magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

サキュバス × ブティック? 2

「あ、あれれぇー? ねえ、急に暗くなったよぉー? 市田さーん? これもミイラ男君と同じで、誰かが暗くする呪文でも使ったんでしょおおおおお怒? だって後ろから何か二人で唱えてる様な声が聞こえたんだよー? 多分主犯はリキュバスさんで共犯者は市田さんでしょ? 分かってるんだよー? 白状しなさーい? さもないと目玉をゆっくりへし折るわよー? で、早く明るくしてよー。これじゃ分からないよ? 明るくないと、この屋敷のを改善点を指摘出来ないよ? 早く戻しなさい! お願いー! 急がないとダメよー?」
かなり動揺している筈だが、後ろで唱えた詠唱を感じ取り、指摘する鋭いアリリ。しかし、ゆっくりへし折られたらすっげえ痛いだろうなア。

「気のせいじゃないですか? 時間も時間ですし……普通に夜になったんだよ。ねー? リキュバスちゃんw?wあっミイラではなくってニイラね!」

「そうだリキww」

「そうかしら……(夜も何も、この部屋窓無いじゃない……)そうよね、気のせいよね……でもニイラではない!!」
すると……

『コンニチハ』

「ピャア♡」
ビクゥ

『オヒサシブリ』

『コンバンハ』

『ゴキゲンヨウ』
一度終わったと思ったのだが、再びどこからともなく抑揚のない発音で、次々アリリに向けた挨拶が投げかけられる。
この謎の声、単体だと思われたが、暗くなった途端に声の種類は増え、複数人いるように感じられる。これはもしや空間変化魔法の

カーミラ

により室内は暗くなり、色々と

【活性化】

したのだろうか? 何が? とは断定出来ないが、何かしらの負の力? が活性化したのだろう。そして光に弱かった者の闇の力? が増幅し、声を発生出来るまでに至ったと考えるのが自然だ。
だがその声のイントネーションは同一で、生きている者が発する音とは到底思えない。何らかのトリックなのか? それに彼ら? は、まるで市田達が話している間だけ邪魔せぬよう待っていてくれたようにも思える。何とも不気味である……

「お久しぶりって……あ、ああ、あんたなんかと……一度も会った事なんてないでしょ! てか、す……姿を見せなさい!」

『ユックリシテイッテネ』

「いえいえ♡もう|御暇《おいとま》しますので……」
へこへこ 
まるで別人の様に気弱なアリリ。

『ソウデスカザンネンデス。デハ、デグチマデアンナイシマ……ッテ、ニガサン!!!!!!!!!』
未だかつて見た事の無い様な殺意が織り交ぜられたノリ突っ込みがアリリに襲いかかる。

マ・マー! 助けてー」
ギュルルルル
おお、信じられない程短いアリリの足が、信じられない速さて回転し、入口へ向かって走る。これがアリリの素早さの秘密だ! それにしてもマ・マーか……母親に助けを求める年齢でも……ギリギリ範囲内か? しかしこの響き……あのパスタを思い出すな……
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にゅう ガッシ
「ぎゃああああああああああ♡」

「どうしたんですかー♪?♪」
市田が嬉しそうにアリサの悲鳴に反応する。

「手手手手ッ♡ 手手ッ♡ 手ー手ー!!!」

「どうしたんですか?【火曜サスペソス劇場】のCM前に流れるメロディーを奏でて?」

「本当にアリリちゃんはお歌が上手リキ! 羨ましいリキ」

「そんなん分かっとる。1兆年に一人の逸材や。せやかて江藤、それどころちゃうねん。手やねん! 手え出とるん。今にゅうって手ぇ伸びて来よったわ! マネキン下げちょるハンドバッグん中から!」
訛るアリリ。

「そうなんですよ。ハンドなだけにハンドバッグが気に入っちゃって、その中に住み着いてしまいましてwwww」

「住み着いてるなら寺坊主を有効利用して追い出しなさい! その手が邪魔で本来入れなきゃいけない小物が入れられないでしょ? 一大事じゃん! ヘラヘラ笑ってる場合じゃないでしょ? あ……ちょっと! 引っ張られてる! 引っ張られているのよー! 笑ってないで助けてー寺坊主カモーン」
だが、寺坊主はテラ忙しい。

「え?」

「え?」
薄ら笑いを浮かべながら、片手を耳に当てる様なジェスチャーをする二人。

「聞こえてるでしょ!! 何これ? 幽霊なの?」

「はい♪ 手の幽霊だと思います」

「思いますって……自分で作った部屋だろ? 全容を把握しとけよお。それに、手だけじゃないよ? う、腕も出て来たよ! これじゃハンドバッグじゃなくてアームバッグになっちゃうじゃない!」

