magisyaのブログ

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私の行く先々で事件が起こる件について 3話 プロローグ

 ーーーーーー7月23日 某所にてーーーーーーー

「ククク……全ての準備は整った。ここまでの計画を練るのに一年以上掛かったわ……特に【そなた】の口癖の把握。これには苦労した……どういう訳か一般人のそれとは異質な癖があったからな。
だが、それを全掌握した末にワシは……この癖を逆手に取り、頭の中で壮大なパズルを完成させた。
そう、それを実行せし時、そなたはそれに気付く事なく静かに終焉を迎えるだろう! そうだ。この特殊な言語を操るそなたにしか通用しない方法だ。そなた一人の為にこれほど知恵を絞った……
それもこれも……警察の職務怠慢のせいだ。奴らは親身になっては動いてくれなかった。奴が、社会的に認められている人間と言う事を知った途端、ワシの提出した間違いない証拠を意図的にもみ消し、無かった事にした。
有り得ぬ……有り得ぬ。有り得ぬぅ!!! あの刑事……いや、警視だったか? 風原と言ったか? あのクズ……クズの極み。
今回の件で骨身に沁みて分かった。所詮警察など無能の極み! あれでは警察でも何でもない。民の血税を啜るだけの寄生虫だ……結局ワシの様な一般人は、泣き寝入りするか、自らの手で断罪していくしかないのだ。
ならばワシは確実に後者を選ぶ。まあ考えて見れば警察などに頼る事は無かったかもしれぬ。何せこれはワシ自身の手でやらねば気が済まぬ。例えこの手を汚してでも……手を……汚す? 違う。否だ! これは、犯罪ではない。
間違えて。そう、アレはプログラムミスで誤発注の元生まれてしまったただの、

【失敗作】

に過ぎぬ。それも、自身でもそれを認め、何故かそんな自分自身が誇らしいと言う戯けた事すら平然と言ってのける程にな。呆れて物が言えぬ。そんな非常識な生物を消去する為の軽作業。これさえ終えれば、ワシにとって確実により良い世界に変わってくれる。当然いずれあの警視も必ず処分する。必ずな。まあ、それはまだ先の話だがな。まずは、奴を消す。それに専心せねばな。それに必要な|食材《えんじゃ》達……君達には苦労を掛ける事になるだろう……あんな生物。否、産業廃棄物の胃の中に放り込まれる定め……すまない……本当にすまない……許してくれ」
と言いつつ鞄の中を確認する。

「まず、奴の好物のコーヒー豆。これはいい物だ。特に香りが素晴らしい物を厳選した。 
そして、甘い焼き菓子を2枚。これもそなたの嗜好に合わせ、厳選に厳選の末に選んだ材料で作らせた。そうだ。木下製粉の最高級小麦粉、さぬきの夢。ニュージーランドマヌカハニー。|烏骨鶏《うこっけい》の卵。そして、波照間産特等純黒砂糖を原料としたワシ独自の組み合わせで誕生させてしまった……もしこれを普通に量産し店頭に並べてしまえば確実に採算度外視でその店は有名になる前に破産するであろう。特別な日だけに作られるその時限りのオーダーメイド。これだけの為に作られた究極の焼き菓子だ。
それをイタリアのレストランに持ち込み、シェフに頼み込み専用の石窯で焼かせた。
そなたに食わせるには心底勿体ない気がするが、これだけ手間と金を掛けたのだ。間違いなく気に入ってくれるであろう。そうでなくてはならない。
次に、砂糖水で出来た氷。そして、ローストした牛肉。後は、保温パックに入ったアッツアツの蟹。そして、後はこの野菜、そして、血の様に赤く、ベトベトとした汁と、そなたの大好物のレーズン。後は【これ】。この中で、唯一食材でない物にして最重要なアイテム。
これはアレを呼び寄せる為に必要不可欠な触媒だ。そしてこれと……アレをあの中にセットは……してあるな。最後にこれ……ム、無いぞ? 調達せねばならぬ【忘れ物】があったか……まあ、それは明日には揃うであろう。必ず揃えて見せよう。それらを順番通り振舞えば完成する。
フム、それにしても完璧と思われたのだが……ワシらしからぬミスだ……まあ、この一つ抜けた所がワシの欠点でもあり魅力でもあ……クククク……おっと、何故この言葉を……? 忌々しい……|伝染《うつ》って……しまったか……そなたの口癖……これもそなたを研究しすぎた弊害か……まあ良い。もうすぐその口癖を聞く事もなくなるのだから。そうなればこの染み付いた癖も淘汰されるだろう。
しかし最後の最後にチェックして置き良かった……よし、後はそなたがいつも通りの反応をしっかりしてくれるかだけだ。
……大丈夫だ。イメージ通り。間違いはない。ワシはこの怒りを腹に飲み込み、冷静に時間をかけ、何度も何度もそなたを見て研究して来た。そして、いつしかワシは、そなたに掛けた言葉に対する反応、そして行動パターンを事細かに見極める事に成功してしまった。
そして、それを頭の中でありありと思い描ける。そのパターン通り必ず正しく返してくれる筈。そう、絶対に成功する! 今こそが最高のタイミングだ。そなたが最も得意とする物で葬り去ってくれる……覚悟しておく事だ。
いつかやろう。いやそれだけじゃダメだ。

