「お? 6番の! 女の子だぁ!! 元気が今までよりもいいぞ? どうしたんだあ? さあ今までの活躍はまぐれだったのかぁ? それとも実力なのかぁ? どうぞぉ」
「左下のマスクをつけた男とその右隣の辺りの隠れている2人とその右で笑っている男を使うわ!!」
「了解! よろしく!」
「はいっ!!」
元気一杯の画像班。
「こういう事だね?」
画像班が〇をつけた画像をスクリーンに映し出す。
「はいっ!」
「しかし、何で敢えてあまり映っていない3人を選んだんだぁ? まあ見ていく内に分かっていくかァ? ではどうぞ!」
頷き、マイクに口を近づけるアリサ。その姿、立ち振る舞いは正に芸人のそれ。
『サイア、サルテガ、サッシュ。準備はいいな! あの満面の笑みの男に、サェットサストリームサタックを仕掛けるぞ!!』
『おう。とも、よ!!』
『……』
『ん? サッシュ? どうした? 貴様だけ返事が無いぞ!! まさか貴様、怖気づいたのか? 相手はたったの一人だぞ! フム……だが、奴の笑顔の裏にある邪悪なオーラが凄まじいのも確かだ。そうなっても仕方ないか……』
『……まだ気づかないのか兄者?』
『何がだ?』
『俺達、面白い☆☆☆三連星は、三人で一つのチームだ。そして兄者がリーダーで、次男のサルテガと末弟の俺にサェットサストリームサタックの指示を出す』
『ああ、その通りだ』
『だが、先程声は確かに兄者だった。だが、サイアサルテガサッシュと三人の漢の名を呼びかけていた。
どうだ? おかしいと思わないか? 一体何故兄者の名まで呼んだ? 自分自身の名前を呼ぶのはおかしいだろ? 普段ならサルテガサッシュと呼びかけている筈だぜ? その違和感で返事が出来なかったのさ』
『成程そういう事か! 確かにそうだな。
しかし、俺も頭の中に響いた言葉に従い思わずそう放ってしまったのだ。
そう、何故だか分からぬが、それで良い! と納得してしまった。
何せあの男には何かあると前々から疑っていたのでな……ぬ! わかったぞ
謎は解けた全て! 今は亡き、名探偵と呼ばれたひいひいじいちゃんの名に賭けて!!』
『おい! ひいひいじいちゃんはまだ生きているぞ! まだ130の若造だしさ、昨日も楽しそうに盆栽をいじっていただろ? で、何が分かったんだ?』
『天啓だ』
『天啓ってあれか? 神様の言葉って奴だよな? フッ、兄者もヤキが回ったか。
そんなスピリチュアルな事を言う様になるとは! 兄者には悪いが普通の好青年にしか見えないぜ』
『確かにそうだ。しかし、不思議な感覚だった。
俺の名前を自分で呼んだ時、まるで違和感なくあの男を攻撃対象とみなせた。
そう、躊躇う事なく出撃準備出来たんだ。
恐らく、俺の頭にその言葉を浮かばせた何物かは、俺も含めた全員の力で奴を殺れ。
さもなくば負ける。と、伝えたかったんだな。俺達は3人で面白い☆☆☆三連星なんだ。
その何物かはそう俺に再認識させたかったのかもしれないな。
しかし、サッシュの指摘が無かったら全く気付かなかったであろうな。
フッ、こんな感覚は初めてかもしれん』
『そうか、不思議な話だな……でも待てよ? 兄者の言葉は、今の今まで間違った事は無かったな。
何度もそのシックスセンスにより危機を脱し、俺達は今まで生き延びてこれたんだったな。
フッ、ヤキが回ってたのはどうやら俺の方だったな……分かった行こう!』
『フッ、分かってくれた様だな。よし気を取り直して! ゆくぞ! サェ……』
『ちょっ、と待ってくれ一体どう。いうことなんだ?』
『ぬ? サッシュ、サルテガがまだ理解していないみたいだ。説明してやってくれ』
『分かったぜ! サルテガはこの面白い☆☆☆三連星の中では一番頭が悪い男だからな。
よし、説明してやるさ。サルテガ、俺達は3人で一組だよな?』
『ちょっ、とまってくれ一体どう。いうことなんだ?』
