magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

み、みそおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

「あれは二年前の秋。司会の所に嫁いだ妹の夜船が、俺の所に遊びに来ていた」

ホワンホワンホワンホワーン

ーーーーーーーーーーーーーーーーー白川のマンションーーーーーーーーーーーーーーー

「なあ夜船! この写真に何か一言付けてみないか?」

「兄さん……私はもうお笑いはいいのよ。門太さんは専業主婦でいてほしいって言ってくれているし」

「そうか、あんな奴でも甲斐性はあるんだな」

「うん。最近はビデオを見せてくれるよ」

「なんのだ? いかがわしい物か?」

「違うよ。そうそうそのビデオ、今日持ってきたけど見てみる?」

「はあ? いかがわしくない奴だったら別に見ねえよ」

「wwまあまあそう言わずに」

そう言いつつビデオデッキにカセットを差し込む。

「おいおい勝手に……」

パッ

『うわああああああ! 何て何て何てぇ奇想天外なネタなんだああああああ』

ダダダダダッ

ぬ? これはあの司会が舞台上を走り回って叫んでいるシーンだな。

「ん? 途中からじゃねえか?」

「違うよ? これテレビ局の編集さんにまとめて貰ったんだって」

「個人的に見るビデオをプロに編集させたのかよ……」

『さあ! ポインツを表示して欲しい!!』

突然場面が切り替わり、舞台の縁ギリギリに立ち、客席に中腰になり、両手をY字に広げつつ、マイクを向けるポーズをしている。

「何だよこれ……何のポーズだありゃ? 子供かよ……」

「これね? 彼が司会をしていて、ネタが終った後のシーンだけを繋げたビデオよ。かっこいいよね……盛り上がると、舞台上を凄い速さで駆け巡るの。光と同じ速さよ!」

「なわけねえだろ? そんな光さんを侮辱する様な嘘を突いて……光に土下座して貰いたいぜ。もういいよ。だが肝心のネタをカットするのか……そんなシーン繋げてもちっとも面白くないな」

ビデオを止める白川。

「あっ、ここからいい所なのに……」

「もういいってwニュースでも見るか」

リモコンでチャンネルを変える。

「でもかっこいいと思わない?」

「まあお前の旦那だからお前はそういう気持ちになるだろうな。残念だが俺は見て損した、気持ち悪い、こいつ死なねえかなあ? と思いました」

「そっか」

「しかし、あいつどうやってお前と出会えたんだよ」

「ああ、彼が兄さんのいない時に電話かけて来た時があって」

「え? それをお前が対応したのか?」

「そうよ。貸していた本を返してくれって内容で、その時に兄さんライブ巡業で戻れそうになかったから知らない筈よ。で、私が代りに届けに行ったの」

「そうだったのか……で、あのスケベジジイが夜船に一目惚れして、しつこく言い寄って来たと……」

「半々」

「は? 半々だぁ? そんな表現初めて聞いたぞ? どう言う事だよ?」

「半々は半々!」

「クッ……お互いイーブンで惹かれ合ったって事かぁ? 嘘だろォ? 俺が女だったとしてもあいつには一切惹かれんが……しかもアレ、俺よりも一回り歳が上のゴミジジイだぜ?」 

