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私の行く先々で事件が起こる件について 42話

42話 斉藤隆之の過去 後編

 

女性の悲鳴。それが、平和な夕暮れ時に響き渡った。

 

悲しみと絶望と恐怖と後悔が混ざった悲鳴。

怒りと疑問と憎しみと軽蔑が混ざった悲鳴。

 

 様々な負の感情が混ざった悲鳴。

声を絞り切るまで、喉が擦り切れるまで

そして、息が続くまで出し切った悲鳴。

 

 それは周囲の人々に

ただ事ではない事を容易に予想させ

聞くだけで人々に大きな不安を与える響き。

 

 例えば殺人鬼に追いかけられ

今にも追いつかれそうな時

 

「きゃあああ助けてー」

 

と叫ぶのは、かなり危険なのだ。

それよりも、嘘でもいいから

 

「火事だー」

 

と、叫ぶ事だ。

そっちの方が助かる確率は高いと言われる。

 

 理由は簡単

得体のしれない何者かに襲われている女性。

その声は恐怖に満ち溢れている。

 

 あなたが家と言う安全な場所にいる時に

助けてーと言われ、その鬼気迫る響きを聞いても

外に出る事が果たして出来るだろうか?

それには義務もなく強制的に行く必要は無いのだ。

悲鳴の主が、殺人鬼に襲われている可能性もある。

どうだろう?

 

助けに行って逆に自分が死んでしまう可能性も……

そして、誰か別の人がやってくれるさ、と

楽観視し、外へ出ようとすらしないかもしれない。

 

だが、火事だと聞けばどうだろうか?

近所の家が燃えてなくなってしまうと寝覚めが悪い。

もし、鎮火した後

 

「あれ? お隣の家の人出てきてないわね?」

 

 

ばれてしまえば近所付き合いに支障が出る事もあり

嫌でも消火器などを手に持って出撃する事になる。

そして

大勢の人が家から出てくれる可能性が高い。

 

 そして、殺人鬼が女性を追いかけている姿を

見つければ消火器を浴びせ、撃退できる可能性もある。

 

 これは火事なら近所なら自分の家に飛び火が来て

燃え移る可能性もあるし、火を消せばいいという。

心理的余裕もあり外へ出やすいのだ。

この女性、嘘を突いて助かった訳だが

助かる為に付いた嘘。大目に見て欲しい

 

 もし、その女性を嘘つき呼ばわりする様な輩は

私が語り部ビームで黒焦げにしてやるので

遠慮なく叫んで欲しい。

だが襲われて、咄嗟に火事だーと叫ぶのは

難しいかもしれない。

が、助けてーと叫んでも助かりにくいという事だけは

頭の片隅に入れておいて欲しい。

 

 ちょっと話がそれたが

特に女性の悲鳴は聞いた者達は

どうしても不安になってしまう。

 

 彼女は、そんな周囲の心配も気にせず叫び続けた。

それ程の事が彼女の頭の中で起こっていた

その整理は今の状態では出来る筈もない。

 

インプリンティング

 

雛が初めて見た物を親として認識する事。

 

 彼女は、正にその状態寸前だった。

初めて見る大好きな人を、親として見る事を

いや、生涯の伴侶として見る事を……

心の底から受け入れていた。それでいいと思っていた。

……だが……初めて見たその顔は……

無理だったのだ……

スイッチが、切り替わってしまった。

初めて鮮明に見えたものがあの顔……

脳にくっきり焼き付く事になる。

もはや再び視力が低下したとしても

彼女の頭からこの顔が離れる事は二度とない。

頭の中に入れ墨の如くくっきり残ってしまった。

 

 隆之は、それが自分へ向けて発せられた物とは

全く思ってもいなかった。

……というかこの刹那で、何も考えられなかった。

耳に残る金切り声は、人の思考を停止させる。

 

明らかに隆之が予想していたリアクションと

真逆の反応。

 

「どうしました?」

 

「嘘つき!!」

 

「え……?」

 

「私の隆之さんを……返してよ!!」

 

「どうし……て? 私はここにいらっしゃるし

貴女から何も奪っていない」

しかし、隆之の言葉は届いていない……

 

「いらっしゃるじゃないわよ!!

