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あかンデレラ 後編

 

あかンデレラ 後編

「はあコーヒーが旨いわぁ」

グビグビ グビグビ

 

「カフェインの摂り過ぎは危険よ?」

 

「もう二本目だもんね。糖質🎂もちょっと気になるわ……」

 

「あかンデ!」

 

「せやな、分かったで。じゃあ続き、行ったるでぇ」

 

「わーい😊」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あかンデ!」

パカラッ パカラッ パカラッ パカラッ

追いつけ追い越せ! 追いつけ追い越せ! 馬車は物凄いスピードで走ります。 5分位経ったでしょうか? おばあさんの小屋が見えてきました。 あれ? そういえば肝心のお花を摘むのを忘れていますね? まあ大きいお花達が二輪も居るから大丈夫でしょう。

 

「あかンデ?」

コンコン

 

「開いてるガルよぉ」

 

「あかンデ?」

開いてるガルそうですね。入りましょう……? え? ガル? しかしあかンデレラはその違和感に気付いておらず、開けてしまいます。 

ガチャ ギイイイイ

恐る恐る入ってみると、ベッドで顔を出したおばあさんが寝ていました。え? おばあさ……ん? とても人間のおばあさんには見えません。 しかも顔中毛むくじゃらです……まるで……獣です。確かこの女性? ですよね? もふもふすぎて性別も何も分かりませんが、おばあさんの家の筈です。しっかりと立札に書いてありましたから! で、そのおばあさんは、継母の母親の筈です。 確かに継母の心は【獣以下】でしたが、まさか母親が獣そのものだったとは思いませんでした……すいません……冗談です。 これは何か怪しいですよ! しかし、外見もおかしいですが、声も女性とは思えないほどのだみ声です。途中ガルとも言っていましたねぇ……そしてその声は、ほんの少し前にあかンデレラ自身も聞いた事がある声かもしれないのです。こんな偶然ってあるのでしょうか?

 

「あかンデ? 👂」

あかンデレラはおばあさんにどうして耳が大きいの? と、言うような表情で聞きます。

「え? (待てよ? あの子のセリフの後に何かあるガル! あっ! あれは多分【耳の絵文字】ガル……分かったガル! オイラの耳が大きいのはどうして? って事を聞いているんだガル!! よーし)それはね、おまえの声が遠くからでもよく聞こえるようにさ」

 

「あかンデ? 👁?」

どうして目が大きいの? という表情です。

 

「それはね、おまえの顔がよく見えるようにさ」

 

「あかンデ? 👄?」

どうして口が? 以下同文。

 

「それは……おまえを……ヒ ト ク チ デ タ ベ ル タ メ ガルゥ!!」

グワッ!

 

「なんやあ? あかンデー?」

パクリ ごっくん オオカミは丸ごとあかンデレラを飲み込んでしまいました! 彼女は身長150cmはあり、丸呑みするのはかなり難しい事ですが……このオオカミは規格外でした。しかも一度も噛まずに丸呑みしたのです。ここから推察するにオオカミの食道はゴムの様に伸縮自在だと言う事が分かります。

 

……ほんの少しだけよいでしょうか? ちょっと気になった事がありまして……少しだけ話を意図的に逸らします……誠に申し訳ございません…… 海外の童話に登場するオオカミは、牙を生やしているにも関らず、それを使う描写が非常に少ないと言うイメージがあります。 例えば3匹のこぶた🐖ブヒッ🐖ブー🐖ブゴッ という童話に登場するオオカミは、藁や木🌲で作られた家🏠を一息で吹き飛ばすほどのスッゲエ肺活量があり、その代わり牙は使いません。 そして、三匹目のこぶたの建てたレンガのおうちに逃げ込んだ2匹のこぶた諸共まとめて食べようとレンガも吹きますが無理だと言う事が分かったら当意即妙に作戦変更し、煙突から忍び込む事でその難題を解決する程の賢さも持ち合わせている! ですが運悪く煙突の真下で鍋に火をかけていて、ホカホカの湯気がおしりに当たっていた筈なのです。それでも一切動じない程の完璧なるおしりの防御力をも備えています。まあそれが仇となり、最終的には茹でられてしまいましたが……あの時、ある程度は熱さを感じる力があれば途中で気付く事が出来た筈なのですが……余りある強力過ぎる防御力の前には通用しなかったと言う事ですね。そしてオオカミ。無敵だと思っていましたが、お湯には耐性は無いようです。