「私の旦那さんよ? アレ呼ばわりしない!」

「す、すまん。だが、ゴミジジイはいいのかw」

「それも駄目! 突っ込みが追いつかなかっただけでしょ」

「だよなwでも、お笑い芸人の妹なんだからしっかり突っ込んでほしかったぜ」

「さっきも言ったけどお笑いはもういいの!」

「残念だぜ……でもよぉ……他にもいい男は居たんじゃねえか?」

「そうでもない……かな……」

「クッ……そうかい(年上の男に惹かれるって事は、死んだ親父の影を重ねちまってるって事か?)」

「そう言えば最近門太さんに怒られちゃったのよね」

「ん?」

「今日も持ってきたけどこのお弁当の事でね。ちょっと食べてみて?」

「おお唐揚げ弁当じゃないか! 大好きだぜ!!」

「召し上がれ」

「頂くぜ」

もぐもぐ

「どう?」

「ん? この唐揚げとっても旨えなあ。うわあああああ御飯が進むよ!! パクパク。うーん。こんな鶏肉初めてだぜ!」

「でしょでしょ?」

「こんな旨いもん食えてあいつ幸せだなあ……? (。´・ω・)ん? お前。怒られたって言っていなかったか? 何で怒られたんだ?」

「それがね、門太さんはお弁当のおかずでは鶏肉のから揚げが一番好きって言っていたのよ」

「ほう、だからしっかり入れたんだろ? 別におかしい所なんか無いじゃないか」

「そうそう。でも実は鶏肉じゃなかったんだ。蛙を鶏肉の様に料理して入れたの。で、それを伝えたら突然オエーって言いだして」

「ブッ」

「ちょ、ちょっと!! 汚いよ!」

「ご、ごめん。でもよお……」

「美味しいって言ってくれていたでしょ?」

「だがその……あの蛙だろ? 緑のよお、ヒロスィのTシャツに付いていて喋るよお」

「そうよ! でもしっかり洗ったし、兄さんも美味しいって言って食べたでしょ?」

「旨かったけどよお……でも怒られてもしょうがなくねえか? 鳥じゃねえし……詐欺じゃねえか?」

「兄さんも同じ事言うのね」

「仕方ないと思うけどな? で、それを話したらあいつも吐いたのか?」

「オエーって口で言っただけ、実際は吐いていないわ。とっくに胃の中だし」

「そうだよな。正に胃 (井)の中の蛙ってか?」

「ちょっと違うかも」

「そうだなw字が違うかwだが蛙って鶏肉に似た味がするって聞いた事あるな」

「そうよ。私ね、本物の鶏肉を料理するのは嫌なのよ」

「何でだ?」

「最近ねネットで知ったんだけど、鳥のエサに、別の動物の肉骨粉が使われていて、人体に危険だって言うのを知ってね」

「え? 肉骨粉ってなんだ?」

「ちょっとうろ覚えだから調べてみるね。ええと……出て来たわ! 牛・豚・鶏から食肉を除いた後の屑肉で、脳、脊髄、骨、内臓、血液等を加熱処理の上、油脂を除いて乾燥させ、細かく砕き、粉末とした物だって。なんか気持ち悪いよね?」

「おええええ……脳とか内蔵? 蛙食った後に聞く話じゃねえな……ガチで気持ち悪くなってきた。そんな事初めて知ったぞ!?」

「私も最近まで知らなかったよ。でも、大切な旦那様にそんな餌を食べた鳥の肉を食べさせる位なら、そう言う危ない物を食べていない自然の中で育った蛙さんの方がまだ安全かな? って思って頑張って素手で捕まえたのに……芸人は体が資本だからね」

「苦労は分かるが、苦手な奴は居るからな……蛙はな。まあ夏は大量に獲れるだろうしな。しかしお前が池で蛙を捕まえてる姿を想像したらなんか健全でかわいいなwでも、可愛い嫁を怒るか?」

「うん。でもこれで彼は蛙アレルギーでは無いって事が分かったから、これからも遠慮なく蛙を出し続けるわ。もっと美味しく出来る気がするし。騙しきって見せるわ」

「そうか、頑張れ(夜船の住んでる付近の池から全ての蛙が消失して蛙の鳴き声が聞こえないと言う噂が流れちまうかもな)」

「じゃあ私そろそろ帰る。兄さんも食べ物の事しっかり調べて、栄養つく物食べてね」

「おう」

ガチャン

「ハァ……お兄さんは悲しいぞ……そこまであいつの体を気遣ってやるなんて」

一回り年上だが、同期の味噌門太と妹が相思相愛という事を知ってショックを隠せぬ白川。

「パーンってなりましてね頭が」

ドッ

付いていたテレビから、ガハハ本舗の久本正美が得意の一発ギャグ【頭が……パーン】を放っていた。そこそこ受けている? いや違うな。テレビなので、笑い声は編集で付け足したのだろう。毎回同じ笑い声なので簡単に分かる。子供騙しにもならぬな。

