magisyaのブログ

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25話 ときめきメモリアリサ

 それにしても凄いなアリサは・・

私なら震えで歌どころではない。

アリサの様に歌い続ける事は到底出来ないであろう。

その鼻歌で従業員に気付かれてしまえば

隆之を崇拝する一部の従業員だったら

妨害されてしまうというのに・・

心臓に悪い事は止めてほしいものである。

なのに彼女はそんな危険を全く物ともせずに

余裕の表情。一体何故なのだろうか?

 

 まあ長い戦いであるからこれ位の余裕がなければ

続かないのであろう。

それとも? この程度の事は彼女にとっては

昼食後のコーヒーブレイクとなんら変わらない

日常茶飯的な出来事なのであろうか?

この幼女、いずれは大物になる器なのかもしれない。

 

 ♪ゴシゴシ ゴシゴシ♪

 

洗剤の泡が、徐々に黒くなって行き、それに伴い

おぞましいユッキーの顔がドンドン薄れていく。

ユッキーの表皮が完全に消え

内部の頭蓋骨が姿を現した。もう一息である。

 

 何? 普通顔を書く時に

頭蓋骨からは書かないだろうであるだと?

まあ一般的にはそうであろう。

ただ、このユッキーの作者は

頭蓋骨を描き、生命を吹き込んだ後

乾いてから皮膚を描き

表情を付け足していくといった

写実主義スタイルでなのであろう。

 

四コマ漫画の作家の越後矢サイバン氏も

楽屋裏で、人物のどこから書きますか? 

との読者の質問にこっそりと

 

『骨です』

 

と教えてくれたのだ。

なんと・・これは凄い秘密を暴露したものである。

 

一流は決して口外しない秘中の秘を

吐露してしまった訳だ。他の絵師から

ブーイングが来る程の秘密を事も無げにな・・

実際やってみればわかるが、骨のあるなしで

絵の深みが全く違う事に気付く。

 

当然一流なら誰しもやっている事だが

一般人は人物を書く時

骨などそのキャラにはないという先入観から

当然皮膚から書くだろう。

だが、先に骨を書かない絵なんて

フニャフニャのナンパ野郎が書く絵である。

皆さんも一流の絵師を目指すなら

手抜きをせず骨から書く事から始めてみると

とんでもない速さで上達するかもしれぬな。

体の基礎となっている骨。侮るなかれである。

 

このユッキーの絵師も

暇と、更に細かい物を描く技術があるならば

骨だけとは言わず、細胞の一粒一粒を細かく描き

顕微鏡で拡大した時その細胞の核や

ミトコンドリアや液胞なんかも

再現しているに違いない。

飽くなき探求心を持っていれば

大抵の絵師はこの境地に辿り着く筈。

世界は広いのだ。金にならない拘りを持つ

プロもいる事を覚えておいて欲しい。

確かに漫画などの連載で登場するキャラクター全てに

そういった手間は掛けられそうにはないであろうが

このユッキーは単品物。

しっかり顔の基本の頭蓋骨から書く事も

選択肢の一つに入るのではないだろうか?

日本人の技術をこんな化け物の顔を描く事に使うのは

少々悔やまれるが

プロなのだからどんな物にも手は抜かない。

そういう事なのであろう。

ただこのプロも被写体を選び抜く眼は無かった様だ。

私がこの技術を持っていても

斉藤隆之の顔を描く仕事は確実に断るであろう。

 

♪ゴシゴシ ゴシゴシ♪ 

 

響き渡るブラシ音とアリサの鼻歌。

 

10分程経過しただろうか?

そして、少女は額を腕で拭う。

デッキブラシを掃除道具置き場に戻し世直し完了。

ツルツルの白い大理石が嬉しそうに輝いている。まあ

この行為はユッキーにしてみれば一方的な殺戮である。

そして、その姿は傍から見れば、ただの

トイレを掃除している健気な幼女そのものである。

彼女の活躍で、ユッキーは完全に消失。

ホースで黒い水を排水溝に流し任務完了。

このトイレの平和も守られたのだ。

 

だがアリサよ、大分毒が蓄積されていないだろうか?

幾つものユッキーを立て続けに見て来ている筈である。

遊戯室で1つ、プラネタリウムで1つ、植物園で2つ

これは植物園で回復させたから良いとしても

更にビュッフェ会場で2つ、エレベーターの天井

そしてこのトイレ。既にまた4つ見ている筈。

そろそろ植物園に戻って

回復させた方が良いのではないだろうか?