『ぬ? 俺の聞き間違いか? それとも本当に3人で一組の意味が、分からないという事なのか? どういう事だよ……この世界にはスゲエ奴がいるもんだぜ……ヘッ面白い……こんな時の為に通信教育で取った教員免許が役に立ちそうだな……腕がなるってもんだぜ! サルテガいいか? 3と言うのは数の呼び方の一つで、123と数えていくんだ。
そしてそれは、3番目に来る数字だ。あいうえおで言ったらうの部分だ。そう、俺達の人数と同じなんだ。
分かるか?』
人差し指、中指、薬指を立てて丁寧に説明するサッシュ。
『ちょっ、とまってくれ一体どう。いうことなんだ?』
『サルテガ……お前、一体何なら知っているんだ? 数字の数え方も知らないでよく今まで生活できたな』
『お、ん、』
『おん?』
『なの子の口説き方』
凛々しい表情で答えるサルテガ。
『お前すげえな』
『フッ、確かにサルテガは面白い☆☆☆三連星の中で一番のモテ男だったな』
『人は見かけによらねえんだな……』
『蓼食う虫も好き好きと言うからな。それにしてもサッシュ? 一応サルテガの方が兄なんだからお前とか言う言い方は良くないぞ!!』
『こんな打ちにくくて読みにくい喋り方をしてる奴を兄と思いたくねえぜ……全く、読者様方に申し訳が立たねえぜ……』
『ぬう? 読者って何だ(。´・ω・)?』
『すまねえ。俺も良くは知らねえ』
『そうか』
『彼女。な、ら3人い、る。で、も1人も分け、てあーげな。い』
聞いてもいない事を勝手に喋り出すサルテガ。
『モテると言うのは伊達じゃねえな……羨ましいぜ……でも、意外にケチだな。しかも『あーげない』なんて可愛らしい言い方しやがって全く、3人もいるのなら読者と俺とに一人ずつ分けてくれても……っておい!!
サルテガ! お前今、3人て言っただろ! やっぱり分かっているんだな? 数の数え方は?』
『ちょっ、とまってくれ一体どう。いうことなんだ?』
『サルテガ! お前、『ちょっと待ってくれ一体どういうことなんだ?』って言葉は理解して使っているんだよな?』
『お、う。』
『だが、3人という意味が分からないと言う事で合っているな?』
『おう、』
『なのに女性の口説き方は心得ていると』
『おう』
『なあ、ところでよ? 一体どうやって口説いているんだ? あ、あのよお……もし良ければ……俺にも教えてくれないか?』
モジモジ モジモジ モジモジリン
顔を赤らめて小声になり出すサッシュ。
『それ。は簡、単狩り。をして大き。いイノシ。シを女の。前に置、くだ。け。』
『ぬ!!! 原始的だがやはり女性は強くて食料を持って来れる男性に惹かれるという事か。
クッ、主に面白い☆☆☆三連星頭脳担当の俺には厳しいか……
なあ、他にどんな事をしているんだ? 俺にでも出来そうな口説き方は無いのか?』
何故か必死なサッシュ。それを聞き、呆れた表情を浮かべながら腕組みし始めるサイア。
『おい! サッシュ! お前ひょっとして聞いている内に羨ましくなって来て、サルテガに恋愛術を習おうとしているんじゃないだろうな? 必死になっている感じに見えるが? 確かにお前はそっちの方は全く駄目だから聞きたい気持ちも分からんでもない。
だが考えても見ろ。ここは戦場だぞ? それにほら! サルテガを見てみろ!』
『ん?』
『あ。い。い』
『サルテガは脳を使う度に消費し、最後は消滅すると言う性質を持っている事はお前も知っている筈だ! 見ろ! あと、いしか喋れない脳に退化しているぞ! もう少しで【あ】しか喋れなくなる! 一旦質問の頻度を緩和しろ!!』
『そういえばそうだっ……てかこいつどういう性質してんだよ! まずいな……どうすればいい?』
『確か睡眠をとったり無添加無農薬の食事を与える事により、脳は回復する筈。しかし、サルテガをこいつ呼ばわりはいかんぞ? むう、よし! サッシュ餌だ。何か持っているか?』
『な、何だと? 食事や睡眠で、消耗した脳が物理的に回復するなんて凄い奴だな。
しかし餌って……完全に動物扱いじゃないか……だが不便なんだか便利なんだか良く分からん脳だな……