 

他にもオオカミと七匹のこやぎ 🐐メー🐏メー🐐メー🐄モー🐐メー🐈ミ―🐐メー では、お母さんヤギからの言いつけで誰も入れてはいけない! と教えられていた事に気付くと、チョークを食べ、お母さんヤギの声真似をすればいいんだ! と言うアイディアを閃く柔軟な発想力と、会った事もない筈のお母さんヤギの声真似を子供達の声から推理し、大体こんな感じだろうと当て推量でイメージし、見事子ヤギ達を信じ込ませる事に成功させる程の行動力と妄想力と声帯模写能力と、子ヤギ達6匹をも丸呑みにする程の大きな胃袋も持っています。 そして、見事時計に隠れた子ヤギ達を丸飲みにした後に無防備に眠りますが、その間に一匹たりとも消化する事も出来ない程に最弱の胃液を持ち合わせつつも、帰宅したお母さんヤギに腹をハサミ✂で切り裂かれた時も一切動じない程の究極の防御力🛡と耐久性も兼ね備えるなどかなり特殊な力を与えられています。 私はオオカミはクールで賢く強くてかっこいいと言うイメージがありますが、海外の童話に登場するオオカミはほぼずる賢い悪役で、危険な存在と言うイメージがありますね。あっ、そろそろ話を戻しましょう。 意図的に話を逸らしてしまい誠に申し訳ございませんでした。

 

「ふう、2人も食べると流石にお腹一杯だガル♡よし、このベッドで一眠りするガル」

グーグー ああ……ヒロインが丸呑みにされてしまいました……一体どうなってしまうのでしょう? そして図々しくもおばあさんのベッドで眠り始めます。

ザッザッ ザッザッ おや? 誰かの足音が聞こえます。

グーガル グーガル グーガルアースゥ 

 

「ん? まんず大きなイビキだんべなあ……確かここはばあさんの家の筈だべ? だが、ばあさんのイビキにしてはデカすぎるべ」

どうやら通りかかったのは猟師の様です。そして通りかかった時偶然響いたそのイビキの大きさを疑っていますね。 コンコン コンコン  ノックをしますが当然返事はありません。

 

「おばあさんと女の子はとても美味しかったガル♡グーガル グーガル グーガルアースゥ」

オオカミがうっかり誰でも現状を瞬時に把握出来るような非常に具体性の高い寝言を言ってしまいます。

 

「何!? おばあさんと女の子が美味しかっただ? おばあさんがおばあさんを食べるなんてありえないべ。んだば今寝ている奴はおばあさんじゃないべ?」

ダン! 猟師はドアを開けると、案の定おばあさんではなく眠っているオオカミを発見します。

 

「あっ? これは何だべ? これはお届け物だ! と言う事はやっぱり女の子もこいつの腹の中って事だべ!!!」 そして猟師はあかンデレラの落とした籠を見て、誰かが訪問したと言う事も確信します。

 

「こいつ……先におばあさんを丸吞みした後におばあさんに変装し、女の子を丸呑みしてしまったんだべな? ようし!」

名探偵ユメソのような鮮やかな推理です。 チョキチョキ チョッキーン 猟師はカバンに入っていたハサミでオオカミの腹を切りました。すると飲み込まれた2人はギリギリ消化されずに生きていました! 例によって童話のオオカミの胃液は最弱ですね……そして、腹を切られてもグーグー寝ています。物凄い防御力ですね。普通の防御力であれば痛さで目を覚まします。 しかし猟師は良くハサミを持っていましたね。ファインプレーです! そして、2人はベトベトになりながらオオカミの腹から出てきました。しかし2人とも、しっかりと意識があります!

