magisyaのブログ

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市田の部屋へ

「お腹も一杯になったし部屋に帰ろうかなあ……って! そう言えば私の泊まる部屋ってまだ決まってないよね? どこか空き部屋になるのかしら?」

「そう言えば無いドフ。ん? と言うかアリリちゃんは今日ここに泊まるのドフ? アドバイザーの仕事が終わって食事までは分かるが、泊まる必要あるのかドフ?」

「あっそうか。ドフキュラさんは良く知らないんだっけ? 確かに言ったと思うけど」

「そうだったドフ?」

「じゃあもう一度説明するね? 私ね、ママに置いて行かれて戸惑っていた時に急に雨が降って来て、そしたらフンガーが私を傘代わりにしていつの間にかこの家に招待されたんだ」

「こんな小さい女子を傘代わり? の意味がよく分からないドフが、まあ今は帰れないと言う事ドフ?」

「ちょっとドラキュフさん小さいは余計よ! で、その辺は、説明が面倒なのでね

【chapter2のwelcome to 五鳴館】

で書いてあるから読んでね? 帰り道もよく分かっていないの。で、もともとアドバイザーとして招かれた訳ではなくって、市田さんの話を聞いている内にちょっとかわいそうになって力を貸してあげるって事になったって訳」

「ほう、優しい娘だドフ。よし、わかった。今日は泊まってくれドフ」

「ありがとう」

「じゃあ市田さんに聞いてこようリキ!!」

「ここにいるみんなで決められない? ネズニとかさ、確かここでの一番の古株なんでしょ?」

「そうでチュウ。僕に任せるピカ」

「え? ネズニ君! 君でもそんな事は出来ないーリ。市田さんに判断してもらうしかないーリ」

「そうなんだね? ネズニでも駄目なんだ」

「知らなかったでチュウ。僕もまだまだだピカ……」

「ああドフ」

「でも暇なんで僕もついていくチュウ」

「俺もだカニ

「みんなで行く意味ある?」

「大勢の方が楽しいからいいーリ」

「僕も行くニイ」

「フンガーフフ!」

「まあいっか。みんなで行こう! ってどこなの? 市田さんの部屋は?」

「3階の一番奥の部屋ドフ」

「じゃあ行こうか」
トトトトト
2階の食堂から市田の居ると言われている3階へと移動する8名。再び例のカニサンドがあるが、誰も気にしていない。
皆満腹なのだし仕方ないが、誰も手を付けないので心なしか萎びている様に見える。そしてこのまま放置しておけば腐ってしまうのも時間の問題だ。夜も更けていて今は営業時間外。お客さんも来る事は無い。そして、翌日もそんなにお客さんは来ないであろう。
このまま放置し腐敗させてしまえば、貧しく十分な食事を摂る事の出来ないアフリカの子供達にも怒られてしまう。
故に、誰も居なくなった後、私が頂いておくことにする。もぐもぐ。