何で私はいつもいつもこんなに運が悪いのよ!!

母さんは死んじゃうし、怪我で目は見えなくなるし

大好きだった人が……こんな……こんな事になるなら

目なんか見えないままの方が良かった!!」

 

ダダッ

 

 隆之を押しのけ、部屋から飛び出す。

無理もない。まさか、心から愛した男の顔が

ただれた里芋の様な顔であれば

こうなってしまうだろう。

そして、今までは愛嬌があると思っていた

隆之が自分自身に使っていた敬語にも

腹が立ってきてしまう。

痘痕あばたえくぼだった物が欠点にしか見えなくなる瞬間。

 

 そして……大好きな、ではなく大好きだった……

隆之はもう過去の人

これも外見を知ってしまったから故の変化……

 

 そう、いくら隆之が、医者を探しても

話を親身に聞いて、支えになっても

更には半々の確率で失敗するリスクを

二人で乗り越え、喜びを共有できたとしても

彼女の気持ちは、隆之から離れてしまった……

 

隆之がある程度イケメンであれば

彼女と共にこの先を歩めたかもしれない

 

だが……

 

 ここまで酷い外見とは夢にも思わなかったのだ。

想定の範囲外。嘘つきと叫ぶ

彼女の気持ちも分からないでもない

 

 顔が醜いだけで辟易する……

人間は顔じゃない。外見だけでは計れない

内面も見ないといけないと表面上では同意しても

実際自分に関係ある者が

酷かったらこうなってしまうのだ……

これが現実……悲しすぎる現実……

彼女も、顔が分からない頃の隆之は心底惹かれてた。

なまじ見えない方が良かったと……

気持ちは分からないでもないが。

 

 そして、彼女にとって本当に幸せだったのは

目が見えずがっしりした手を持つ隆之の

優しさだけだったのだ。

このままでも、彼が一緒なら生きていける。

目なんか見えなくてもこの人とずっと生きていく

そう、彼女は思っていた。

 

【私の隆之さん】

 

とは、彼女の幻想で生まれた

綺麗な隆之。そんな隆之は、この世には居ない……

 

 だが隆之は、目が見えないままでは不憫と

自分の人生の数割を彼女の為だけに使い

奇跡的に見つけた医者は、高い金を請求しては来たが

彼女を完治させてくれた。

 

 これが当然だと思っていた事なのに

どういう訳か、2人の距離は遠く……遠く

彼も目が見える様になって、この顔も全て

受け入れてもらっての結婚が理想だった。

その悲しいすれ違いで、逆に彼女を苦しめた

隆之は走った。彼女の元へ全力で……

 

 信号で待っている彼女に追いつこうと

更に速度を上げる隆之。

しかし、信号が青になると彼女は隆之を引き離す。

 

「待ってくれ! 言いたい事が……そうだ!

治ったら一緒に行くんだよね? ディスティニーランド!

ほら! 隠れワッキー探すんだよね?

私達の伝説が始まるんだよね?」

と言うと……少し速度が落ちる。

そして、止まって、隆之を見ない様に口を開く。

 

「伝説じゃなくて運命でしょ!

……その英語の覚え間違いも嫌なのよ! 

お願い。もう忘れて……」

 

「忘れられる訳がない!! 一緒に行きましょう!!

貴女と行かないと意味がないんだ」

 

「お世話になっていたから言いにくかったけど

貴方が来てから部屋が異様に臭い事に気付いたの」

 

「え?」

 

 視界が遮断された人間は、他の器官が発達する。

少年ジャソペの流浪に献身の

盲目の雨水うすいの話からも分かる様に

彼女も、嗅覚や聴覚は常人より優れていたのだ。

当然隆之の臭いも我慢していたのだ。

 

「貴方の体臭だと思う……

我慢してたけど苦しかった……

それに、尊敬語を自分に使っているのも

始めは可愛いと思ってたけど

しつこ過ぎて段々嫌いになってきた……

視力が戻る前は平気だったのに

もう耐えられないの。私……酷い女でしょ? 