「チッ……このババア何で人気あるんだぁ? 全く面白くねえのによお。まあ寝るか……嫌な事は眠って忘れるに限る」

ーーーーーーーーーーーーーーー数日後ーーーーーーーーーーーーーーー

ピンポーンピンポーン ピンポンピンポンピンポンピンポン

「朝からうるせえなあ。一回鳴らせばわかるっての」

ガチャ

「うっ兄さーん」

「夜船? どうした?」

「うえーんうえーん」

「埒が明かねえな。取り敢えず座れ」

「ぐずん」

「とりあえずお茶でも飲んで落ち着け。今、淹れてくる」

ダダダダダッ

「メソメソ」

「持って来たぞ」

コト

「ありがと」

ごくごく

「落ち着いたか? どうした?」

「捨てられちゃった……別れようだって……」

「あ?」

「門太さん、他に好きな人が出来たって」

「嘘だろ? 誰だよ?」

「確かガハハ本舗の久本正美さんよ」

「マジか? た、確かあのババア、お笑い芸人で60そこらだよな……ネタも95%が下ネタで、身も心も腐った完全な汚れ芸人!! 確か門太が37だろ? あんな女に俺の妹は負けたって言うのか?」

「兄さん兄さん……私もう生きていられない……」

「何言ってんだおめえ? まだ22だろ? あんなおっさんよりももっといい奴は幾らでもいるだろ! 落ち着け。ほら、ハイちゃんだ」

白川の飼っている猫だ。ロシアンブルーか? 灰色の毛並みが特長の猫だな。

     △△

「にゃん(=^ω^=)」

「門太さんはまだ好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい」

妹はそのハイちゃんの毛を一本ずつむしり恋占いを始める。

       △△

「にゃにゃ?(=OωO=)」

驚き戸惑うハイちゃん。

「おい夜船! 何やってるんだ! 換毛期はとうに過ぎて、これから冬になるってのに……そんな事したら風邪ひいちまうだろ!」

「好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい 好き―嫌ーい……ん? 大丈夫よ」

「おい止め……」

「好き―」

ブチッ

「嫌ーい」

ブチッ

「好き―」

ブチッ

「嫌ーい」

ブチッ

「好き―」

メキッ

「嫌ーい」

ミシッ

         △△

「にゃすけ……て(=XωX=)」

一本一本抜くのが面倒になったか? それとも早く結果が知りたくなったのか? 指でつまんで数本をまとめて抜く様な雑な占いに変わる。そしてみるみるうちに床は灰色の毛が広がり、ハイちゃんは丸裸になる。

「ニャーックション! チクショウスットコドッコイッテンダイバカニャロメキャットニンデンテヤンデイ」

「ほらくしゃみしちゃってるぞ! 駄目だって! やめるんだ! 動物虐待だって」

「好き―嫌ーい好き―嫌ーい……あら? もう毛が無いわ。じゃあこの髭で……」

と、ハイちゃんの顔に手を近づける……

「夜船!!!」

パチン

「いたい」

「す、すまん。だが髭は流石に可哀想すぎるだろ! それにハイちゃんの髭は6本だ。って事は目に見えて分かる。結果は同じだ」

白川も体毛を抜いている時点で止める事は出来たであろうが、妹の鬼気迫る表情に見ている事しかできなかったのだ。

「ごめん……ごめんね。私どうかしていて……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー翌日ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「門太に文句を言ってやらにゃ気が済まん」