 

「あ、アカンデ……」

フラフラ

 

「あらあらどうやら外に出られたようだよ?」

フラフラ どちらも足元がおぼつきません。

 

「おお生きていたべ! じゃあオラは仕事中だからな? 後は大丈夫だべ? オラはイノシシ🐗でも狩ってくるベ。じゃあな!」

 

「助かりました」

 

「あかンデ!」

 

おばあさんとあかンデレラが頭を下げます。

 

「まだオオカミが寝ているから気を付けるんだべえ?」

 

「はい! 大きいイノシシが捕れますように!」

 

おばあさんは手を振ります。

 

「おう!」

猟師もその言葉に笑顔で答え去っていきました。

 

「それにしてもおまえは誰だい」

 

「あかンデレラ!」

そこはレラじゃないんですね? まあ一度継母に決定されてしまった掟です。嫌だとしても従ってしまうのでしょう。

 

「変な名前だねえ。まあいいわ。それにしてもベトベトで気持ち悪いねえ」

弱酸性とは言え、刺激臭漂う粘液が彼女達を包み込んでいます。

 

「せやな。このままではあかンデ! よっしゃきれいはな! 出番やで」

何とあかンデレラはモケポントレーナーの様にきれいはなに指示を出します!

 

ロッテリア!」

キラキラキラキラ ああ……何という事でしょう……この瞬間、皆さんに良い知らせと悪い知らせを一つずつしなくてはならなくなってしまいました……どちらから聞きたいでしょうか? 良い知らせですか? 分かりました。ではまずは良い知らせを言います…… きれいはなの力で優しい香りが二人を包み込み、忌々しい狼の超弱酸性の胃液を吹き飛ばしました。  

 

「ああ、綺麗になったわ! ありがとうよ」

 

ロッテリア♪」

そして、悪い知らせですが……何と! オオカミの睡眠状態。そして更に最悪な事に、

猟師にやられた割腹状態までもが完治してしまったのです! そうなんです……きれいはなのアロマセラピーは広範囲に効果が及びます。ですから本来オオカミから少し離れたところで使わなくてはいけませんでした。ですがもう治ってしまったものは仕方ありません。次回にその教訓を生かしましょう。

 

「ふぁぁー良く寝たガル……? あれえ? なんか腹ペコがル……!」

そして、気付いてしまいました。

 

「キョロキョロ……あっ! お前達! 寝ている間に逃げてしまったガルか? この卑怯者めガル! ならば、もう一度丸呑みにするだけガル!」

 

「あかンデ!」

あかンデレラが落とした籠を拾い、おばあさんの手を引き馬車を目指します。

 

「こらこら! 帰って来いガル! 口を開けておくから」

あーん 勝手な事を言うオオカミです。

 

「あっかンデ―😝」

あっかんベーをしながら逃げるあかンデレラ。

 

「くそお、馬鹿にされてしまったガル……流石に言う事を聞いてくれないガルか……仕方ないガル」

ぬうーっ 手を伸ばして捕まえようとしてきます。

 

「あかンデ!」

だだだだだ のりこみのりこみ 全員素早く馬車に乗り込み鞭を振るいます。

パカラッ パカラッ パカラッ パカラッ

腹ペコで尚且つ二足歩行のオオカミでは馬車にはどうやっても追い付けません。馬車は只管進みます。

 

「なんて事ガル……これでは餓死してしまうガル……」

 

オオカミは空腹で本来の力を発揮出来ず、とぼとぼ落ち込みながらどこかに去って行ってしまいました。そこら辺の野草でも食べればいいと思いますが……何故そうしないのでしょうかね?

 

「あかーンデ!」

後方を確認し、追手がないと分かると馬達を休めるために馬車を停めます。

 

「ここまでくれば安心だねえ。おや? この籠は?」

お使いの籠をまだ持っていたようですね。逃げる時にしっかりと持って行ったのでしょう。そのまま置いて行けばよかったのですが……おばあさんの家に置いておいたら気付かずにうっかりおばあさんが食べてしまう事を恐れ、持っていたのかもしれません。

 

「あかンデ!」

 

「そうなのかい? そういえば少し嫌な臭いが……これ、あの子が作ったのかい?」

 

「せやデ」

 

「成程ね。私を殺る気満々だねえ……仕方ない……ちょっとお灸を据えてやらねばならないわ!!!!」

おばあさんもその危険性に気付き、継母を叱ってくれるみたいですね。

 

「ヒヒーン……もうダメヒヒン」

しかし、腹ペコの馬もその籠のパイの存在に気付き口を近づけています。とてもお腹が減っているようで、嗅覚が機能していないのでしょう。それに気付き……ああっ!

