答えです
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「え? どういうことだよ?」
大庭くんはポカンと口を開けたまま、魔技者と沢矢さんの顔を交互に見ます。
すると相変わらず沢矢さんは楽しそうに笑い、魔技者は唇を噛みしめている。
一体どういうことなのでしょう?
「いったい何があったんだい? 僕だけが蚊🦟帳の外だよ!」
「ねえ大庭くん、さっき言った名前、もう一度フルネームで読んでみて」
「え、ああ……じゃあ、男の子だったら――“大庭奏人”……?」
「うん、ゆっくりもう一回」
「ゆっくりね……お お ば か な ひ と? ……おおばかなひと……あれ? え?」
大庭くんが眉をひそめる。
「まだ分からない? じゃあ女の子だったら?」
「大庭加奈子……? おおばかなこ? ……おおばかな……」
その瞬間、彼の顔が真っ赤になった。
「えっ、えっ、ちょっと待って? それって――! おい、魔技者お前ええ!!」
大庭君の豹変に魔技者は顔を伏せ、肩を震わせて笑いを堪えている。
「そう。おおばかなひと=大バカな人。と、おおばかなこ=大バカな子
ってことよね? ふう、魔技者くん? これはどういうことかしら?」
沢矢さんが微笑みながら詰め寄った。
「くやしかったんだもん。沢矢さんはわたしの中のアイドル🧚♀️だ。大庭にはもったいないんだもん!」
「そうだったの、魔技者君も……ちょっと嬉しいわ、ありがとう。それに考えてくれたことも感謝してる。確かに名前単体では素敵な名前よ? でもね、名字と組み合わせたら……ちょっと耳👂️触りの良くない響きになっちゃうわね。下手したら子供たちの未来をぐちゃぐちゃになるかもしれないのよ? それに気づいたとき、私はどういう気持ちになると思うの?」
「……」
「アイドルと思ってくれていたんでしょ? そんな私に対して酷いことをするのは良くないわね」
「しょんぼり」
「うわぁぁぁぁ! 魔技者ぁぁぁぁ!」
大庭くんは机をドンと叩いた後突っ伏した。レモンティー☕が静かに揺れている。
一方、魔技者はカップを持ち上げ、静かに口を開いた。
「ふ……大袈裟な大庭くんだこと……でもね? わたしがこんな風になるのも納得じゃあないか? 君はわざわざ独身のわたしに子供の名前の相談をしたのだ。そしてわたしはなぞなぞや言葉遊びが得意ということも知っているはずだよ? 長い付き合いだしな。ここで魔がさしても仕方ないだろう?」
「でも一生モノの名前にそんなこと……」
「言葉の響きには、意外と侮れぬ罠が潜む。そう、なぞなぞのようにな……それに気づけなければ一生騙され続ける。わたしは君たちの危機管理能力を試したのだ。結果沢矢さんが見事見抜いた。よかったじゃないか」
「でもそれって後付けじゃない? だって、もし私が気付かなかったら命名する前に止めてくれた?」
「う……」
「ほら! 危機管理を確かめるだけなら命名し役所に届ける前に真実を言うはずよ? でもそんな気、微塵もなかったんじゃない? 子どもに変な名前をつけてこっそりとほくそ笑むんでしょ? 最低じゃない!」
「それは気付けない間抜けな君たちが悪いんだ。さっきも言ったけど独身のわたしにそれを聞いてしまった事に対して一かけらもの罪悪感も無いんじゃないかい? じゃあおあいこさ」
「まあ、それは大庭君も悪いと思うわ。でもね、あなたのトラップには大きな欠陥があったのよ!」
「なに? トラップ? トランプ🃏じゃなくって?」
「あなたがいつトランプを使ったのよ! トラップね? そのトラップを見事トレジャーにする方法があるのよ! たとえさっき気付かなくても、名前を付けてしまった後でもね」
「そ、そんなものあるはずが……」(沢矢さん……うまいな……!)