「暴力は止めてよ?」

「おう」

バイクで門太の住むマンションに向かう事に

「この辺だよな……あれか」

ダダダダダッ ガチャ

「おい! テメエどういうつもりだ!」

「白川か……その前に靴を脱いでほしい!」

「うるせえ! 夜船は納得しているのか? あんな年齢2,5倍増量の出っ歯ババアが再婚相手でよお!!!」

「してはいないと思う。だが僕は正美様を愛してしまった。年齢は関係ない。あの美しい出っ歯……芸術だ……」

「ババアに様付けかよ……病気だな……」

「正美様、逆から読んでも、正美様」

「駄目だこりゃ。丁寧に俳句になってやがる。季語は何だろうな? 正美様の様を、サマーと考えて夏か? ……って何言ってるんだ俺は……しかしこいつ、マインドコントロールでも受けているみてえだ。クソ!!」

「どうしました? 騒々しいですね」

「ん?」

「あら? お客様がいらっしゃる……ほんっとにびっくりした! よく来たわね、いらっしゃい!」

ピンク色のワンピースを着た、おかっぱ頭で前歯が異様に伸びていて、スラッとした体形の老婆が奥の部屋から姿を現し挨拶をかましてきた。

「こ、こいつは……何て美しい」

「白川君。この方が正美様ですよ。美しいでしょ?」

「白川さんですね。よろしくお願い致します」

「確かにババアだが……しわくちゃで醜悪な顔だが……前歯の輝き【だけ】は今まで見た何よりも美しい……」

その前歯は、ダイヤモンドの輝きを想起させる程。

「パーン」

「うわっ? 何だこいつ!!」

「白川さんに美しいって言われて……嬉しくって感動でパーンってなりましてね頭が……」

「前歯だけな? 顔は褒めてねえからな? それテレビでもやってるけど一体どういう意味だよ」

「そのまんまですよ? なったんですよ。パーンって、頭がね」

「どこがだよ! しかし、こいつも何かの宗教を? 駄目だっ、ここにいたら俺までおかしくなりそうだ。今日の所はこの位にしておいてやる!」

「まあ、もうお帰りですか? これから美味しい手料理をやったらムンムンかましたらあと思っていましたのに……」

「そんな気分ではない」

「その前に折角来たんだ。君に1つ仕事のオファーを出す。メールしとくから確認しといてくれ」

「ん? なんだ? まあいい」

バタン

白川は自分の部屋に戻ると彼のパソコンに一通のメールが届いていた。それを確認すると……

「仕事の依頼か? 今昼は最高……? どんな番組だ? 検索してみるか」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「夜船! 今度門太がMCの番組で俺も出演する事になった。何か恨みの言葉でもありゃあ伝えてやるぜ? それともこのボイスレコーダーに吹き込んで直接伝えるか?」

「へえ、何でそんなの持っているの?」

「俺の秘密兵器さ」

「ふーん。じゃあ、録音してみようかな?」

「おう、じゃあ5秒後に録音だぜ(奴が絶望する様な言葉を言ってやれ)」

ピッ

「まだ好きだったのよ? 愛していたの……」

ゴン

「え……?」

予想外の言葉にうっかりボイスレコーダーを机の上に落とす白川。

「おい……夜船……恨みの言葉だっ……て言ったろ?」

「そんなの無いよ。私の気持ちはずっと門太さんの物」

「そうか」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

言葉数は少ないが、白川の中で凄まじい何かが芽生える。

「ちゃんと伝えてね」

「そうする」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー撮影当日ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「やあ白川君! 僕が初司会する事になった番組、今昼は最高を盛り上げてくれよなああああああ?!」

「今昼は最高……久本正美の冠番組じゃねえか? お前……もしかして……」

「僕は家庭よりも仕事を優先する人間だった様だ。彼女が僕を成長させてくれた。そして今度、あのボケ人間コンテストの司会の話も来ているんだ。凄いだろ? これで僕は更なる栄光への道へと進む事が出来るんだあああああ!」

「……それはよ、お前の笑いの実力ではないって事に気付いてねえって事だぜ? もうとっくに無くしちまったんだな……芸人としての矜持って物を」

「笑いだけが全てじゃない」

「そうか、そう言う考えもあるな……そうだ……妹はな、お前にこんな事を言っていたぜ?」

「何だい?」

「これだ」

ピッ

録音したデータを再生する。

『まだ好きだったのよ? 愛していたの……ゴン』

「ひ、ひいいいいいいっ!!」

ぬ!?