 

「♪食べたらあかああーンデ♪ デデデッ ♪食べたらあかああーンデ♪ デデデッ ♪そんなの食べずにいい♪ ♪これたーべてえええええー♪ デデデデ ♪おいCピンクのおだああーんごおおー♪ ♪ノーヴェノレ♪」

え? あかンデレラ歌いました! これは演歌ですね? 小節が効いています! 私はこの歌を聞いて、一瞬少しふくよかな演歌歌手が脳裏に浮かびました。しかし、あかンデレラはこんなにお歌が上手だったんですね! しかも歌いながらきれいはながくれたおだんごを馬に食べさせてあげています。器用な上に優しい娘ですね。しかしこのお団子、実はノーヴェノレ製菓のお菓子だったようですね。道理であかンデレラも美味しそうに食べる訳です。

 

「う、馬い……馬すぎる! 圧倒的感謝ッッ!!! ヒヒーン」

嬉しそうに食べてくれています。  

 

「にしてもあかンデレラや? どうしてこんな格好なんじゃ? まるでお城に行くみたいな豪華なドレスを着て……」

おばあさんが休憩中、お団子を食べながらあかンデレラの格好に疑問を抱きます。

 

「あかンデ!」

動き動き 動き動き あかンデレラは思い出したように、お城で舞踏会が開かれていて、自分だけパシられた事を、そして道を間違えた先の魔女から魔法でこの服装に変えてもらったと言う事を、そして今の格好は12時になると全て無くなってしまうと言う事をジェスチャーで見事に伝えます。

 

「なんじゃって? まだ時間はあるよ? お城で王子様をゲットするのじゃ」

 

「あ、あかンデ……」

顔を赤らめ首を振ります。 「

 

じゃが今のお前は世界で一番美しい。自信を持つのじゃ!」

中々熱いおばあさんです。

 

「あかンデ」

 

「もういい、乗れ!」 あ! おばあさんはあかンデレラをお姫様抱っこし馬車に乗せます。

 

「あ、あかンデ」

 

「行くぞー馬!」

 

「ヒヒーン」

パカラッ パカラッ パカラッ パカラッ お団子ブーストで元気一杯の馬は、おばあさんの運転であっという間にお城を目指します。

 

「お城に着いたわ。もう覚悟を決めなさい!」

かなり熱血なおばあさんです。

 

「あかンデ……あかンデ!」

強引に連れて来られてしまいましたが、そのお城の高さに胸躍らせるあかンデレラ。 しかし、舞踏会が始まってからかなりの時間が経っています。大丈夫なのでしょうか? 取り合えず城に入ってみましょう。

てくてく てくてく

 

城の中ではみな楽しそうに踊っています。そして王子様が一曲踊り終え、他に踊る相手を探していたタイミングでした。物語はこうでなくてはいけません。

 

「ああもっと踊りたいなあ。私はダンスが大好きなんだ」

 

「あかンデ!!」

王子様に聞こえるように大きい声で叫びます。意外と積極的ですね。

 

「え? うわあ……なんて綺麗な方なんだ! 私と一緒に踊りましょう」

 

「あかンデ」

 

「そんな! 是非お願いします」

 

「ここまで来てなんで断るんだい!」

ドン おばあさんが背中を強く押します。

 

「あかンデ」

フラフラ 王子様の元によろめきながら倒れ掛かりますが、王子様がしっかりと受け止めます。

 

「ありがとう! 断られて悲しかったけど、すぐに心変わりしてくれて嬉しいよ。これが世に言うツンデレって事なのか? 君の名前は?」

 

「あかンデレラだよ」

おばあさんが教えます。

 

「そうか! じゃああかンデレラさん一曲お願いします!」

こくり あかンデレラは頷き、王子様の手を取ります。

踊り踊り 踊り踊り 10分ほど慣れない足取りで踊っていましたが、ワンパターンの動きに慣れてきました。それに、きれいはなと一緒に踊った時の記憶があるのでしょう。ものすごい勢いで上達し、最終的には逆に王子様をリードするまでに至っています。

すると…… ジリリリリリン⏰ ジリリリリリン⏰

 

あ……鐘がなりました。その鐘は日付が変わる事を知らせる鐘です。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。そうです。12時になってしまいました……魔法が、解ける、時間です……

 

「あかンデ」

王子様の手を放し、馬車へと戻ろうとします。 階段おりおり 階段おりおり

 

「え? 何故? 待って下さい! あかンデレラさん!」

 

「あかンデ」

首を振りつつ城を出て長い階段を駆け下ります。

 

「あっ! あかンデ!!」

あっ! 下りている途中で、片方の靴が脱げてしまいました! しかし構わず降り続けます。

 

「ちょっと待って下さい!」

 

「ちょっと待つガル」

え?

