めての事も

意外とすんなり出来てしまう物なのじゃな。

これが限界突破かの? 

新たな自分を見つけられた気分じゃぞい。

LVアップじゃあ! なんてのww

因みにの、わしは呪文を唱えぬと発動できぬが

妙技団のプロは違うのじゃ。

唱える事なく頭の中で瞬時に詠唱し

すぐに効果を発揮できるのじゃ。

料理人がメインじゃしのわしはこれが限界じゃぞ

しかし、礼には及ばん。

わしもあんな物に見下ろされたくないからの

これですっきりしたぞい」

 

「うん、じじいなのにすごいかっこよかった!」

 

「ほほほ相変わらず口が悪いのう。

しかし、そこが可愛いのじゃ。でも、驚いたぞアリサ。

あの呪文をわしと同じタイミングで詠唱するとはのう。

ビックリして変装が解ける所だったわい」

 

「何回も聞いているもの。もう言えるわよ。でも

イダョシの部分がまだちょっとむずいけどね」

 

「フォフォフォ惚れ直したじゃろう?」

まるで実の孫と話している様に

嬉しそうに笑うロウ・ガイ。

今までのアリサは、自分の力だけで

全てを片付けようとしていた。しかし、今回の件で

それだけでは駄目なんだ。協力して消してもいいんだ。

呼びかければ答えてくれる勇士はいる!

一人で背負う事なんか無いんだと思い知る。

共に一つ目標に向かった二人の絆は深まった。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます

次週の木曜に次を投稿しますが

こちらに行けばすぐに続きが読めます

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