「明確な目標を決めよう……」

「よし、来週だ……」

この繰り返しの末、いつしか人は忘れてしまう……これだけ努力しても、いつまでも実行せず機を伺っている内にその思いは退化し、消滅してしまう。
極端な話、今出来る事が明日になってしまえば既に出来なくなる事もある……人は、成長出来る。が、逆に何もしなければ退化する。更には老衰し、それに伴いモチベーションも落ちてくる。
そして、それよりも恐ろしい事は、そなたにされたあの過去の出来事ですらいつしか|泡沫《うたかた》のように消えて無くなってしまうと言う事だっ!! 人の甘さ故か? どんなに辛い過去だとしても時と共に忘れてしまう……悲しいが真実だ。だから、今、この瞬間がワシにとっての最高の状態と確信している今だからこそ、ワシは行動に移す!!!! 

【今しかない】

| Carpe diem《カルペ ディエム》……ククク……ホラティウスに呆れられてしまうかも知れぬか……? だが皮肉なものだ。結果、最も嫌いな生物を一年もの間研究し続けたと言うのだからな……まあワシの人生の貴重な一年を費やしてしまった事は仕方ない。だが、この苦労必ず報いるだろう。決して投げ出さない……神に誓おう……否、そんな物は無い。在るのは、死神、のみ。さあ……明日の夜、そなたと短くも陳腐で月並みで他愛もない幕間劇を演じようではないか。それでも良いのだ。どうせ、観客はおらぬのだから……演者はワシとそなたと数品目の食材だけ。
そして、これら食材に導かれ、その幕が引く時頃には、そなたはそなた自身の手で【過去に背負った|贖罪《しょくざい》】を果たす。
代償は、その命。食材で贖罪……完璧だ。ククククク……ハァーッハッハッハッハァ―! ダァアーッハッハッハッハッー! ワシは、その劇の監督兼、演者だ。これは、このワシがワシ自身の為だけに演出し、生み出される【芸☆術★作☆品】なのだ!!!」

ぬ? 何者かが何やら香ばしい事を恥ずかしげもなく一人語りしておるな? 誰かに聞かれてもおかしくない位に大っきな声で言っていたぞ? ……全く(///照///)この鉄面皮の私ですら頬を赤く染めてしまったではないか! 誰かに聞かれたらとっても恥ずかしい事故に遭う可能性もある|事故《ことゆえ》に、もう少しボリュームを絞らなくては駄目であるぞ? はっ! 事故に? 何気なく語ってみたものだが事故には、|事故《じこ》と同じ漢字を使っているな! 何という発見! 何か関係性はあるのだろうか? まあ良い。しかし、私ほどの語り部ともなれば新たな発見を仕事中に出来てしまうのだなあ。私自身が恐ろしい…… ハッ失礼失礼。突然おかしな事を語り出して済まない。そして自己紹介をしておこう。私はこのお話の語り部である。これからこの話を語っていく者である。よろしく頼む。
前回を見ている方ならご存じかと思われるが、登場人物の詳細を見る事の出来る機械のスカウタァは既に修理してある。
修理費に4億1300万程掛かってしまったが、大丈夫である。まあ全財産の数パーセントを使っただけだ。安心して欲しい。
これで、登場人物のステータスや特技も見る事が出来るので必要に応じて語る事も出来るだろう。ただ、出て来る人物全員のステータスを語るつもりは無い。アリサが視た人物のみ詳細解説する予定だ。
ぬ? 視たとは何か? であるかだと? 今ここで説明しても良いのだがかなりの文字数になってしまう。なので出来れば前話か前々話を遡り各自確認してほしいのであるが、そんな暇がない方に対し簡潔に説明すると、この話のヒロインアリサはファイナルファンタジアで言うヲイブヲ使用出来るのだ。現在の彼女のMPでは4回位しか使えないがな。それを使用した際のみに、私が更にこのスカウタァで見た情報を上乗せして解説すると言う流れで行こうと思う。よろしく頼む。