 

「え?」

 

「あかンデ?」

その声の主は先程餌に逃げられて、落ち込みながらどこかに消えていったオオカミでした。 恐らく腹ペコで城の御馳走を食べに来たのでしょうか? そこら辺の野草でも食べていればいいのに何故危険を冒してまで城の中に侵入したのでしょうか? 

 

「オオカミめ! この私が成敗してくれる!」

シャキーン  王子様は腰に差していたサーベルを抜き、構えます。

 

「五月蠅い! この娘は既にオイラのガル!」

 

「なに? どういう事だ?」

 

「この娘は一度オイラが食べたガル? 故に既にオイラの物ガルよ? だから持ち主の元に帰ってくるのは当然ガル!」

 

「そ、そんな……」

王子様! そんな屁理屈を納得してはいけません!

 

「あかンデ」

ブンブン 首を振って嫌がっています。

 

「ハッ」

王子様は気付きました。あかンデレラ本人は嫌がっている。だから既にオオカミの所有物になってしまったとは言え、そんな事を許してはいけないと言う事を! あかンデレラを僕が守らなくてはいけないんだ! と言う事を!

 

「あかンデレラさん! 今は逃げてくれ! 私がオオカミを食い止める」

 

「あかンデ!」

 

「あかンデレラさん今は逃げないでくれ! 私がオオカミを食い止めない!」

 

「あかンデ!」

階段おりおり 階段おりおり 王子様は上手い事あかンデレラを操作する事に成功しました!

 

「うまく行った! 絶対に生き延びてくれ……もしも生き延びる事が出来たら再び会えると信じている! あっ! い、居ない? オオカミよ卑怯だぞ! 私と戦え!」

しかしオオカミは、あかンデレラを追いかけています。まあ凶器を持っている男と無防備な少女なら選択するまでもないですね。

 

「あいつは今裸足ガル 故に思いっきり走れないはずガル! 逃がさんガル!!」

あかンデレラ大ピンチです。

 

バナバナー」

しかし、オオカミの前にふしぎばなが立ちはだかります! 登場して以来、仲間になったけどあかンデレラに毒を盛っただけで有益な事を何一つしていなかったふしぎばな。ここでついにその汚名をすすぐ時が来たようです!

 

「邪魔するなガル! このカエルお化けめが!」 

 

何故カエルお化けなのですか? どう見てもふしぎなおはななのに……

 

バナバナー!」

 

「五月蠅い! 必殺オオカミキーック」

何故キックなのでしょう? 童話のオオカミは決して牙を使わないですね。しかし、俊敏な身のこなしから繰り出される蹴りです。まともに食らえば相当のダメージになるかもしれません。

 

「バナー」

ヒューン クルクル グオッ ガンガン ツルを伸ばし見事オオカミの足を絡めて階段の角に二回頭をぶつけます。

 

「ぎゃあガル」

 

「な、なんだ? このカエルは? み、味方なのか?」

王子様は、サーベルを構えながらもカエルとオオカミの戦いを見守ります。

 

「まだまだガル オオカミしっぽパーンチィ」

ブンブン ブンブン

 

「バナー」

ヒューン クルクル グオッ ガンガン しかしオオカミのしっぽを絡めて以下同文。

 

「ぐわあガル……くそお! 今回ばかりは逃がしてやるガル」

オオカミはしっぽを巻いて逃げていきました。

 

バナバナーww」

 

「ようやったデ」

あかンデレラはふしぎばなをなでてあげます。しかしもうドレスもボロボロの衣装に戻ってしまいました。そんな姿を長い事見られるのは苦痛です。

 

「あかンデ!」

だだだだだ…… 赤面しつつ城から逃げて行ってしまいました。

 

「あかンデレラ……ん? あれは?」

そうです! 階段でうっかりあかンデレラが落としたガラスの靴の片方だけは残っていました。あれ? どうしてでしょう? 12時を過ぎているのに。魔法は解けた筈なのに……もしや靴が脱げる瞬間とタイムリミットが重なったその瞬間のみ魔法で生まれ、時限で消える定めを覆し、現世に残ると言う事なのでしょうか? これを利用すればいくらでもお金儲けが出来そうですが……ギュギゲゲゲw ハッ……アリサちゃんが伝染ってしまいました……