「着いたカニ。アリリちゃんがノックするカニ」 

「はーい」
コンコン

市田さん? ちょっと用事があるんですの。開けて下さいまし」
誰だお主? もぐもぐ。うむ、チーズの香ばしさが最高……

「あれ? 返事が無いリキ? おーい市田さーん。アリリちゃんが幼児リキー」
確かに正しいが、この場面で改めて言う内容ではないな。

「ちょっと! 用事でしょ? 字が違うよお?」

「ごめんリキw でも何で分かったんリキ?」

「分かるよ。発音のニュアンスが違った。絶対に|幼《・》|児《・》の発音だった」

「せ、正解リキ……でもまさか発音の微妙な違いを瞬時に見抜かれるなんて……すごいリキwwwwwお見事リキwww」

「やっぱりね……でも意識して言ってたんだ幼児って……全く……いたずらっ子なんだから!」

「ごめんリキ!!!!!」
しかし、これだけ騒がしいのに返事が無い。

「ちょっとー? アリリですよー? 開けてくれませんかー?」
返事は無い。

「フンガアー?」

「あっ! そうだ! 応えてくれない理由が分かったカニ!」 

「なあに?」

「この時間は市田|999生《きゅうきゅうきゅうせい》カニ

「999生?」

「そう! 今は小説家の先生なんだけど、市田さんは先生と言われるのは嫌だからって999生にしてくれってみんなに言っているカニ。この時間は執筆している筈カニ

「へえーじゃあ市田999生ー! アリリが来ましたー」

「おーい999生ー? ……おかしいカニ……これだけ外が騒がしいなら集中しているとは言え、気付く筈カニ

「そうだな。何かおかしいドフ」

市田999生? 居るピカー?」

「ダメみたいーリ ちょっと開けてみるーリ?」
 
「そうね。じゃあお邪魔しまーす♡」
ガチャ……
鍵は掛かっていない。すんなりとドアは開く。

「おじゃましまーす」



アリリは部屋の奥にあったそれを見て戸惑った。それは……死体……

「きゃあああ」

「フンガアアアアア」

ピカチュウウウウウウ」

「きゃあああああ」

「きゃあああああ」

「ひいいいいいい」

市田さああああああああん」

「うわあああああああ」
次々とアリリを押しのけなだれ込む様に部屋に入り、市田の変わり果てた姿を見て悲鳴を上げる。語尾を付け忘れている者も多く、一体誰の悲鳴であるかも分からない。
だが市田は死んでいた。仰向けになって倒れている……

「警察を呼びましょう。誰も現場の物を触らないでね!」
冷静なアリリ。それもその筈、この事件が初めてではない。既に3回目なのだ。こんな頻繁に出会えばこの落ち着きも納得である。

「どうしようどうしよう」

「フガガガガガガ……」
ガクガクブルブル フラー バタッ

「電話、僕が行くニイ……」

「待って? ニイラさん。念の為、市田さんに回復魔法をかけてみて」

「そうだったニイ、分かりました最高峰のお師匠様……治ってくれニイ……」(そうだ……今回は【小さき】と言うワードを言わないで使って見るニイ。
いつまでも師匠の気分を害するワードを入れた状態での回復呪文を使い続ける訳にはいかないニイ)

『大いなる森よ! そして、そこに住まいし、心清らかなる聖霊よ! この者の体力を、聖なる輝きで回復したまえ!! ぬううううううう……ハッ! ホイミイラ!!』
パアアア……

「あっ」(発動するニイ……って言う事はやはりアリリ最高峰のお師匠様の仰っていた事は正しかったニイ……)

「どう?」

「発動はしたけど意識は戻らないみたいニイ」

「やっぱり……でもそう言えば耳障りが良かった。ちょっと変えて使ってみたんだね? 偉いよ!」

「そうですニイ……お褒めに預かり光栄ですニイ! ですが効いていないみたいニイ? 起きてくれニイ」
肩を落とすニイラ男。

「やっぱり死んでいるの……?」

「アリリちゃん、私が連絡して来たドフ。対応してきた警察官? が、何か獣の様な語尾で喋っておったドフ。で、嬉しそうに『全力で来るガルwwwww』と言っていたドフ」
ははあ、あの女であろうな……

