magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

捜査開始

「戻ったわ」

「何か分かったカニ? てか早いカニ

「大体ね。誰も死体とか触っていないよね?」

「勿論ドフ」

「リキ!!!!」

「大丈夫だニイ」

「じゃあ私も調べるからね? もし怪しい所があったら指摘してよ?」

「分かったドフ」
死体の周りを調べるアリリ。

「ちょっと待ってよ……昨日と今日で合わせて3回目の事件なんだけど……全由一でもユナソでもここまで連続では来ないよ? 呪われてるわ私……」
その理由は幾つもある。そしてその呪いからは逃れる事は……おっといかん。この辺にしておくか……

市田さん何か食べた後みたいね。色々な物がこぼれているわ。ここで食べていたのかしら? でも変ねえ……一緒に夕食を食べた筈なのに……よく食べるわねえ。だから太るのよ? この中に毒でも入っていたのかしら? それとも食べ過ぎで?」
次に、落ちている物を一つずつ確認する。



「この染み……コーヒーかしら? ちょっとオオカニ君いい?」

「なんだカニ?」

「この染みを見て」
ぐいっ
強引に染みらしきものに首を向ける。

「ぎ、ぎゃあああああ」
モクモクモク ポウーン

「クッ……! 」

「あら? これは?」
オオカニは、赤い横長のアイガードの付いた兜を装備した男に変わっていた。

「闇よりなお深い漆黒を崇え、四国よりも厚く若い、コーヒー……」

「あっ彼は! それとこのセリフ……バク転裁判のコトー検事じゃない? あの人コーヒーが好きなんだよね。って言う事は? この染みはやっぱりコーヒーだったね。ご苦労さんオオカニ君。もう戻っていいよ」
このオオカニ、ゲームのキャラとは言え、人間にも変身出来るのか……しかしアリリ……床に落ちている食べ物をオオカニに見せる事で何なのかを的確に識別しているではないか! なんと機転の利く娘であろうか? これで鑑識が居なくても床の全ての食べ物の識別が可能。
しかも一切触れる事も無く出来る。完璧な識別方法だ。だが、オオカニは変身する度に命を削る。それでも全ての食べ物を見せるのだろうか? まあ自分の命を削る訳でもないので躊躇わずにやるだろうな。子供はこれだから怖い。

「ハアハア……」

「で、傍には何かのお菓子の破片……これもお願いね」
付かれているオオカニの目の前にお菓子の破片らしき物を見せつける

「ぎゃあああああ」
ポウーン 

「きゃあああああ?」
ゴキブリと人間のキメラを見ても驚かなかったアリリが悲鳴を上げる。

「な? これは一体?」
これは一体? オオカニは、市田に変身してしまった。そして、市田同様の口癖で今起こっている事を理解しようとしている。

「これ、変身だよね? だから、生き返ったって訳じゃないよね」

「そうだと思うニイ」

「生き返った? ま? もうこれしか残っていないのか……もっとこの菓子を……欲しいよお」
床に落ちている破片を見ながら落ち込む市田に変身したオオカニ男。

「喋り方も市田さんそっくりだけど……って事はこのお菓子を一番好きな動物って市田さんなのね? ねえこのお菓子の名前は分かる?」

「な? 分からないよ……でも、もう一枚食べたいよお……」

「ねえ、じゃあ最後にこれを誰から貰ったの?」

「忘れたよお……お菓子を……もう1枚お菓子を……」
そういうとオオカニに戻ってしまう。

「あーあ戻っちゃった……また変身してもらって聞いてみようかしら? でも忘れたって言ってたか……」

「ぜえぜえ」

「ねえ今凄かったよ?」

「ふうふう……何がカニ?」

「今ね市田さんが出て来たのよ!!」

「へえへえ……へえ……それはすごいカニ……へえへえ……」

「ね? ビックリしちゃった。こっちにもこぼれてるけど、これは透明だしコーヒーじゃないね。これは水かな? もこぼれている?」 

「もう勘弁してカニ

「まあ水は分かるからあ許すけど……その隣の……これオオカニさんお願い」

「ぎゃあああ」
モクモクモク
素直なオオカニであるなあ。決して目を手で覆う事をしないで見てくれている。

「ウウウこれは美味そうな牛肉ガオ。一切噛まずに丸のみしてゆっくりと消化するガオ」
ぬ? あまり変わっていないが、全身が狼に変化する。筋肉は更に逞しくなっている様に見える。別の狼なのだろう。

「へえ牛肉なの? わざわざ解説ありがとwじゃあ牛肉の破片ね。で、次のこれは?」

「まだ変身してるねー。早く切れないかなー」
しばし待つアリリ

「面倒だなあ。でもこれはたぶん蟹の肉だと思うわ。そんなのも落ちているの?」

「はあはあ、はあはあ」

「おっ来た来た! はいこれ」

「ぎゃあああああああもうやカニいいいい」
ポウーン

「あ、あら? 初めまして」(だ、誰よこの美しい女神は……)
おいおい自画自賛甚だしいな……そう、オオカニは何とアリリに変身してしまったのだ。

「このレタゼラ最高アリリィー」

「この美しい声! それにこの美しさの中に混在する可愛らしさ……このお方、よく見たら私じゃない! 道理で目が眩むほど美しいと思った……って! 私はそんな語尾言わないでしょ! ……ってこれ……レタゼラなの? 珍しいなあと思っていたけどこの家では常識なのよね。確か夕食でも出ていたよ? (この人よっぽどこれが好きなのね……ここでも食べてるんだ……)