「おい……てめえ……何だよそれ……死ねよ!」

全くその通りである。

「あ……(しまった! 水が出てしまった……だ、大丈夫……ほんのちょっとだから……)」

と言いつつ股間を見る。

「どうした? 何だ急に下なんか見て」

「な、何でもないよ……だって……今の声、幽霊みたいじゃん。不意打ちは卑怯だよ? ああ気持ち悪!! 僕は幽霊とかお化けは大の苦手なんだよ! 鳥肌立っちゃったよ……」

「は……あ? お化けだと? 気持ち悪いだと? ぶっ殺すぞ!」

かつては愛した筈の女性の声を、気持ち悪いとは……この【カツラお漏らし男】は一体どういう神経をしているのだ? 

「確かに言い過ぎたと思うが、そんな事で死にたくないよ。ああ……一刻も早く正美様の声を思い出さなくっちゃ!!」

そう言いつつ携帯を出し音声データを再生する。

『パーンってなりましてね頭が』

「ハァー癒される……これなんだよなあ……」

「……」

「お前、あの婆さんに唆されてあいつを切ったって事か?」

「何の事かな?」

「この番組の司会になりたきゃ結婚しろって迫られたんだろ? それで、好きでもないあんなクソババアと……」

「半々」

それは、妹に門太への気持ちを聞いた時、正に聞いた、彼女特有の言葉だった。その言葉に白川は目を見開く……そして……

「……夜船と同じ事を……言うなあああああ!」

「悪い……彼女の口癖だったね……いつの間にか伝染っちゃったみたいだね……」

「俺は帰る。気分が優れん」

「待って欲しい! 君はそれでもプロなのか? お客様は君を見に来ている。まさか何もしないで帰るのか? そんな事は許される筈がない」

「何とでも言え」

帰りの歩みを止めず、一瞥もせずに返す。

「君は0点の芸人だ! もう芸をやる資格はない! この事はお客様にしっかり報告させてもらう! ああ……心を込めて謝らなくては……不安だぁ……今一度正美様の声を聴かなくては」

ピッ

『パーンってなりましてね頭が』

「ああああ……助かる……ありがとう正美様……」

「……」 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あら? 兄さん。もう収録終ったんだ?」

「あ、ああ」

「早かったね。夕食の支度するね……今日は蛙と鮒のリゾットだよ。あっ、ねえそう言えば門太さん何て言ってたの?」

「ん?」

「ほら! 私の声、聞いて貰ったんでしょ?」

「ああ (まずいな……)」

「どう言ってたの?」

「ああ……喜んでたぜ?」

そういいつつ、右手で左の肘を掻く様な動きをする。

「嘘」

「……」

「兄さんって、嘘を突く時、肘を触るよね?」

「……! 俺にそんな癖があったのか? クソ! よく見てるな」

「兄妹だもん。ねえ、本当の事を言って?」

「……」

「お願い」

「じょ、冗談だとは思う。あいつも芸人だしだからさ……だから話半分で聞けよ?」

「うん」

「幽霊みたいじゃん、気持ち悪っ……て、言っていた……」

つい本当の事を話してしまう白川。

「そっ……か」

「だ、大丈夫だろ? 芸人の妹だもんな? だよ、な? そう……だろ?」

「そう、ね。ごめん……ちょっと夕飯は作れないかも……」

「だだだ大丈夫大丈夫。一食位食わんでも平気へっちゃらさ」

「じゃあ、ちょっと、休ん、でくる……」

まるでゾンビの様な歩き方で部屋を出て行く夜船。

「やばかったか? 嘘を突き通すべきだったか? いや、どうせ見破られる。あいつは鋭いからな。ま、まあ一晩寝りゃ何事も無かったって起きて来るよな? 大丈夫だよな?」

ーーーーーーーーーーーーーーーー30分後ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「夜船? ちょっといいか?」

