magisyaのブログ

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私の行く先々で事件が起こる件について4話 エピソード10 亡者の両手内より生まれいずる物

今回から地獄内限定スキルが登場します

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「仕方ねえよ社長だし、誰も叱って貰えない。ああなっちまうよ……で、俺が編み出した新技術があったんだ。上に教えて貰ったやり方だと面倒だと思ってな。新しく考えて実行した」

「へえ」

「俺は左利きで右脳型。創意工夫が得意。既に確立された手法があっても、ここからもっと良く出来ないか? と新たな可能性を深すのが好きでな。で、代わりに喋りは余り得意でない。黙々作業が得意だ」

「そうなの? 職人気質なのね」(え? でも今会話している限り結構上手な気もするけど……分かり易いし。それに相当の記憶力もあるし……何で?)

「で、兄弟も両親も右利きなんだ? 俺だけ左。これ、結構すごいと思わないか?」

「私もよ……私は一人っ子でオヤジだけが左利きだけど」

「おお! オソローイ!」

「オソローイ!」

「おお! ノリいいねw俺は左利きだけど両利きに憧れてな、職人が片手しか使えないってのはなんか恥ずかしかったからなるべく作業は右手でやる事にしたんだ。そうしていく内に左脳が鍛えられて喋りが少し上達したのかもな」

「そういえば右手を動かすと左脳が活発になるのよね」

「そんな話を聞いた事があって、試しにやってみたら効果覿面。右脳で浮かべた映像を見ながら喋っている感じで、今までどもって喋る事なんか出来ないでいたのにある時喋る事が次々浮かんで来る様になって、途切れる事がねえんだ。芸人の明石家ニシンかよ! って思った程だ。今思えば、俺が喋りが下手だったのは左手ばっかり使っていたからだと確信してる。右脳ばっかり育っても言語野を司っている左脳が赤ちゃんだったから喋れなかったんだよ」

「私も習字の時、右で書けって話だったけど、滅茶苦茶で下手で、書き終えた後多分お世辞だと思うけど褒めてもらって、それからよ。じゃあ右も使ってみるかな? ってなったの。それまでもお喋りは得意だったけど、右を使う様になってから更に磨きがかかった気がするわ。気のせいかなあ?」

「分かんねえけど元左利き二人に共通の経験があるなら、無視できねえと思う」

「そうね……え? 元左利き?」

「今は両利きだもんなあ」

「凄いなあ、右は上手に使えないから」

「そうかてっきり両利きだとばかり思ってたわ。でもすぐに使える様になるぜ! 俺よりよっぽど賢そうだしな!」

「まだ先になりそうよ」

「謙虚だなあ」

「そうね。謙虚さだけでご飯食べてる」
そんなのうそだよ。

「そうだったのか! にしても今まで理由が分からなかった事なのに、こうして思い返し話してる内に俺に起きた変化を少しずつだけど紐解けていく感じがして嬉しいぜ。アリサちゃんのお陰だぜ」

「お役に立てた?」

「ああ、で、話を戻すと、新しい方法を思い付きそれを使用している瞬間、それを偶然見かけた社長が、その日から黙って俺の技術を自分の物にし、使い始めた。こんな技術だ。はああ!」
鈴木の手から何かが浮き出てくるではないか! なんだ?
ごとっ



「え?」
ブロックの様な物に写真が? これは一体どういう事だ?

「どうした?」

「これは?」

「ん? その階級で知らないのか? 嘘だろ?」

「知らない。私、ここに来たばかりよ」

「そうか? え? なんで? 閻魔様に会っていないのか? 俺の場合、死んで気が付いたら王の間に居たんだ。で、罪を報告した後、そこで教えて貰えたぜ?」

「え? 私も会ったけどそんな事聞いてないよ?」(ここに来た時は地面に叩きつけられたからね。でも1丁目の亡者もこれと同じ事をやっていた気がするわ)

「へ? まあいいか。これは俺の技術を説明する為に呼び起こした。口では説明が大変だからな」

「呼び起こす……地獄ではそういう事も出来るの?」

「おう、で、何に使うかは分からんがこんな品物がある」

「作っている物の役割を知らないの?」

「そうだな……これは比較的大きいけど、もっと細かい品もあるし……それの用途を一々知らされる事は無いなあ。覚えきれん。数百の品があるんだぜ? 加工屋さんは加工して終わりさ!」