「はあうっとり♡」
レタゼラを眺めうっとりするアリリに変身したオオカニ

「まだいらっしゃるわ……うっとり……ですが、早くオオカニに戻って頂きたいのですわ……じゃあ暫くこのままにしておいて捜査を進めるか、少しでも長い時間あのお方のお姿で留めておきたいから……でも、私の美しき姿を堪能したいけどそれを許したら捜査出来ない……このジレンマを乗り越えなくてはいけないなんて……神様は意地悪ですわ……」
ナルシストアリリ。
ポウーン。

「ああ戻ってしまったわ……お名残り惜しゅうございます……アリリ様」
何だこの娘は……

「ふうふう……もう止めて下さいカニ……」

「大丈夫。でもすごい変身精度ね。私にしか見えなかったわ」

「へ? 今度はアリリちゃんに変身したんだカニ?」

「そうそう鏡に映したみたいよ? 可愛くて美しくて神々しかったー。撮影しとくべきだったわ。もう一度変身してよ」

「そう言う個人的な事では勘弁カニ
 
「しょうがないかあ。じゃあ後一個だからがんばろ? あっそうだ! 念の為ニイラ君で回復してあげて?」

「そうか、彼はHPを削って変身するんだニイ! じゃあ、回復呪文が効果あるニイ。ようし! 『大いなる森よ! そして、そこに住まいし、心清らかなる聖霊よ! この者の体力を、聖なる輝きで回復したまえ!! ぬううううううう……ハッ!

【♡ホ イ ミ イ ラ♡!】』
パアアアアア

「よくやったわ」

「ありがとうございますニイ。褒められて感謝ニイ」

「す、少し楽になったカニ

「少し?」

「そうだカニ

「でも消費MP 同じでしょ?」

「その筈ニイ」

「まさか小さき命って言っていないと弱まるの?」

「分からないニイ」

「でもちゃんと効果があるんだね?」

「一応楽にはなった気がするカニ

「しかし、一回では完治していない様に見えるニイ」

「そっかあ。本家の詠唱よりもちょっと弱まるみたいね。じゃあそろそろ新しい禁止ワードではない言葉でもちゃんと回復出来る【新呪文】も思いつかなくっちゃ駄目よ? そうすればマジモンのスーパーヒーラーになれるんだからね?」

「そ、そうですニイ。努力しますニイ」
何故こんな適当な事を言うアリリにそこまで敬服出来るのだ?

「いい返事ね♪」

「ニイラ君ありがとうカニ

「よし回復したね? じゃあこれ! この木の実みたいなの識別して?」

「早速カニ? う、ぎゃああああああ」
モクモクモク ポウーン

「うるさいなあ……これが無ければ便利な特技なんだけどなあ……」
子供は冷徹。

「使わせよ!」
さっ もぐもぐ
何とまた市田に変身してしまうオオカニ。そして老人とは思えない素早さでレーズンをひったくり食べてしまう。

「え? また市田さん?w ちょっと! さっき見たわ」

「そんな事言われても困るよお」
もぐもぐ

「それに証拠品を食うな!」 

「それは反射的にやっちゃったんだよお。さっきみたいに」

「さっきみたいに? さっき出て来た時はレタゼラ食べてないでしょ?」

「そういう意味じゃないよお」

「そうなの? でも2回も出てくるとしつこいって思っちゃうw死んじゃって悲しい筈なのに……再び会えて嬉しい筈なのに……これだけ頻繁に出てくるとレア度が薄れるw」

「何を言ってるんだよお? 私は死んだのか?」

「そうだよ。で、マイナス1-ズンって事は……これは、レーズンって事か……」
ポウーン

「ハアハア、やっと眠れるカニ

「お疲れ! でも最後も市田さんだったよw?w」

「マジカニ? おかしいなあそんな筈は……へえへえもう考える力もないカニ……」

「後はぁ……あっ! もう一個あった! 泣きの一回ねw」

「ぎゃあああ……あれ? 変身しないカニ? よかったカニ

「え? 煙が出ない? どうして? 回復したばっかりじゃない? 手抜きしたの?」

「いやそんな筈は……どうしてだニイ?……」

「ニイラさんの回復術が効かなかった訳ではないカニ。HPは回復したけど、MPが切れただけだカニ!」

「あの変身ってHPとMPを同時に使うんだ……知らなかったわ……大変だったのね……」

「そういう事だったニイ? 僕も初めて知ったニイ」

「しかしあんなに連続で変身させるなんて非常識カニ! アリリちゃんは謝罪するカニ!」

「そうだリキ! オオカニ君やつれてしまってるリキ!」

「ごめん……市田さんの敵を早く取りたいと思って……」

「そ、そういえばそうだカニ。アリリちゃんは必死でこの謎を解明してくれようとしているんだカニ

「そうよ! 必ず捕まえる!! これで本当に終わりだから! オオカニ君ありがとうね! ゆっくり休んで? 起きた頃には事件は解決してるから!」

「頼もしい……カ……ニ……ZZZ」
そう言うと、安心して眠ってしまった。メデューリがオオカニにシーツを掛ける。

「ゆっくりと眠りなさい……念の為撮影っと」
パシャリパシャリパシャリ
そして携帯で現場を数枚撮影し、落ちている食べ物の順番をメモ帳に記入するアリリ。
次に床に落ちている赤いシミの臭いを嗅いでみる。
くんくん