「ふふwそれがあるのよ! それはね? 私の名字で名乗ってみるって言うことよ!!」
さらりと言い放つ沢矢さんに、ふたりの男の視線が集中した。
「え?」
「さっきもそれ言っていたよね? どういうことだ?」
「あら? あなた、気付かなかったのね? わかったわ、教えてあげる……」
「沢矢さん?」
大庭くんも彼女の言う事が分からないようです。
『沢矢かなひと』
『沢矢かなこ』
――よね?」
「……!」
魔技者が息を呑んだ。
「……さわや、かなひと……さわやかな人……さわや、かなこ……さわやかな子……ッ! まさか……そ、そんな」
なんと先程は悪口のように響いていた言葉が、褒め言葉に変わっていた。魔技者は目を丸くしながらつぶやく。
「……さわやか……? おおばかなこと比較するとめっちゃいい感じだ!」
大庭君は万歳をし、魔技者はまだ残っているレモンティーのカップを置き、椅子にもたれ天を仰いだ。
「わたしの完敗だよ。そうか、沢矢さん……君はすごいよ……わたしの仕掛けた罠を見抜いただけじゃなく、逆に謎を仕掛けるとは……おまけにその答えはわたしの想像を遥かに超えていた……完敗だよ……だけどね? 怒りとか憎しみの心は無いんだよ……それどころかなんか、爽やかな、気分なんだ……さわやかなひと、だけにね!!」
「上手くないわよw」
「ふうー」
図書館の午後。外を見ると二羽のハト🕊️が仲睦まじく飛んでいる。魔技者はそれを見上げながら、呟いた。
「……結婚、おめでとうッ!」
それは、ハトたちに言ったのだろうか? それとも大庭君と沢矢さんに言ったのだろうか? それは、誰も、分からない。
「ありがとう幸せになるわ! 魔技者君がくれた名前、大切にするわ! 沢矢としてね。フフw」
「おみそれし魔技者」
「なにそれ!?」
「おみそれしましたの魔技者ヴァージョンですけど?」
「すべってるよw」
「名づけも失敗、新ギャグも失敗……だめだなこりゃあ」
「あははははw」
「大庭くん?」
「だ、だっておみそれし魔技者って言ってたw」
「もう!」
「笑いのツボ🏺は夫婦でも違うんだね」
「そうみたいね。じゃあ大庭君、私の苗字になってくれるわね?」
「でも、おみそれしましたの「ました」の部分を魔技者に変えたのは秀逸だよ?」
「うるせえ。で、私の苗字になるんでしょ?」
「ひえ? いやいや、ちょっと待ってくれ、なんか沢矢さんの名字になるみたいな流れだけど、大庭の名字は代々伝わる由緒正しき苗字なんだ。絶対に、これだけはぜってえに譲れないよ!!」
「ええええええ?」
「ええええええ?」
魔技者と沢矢さんの二人の声が図書館中に響きわたります。
刹那、静まり返っていた閲覧席の一角が、一瞬だけ騒がしくなり、静かに読書をしているほかの利用者たちの視線も集中します。更には司書の苛立ちの視線までもが飛んできたのに気付くやいなや、三人は慌てて頭を下げます。
名前は、親👨👩から子👦👧への最初のプレゼント🎁。
けれどそれが、別の意味に聞こえてしまうこともある。
名付けは、ただの儀式ではない。苗字と合わせたときに響く音までを頭に入れて。フルネームでも大丈夫であることを確認した後に完了する。そこまでを想像し、付けなくてはいけないのだ。それを見抜く力が求められる繊細な儀式なのだ。
——By 魔技者——
解説
魔技者が仕掛けたのは、音の罠(なぞなぞ)。
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「大庭かなひと」 →「大バカな人」🧟♂️
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「大庭かなこ」 →「大バカな子」🧟♀️
というふうに、**「大庭(おおば)」+「か○○」**で構成された名前が、意地悪な言葉に聞こえてしまう仕掛けだったのです!
しかし、沢矢さんはその“音の罠”をいち早く見抜き、自分の苗字「沢矢(さわや)」にすれば、
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「さわやかな人」👦
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「さわやかな子」👧
になるという、爽やかネーム逆転劇を見事に決めたのでした。
まあ実際
『さわやかなひと』
と言う響きを周りに気づかれてしまったらいじられる可能性は高いです。さて、本当に沢矢さんはこの名前を利用するのでしょうか? まあ大庭君が苗字をぜってえに譲らないと語っていましたので却下される事でしょう。
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今回も茶番を混ぜた感じの問題形式になりました。個人的に気に入ってしまったのでなぞなぞを出題する場合、しばらくはこのままでいこうと思います。文章力も上がりますし。
今回2問出来たので、これから1時間後の20日の17時に2問目を出します。
こんなに冴えているのは久しぶりです。2問目もお楽しみに!