「ありがとうドフキュラさん。しかし、誰がこんな事を……」

「僕はやっていないでチュウ。と言うかみんなを疑わないで欲しいピカ」

「勿論疑いたくないよ……でも……」

「大体みんな揃っていたんドフ……フフンケン君以外ドフ」

「あっそういえば……でもフンガーは料理作ってくれてたでしょ? 違うと思うよ?」

「そうだった……って言う事はみんなにアリバイがあるって事でチュウ?」

「大体いつ亡くなったかすら分からない-リ」

「でも食事前までは生きてたリキ!」

「うん」

「そうだピカ! で、料理が来るまでの待ち時間はみんなテレビを見ていた筈でチュウ。覚えているピカ?」

「その時抜けていった人はいないっけ?」

「みんな一回はトイレに行った位でチュウ! 僕はずっと食堂にいた筈ピカ」

「だよね?」

「じゃあ自殺って事カニ?」

「だって小説書いていたんでしょ? そんな人が急に

『ああ、死のう』

ってなるの?」

「アイディアに行き詰まって死を選んだかもしれないーリ」

「そんな紙メンタルだっけ?」

「それにアリリちゃんから200つっこみを食らった直後ーリ。だから市田さんはこう考えたかもしれないーリ

『これだけ直すのは大変だ。死のう』

って感じーリ。それ程に思い詰めても仕方ない数ーリ? 200も改善するのはーリ」

「200ではないチュウ。144だピカ!」

「ああ、皆さん。私が殺してしまった様です。自首します……ってそんなのやだああああ」

「今すぐ自首すれば罪は軽くなるリキ!!」

「だってだって、元はと言えば市田さんがお願いしてきたんだよ? それをただ真面目に遂行しただけで、殺すつもりはなかったんだもん!!」

「まあこれは未必の故意って奴だから罪になりまチュウ」

「あっ! 知ってる! 殺すつもりはなくても結果的に死んでしまったらそれをやった人間が裁かれるっていうやつでしょ?」

「そうピカ。例えば2階から1階の階段の踊り場に、段ボール2枚を偶然重ねて置き、用事を思い出して一旦そこから離れてしまった人がいるとするでチュウ。で、その人が居ない間に2階から大急ぎで降りてきた別の人が、段ボールがある事を知らずに減速せずにその上に乗ってしまい、曲がったとたん滑って落下し死んでしまったら、段ボールを置いた人は殺す意思がなかったとしても殺人犯になってしまうって事でピカ」
何と言う知識であろう……こんなふざけた格好で……

「だから知ってるって言ったでしょ? 何で説明する必要があるのよ!」

「知識をひけらかしたかったんでチュウ」

「出しゃばるのは前歯だけにしておけ」

「でも僕とアリリだけしか知らなかった場合の事を考えて皆に説明したんでピカ」

「俺は初めて知ったカニ

「リキもリキ!!!!」

「だから未必の故意でやってしまいました! と今すぐ自首しに行くでチュウ」

「待ってよー! 一応部屋を調べる位は良いでしょ? 自分の疑いは自分で晴らして見せるわ!」

「分かったでピカ 自分のケツ位自分で拭くがいいでチュウ」

「むかつくわー」
ダダダダダダ

「あっ、一応容疑者なんだから手錠とか足枷をして調べるピカ」

「そこまではしなくてもいいと思うニイ」

「そうよ! こんな状況で逃げても暗いし、駅の場所も分からない。家に帰る事も出来るか分からないんだし逃げないよ!」

「じゃあワシが付き添うーリ」

「メデューリちゃんお願いしまチュウ。僕達はここで待機しているピカ」

「一人でも出来るけどアシスタントとして考えれば便利かもね。じゃあ行きましょう」
アリリとメデューリは、まず花の間に向かう。

「アリリ、こんな所に何の用ーリ」

「見落としを探したいのよ。現場は今皆で保存しているけど、みんなの部屋はもしかしたら見忘れたとこがあるかもしれないし。そう、お化け屋敷鑑定士としては完璧だけど、探偵としては見ていないから……ね」
ガチャ、パシャリ。バタン

「終わりっ次!」
その間2秒

「へ?」

「何してんの? 次行くよ? 次は妖精の間でしょ?」

「でも見落としを探すんじゃなかったのかーリ? 今扉を開けただけーリ?」

「もう覚えた。それに念の為撮影もしておいたし完璧よ!」

「な? なんて子供ーリ……」

「すぐ隣でもダアアアアッシュ」
ダダダダダ、ガチャ、パシャリ、バタン×6

「良し、これで七部屋終わり! 時間はどれ位かかったの?」

「た、多分2分位ーリ」(時間なんて数えている暇ないーリ)

「よし! まあまあだわ! じゃあみんなの所に戻るよー」

「は、はいーリ。アリリ様」
おや?