「じゃあ拳銃とかの部品を作っているとしても、その部品で作られた拳銃で誰かが死んでも知りませんでした。ってなってしまうかもしれないのね?」

「考えすぎだよwまあうちは下請けだけど、親会社もバルブ関係の品物が多く、武器の部品や戦車の部品にはなりそうにない物ばかりだぜ? その辺は大体分かっている。で、この部分の下を見てくれよ? はあ!」
ごとっ



「また? 今度はさっきの奴に穴が開いた!」

「そう、その下の部分の穴、表面の凸凹の部分を削ってから明けてあるだろ?」

「確かに」

「そうしないと商品として成立しないからな。でもこれ、今までは……はあ!」
ごとっごとっ




「このサンダーって言う緑の砥石が回転する機械で削ってたんだ。汎用課でな」

「金属を石で削れるのね」

「高速回転だとな。その代わり火花が出て目に入ったら一大事よ! 防塵眼鏡必須。それに熱も持つし、粉塵で息苦しい。で、削りたての部分は素手で触れん」

「うん」

「砥石も消耗品。ある程度削るとすり減って新しいのに替えないといけない。後、違いがあるんだ。さっきのと違いが分かるかい?」

「お金もかかる訳ね」

「それもある。もう一つは仕上がりの精度だ。見てくれうおお」



再びブロックを出し、アリサに近付けて見せる。

「そうね……あまり綺麗じゃない気がする」

「ああ、サンダーで削ると凸凹に仕上るんだ。人の手でやる事だからな……毎回形が異なる」

「でもこれは綺麗よ?」
2番目に出したブロックと見比べる。

「そうだ。この秘密は……この部分を……はあっ!」



「このエンドミルって工具で……はあっ!」



「こんな感じで機械にセットして削ると、毎回同じ模様で仕上がる上に、自動班でも加工出来る様になる。自動班の機械には扉が付いていて、どんなに切り屑が激しく飛んでも人にぶつかる事は無いし、常に油をかけつつ加工するので熱を持つ事もない。セットしてボタンを押せばその部分以外に次の加工まで一気に加工してくれる」

「へえ、どんな風に?」

「削った後穴が開いてたろ?」

「うん」

「削って終わりにする事も出来るが、次工程も命令しておくと、削った工具とは別の、穴開けをする事の出来る工具を機械が命令通りに持ち替えてくれるから、削った後、決まった場所に穴を開けてくれるんだ。それに5つ前のブロックを見て貰えばわかるけど、ひし形の所にも4つ、その上にも4つ穴が開いてるだろ?」



「うん」
 
「その部分も一度セットして起動ボタン一回押せば全て明けてくれる。品物自体を90度回転させて、工具の真下に来る様に動いてくれて、その後で穴を開けてくれるんだ。つまり、1枚目のブロックから一気に2枚目のブロックの状態まで加工出来る訳。今まではサンダーで削る作業を挟んでいたから一気に出来なかったんだよ」

「そうか! 火花も出ないから息苦しくならないし、砥石の消耗も無い! その上速く終わらせる事が出来るし、熱くもない。一隻二兆どころじゃないね。あっ間違えた! 一石二鳥以上よね!」

「ん? 今、何で同じ事二回言ったんだ?」

「一隻二兆と一石二鳥だからよ!」

「同じじゃねえかwまあいい。更にはエンドミルはサンダーで仕上げるよりもムラなく早く出来る。時短プラス、正確さを両立させた上に火花が目に入る危険性もなくなった訳だ。その加工を、俺が汎用で、フライスという機械にセットして加工している姿を見てた社長が無断で自動班に取り入れた訳だ」

「社長なのにそんな事も気付けなかったんだ」

「ああ、俺でも気付けた事をあいつは気付けなかった」

「へえ」

「俺の仕事を見て、それをヒントと考えたんだろうな……そこから閃いたんだ。この作業を自動班にやらせれば全て一回の起動で削る事が出来るとな……」

「それヒントじゃなくてもう答えよ」

「そうだ。間違いなく俺がその加工をしている姿を見た後に自動班にその工程を任せる様になった。この部分を自動化出来りゃ、一気に加工出来た。だが、それに関しては当然一度も感謝されてはいない。