「上手い事言いますね。流石ボケ人間コンテストの王者ですねー。これは手袋一枚ですね!」

「え? あの子ボケ人間コンテストの優勝者リキ?」

「そうよ! それだけは間違いないわ。昨日の大会の様子は後日放送されるから絶対見てね! で、もし放送で見られなかった場合は第二話を見ればその様子が事細かに読めるからおすすめよー。後! 手袋一枚って! それを言うなら座布団でしょ……って突っ込んでる暇なんかないよ……逃げなきゃ……殺される……」
極限状態でもしっかりと第二話の宣伝をねじ込み、更には市田のボケも拾い適切なつっこみをしてしまうアリリ。

「大丈夫ですよ。その子、握力1しかないので、脅かすしか出来ませんよww」

「それでも怖いわ!! ってか何で握力の具体的な数字を知ってるんだよお? 離せよー! この野郎!!」

「よし、では攻略法をお教えしましょう。まずはじゃんけんをしようと持ち掛けるんです。最初はグーってね。そうすれば離してくれますよ」

「本当? じゃあ最初はグー」

「イヤヨ」

「ぎゃあああ手が喋ったああああああ! 嘘突かれたあああ」
ヒョコヒョコ……逃げる体力も無くなってきたようだ。

「ハアハア(*´Д`)……え? 薄暗いけどこれ市田さん?」
アリリの逃げた先に一体のマネキンが……しかし、その顔は市田になっている。女性のマネキンに市田の顔。これはこれで中々のホラーである。

「そ、それは尊敬する市田さんを傍に置いておきたいなと思って作ってもらったリキ」

「ま? そんな話聞いてないけど?」

「またまたー♡あの時報告したリキよ?♡?」

「ま? そうだっけ? まあいいか」

「で、でもコイツ、首が取れかかってるけど?」

「あっそれはね……じ、地震で倒れてそうなっちゃったリキ」

「そうなんだ」(で、そのまま放置と……何で直さないの?)
ヴァッサ

「ひい♡」
雑談も束の間。更に追い打ちを掛けるように何かがアリサにかぶさる……

それは……

マネキンの着ていた黒い服である。誰かが脱がせて? もしくは自分の着ている物を脱ぎ、掛けてくれたと言うのか? 優しいなあ。

「寒くないから……いや寒いか……ありがとう。なんか暖かい……って……怖いよお」
涙よりも大量の鼻水を流しながら号泣するアリリ。

「ボウシモイカガ?」
ポム
今度はアリリの被っているベレー帽が取り除かれ、つば広の婦人用の日焼け除けの帽子に取り換えられる。当然真っ黒のな……そして、暗闇に複数の声が響く。

「ボウシボウシボウシボウシボウシボウシボウ……シボウ!!」

「いやああああ( ;∀;)」
お笑いコンテストで3万人の前で堂々とネタを放つ程の肝が据わっているアリリだが、この恐怖には流石に耐えられなかった様だ。

「流石に可哀想になって来たね。もういいかな?」 

「そうね。可哀想になってきたリキ!!」

『大氣に漂いし清廉かつ荘厳なる光の聖霊よ、そのまばゆさにて姿を眩まし、すぐ傍に居ながらにして姿見えなき聖霊よ! 闇の深淵に彩られし色無き世界に一筋の光をここに……ブライト・モア』
パアアアアア。
今度は市田が単独で何やら魔法を詠唱する。やはり彼は魔法が使える様だ。室内が真夏の炎天下の日差しの下かと言わんばかりに明るくなる。
するとその光に怪奇現象が収まる。フム、確かに怪奇現象は決して明るい場所では起こらない。これは全世界共通のルールの様だな。

「ああ、私生きてる……!」
生まれたての子馬の様な動きで、入口へと目指す。

「もう少し暗い方が良かったリキ!」

「ま? まあいいじゃないかそろそろ」

「そうリキ?」

「ああ、まあ本来ブフイト・モアが良かったんだけどね」
全く、またである。何を言っているのだ? 何故わざわざおかしい名前に変えるのだ?

「また言ってるリキw言葉は良いけど呪文だけは許してあげてリキww」

「そうだね……仕方ないんだよね……悔しいんだよなあ……」

「次の部屋に早くいきましょう! 早く!!」

「いやいやその前に、ここ、妖しい服と書いて、妖服の間はどうでした?」
ここでネタ晴らしをする市田

「……に、28ね」(洋服じゃなくて妖服だったか……道理で……じゃあ妖しいって意味だったのね? ススピッチョウスって言う単語……くそっ! 不覚……)

「な? 多くなった? これはいい事なのでしょうか?」

「でもさ……怖かったけどさあ、本物の幽霊はまずくないかしら? お化け屋敷だからさ、その、作り物で統一しないとさ……」
急に弱気になる可愛いアリリ。

「そうですか。では次に行きましょう」

「何か嫌になって来たわ……」(もしやここからエスカレートしていく感じ? やだなあ)