心配になり部屋に来た白川。まず、ノックをする……が、返事はない。

「ん?」

ドアは開いていた。

「入るぞ?」

だが、人の気配は無い。

「夜……船? どこ行った?」

一抹の不安。無意識に玄関へと走る。

ダダダダダッ

「靴は……ある。じゃあどこだ?」

ドッキン ドッキン ドッキン ドッキン 

早鐘の様になる心臓の音を必死で抑え、耳を澄ます。

……ジャー

「風呂? 水の音? あっ!!!!!!!」

ダダダダダッ ガチャ

そこは、最悪の光景が広がっていた。

なんと手首を切った妹が、浴槽に左腕を入れ、うつぶせになっていた。

浴槽内の湯が、赤色に染まりつつある。まだ切ったばかりか? 

「馬鹿野郎が!!!!!」

慌てて腕を水から出し、白川のワイシャツの袖を引きちぎり、妹の肘の付近を締め付けるように巻き、心臓より高くする為に風呂のイスの上に置き仰向けに寝かせる。そして病院に電話。10分後に救急車が到着する。

「何があったんですか?」

心配そうな救急隊員。

「失恋って言えばいいのか? いや違うな 全否定されたんだ……」

「全否定? 何と申したらよいか……」

「いいんだ」

10分後病院に着き、診察室に搬送される。

「失血による気絶です。早期発見のお陰で輸血の必要は無いでしょう。ですがためらい傷が多く……取り敢えず暫く入院して頂ますね」

「そうですか……くそ、傍にいながら……」

「いえ、発見が早かったからこの程度で済んだんですよ!」

「夜船……そんなに思い詰めてたのか……気付いてやれなかった……くそ!!」

病室で眠る妹の左腕を見る。包帯で覆われているが相当の傷がある筈である……

すると……

「門太さん?」

「お? 目が覚めたのか」

「ここは天国? じゃあここで待ってればきっと門太さんに会える……」

「しっかりしろ! ここは病院だ!! お前は天国には行って居ない。それに天国でいつまで待っていてもあいつは来ない。あいつは地獄行きだ」

「門太さん居ない? 門太さん会いたい……」

心ここにあらず。

ゴゴゴゴゴゴゴ

「味噌さん♪門太さん♪味噌門太さんったら門太さん♪」

自作の、門太を讃える歌を歌い始める。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

「門太さんは英雄♪ 門太さんはすばしっこい♪」

「すばしっこいだぁ? ああ、舞台上を走り回ってたなあのゴミ。そのビデオを見せられてそう言うイメージが付いたって事か……」

「門太さん今何してるの……生きてるの?」

「くっ」

何気なくテレビを付ける。怒りを抑えなくては……気を紛らわせなければ……その思いからだろうか? だが、それが逆効果であった。

『その言葉にまたもうグサッてなりましてね……ホント衝撃でしたね』

ドドッ

テレビでは久本のネタが流れ出す……お約束のテレビ編集での笑い声が、虚しく病室内に響き渡る。

「チッ」

すぐにテレビを消す。訪れる静寂。すると、今まで起こった全ての事が次々と脳内に蘇ってくる。

『半々』

ゴゴゴゴ

『パーンってなりましてね頭が』

ゴゴゴゴゴゴ

『ああああ……助かる……ありがとう正美様……』

ごゴゴゴゴゴゴゴ

「夜船は門太に、門太は正美に……どいつもこいつもヤンデレばっかじゃねえか……」

「来世では……絶対に……一緒に……なろうね♪」

彼女は、目を覚ました後、真っ先に門太の事を話し出し、そして、彼を未だに愛しているという事実、そして、60近い老婆に横恋慕された事を認め、それをとっくに諦め、それでも、輪廻転生後、再び関わり合いたいという願望を語る始末……打ちひしがれている白川には更なる追い打ちだ……

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

「み」

「みそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

私の書いている小説です

リンク先はブログより4話ほど進んでいます。先が気になる方はご覧下さい。

https://estar.jp/novels/25771966

 

https://novelup.plus/story/457243997

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