『鈴木! 今まで面倒だった削りの作業をそんな方法で解決するとは……良く思い付いたな!』 

とか、

『君の仕事中、気付きを得たんです。感銘を受けました。あなたの手法、技術を自動班で取り入れてもいいでしょうか?』

と褒めたり、使用許可を得ようとするのが普通じゃないか? 黙って使うなんて人としておかしいよな?」

「うん。人じゃないしね。ゴミクズらしいわ。頭沸いてる」

「そうだよなあ……まるで子供だぜ。だが奴も社長としてのプライドが邪魔してか? バイトの俺と直接は交渉出来なかったんだろうな。説教する時は説教く的に……おっと失礼! 噛んじまったw積極的に話しかけて来るのになあ……情けねえ男だ……それでもその技術はどうしても使いたかった。自分で思い付けなくても、従業員が使ってたらそれは俺の技術! と言う考えから黙って奪ったw」

「はああああ……」
深いため息をつくアリサ。

「それとも俺のあの作業が答えとは認識出来ず、本気でヒントだと思い、そこから閃いたんだから自分自身で1から考えた末の成果。と、考えたのか?」

「あのゴミならあり得るわねえ」

「サラリーマンがいくら新技術を編み出しても全て上に吸い上げられる。無償でな。その企業全体の技術となる。だが、一つも感謝される事なく終わる」

「鈴木さんが渡したいと思った訳じゃないんだよね?」

「そうだね。勝手に俺の仕事ぶりを見て、サンダーでガリガリと削るより効率良いなあと判断したんだと思う。だから自動班で取り入れたんだからな。もしこの技術が素晴らしい物として、奴の中でもそう判断したのなら、本来俺に直接交渉して、

『使ってもいいか?』 

と聞くのが普通だと思わないか?」

「うん」

「だがその一番重要な交渉部分を省き、無言で自分の物にしてしまう。頭を下げ譲って貰うという事が出来ない情けない男という事だ。
社長なんだから何をやってもいいんだ! じゃ通用しない。下の身分だから奪っていいと言う理由にはならん。
それどころかあろう事かさも社長自身の成果だと言わんばかりの態度。それで短縮できた時間で別のワークをやったら必然的に売り上げは上がるだろう。だが、いくら売り上げが上がろうと俺には一銭も入ってこない。毎月定額だったよ……もし渡したら自分が俺の技術に頼った事がばれちまうからな。社長ともあろう俺がそんなみっともない事をする訳にはいかない。じゃあ黙って奪えばいい。と、なったんだろうなあ。結果、奴だけ一方的に得をして、俺には一切リターンが無い訳だ。思い返してみたが奴は俺を一度も褒めた事がない。シャカリキに頑張って2台同時に機械を回していた事があって、それを見ていた筈なのに、あろう事かそれを説教の材料にしやがった」
どういう事だ?

「え?」

「年末のボーナスの時の話だ。その時、専務と社長と俺との3人で事務所で少し会話をしてからボーナスを受け取るという謎の儀式があるんだ。その時、俺の仕事ぶりなどを振り返って、これからどんな事をしたいのか? みたいな相談を3人でする訳だがその時、

『お前は2台同時に機械を回していた時もあったのに、最近はそれをやっていない。弛んでいるぞ!』 

と怒られた訳だ」

「でも2台同時に回すって事は忙しい時しかやれないよね?」

「そう、その時は大量に出ていたので仕方なしに頑張っただけ。普通に体力も使うし疲れも倍増だ。息を切らしながら働いている姿を見ていたのだが、それに関しては褒めない。で、仕事が少ないので一台しか機械を回す事が出来ない時も、しっかり見ていて、いつの間にか奴の中では

『2台同時に操作する事が出来る筈なのに、それをやらない怠け者』

と言いがかりを付け、説教をする材料とした訳だ。2台同時にやった事で間違いなく売り上げはアップしている筈なのにそこはスルー。それで更にはこれから払うボーナスは少ないんだけど、怠け者の君のせいだし少なくても仕方ないよね? という理由にする訳だ」

「死刑ね」

「止めろってwで、金は生活出来る最低限の雀の涙程しか貰っていないのに、そんな会社に常に全力投球出来る筈ないよな」

「どんなに頑張っても給料は一定なのにね。お前もその分の見返りを出せよ……図々しい。しっかしそれしか怒る事無いの?」

「ん?」

「奴はどうにか鈴木さんをその場面で怒りたいと思ってしっかりと考えて捻り出した言葉がそれしかないって事でしょ?」

「ああ、そういえばそうだな」

「って事は鈴木さんは相当優秀なんだよ!」

「そうなのか? 嬉しい話だがな。まあ奴は口が裂けても言えんだろうな。で、毎年の2月に書く、悩みとか書く紙にも

【新しい技術を書く欄】

をしれっと用意している」

「まだ搾取する気かよ……因みにそれを書いたらお給料に影響あるの?」

「ああ、勿論無い」

「www」

「従業員全員から無料で情報を搾取する気満々だ。奴はそれが当たり前だと思っている様だ。まあ、奴の利益に貢献を一切したくなかったので毎回『特になし』と、書いて提出していたがな」