自分でもわかってる。最低よ……

でもごめん。本当にごめんね……

こんな女と一緒になっても幸せにはなれないよ

別の誰かと幸せになって……」

 

 臭いは仕方ないから我慢しようと思っていた。

だが、目が見え、隆之の顔を認識できる時点で

もう彼と共に進む未来は無いと決定している。

見えぬ時は将来を約束した中なのに

あの体臭を放つ男でも一緒に居られた筈なのに

外見一つでこうも人は変わるのだ。

 

 心の目で描いていた、自分に都合の良い隆之。

それが膨らみ、爆発寸前の状態の彼女が

苛烈な現実を知った時の反動は

その想いの爆破、そして、飛散しかない。

彼への想いは弾け飛び、消滅したのだ。

 

「一緒になるんです。私が必ず、必ず幸せに……」

 

「本当にごめん。でも……」

 

「では、ともだちからでは?

そうです、ともだちからなら!!

お釈迦も申してます

水が、一滴ずつでも滴り落ちるならば

水瓶でも満たす事が出来るのである、と。

だから、少しずつ一歩一歩歩み寄っていけば……」

 

「無理よ!!」

そして、走る。

 

「ヌイッ」

 追いつけないと分かった隆之は、突然逆立ちを始める。

幼い頃から体は鍛えていて腕力は凄まじい隆之。

ガサガサガサガサ

 

 そして……腕の力で走り始めた。

なぜこんな事を思いついたのか?

それは本人に直接聞かなければ分からない

だが私は、彼と絶対に会話をしたくない

そして、皆さんも当然彼とは会話をしたくない。

なので永遠に分からないだろう。

 

 だがその大きい掌は、大地をしっかり握り力強く走る。

そして、そのスピードは足よりも遥かに早い

初めて彼を見る人は、超高速で女性に向かって走る

お菓子の国を抜け出したチョココロネ?

と思ってしまう。

 

みるみる内に彼女との距離を縮める。

 

「化け物!!」

 

 涙目で、近づく隆之に掛けた最後の言葉……

もしも目が見えないままだったら

一緒になる筈だった女性から

一番聞きたくないであろう言葉。

 

 彼女も悪いとは分かっている。

だが実際、あの顔で逆立ちした生き物が

全力疾走している自分よりも

高速で追いかけてきたら、そう叫ぶ他ない……

 

「!? 私が? 化けも……の?」

 

 その言葉に追いかける気力も消え

腕の動きが鈍る。

彼女の姿は遥か遠くに……

そして、手は歩みを止め

頭から崩れ落ちる様に地面に額を強打。

 

ゴン ピキピキ

 

 この時、プールで見たアルファベットのYを

逆さまにした様な形のヒビが

彼の頭蓋骨に入った様だ。すると……。

 

「い、た、た」

 

「あれ。?、何か、言葉。が上。手く喋。れ。ない?

そ。うか、私は化。け物、だった。のか……

じゃ、あ化け物の私、と貴方と。では

一緒に。なれない、です、よね……

そうい、えば名。前聞いてい、なか、った

私は名、乗った。筈な、の、にど、うし。て。

確。かに私は名乗。った筈確、か。に

絶対、に名乗。った筈。なの。に……

でも、さよ。ならあり。がと、う

初め、て好き。と言う気持。ちを教えて、くれた

名前も、分か。らない人

一、緒にワッキ。ー探したかっ、た」

ここまでの仕打ちを受けたのに最後は

感謝の言葉を彼女に贈る。

 

 そして、彼は…………泣いた。斉藤隆之14歳。

初めての失恋。彼は幼い頃、醜く生まれた為

親に捨てられ天涯孤独の身となった。

ずっと施設に居たのだが、人が多くなりすぎて

一番年上の隆之は出て行く事になった。

 