(ふぅ、終わったか。くっなんかフラフラするかも。

さて、良い事をした後は推理タイムだな)

54階に戻るアリサ。

ところが、会場入り口に黄色いkeep outの

テープが張られていた。人の気配も少ない。

入り口付近にいた、真理と同じ制服を着たおじさんが

声をかけてきた。恐らく警備員だろう。

 

「そこの幼子おさなごよ、会場はたった今閉鎖する事となったよ

部屋に帰りなさい」

 

「幼子じゃないもん。小5だもん。大人だもん!!」

こいつも言ったか・・どいつもこいつもと思いつつ

半ば諦め気味での反論。

 

「え? こっ、この身長で? そ、そうだった

お嬢ちゃんは大人だったな、悪かったよ・・ムグウ」

目を白黒させ、驚きで心臓と目玉が

顔から飛び出しそうになるのを

両手で必死に抑えるおじさん。

アリサに動揺しているのを気付かれる訳にはいかない。

それは、彼女を傷つける事になるのだから・・

 

アリサは、小さいとか幼いと言われるのが嫌だった。

身長は120、背の順ではいつも先頭、前へ習えは憧れ。

いっつも腰に手を当てて先頭をキープしている。

 

「女の子は小さい方が可愛くていいのよ」

 

ママはそう言うが、それは

本人が高校の頃に175と長身で

男子からは余りモテなかったらしい。

だが、女子生徒にはモテモテだったとか。

そのお陰でその高校の男子は

ママに女子生徒を全部取られ

彼女は誰も居なかった程

 

それを鬱陶しいとすら思っていた彼女にとっては

アリサが小さい子に生まれてくれて

本心からよかったと考えているのだが・・

 

アリサに言わせれば

会う人会う人に小さいと言われ

 

「小さいは余計よ!」 

 

が口癖になる程言われてきた。

彼女が大きくならない限り

これからもそれは言われ続けるであろう。

小学校でも、授業参観の日に

 

「あれがママだよ」

と大柄の女性を指差し言ったら親友に

 

「あんまり似てないね」

 

と言われた事は今でも覚えている。

 

アリサも両親と同じ刑事になるのが夢。

その第一歩となる警察官の採用試験では

一般教養だけでなく身長制限があり

女子は150以下は試験すら受けられない事もある。

更に年齢制限がある為、後30センチを何としても

期限までに伸ばしたいと考えているのだが・・

20才を超えたら伸びは止まる。

だから伸ばすのは若い今しかないのだ。

きっと小6になれば成長期が来て、ママを超える程

大きくなると言い聞かせている。

思い込みの力だ。

 

「痛っ? なんか痛いなあ。あっあれだ」

アリサは、スカートの内側で先程の傷が

れていたのに気づき、膝を出した。

すると、おじさんもアリサの怪我に気付く。

 

「おや? お嬢ちゃん、足怪我しているのか。

これ、使いなさい」

 

おじさんは、胸ポケットから絆創膏を取り出す。

普通の絆創膏だが、真ん中に何か絵が書いてある。

 

「おじいさんありがとう。気が利くじゃない

あれれー? この絆創膏何処かで見た事あるなあ。

げげっ」

 

よく見ると、あのオーナーの笑顔が

絆創膏の真ん中にプリントされている。

このホテル専用の絆創膏だろうか?

なんとも傷の治りにくそうな絆創膏である。

あの男の見境なく自分の顔を

備品や消耗品に付着させる癖は

何とかならないのであろうか?

そして、そんな汚らしい顔が書いてある絆創膏を

あろう事か心臓付近の胸ポケットに

入れている命知らずの警備員。

 

「お・おじい? そうか、さっきの幼子発言の

復讐なんだな? まだ48だと言うのに

おじいさん扱いか・・口は災いの元だな。

以後気をつけねばな・・

ところで、これを見た事あるのかい? 

これ、うちのホテル専用の絆創膏なんだよ。

他には無いすっげえ秘密があるんだぜ!

ほら、このホテルのオーナーの顔の入ったロゴ! 

すげえかっこいいだろ?」

 

「え?」

 

奇妙な事を言う警備員。

それを聞き、唖然とするアリサ。

しかも、何故かハイテンションである。

まるで子猫が親猫に、初めてネズミを捕まえて

得意げに見せている時の様な

キラキラした瞳でアリサを見ているのである。

これは・・まさか?・・アリサの

 

「まあかっこいい絆創膏♡」

 

と、言う決して彼女の口からは

未来永劫に出て来る筈のない

リアクションを待っているのだ。

 

どうやらこの男、オーナーの絆創膏を

心臓付近に近づけた影響で

感情が、思考回路が、脳みそが

おかしくなってしまっている可能性が高い。

 

このホテルの従業員は、この警備員の様に

斉藤孝之を盲信している者と

植物園の係のお姉さんの様にそうでない者

真理の様に、半信半疑の者と

3種類の派閥があるようだ。

一刻も早く真実に気づき、全員が

否定派に転じてほしいものである。

 

アリサはこの時、自室の皿や、ワイングラスにも

同じ絵柄のプリントがされていた事を思い出す。

当然それらには多少なりとお金がかかっている。

確かに隆之の金であろうが、こんな意味の無い

使い方が許されるのであろうか?