「ま? まだありますよ? 後2つですよ?」 

「3つでしょ」

「そうだニイ」

「うむ、こういう所はぐっと堪えて本当の数字を言って欲しいドフ」
堪えて……か……

「わ、分かったよお……」

「ほんと変な癖よねえ。自制心が足りないと言うか、我が強いと言うか……人としてどうなの?」

「な? 普通ですよお……それに任せてって言ったんだからしっかり最後までお願いしますよ? 全くさっきまでの元気はどうしましたか? 子供は元気が一番ですよ! それに、ここはちょっと違いますから……油断させて……おっといけないいけない……」
何か含みのある言い方だ。

「何?」

「いえいえ」
トコトコ
そして当然リキュバスも次の部屋についてくる様だ。

「真の恐怖はまだこれからですし……」

「ま?……それ本当? ブル」
確実に市田の癖が移りつつあるアリリ。

「おっと口がすべった。今のは独り言として聞き流して下さいね」

「はいっ!」

「では続き行きますか?」

「ちょっと待って欲しいピカ。トイレ行ってきまチュウ」
横から口を挟むネズニ男。

「別に私に断る必要は無いわ? 黙っていけばいいのよ。あんたがトイレをする姿を想像しちゃうじゃない? マナー違反でしょ?」

「ですが黙って行ってしまったら置いて行かれる可能性もあるピカ。そうなると色々と……」

「うるさいわ! こっちはこれっぽっちも来て欲しいとは考えていないの。そこを理解してくれると助かるわ」

「成程納得したでチュウ。でも僕にはついていく理由があるピカ。では行ってきまチュウ。すぐ戻るピカ」
とことこ

「全く、愚かな鼠ね……じゃああいつは置き去りにして先に進みましょう」

「な? そんな事言わずにちょっとだけ待ってやりましょう」

「あんなの置いてけばいいんだよ。そうすればこの現状から1人少なくなって嬉しいんじゃないの? あんたそんな状況が好きなんでしょ?」

「お! 言われてみればそうですね! じゃあ置いていきましょう!」
しかし

「戻ったピカ。快便で、ストレートバナナだったチュウ! ピカチュウスッキリでピカ!」

「こらこら脱糞ネズミ! 貴様の脱糞の状況と、排泄物の具体的な形を話すな。死〇ね♡」

「すいませんチュウ。ですが伏字の意味をなしていないピカ?」

「続けて言っていないからしっかり伏字としての役目を果たしているでしょ? このアホネズミ!」

「口の悪い子供だチュウ」

「ネズニ君早かったね。じゃあ行きましょう。引き続きお願い出来ますか?」

「そうね。続き行くわ!」

「助かります」

「次は? もう二階にお部屋ないみたいね?」

「次からは3階になりますね」

「だよね? あら? 何かしらこれ?」
2階と3階の丁度中央、階段の踊り場になっている空間に、何かが置いてある。

「ああ、これはコンビニのミニステップのカニサンドです」

「ど、どうしてそんな物を?」

「1から説明しますよ?」

「うん」

「まずですね、コンビニのミニステップのステップ部分を【階段】、そう、英語のステップと考えます」

「ふーん」

「そして丁度その中央に存在するいわゆる【階段の踊り場】とは、2階と3階の架け橋のような存在です」

「うん」

「そこに、そのコンビニのカニサンド。これは、カ+二→2。+サン→3+ドと考え、カ23ドとします」

「ええ?」

「それをここに置くのです。要するに、2階から3階へと渡る階段の踊り場。そう直角になっているこの部分は角(カド)ともいえますよね?」

「まあ確カニ

「ヒヒヒヒヒィw ヒヒヒヒヒィィww」

「は?」

「ヒッヒヒィ……い、今のは不意を突かれましたヒヒヒ……で、ですね、ヒヒィw……この踊り場に置く食べ物として最高に相応しい食べ物なんです。カドの間に23→ 

【カ23ド→カニサンド】

と言う事です。その前に【ミニステップの】を付けるとほら! 2階から3階に至る小さい階段の踊り場置かなくちゃって思いませんか?」 

「思わないけど」

「ま? ですが私は思ったのです。これは常に文章を書いている者なら気付いてしまう事なんですよね。そして、これを思い付いた時、右手が痙攣を起こす程に興奮したんですよお。要するにこれは、2階の全工程を終えた英雄達に私から贈られるささやかな栄誉のサンドです。そう、これから更なる地獄である3階に向けて移動するお客様に対し、餞別の意味を込めて贈られる最も相応しい食べ物なんです」
得意気に語る市田