ウム、確かポッケにミニバナナが一房あったな。くそ! おやつの時間まで大切に取って置いたのに……』
『サルテガに渡すんだ』
『ヌ、嫌だと言ったら?』
『フッ、そんな事は言わずとも分かる筈だぜ?』
『……クッ、分かったよ……緊急事態だしな……ほらよ! くそ! 大事なおやつがとってもとっても汚ねえサルに取られちまったぜ』
『おいサッシュ!! サルテガをサル呼ばわりするな!! 一応兄だろう! 兄弟とは言え、礼儀は守れ!』
『とっても汚ねえはいいのか……そうは言ってもこんな打ちにくくて読みにくい喋り方するサルなんか尊敬出来ねえよ。それに、食い物の恨みは恐ろしいんだぜ?』
『ぬう? 打ちにくいし読みにくいとはどういう事だ? さっきも言ってたよな? さっきはエキサイトして聞き忘れていたが……まさか蕎麦でも打っているのか?』
『……分からねえ』
『そうか、ならいい。だが、舌の根の乾かぬ内にサルテガをサル呼ばわりしたな! 駄目だぞ!』
『分かったぜ』
『い、あ』
♪ガクガクガクガクガクリンコ♪ 痙攣するサルテガ。
『ぬう、サルテガの脳も限界に来ている! 急げ! そうなれば暴走する。
新平気エヴォンガリアンの初号機の様にな』
『何てこった! この猿そんな秘密が……そうなったら地球は終わりだ。
仕方ない、おい! お前分かってるとは思うが少しは残してくれよな』
しかし、脳が削れ、知性の無いサルテガは、バナナを見るや否やサッシュの分を残さず平らげる。
バリボリバリボリ
『ああああ……お前皮ごと……全部喰っちまうか普通? ……やはり、お前って言っていた事根に持っていたのか? サルテガ』
涙目のサッシュ
『す、少、しよくな。った』
『そうか。じゃあ脳に負担にならん様に……』
アリサは、肩掛け鞄から少年に自分の描いたΘ聖戦Θと引き換えに譲り受けたスケッチブックを取り出し、なにやら絵を描き始める。
キュキュキュ
O O O
+ + +
人 人 人
「画像班! 拡大お願いします!」
これは? フム、三人の棒状の人間だな。その絵は一旦司会の指示でアリサの指定していたお題から切り替わり、カメラで観客にも分かる様拡大され、巨大スクリーンに映し出される。
『一番右がサイア、真ん中がサルテガ、そして一番左が俺だ。分かるな?』
「分。か。る。」
O O O<サイア、サルテガ、サッシュ準備はいいな!
+ + +
人 人 人
吹き出しを書きセリフを入れる。
『見てくれ、サイアがサイアに呼びかけている。俺はな? これはちょっとおかしいと思うんだが、サルテガはどう思う?』
『言、。わ、れてみれば。そう。思、う。でも分か、らないでも。考え。る』
その問いに閉眼し、真剣に悩むサルテガ。しかし、約3分の程考えた末に、目をゆっくり開く。
サルテガの脳内で、何か進化でも起こったのだろうか? 目は輝き始め、何かを閃く。
これは期待出来るのではないだろうか??
『ハッ。分、かっ。た。ぞ!』
『フー遂に分かってくれたか。図入りで丁寧に説明すりゃ、簡単に理解してくれる様だな。
全く……物分りのいい男で安心したぜ』
サッシュは安堵の表情に変わる。しかし!
『Oと+と人を縦に画、く事で。人の形を作っ、ているんだ!!』
『……兄者。俺はもう諦めるがいいよな?』
『まあまてサッシュよ、サルテガは人間の体に、サルの頭脳を有した究極の生命体。
そのサルの野生の勘と、サル並みのパワーで何度も何度も俺達は窮地から救われた筈だろう! そんなサルテガだけ今の状況を理解出来ぬままで発動するサェットサストリームサタックでは、通常の威力の2割も出せんだろ! 3人の気持ちを一つにして放つトライアングルアターック♪ こそ……アーン間違えちゃったぁ悔しいわぁいやんいやんいやーん。
サェットサストリームサタックこそがあたし達の最高の技なのだから!!』
『迂闊だった、そういえばそうだよな……しかし、俺達兄弟の筈なのになんでこいつだけ特別なんだ?
それにサルがすげえみたいに言ってるけどよ、サルってそんなレアな生き物だったっけ?