「仮に書いても褒められもせず利用されるだけ。誰が教えるか!」(社長の事100%許せなくなったけど出来るだけ聞いておく! 鈴木さんも嘘を付いていないかも見極める!)

「そうだぜ! で、その翌々月の4月だ。その日突然、頑張ってくれたので臨時ボーナスを出しますって話になって、給料日でも何でもない日に心ばかりの金額ではあるが貰ったんだ」

「へえ。良い事もするんじゃない」

「だが、それ以降一度もそれが出る事は無かった」

「へ?」

「それ以上に頑張った年もあったが、それでも出ない。それで思い出してみたんだ。そうしたらその時増田って新人が入ってきて、そいつの前でこの会社では頑張ればこういうボーナスも出るのかーと期待させ、繋ぎ止めようとしていたって事だ。呆れちまうぜ全く……」

「はあ?」

「こんな会社だからそれに気付くと新入社員はすぐに辞めちまう。だからそれを防止しようと敢えて新入社員を紹介するタイミングで餌をチラつかせ、逃がさない様にしたんだ」

「どうしてそんな事したの?」

「えっとな……実はそいつが入るちょっと前に大量に退社していったんだ。高飯さんや沢戸田さん。原市さんや沼上君。女性では柳岩さんとか野河さんとか」

「知らない知らない」

「ああ、わりいわりい。まあ要するに幹部クラスや、高い技術を持っている人間が一斉に辞めたんだ。恐らく社長のやり方についていけないと判断してな。だから一番重要な、社長の腐った性格を変えるという事は一切せず、すぐに辞めない様にするにはどうすればと考えた結果が金で釣るだったという事だ。実際大打撃だったようで、従業員の増やし方みたいな物を勉強するセミナーに参加していた程だ」

「何でそんな事知ったの?」

「それが笑える話でよ、品物を直接鉄箱の中に入れると傷つくんで、その中に敷く紙を会社側で用意してくれているんだが、主に新聞紙とかなんだ。その中に綺麗な紙が数枚あって、その裏を何気なく見て見たら、新入社員を獲得するセミナーで、生徒が見る内容のプリントが中に混ざってたんだよ。恐らくそれを勉強したはしたが、全く新入社員が来ていない事から、大外れのセミナーを金払って受講したという事だろうな」

「wwww」

「そしてその新入社員の増田は一度もそういうボーナスを受け取っていない。そしてこれからも貰える事は無いだろう。まあ俺が辞めた後にもしかしたら出てるかもしれないが俺が辞めるまでには一度も無かったな。増田の名前、|連響錯覚《れんきょうさっかく》すれば騙すになるからな。なら別にいいかって感じか?」

「ええ? 別に連響錯覚で騙すに変わるからって騙していい事にはならないで……? え? 連響錯覚って?」

「ああ、

【この小説】

の専門用語で、増田って言葉を何回も言うとだますに変わるよな?」

「ますだますだますだますだます! うん!」

「この現象の事を連響錯覚って言うんだ。ただし、くどい様だがこの小説のみだがな。使い方は

【増田を連響錯覚すれば騙すになる】

と、言った感じで使ってな」

「うん、じゃあ例えば……コチンって言葉を連響錯覚すると……」
こらー! 駄目だよー! 絶対に駄目だよー!!

「そんな感じだが、それ以上はいけないぜ? 女の子なんだからさ……もう少し例えを別に出来んかったかあ?」

「まあまあ、連響錯覚しなければ大丈夫な訳だし……え? って

【この小説】

って何? これ現実だよ?」

「あ、そういやそうだ。まあ厳密には地獄だがなあ。はあ、早く出てえなあ……」

「思い出させちゃったみたい。ごめんね。それ以前にてめえの人格を矯正しろって思うわよね……え? あ!」

「ん?」

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これからも地獄内限定スキルは頻繁に登場します。地獄と言う世界設定にした理由はこれです。