 しかし、先程の人物の語り口……その人物の中で、許せない誰かの命を奪おうとしている。そんなニュアンスが感じられる?? 皆さんも同じではないだろうか? そうだ、これから何か新しい事件が起ころうとしている。そんな前触れに聞こえないか? まさか……私の予感が的中してしまえば、恐ろしい事件が起こってしまう前触れと言う事なのか? ヴァルハラと言う天界に住む戦乙女ヴァキュルリアは、オディーンの命の元、近い内に死んでしまう者の声を聴く事が出来、その地に赴きこっそり観察し死ぬのを待ち、それを確認してからその魂をエイ! ンフェリアとし使役し……天界に送ったり、別のエイ! ンフェリアを獲得するための兵士として利用した。だが私は、これから殺人を起こそうと考えている者の心の声を聴く事が出来る様になってしまったのかもしれぬ。今まで出来なかったのだが……よもや? スカウタァの新機能なのだろうか? だが、修理人は新機能を付けたとは一言も言っていなかったがな。もしやこれこそがスカウタァの真の機能なのかもしれぬ。長い事使っていてアリサに壊されてしまったが、その前段階でも既に少し故障していて、その機能は使用不可能になっていたのかもしれぬな……大事に使っていかなくてはならぬな……それにしても前回のボケ人間コンテストから僅か数時間しか経っていないと言うのに……再び……いや、三度アリサは事件に巻き込まれてしまうのか? 何事も無ければよいのだが……

     ーーーーーーーーー3話 welcome to 五鳴館ーーーーーーーー

「こんにちは! 私はアリサ。小学5年生。お友達のケイトちゃんに

「憧れの修ちゃん(松谷修造)に会えるよ!」

と言う誘惑に負け、お笑いの大会【ボケ人間コンテスト】に出場し、見事実力で優勝したの! その時の雄姿、見せたかったなあぁ♡」
と、彼女は言っているがそれは嘘。実際は準優勝である。まあ小5で準優勝という事実もすごい事ではある。だが、優勝と準優勝では大分意味合いが違ってくる。
最後の戦いで勝利したと思ったら引き分けになり、延長戦で負け激高し、真の優勝者から口八丁にその権利を|捥《も》ぎ取ったとしか言えない状況ではあるが……な……まあそのコンテストの規定のルールを捻じ曲げてまで優勝出来た事は事実。それは彼女の口の巧さが無くては達成不可能であった。それを実力と言うなら彼女の言う通りなのかもしれぬ。

「で、賞品も貰った事だしお家に帰ろうってなったのよ……ところが……」

        ーーーーーーーボケ人間会場入り口ーーーーーーーー
「アリサ! 喉が渇いたしちょっとお腹も減ったわ。駅に行く前に喫茶店でも行きましょう」

「はいっ!」

「と言ってもちゃんとあるかしら? ってあったわ!」

「ホントだ! 良さそうなお店ね」

「フンガー! フガガガ、フガガフフガガガガガ?」

「え? どうしたの?」

「フンガー君、なんかアリサに家に来ないかって言ってるみたいね」

「え?」

「フガフガフフガッガ!!」

「あんたにお礼がしたいって」

「ああお米とかお金の? ママは凄いね。この子を完全に理解してるじゃん」

「刑事の勘よ。で、どうするの?」

「まあここで一休みしてから考えるわ」

「そうねフンガーさんも来る?」

「フガガ」
首を横に振る。そしてどこかに行ってしまった。
ダダダダダ
「あらあの人走るの凄い早いわね」

「そうよ! その俊足のお陰で優勝したんだし!」 

「確かにそうだったわね。じゃあ行きましょ」

「はいっ!」
カランコロンカラン

「いらっしゃいませ」
席に座りメニューを見る
アイスコーヒーとチーズケーキがおススメらしい。

「じゃあアイスコーヒー!! あとショートケーキ!!!」

「私もお願い」

「かしこまりました」

「綺麗な店内ねえ……え?」
店内を見回すと何かが額に入れて飾ってある。

「店員さんあれ何?」

「え?」

「その額の中のお金? 何でそんなの飾ってるの? コインを飾る喫茶店なんて見た事ないよ?」
どういう訳か額の中央には500円玉が一つ飾ってある。

「え、あ、そ、そのお」
もじもじもじもじ。

「え? 何でどもったの? 顔まで赤らめて……そんなに恥ずかしい質問じゃないでしょ?」

「あ、あの……さ、さっきお店に来た素敵な方が、これは幸運をもたらすから飾っておけって……(///照///)」
顔を真っ赤にしつつ話す。

「え? そんな嘘を簡単に信じたの?」

「そうでもないの。コインを飾ってから千客万来で大忙でして。急に売り上げが2倍以上に上がって驚いてるんですよ……」

「その人どんな人だったの?」

「そうですね……身長は190位で、紫色のサラサラの髪の毛の色をした方だったわ。ああ……また会いたい……」
恋する乙女の表情。

「心ここにあらずねえ……でもこの特徴……もしかして白川さん? こんな所でくつろいでいたって言うの? 会場から徒歩2分の所よ?」
何と言う自信だろうか。自身の強運を信頼しきっているようだ。

「でね、あの方、私にだけ笑いかけてくれたの……ポッ」

「勘違いだと思うけど……てかアイスコーヒーまだあ?」

「……」
しかしその問いには答えず上を見てポーッとしている。

「この人心ここにあらずね。どうする?」

「うーん……出よっか」

「じゃあね」
カランコロンカラン