まあいい、一つでも不安要素を潰していった方が良いって事だよな? それ程にあいつはヤバい奴なのか……
しかし兄者……言葉を間違えた時に女の子口調になる癖! まだ直っていなかったのか! いい加減直してくれよ! 始めの内は可愛いと思ってしまったけど、ずっと聞いていると気持ち悪くなってくるんだ』
頭を抱えて身悶えするサッシュ。
『あらんあたし気持ち悪いの? そんなぁ……でも始めの内は可愛いって思ってくれたのね? う、れ、し、い♪ チュチュチュッ』
サルテガとサッシュに投げキッスを送るサイア。
『おい本当におかしいぞ……止めてくれ兄者……それにサェットサストリームサタックってよ、滅茶苦茶言いにくくないか? そんなにも言いにくいから無意識にトライアングル言ってしまうんだぞ? ……? ああっサルテガ? サルテガが直立不動で気絶しているッ!』
投げキッスをまともに受けたサルテガが、立ったまま口から泡を吹いて気絶してしまった。
『このままでは奴が気付いてしまうぞ。仕方ない!!』
パチーン! サッシュの渾身の平手打ち。
『あーんひどーい……ハッ俺は一体どうしていたんだ?』
『兄者、思い出さない方がいいぞ。しかし、サルテガが気絶しちまったんだ。どうすればいい?』
『ぬ? あのサルテガが気絶だと? 妙だな……こいつは心の無いキラーマシン。
命乞いする人も容赦なく
そんな完全無欠の男が一体何をどうすれば気絶するんだ?』
『見たんだよ。世にも恐ろしい何かをな……兄者が知らない間にな……』
『そうか、一体を見たかは分からんがこれ以上気絶している様な軟弱者ならサルテガとは言えこの部隊の一員として相応しくない。
……そう、この黒い★★★三連せ……あーんもうやだぁ♡ また間違えちゃったぁ。プンスカプン♪サイアたんのばかばかばかぁ!! 面白い♡♡♡三連星でしょ全くもう! プンスカスカプンチュッキンプリプリィ♪』
『あ……兄者……あんたの潜在意識の中の女口調ってそんなイメージなのか?……てかよ……サイアたんって可愛……ハッ……可愛くない可愛くない!』
ブンブンブン
千切れるのではないかと思う程、首を振るサッシュ。
『どうしたのサッシュ顔が赤いわよん♡』
『何でもねえよ! ただでさえ少ない女性読者が加速度的に減るからもう止めてくれ……しかし、さっきよりエスカレートしているぞ……
全く、仕方ない。もう一度だ! てーい』
バチコーン!! サッシュの渾身の掌底が、サイアの顎にヒットする。
『あはーんいたーい♡バカバカバカァ。ハッ』
ぼたぼたぼた
その音は、サイアの口から血が滴り落ちる音と、サルテガが無意識の中、更にその声を聞き、立ったまま
先程食したバナナを嘔吐をする音である。
『うぐっ……俺のおやつになる筈だった物が見るも無残な姿に……しかも酸っぱさの混ざった酷い臭いだ。
オエー……サルテガお前……俺の大切なミニバナナ達をよ……』
ぼたぼたぼた
サッシュは、大粒の涙を床に落とす。
ぼたぼたぼた、ぼたぼたぼた、ぼたぼたぼた。
三兄弟が三者三様に赤青黄色の液体を地面に落としている、とーーーーってもおぞましいシーンである。
こんなシーンはちびっ子達が見るアニメには確定で出せる筈も無いので、アニメ化は間違いなく無くなった。
『うぐう……また意識を失っていた様だ……すまないサッシュ。
しかし、サルテガの奴……まだ気絶しているのか? しかもどういう訳か床にさっき食った筈のバナナが散乱しているし……全く、だらしない奴だ!!』
(その全てが自分の責任だと知ってしまったら寝込んじまうだろうな……黙っておいてやるか)
『しかし、これでは回復した脳もまた縮んでいる頃だな。
おいサッシュ! まだバナナがある筈だろう? それを与えろ! ポッケに入っているだろ?』
『そ、そんなバナナ……何故まだある事を知っているんだ?』
『ふっ、お前のポッケは異次元に通じていて、何でもしまっちゃえる事は掌握済みなのさ。
しかしサッシュ!!! 俺達は面白い☆☆☆三連星だぞ? そんなバナナ等と言う低レベルな駄洒落を言うな!!』
『うふぃふぃふぃふぃ』
『だが兄者、サルテガが笑っているぜ? やはり面白いんじゃないか? この駄洒落。
考えてみてくれ。原点にして至高。それがそんなバナナなんだ! 過去の偉人達の作りし駄洒落。美しいじゃないか』
『ヌヌヌ、そうか、今はサルテガは脳が退化し幼児退行中、故にこんな初歩的な駄洒落でも笑ってしまう様だ……さあ、このままではまずいぞ。分かったら早く餌を与えろ。暴走するぞ』
『仕方ねえな。この一帯が焼け野原になるのは勘弁だしな』
ポッケから取り出し、3本程食べさせるサッシュ。餌を目の前に持ってくれば、気絶しているにも関らずサルテガは匂いを察知し、本能的に食べてくれる。
バリボリ バリボリ
『兄者! 取り合えず今は言動を控えてくれ。天啓が来たせいで疲れているんだ。
暫く大人しくしていれば大丈夫だ。後は全部俺に任せてくれ』
『よし分かった。これからは奥地チャックだな……イヤーンまた間違えちゃったぁぷんすかぷぷぷん♡』
ぬ? 何故だ? ……まさか! お口チャックと言う筈の所が奥地チャックになっている! 成程。
何とサイアは、変換ミスでも女言葉化する様だな。ぬう……これは私のミスである。失礼した!