 14では職には就きづらい。だから

履歴書を捏造し、19歳としてずっと求職していた。

だが、面接官に19と偽っても

 

「老けすぎてない?」

 

と疑われる程だった。

そんなおっさん顔の少年が……

泣き叫んだ……

 

「アイーアイーアイーアイーアイー

アイーアイーアイーアイーアイーアイー

アイーアイーアイーアイーアイーアイー」

 

 信号の前で、往来している沢山の人々の真っただ中。

恥も外聞もなく、腹の底から泣きじゃくる。

世界の中心でアイーを叫んだ男。

このアイーは彼女へ愛の意味を込めた

【愛ー】なのだろうか?

それとも哀しみの

【哀ー】なのだろうか?

 

 それは彼に直接聞かないと分からない。

だが、私は死んでも彼と会話したくない

そして、皆さんも彼とは死んでも会話したくない

故に永遠に分からないであろう。

 

「どうしたんだい? そんな所で泣いて

頭打って泣いてるのか?」

 

 一部始終見ていた一人の男が話し掛けてくる。

年齢は14だが、外見は大人顔負けの老け顔

大の大人が泣いていると思い声を掛ける。

 

「ち、が。います。心が、痛。くてハァハァ

独、生独。死独。去。独。来ハァ……ハァ……」

 

「そうなのか。で、今のは何だい?」

 

「お釈迦の言葉で

独、り生まれ。独り死、し独り去、り独り来。たる

と読みます、人間。生まれてく。るのは、一人です

双子で。もどっちか、が先に生まれ。てきま、す。

死んで行く時。も一人、同時に死。ぬ事はないで、す

手をつ、ないで心中。しても

やは、り死ぬのは一人で。す

私たちは生ま。れて。から、死ぬまで

一人、ぼっ。ちだという事です」

 

「もしかして今走って逃げた女を忘れる為に?」

 

「は、い。」

 

「恋愛は色々あるからな……気を落とすなよ

それにしても何か頭蓋骨にひびが入る音が

したけどだいじょうぶか?」

 

「そ、うで。すね

少し、言葉が話。せな。くなっていま。す」

 

「大丈夫かよ? すげえ打ちにくそうで

読みにくそうな話し方してるぜ?」

 

「打。ちにく、いし読。みにく、い??」

 

「いやこっちの話だ。ところで

腕で走ってたけど速かったな。あそこまで

速く走れるのはあんただけだぜ?」

 

「ずっ、と鍛。えてい。まし。た、からね」

 

「その力きっと役に立つぜ! 

俺は力は全く無いからな。羨ましいぜ!」

 

すると、突然隆之は俯き物思いにふける。

 

(こんなにも尽く。した。筈なの、に……悔、しいです

私の顔こんなにも端整で美麗、なのに……悔し。いです

臭い。なんて言われたいい香りなのに……悔しい。です

あ。ん、な。に、驚かれる、なん。て……悔しいで、す

その私に、化け物なんて言う、なんて……悔しいです、

心の、底から大好きだ、った、の、に……悔しいで、す

顔の、せいで逃げられてし、まっ。た……悔しい。です

もう二、度と会う事。も出来。な、い……悔し、いです

ディス、ティニーランド行きたかった……悔。しいです

ワッキーマウ。ス見てみ。た。かった……悔し。いです

人、間共め許。せない、憎い、で、す……悔しい。です

悔し、いで、す悔しい、です悔。しい。です、!!!)

 

む? こ、これは! 物凄く嫌な予感がするぞ!!

 

「人。間め人、間共が……。憎い」

♨ポ、ヤーン♨

 

挿絵(By みてみん)

 

 顔をクシャクシャにして絞り出す様にそう言った。

そして、失恋の末、人類全てに憎しみを

抱く様になってしまった隆之。

もしやこの出来事が原因で憎しみを抱く様に? 