 

ーーーーーーーーーーーーーー翌日ーーーーーーーーーーーーーー

王子様は国中におふれを出し、ガラスの靴に合う若い娘を探しました。 前日に完全に解けた筈の魔法の力で作られたガラスの靴もしっかりと残っています。いつまで残っているのでしょうね? まあいいでしょう。 それを広場の中央に設置して、王子様は見守ります。 そのおふれを聞き、国中の娘が集まりました。

 

「私がその靴の持ち主です! 完璧に合います」

ギュウギュウ

 

「あら? 駄目だわ……」

 

「いいえ? そのガラスの靴はこの私の美しい二人の娘達にぴったり合う筈よ!」

継母もめちゃくちゃな事を言って娘達に試させていますが……

 

「いたいいいたいw」

 

「きついきついw」

一見足のサイズが合いそうな継母の娘達が履こうとすると、靴の形が変わり、入りません。

 

「よお我が娘よ! 元気かい?」

 

「あかンデ!」

そこに現れたのはあかンデレラとおばあさんです。おふれを聞きやって来たようです。恐らく継母はあかンデレラにだけ教えなかったのでしょうが、おばあさんがその話を知って連れて来たのでしょうね。

 

「あ、あらお母さまにあかンデレラまで……ご機嫌麗しゅう(あ、あら? 元気だわ。まさかあかンデレラ失敗したの?)」

そうです! おばあさんが病気がちだったのはきれいはなのアロマセラピーで完全に治っていたのです。そして、継母の手料理を定期的に食べさせていたのがその原因だった。と、言う事でしょう。おばあさんは当然その事に気付いています。その眼光は炯々けいけいと輝き、復讐の光に満ち溢れていますね。

 

「ああ、お前の作った毒を食べなかったお陰でそれはもう元気よお? ……おりゃ!」

見えない速さのアッパーカットを継母にお見舞いします。

 

「あーれー」

☆キラーン☆ ああ、星になってしまいましたね。せめてお空では美しく輝いていて下さいね。

 

「いないいないw」 キョロキョロw

 

「どこいったどこいったw」 キョロキョロw

娘たちも戸惑っています。しかし、邪魔者は去りました。そして、他の娘たちも次々に靴が入るか試します。 しかし誰も入りません。そしてついにあかンデレラの番になりました。 スッ ピッタリ―ン まあそれはそうでしょうね。

 

「ああ服は全然違うけどこの方だ! もしよろしければ私と結婚して下さい!」

 

「あかンデ!」

 

「じゃあ絶対に結婚しないで下さい」

 

「あかンデ!」

 

「やったあ」

こうして、二人は幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はいおしまい!」

 

「面白かった888888。今回はクモだけにスッパイダーの所が良かったわ」

 

「そうね」

 

ありがとうございます。確かに私の冗談を取り扱って下さった事は嬉しいですが、他にも良い所はあったと思いますよ? 例えば……食べたらあかンデの歌とか……

 

「私の朗読もほめてよね!」

 

「やだ。一つ思ったんだけどいい?」

 

「いいわよ」

 

「このあかンデレラって本は、あかずきんとシンデレラが合わさった話の筈なのに、今回もモケポンが混ざってたのよ」

 

「うんそうね」

 

「それだけじゃないよ? 今回はトラクエまで入ってた」

 

「え? どこ?」

 

「馬車よ! かぼちゃの!! しかもさ、モンスター長老ってwwまんまじゃんw」

 

「そういえばそうよね? なんでそんな事したのかしら? 入れた本は間違いなくあかずきんとシンデレラの筈よね?」

 

「これは私個人の仮説だけどもいい?」

 

「言ってみて?」

 

「これは、本棚の中の人の自信の無さから来る【保険】なのかもしれないわ」

 

「保険? どういう事?」

 

「この本棚さ、物凄い沢山ルールがあるよね。嫌な本は吐き出したりさ、真ん中にセットしないといけないとかさ」

 

「そうね」

 

「で、自分の都合のいい本しか選ばないところがある。だからこの本棚ってデスえんぴつみたいな物なのよね」

 

「え? どう言うこと?」

 

「ほらデスえんぴつって漫画」

 

「なんだっけ?」

 