これからはしっかり語らねばならないという事だな。反省しよう。
『しっかりしてくれよ兄者。まあいいだろう。おいサルテガ! もう気絶の原因を断ったから大丈夫だぞ』
そう言いつつサルテガを揺さぶってみるが、ピクリともしない。
『何て力だ……気絶している筈なのに、幾ら揺さぶっても動かねえ……
これがサルの脳とヒトの身体を持ち合わせた究極生命体……しかしこれならどうだ!』
サイアに放った威力の倍はあるだろう掌底を顎に叩き込む……ところが!
『グワー』
何故か攻撃したサッシュが右手を押さえ苦しんでいる。
これは恐らくサルテガの皮膚の硬さに、攻撃した側がダメージを受けてしまった様だ。
『このままでは奴に気付かれてしまう……一体どうすればいいんだ』
ドン! ドン! 地面を叩き悔しがるサッシュ。
『流石のサッシュも手を焼いているみたいだな。仕方ない……サルテガ! 気絶したままで良いから聞いてくれ。
あの男は相当の悪だ。早く片付けないと近い内悪い事が起こる。それに悪い事が起これば平和でなくなる。
そうなればお前の彼女達ともいちゃつけなくなる! それでもいいのか?』
サルテガに耳打ちする様に話しかける。
すると……
パチっ 〈覚〉〈醒〉
『そ、ん、な。の、や。だ。』
気を失っていた筈のサルテガが目を覚まし、その闘気が上昇。目つきもガラッと変わる。
『おおっ! 目つきが変わった!!』
『良し! 今ならいけるぞ。サルテガサッシュ標的はあいつだ!! ジェットストルィィィムアタァァァァアーーッック!! あ、ああん♡また間違えちゃったぁ♪』
アリサはオチを言い終え一礼する。そして選手団の元へ戻る。
「……」
「……」
「……」
シンと静まる会場。観客は誰一人笑っていない。
しかし、それは例えるなら美術館を切り詰められたスケジュールで、早足で進むガイドさんについて行き鑑賞する様な物。
それは、1つ1つの作品をじっくり見る事の出来ない状況。そんな時、どう頑張っても沢山の物や出来事を瞬時に受け入れ切れずに見終わった後に、反芻する時間が必要となる。そうなのだ。頭の中で今まで見て来た美術品を思い返している。そんな時間が必要なのだ。
そう、今この幼女が言った膨大な情報を、みんな一生懸命整理している。その為の間なのだ。
……パチ……パチパチ……パチパチパチパチ
だが、感動は遅れてやってくる。観客もこのありえない状況を少しずつ理解し始め、先程までのネタを思い出す。そうなれば当然まばらながら拍手が起こり始める。
それは次第に広がり、やがては割れんばかりの拍手喝采となる。
「お……おいおい……最後、本家の奴言っちゃったよ。しかーし長ーい!! だけど面白ーい!
中弛みしよう物なら遠慮なくぶった切ってたんだけど、全く隙が無かったぁ!!
あの小さな写真の一部分からここまでのストォルィを広げられる6番の幼女。一体何なんだこの子はぁ!」
舞台の
アリサは写真の全体像を頭の中にインプットし目を瞑れば明確に再生出来るのだ。
そして、一瞬でそのどの部分を使えばいいかも判断を下し、そっぽを向いている男性の陰に隠れ、密談している様に見える二人と、その隣の少し怪しげな俯き加減のマスクの男を面白い☆☆☆三連星のメンバーとして選定されたのだ。
そう、集合写真なのに顔を出さず俯いている様な人間は、実際に何か後ろめたい事をした過去があるから映りたくなかった。と、言う深層心理の表れなのかもしれない。その違和感を瞬時に見抜き、そして、一話丸々使って、3人を完璧に演じ分けてしまう小5。
全く末恐ろしい幼女である。
私の書いている小説です
リンク先はブログより4話ほど進んでいます。先が気になる方はご覧下さい。
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