「えっ? いいよ……様なんて……」

「えっですがーリ……」

「私は今容疑者。だからその疑いが晴れるまでは、駄目。それまでの辛抱よ? 我慢してね♡」

「は、はいーリ」

「はいじゃなくって、うんでいいの!」

「う、うんーリ」
アリリ? ほら! もうちょっと強めに否定しておかないとまーた弟子が出来ちゃうよぉ? 僕にはメデューリちゃんがアリリに従いたくてうずうずしている様に見えるんだ。一体何人作れば気が済むんだい? アリリ!!! そんなに弟子を頻繁に作ってはいけないと思う!!!

「よーし、戻るぞーって……市田さんの隣の部屋とかも一応見てみようかしら? 何か手掛かりあるかもしれないし」

「寄り道ーリ?」

「一応捜査しておこうと思ってね。もう市田さんも居ないんだし、そこまで私の行動を強制は出来ないと思うよ? メデューリさんも一緒に来てくれない?」

「仕方ないーリ」
ガチャ

「あれ? ここって……」
何台ものルームランナーやエアロバイク、そして、サンドバッグ、ベンチプレスの台とダンベルやバーベル、体重計、握力計、背筋計などなど幾つものトレーニング器具や体力測定器具が置いてある部屋だ。ここはトレーニングルームの様な場所だろう。

「うわあ鉄アレイじゃん! 骨っ子みたいなのにねえ。めっちゃ重そう」

「こんな骨っ子、歯が砕けるーリ」

「ここでみんなトレーニングしてるの?」

「ワシはやっていないーリ。でもお客さんにも開放しているし、男子チームは愛用しているーリ」

「へえ、確かにオオカニとかフンガーとか逞しい人もいたしねえ」

「そうーリ。リキュバスちゃんも時々ここで走っていたーリ」

「あのナイスなスタイルはここで作られたのね。あれ? このノートは?」
一冊のノートがある。

「見てみよっと」
見ると何かの記録が残っている。ほとんど同じ内容だ。一応何か手掛かりはないかと記入されている最後のページまでめくってみる。すると。

『7月15 200×5reps  2set 300スクワット×10reps    ラン30km
 7月16 200×5reps  2set 300スクワット×10reps ラン30km
 7月17 200×5reps  2set 300スクワット×10reps ラン30km
 7月18 200×5reps  2set 340スクワット×10reps ラン30km
 7月19 200×5reps  2set 340スクワット×10reps ラン30km
 7月20 200×5reps  2set 340スクワット×10reps ラン30km
 7月21 200×5reps  2set 340スクワット×10reps ラン30km
 7月22 200×5reps  2set 340スクワット×10reps ラン30km
 7月23 Ruhetag
 7月24 Ruhetag

「ふーん、何かの記録みたいね。一昨日までびっしり記録してあるけど……200ってのは何の数字かしらね? メデューリさん何かわかる?」

「これってもしかして200キログラムって事かもしれないーリ。repsと言うのは回数で、それを2セットやったと言う記録だから、200のバーベルを5×2回で計10回もやったと言う記録ーリ」

「へえ、これを書いた人は相当力があるみたいね。しかも字もキレイ……文武両道って感じ……こういう人ってすごく尊敬する……で、右のはスクワットで300キロお? それを10回ねえ……ブル」

「そうーリ」

「大体この変かな……あれ? この日記みたいのは? なんじゃこりゃ」
見たことの無い言語で書かれていて、アリリも翻訳するアプリを使ってみるが、まるで分らない。

「でも、表紙は外国語っぽいね。何語かは分からないけど。これ位は翻訳出来るかしら? 出た! ……シュレ……の日記って書いてあるのね?」
パシャリ
念の為撮影。

「こんな物が何故こんな所にあるーリ?」

「分からないわ。まあいいわ。翻訳も出来なかったし……もうみんなの所に戻ろう!」

「了解ーリ」