「な、成程。で? これも食べられるのね?」

「おうよ! ですが、これを食べる事の出来る英雄は少ないです」

「ああ、さっきのところで皆脱落するのね?」

「そうですね。ここで諦める方がほとんどです。あの部屋のスタンプ台には鍵があってそれを探せる者が少ないと言う事でして」(本当はヒント張り紙があるんだけど、それは絶対に教えないよ……ヒヒヒ)

「人気は無いのはここのせいじゃ? せめてヒントだそうよ」

「ま? そうですかねえ? じゃあ一つだけ……マネキンをじっくり調べると……」

「そんなの薄暗くて見える訳ないでしょ?」

「な? なる! それだ!」

「あそこだけラストダンジョンよ……あそこで挫折してそれを体験した人が口コミで広げて人気が出なくなった、まであるわよ?」

「な? ではどうすれば?」

「まず明かりを付けないと」

「なる!」

「明るいのは嫌リキ」

「え? なんでよ?」 

「嫌いだから嫌いリキ!!」

「ふーん。暗いのが好きだからあんな魔法を使えるのね? 他にも何か使えるの?」

「そう言えば知らないなあ。リキュバスちゃん他にも何かあるのかい」

「ここで使うとまずいかもしれないリキ」

「大丈夫大丈夫w」

「本当リキ?」

「おうよ!」

「おうよ!」

「じゃあ行くリキ?」 

「もったい付けなくてもいいよ!」

『万人の心の中に潜みし愛の聖霊よ、この者達の中で、今も眠り続け、永遠に訪れぬその時を待ち続けている悲しき聖霊よ……今こそこの者達の理性を乱し、本能を曝け出し私の虜に……数多の殿方の心を引き付けよ……フェアズーフング!』

           ♡プリーン♡

「ああ……♡リキュバスお姉たまあ♡」
にゅう ノロノロ
おや? アリリの動きが止まり、目がハートになっていないか? そしてリキュバスを求めるように両手を前に出し、ゆっくり歩き出す。当然唇もタコの様に突き出し、彼女を吸い尽くそうとしている。まるでゾンビである♡ しかし、健全な小説であると言うのにとんでもない事態になってしまった……大変遺憾である♡これは誘惑の術か? 成程……サキュバスと言えば暗闇にする魔法と言うよりはむしろこの分野が得意であったな♡
ピカチュウウウウウ♡」

「リキュバスサーああああああん♡」

「リキュちゃああああん♡」
ネズニにドフキュラ、ニイラ男も目をハートにし、ニイラ男に至っては包帯が真っピンクに変色しながらにじり寄っておる♡

「ああリキュバスちゃん……近くで見るとこんなに綺麗だったんだね♡♡」
のそのそー
更に、年老いて既に枯れ果てた男だと思われた市田の目もハートになっていて、徐々に彼女との距離を詰めて何かをしようとしている。これはまずい予感が……早く彼を止めなければ……♡

「安心してリキ! もうそろそろ切れる頃リキ!!!!!」

「はっ!」
正常に戻るアリリ。

「ごめんリキ。やっぱりこうなると思ったリキ! 止めとくべきだったリキ……あれ? でも、おかしいリキ」

「え?」

「この誘惑呪文、いままで同性には効いた事はなかった筈リキ……男の子達がリキに群がる予定だったのに……」
ふむ、今一瞬私が私でなくなった気がした……だが、もう大丈夫だ……しかし、同性には効かない筈の呪文がアリリに効いてしまった理由は、そっちの気が少なからずあるのか? 止めてほしいものである。健全な小説でなくなる危険性がある。

「ハッ私は一体? さあ次の部屋に行きましょう」
市田も少し遅れ正気を取り戻す。

「何? 今の気持ち?? 一瞬だけどリキュバスさんが性の対象に見えた気がして……気のせいよね……私、男好きだし」
これこれアリリ! オブラートに包まぬか!

「そうですよ。これは多分リキュちゃんの仕業ですよww君は突然こんな……そう、その一つおかしいところが君の欠点でもあり、良いところでもあるんだ!」

「ニカ!」

「え? なにそれ?」

「え? リキ何かやったリキ?」
ウム……この娘、一人称は私の筈だが、時々語尾であるリキを一人称にする場合があるようだな。

「無意識なのね? ま、いっか。それに市田さんに比べればしょぼい癖だし」

「NO!」

「でも怖かったー……危うく変な世界に足を踏み入れる所だったわ……」

「どうしてかしら? 不思議だリキ!!」

「私も不思議だよ! 勘弁してね」

「ほんとにそうです! で、次は三階の東側にある玩具の間ですね。行きましょう!」

「玩具ね? おもちゃって事か……」(お化け屋敷に相応しいかもしれないわ。髪の伸びる人形とか出てきそうね……ここも気を付けないと……)