「この……血? かな? 臭いもよく分からないなあ。でも食べ物の臭いじゃないね。でも何の臭いかな?」
   
「おいアリリちゃん! 不用意に臭いを嗅ぐなんて危険ドフ!」

「大丈夫! あれ? この臭い? そうだ! 絵の具の臭いだ! そういえば市田さん全く血を流していなかったもんね。でも何でこんな所に?」

次に机の上も見る。
「机の上には……コーヒーのカップが二つとノートパソコン……後コーヒーの機械もある……コーヒーはまだほんのりと湯気が出ているからつい最近淹れられたのね。……中身は入っているけど片方は減っているから多分飲まれているわ。こぼしたのもこのカップからかなあ? もう片方は全く口を付けた形跡がないわね……でも、結構色々食べたみたいねえ。ガッツリ食べているわ? 確か食事したばかりでしょ?」
そしてついに死体に目を向け歩もうとしたその時。

「アリリちゃん! 鑑識さんが来たリキ!」

「そう。じゃあ一時中断で今までの情報を整理しようかしら」
そう言いつつ携帯を取り出す。

「死体ッ♪死体ッ♪今日は豊作ガル♪」
スキップスキップ♡
何やら機嫌のよさそうな声で、【ガル】と言う犬系の生き物が威嚇の時に使用される擬音を語尾に付けながら、黒と黄色のトラの毛の模様をした髪の女性が、スキップしながら登場した。

「あっ虎ちゃんじゃん。鑑識って君の事だったんだ。ってことは高音さんもいるの?」

「なんだアリサちゃんガル? よく合うガル。目上の人間に君は不適切ガルよ? まあいいガル。今回だけは許してあげるガル。
で、高音ちゃんはもう勤務時間終了してお家でお風呂に入っている頃だと思うガル」

「あの、鑑識さん? あなたはたった今重大なミスをしてしまったんだカニ

「何ガル?」

「ここではアリサではなくってアリリだカニ。これは意味も意図もない厳然たるルールだカニ

「成程ガル。アリリアリリアリリ……×500よし、覚えたガル」

「それ位一回で覚えてよ!!」

「死体の事で頭が一杯でそれ以外の記憶力とかが著しく低下しているガル」

「あれ? 虎ちゃん?」

「どうしたんだガル?」

「もう仕事終わりじゃないの?」

「そうガル」

「へえ、でも確かこの時間はママも帰ってくるし、勤務外時間だと思うけど……」

「そうなんだガル……」

「あれ? どうしたガル?」(なんだか元気がないガルね)

「いや、何でもないガル」
彼女は鑑識のトップだ。その権限を利用し、ボケ人間コンテストで起きた事件の被害者を警察署で思う存分検視をする予定だったのだが、入れ違いで肝心の死体が蘇ったという知らせがあり、そこで落ちこんでいてずっと残っていたのだ。その後、五鳴館で|死体《次のターゲット》が出たという知らせがあり、勤務外時間と言う事を忘れ意気揚々とやって来た訳だ。

「もしかして勤務が終わっているのに残ってたんだ」

「そうガル。本来今日は終わりで明日非番ガル」

「へえ、さっきの点滴は?」

「ああ、もう打ち終えたガル。完全回復ガル!」

「じゃあ検視よろしくね。でも一人で大丈夫? 私の力は必要ないの?」

「うーん……一人にしてほしいガル。ここは危険ガル。そして検視を行うには尋常じゃない集中力が必要なんだガル」(次こそは邪魔されずに沢山見るガル。ここはさっきの会場みたいに人も多くないし、私がカギさえ閉めれば二人っきりガルフフフ……)
この様に彼女は、人と対面で話すよりも密室で死体と一対一で語り合うのを至高の喜びとする女性なのだ。キモイ奴であるな。

「はいっ! みんなも外に出よう」(プロの鑑識の仕事ぶりを直に見たかったけどまあいいか)
意外と食い下がらずにあっさりと外に出るアリリ。
ゾロゾロ

「じゃあ邪魔にならない様にみんなは自室待機してて」

「分かったーリ」

「フガフフ!!」

「了解ドフ」
皆それぞれの部屋に戻っていく。

「うーんそういえば私泊まる部屋が決まっていないんだよねえ……どうしよっかなあ……そうだ! あそこに行こう!」
ダダダダダ
ぬ? 何処に行くのだろう?