人々を苦しめる効果を含んでいる呪いの写真。

 

まあ自分大好きと言う心を貫き通す男が金を得たら

こうなってしまうのかもしれない。

一本筋が通っていると言えばそうなのだが

私には間違った使い方としか思えない。

 

(食器だけでなく、こんな物にまで

プリントすると言うのかあのじじい)

 

アリサはそう思いながら

直接貼るからあまり効果は無いけれど

マジックで表面の汚すぎる顔を塗り潰した後に

嫌々膝に貼る。 

 

ペタッ

 

そして、そのプリントを信じられない事に

かっこいい等と言ってしまった。

可哀そうなこのおじいさんの目を

覚まさせなくてはいけないと

アリサの正義を愛する心が発動し

頭脳が急速に回転を始める。 

キュルルルルルルルン ルンルンルーン

 

---------------------------Fourth battle start----------------------------

Alisa VS yonjyuhachisainoojisan

 

「いいえ! そうでもないです! おじいさん

この顔をかっこいいと思うのなら

絶対に眼科に行った方がいいよ! 

後、精神科も忘れずにねっ! 

そうそう脳神経外科もだよ!! 

毎日の通院が全快の鍵だからね? 

きっと治るから諦めないで!」

魔矢ミキの様な口調で

はっきりとおじいさんに伝える。

 

「また言った、2度も言われた。

親父にも言われた事無いのに・・

分かったよ、アンチエイジングのお店にでも行って

若返る事にするよ」 

悲しそうに、昨日戦死ガンバレの

アムあむくちレイの名台詞を呟く。

 

--------------------------------End of Battle--------------------------------

Alisa win 2経験値獲得! 0G獲得!

 

 

「しっかし行ったり来たりだなー」

ぼやくアリサ。

しかし、毒が不特定多数の人が食べる物の中に

混入していたのだ。閉鎖も仕方の無い事だろう。

 

「仕方がない 部屋に戻ろうっと」

5階に向かう為、エレベータに乗ろうとした時。

先ほど飛び出していったまま持ってこなかった

竜牙刑事が声をかけてきた。

 

「おや? 54階は立ち入り禁止だよ

まだ毒が漂ってるかもしれないし危ないぞ?

早く部屋に戻りなさい」

 

「え? あ、今戻ってきたんだ

さっき怒って走って行った刑事さんでしょ?」

 

「ん? そうだ、ここの現場検証を忘れ

ホテルの外まで犯人を追いかけて行ったのだが

よく考えてみたら、犯人の姿も何も分らなかったんだ。

ガハハ。それで、今ここに戻ってきたんだ。

君はかなり小さいし危険だぞ

捜査の邪魔になるからさっさと帰りなさい」

 

「小さいは余け・・( ゜д゜)ハッ! かっこいい」

 

       ♡<心> <奪>♡

 

おやおや? アリサの目がハートになっているぞ。

 

「え? 今の話の中にかっこいい要素って

あったのか? わからない、何なんだこの幼い子は」

竜牙は驚き戸惑っている。

竜牙は、ボディビルを学生時代からやっていて

男からはかっこいいとか、キレてるねとか

言われて慣れているが、こんな幼い女子に

かっこいいといわれたのは生まれて初めてなのだった。

 

「無鉄砲でも、犯人を許せずに

体が先に動いてしまう刑事さん好き、大好き♡!♡

後、幼いなんて言わないで♡?♡

アリサはもう心も体も大人なんだからね♡!♡」

 

心はどうだかわからぬが

体は完全に幼稚園児なのであるが・・

全くアリサはおませさんなのだな・・

そう、アリサは、熱くて真っ直ぐな男が好きなのだ。

そういう意味で、松谷修造もドストライクなのだ。

 

「わ・わかったわかった。アリサちゃんというんだね?

お詫びにお小遣いあげるから

1階の売店でアイスでも買って

その熱くなったハートをクゥルダウンしなさい」

さらっとキザな台詞を吐く竜牙。

異様にクールダウンの発音がよかった。

帰国子女なのだろうか?

そして、120円を受け取るアリサ。

 

「たったこれだけじゃ

私のハートに灯った炎を消す事は出来ないわ」

そう、たった1アイス程度では

アリサの燃え上がった炎は到底消えない。

 

「うむ、そうか? じゃあ仕方ない。

ぬう、給料日前なのに・・」

追加でしぶしぶと120円を渡す竜牙。

 

「ありがとう。また、会えるよね? 刑事さん」

受け取った240円を

宝物の様に胸に抱きつつ言うアリサ。

 

「おう、気をつけて部屋に戻るんだぞ」

(可愛い子だなあ。後10年・・

いや何を考えとるんだ俺は・・)

 

「はいっ!!!!」

今日一番の、いや、アリサ生誕史上最大の切れのある

はいっ! が出た。余程嬉しかったのであろう。

ウキウキ気分でエレベーターに乗る。

 

売店が1階にあるんだ。

部屋に戻る前に行こうっと♪

都会のお店ってどんなの売っているのかしら?

刑事さんの240円使いたくないけど

一応見るだけ見てみようかな?」

竜牙との思い出のお金、本当に必要となった時しか

使わないと心に誓っている。

 

ここまでお読みいただきありがとうございます

次週の木曜に次を投稿しますが

こちらに行けばすぐに続きが読めます

https://novelup.plus/story/200614035

https://ncode.syosetu.com/n3869fw/

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