「狙っている人の死因とフルネームをそのえんぴつで書けば、その通りに死んでくれるって言う漫画があるじゃん」

 

「ああ、あれね」

 

「あれってさ色々ルールがあるのよ。死因を書かなければ5分後に肝臓麻痺で死んじゃうとか、それを取り消す場合、セット販売されてるデスけしごむで消せば取り消す事が出来るとかさ、そのえんぴつを触っている間は梨好きの死神リョークの存在が確認できたりとか声が聞けるとかさ」

 

「そうだったわ。そのルールを一々覚えるのが面倒だったww」

 

「だからこの本棚、不思議な本棚からデス本棚……いいえ? なんかかっこ悪いから……デスブックシルフに改名しよ?」

酷いネーミングセンスですね。吐き気がします。

 

「でもその本棚で人を死なせる効果はないわよ?」

 

「ママのせいなんだよ?」

 

「え? 私ィ??」

 

「そうだよ! 私が不思議な本棚って命名した後、ママはありきたりって言っていた。あれがどうしても納得いかなくって……で、今思い付いたの! 究極のアイディアが! これさ、すごくいいネーミングセンスだと思うよ!」

私はその邪悪なネーミングセンスに吐き気がしますが……

 

「好きになさい。で、保険ってのは?」

 

「うん。このデスブックシルフは、あかずきんとシンデレラの2つの要素だけではどう頑張っても面白い話は作れない。で、どうしようどうしようって悩んだのよ」

 

「そうか!」

 

「要するにその与えられたお題だけでは作れなかった=実力不足だったって訳」

 

「確かに……文章の稚拙さと言い、構成と言い素人丸出しだし」

 

「だから誰でも知っているようなゲーム作品のシステムを取り入れたのよ! 自分を守るために!! 酷い話!」

 

「成程……あざといわね……軽蔑するわ……能力の低い作家にありがちの傾向よね……私達も気を付けなくちゃいけないわね」

 

「ママも私も作家じゃないでしょ?」

 

「あっそうだったわw」

 

「気を付けてよね? うっかり屋さんなんだからwデスブックシルフもさ、悔しかったら入れた本二つだけで勝負してみいやwてかその二つしか求めていないって言うのにw余計な味付けいらねえんだよ!! 需要もない要素を勝手に供給してくんなww」

うえー……この子毒舌ですねえ……デスブックシルフさんも気の毒です……仮に私がこの娘と口喧嘩をしようものなら10秒で負けて日本酒をかっくらう生活に逃げるでしょうね……アリサちゃん? 多分ですけど彼だってこれでも一生懸命生きてるんですよ……分かりませんけど……

「でも次も見るんでしょ?」

 

「もちろんw私がこの素人本棚を成長させて面白い話を書かせるように教育するわ! で、ある程度読んで飽きて来たらヤスオクで売り払って大金をゲットして見せる!」

本棚って上手いとか下手とかあるんですかねえ? アリサちゃんは当たり前の様に言っていますけどこの本棚、本棚の中では恐らく唯一無二の能力を持っている筈なのに……どうしてこんなに酷い言われ方をされなくてはいけないのでしょう? ……この本棚もこの子達に喜んでもらおうと思って生まれてきたと思うのに、こんな結果になるなんて想定すらしていなかったでしょうね……後、それを売るなんてとんでもない! 絶対に売ってはいけません!!

 

「でも本棚って成長出来るのかしら? 私達では介入出来そうにないわ。今回のあかンデレラも相変わらず説明が長ったらしくて喉カラカラになっちゃったしね」

 

「思い出して? 六法全書入れた時に吐き出したでしょ?」

 

「そういえば」

 

「だからデスブックシルフ自体に識別能力があるって事よ。だから沢山書かせていく内に成長していく可能性はある!」

デスブックシルフさん逃げて―

 

「そうだといいわね」

 

==続く==

☆少し遅めの登場人物紹介☆

鏑木(かぶらぎ)アリサ 3才の女の子 ちょっと辛口なコメンテーター 

鏑木メイメイ アリサのママ 朗読担当

デスブックシルフさん 本の製作者 コメンテーターに言われ放題だが頑なに沈黙を貫く。しかし、その怒りが爆発する時は……来るのか?

語りの女神カタリナ このお話の語り部  訳あってこの話の語り部を務める 握力は女神にしては控えめの2700kg