そして、嫌な予感は良く当たるな・・

 

  £ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ£

 

 隆之の背中から、9つに分かれた

長い首の龍の様な影が上空に飛び立つ。

そして、目の辺りから黒い涙を流している。

正にそれは、影で出来た八岐大蛇やまたのおろち

 

 更に上空で更に分化し、数百の黒い竜が生まれる。

そして、生みの親に挨拶でもしているのだろうか?

 

ギュルギュルギュル

 

 隆之の頭上を数回回った後に

何処へともなく飛び去って行った。

その光景は、隆之の頭から巻き起こる

禍々しい黒い竜巻。

 

 それらは、恐らく彼の頭から生まれた

強烈な人を憎む思念体なのだろうか?

隆之も残留思念作成能力が長けているのかもしれない。

 

 この時旅立った思念が、虚空を彷徨い続け

35年経った今、隆之自ら作成を指示して

隆之の形をした【器】に、そう展示室の

石像や銅像に宿ったという事なのかもしれない。

 

 それは、ヒヨコの魂が、ヒヨコの形をした

銅の塊に宿るのと同じ様に……似た物に

彷徨う魂は吸い寄せられる性質があるのだろう。

石像が完成すると同時に長い間彷徨っていた思念が

石像に宿る。そこが、その思念の安住の地だから……

そして、もしかしたら

生まれたばかりの隠れユッキーにも

同じ思念が宿って……と

恐ろしい話はやめておこう。

 

 そして、ホテル中にユッキーとして

自分の顔を設置したのは彼女と行けなかった

ディスティニーランドの未練から

彼女に教えて貰った隠れワッキーなぞら

自分の顔によく似た隠れユッキーを

作ったのかもしれない。

 

 自分の顔は見慣れて貰ってないから避けられた。

ならば、色んな所に自分に似たものを設置し

毎日見ていく内に、見慣れて貰い、いつか人として

接してほしかったと言う気持ちの表れなのか?

そして、あんな気持ち悪い物でも

見つけたら客が喜ぶ様な物として設定し

良い印象を与えようとしたのだ。

貴金属で体を飾っているのも同じ理由

なのかもしれない。

 

「ぶ、物騒だな……すげえ寒気がしたぜ

まあ、人生色々あるって。生きてりゃいい事もある。

まあ先立つものも必要だけどな。

俺は鈴木だ。よろしく」

 

「私は斉、藤隆之とおっし、ゃりま、す

お、金な。ん。てあり。ませ、ん」

 

「そうか、でもあんたの腕力さえあれば……

なあ、一緒に仕事しないか?

俺達きっといいコンビになれるぜ?

あんた隆之だよな? 隆之の之を冷たい雪と考えて

それを英語にすると……」

 

「分か、りま。すレ、イン。で。すね」

 

「おしい!! スノーだ。そんでよ

俺の名前の鈴木の鈴と合わせ、雪に鈴でベルスノー

いや、まてよ? あんたの方が年上だしリーダーだ。

だから、スノーが先でスノーベルだ。

俺達は、今日からスノーベル団だ!!

この世にはあくどい事をして儲けてる奴等が沢山いる。

この腐った社会を、そんな腐った奴等を……

そうだ、悪い事をやり過ぎて、真っ黒に染まっちまった

蟻のフリしたシロアリ野郎共を

俺達の手で一匹残らずとっちめてやろうぜ!」

 

 実際は隆之の方が年下なのだが

年上に見られてしまった様だ。

そして、35年後に彼のホテルの名前を

イーグルスノーと言っていたが

英語の間違いが多い隆之が

雪の事をスノーとしっかり分かっていた理由は

ここで鈴木に教えて貰った為だ。

 

「貴方、は裏。切り。ま、せん。か?」

 

「もちろん! ずっと一緒だ!

俺達でこの腐った世界を変えるんだ!!」

 

「そ。うです、か? そう、です。よね

鈴、木は私。に名を。名乗って。くれま、した

だ、から信。用できる、フゴ、フゴゴゴゴw」

 

「? フゴゴゴって? 笑っているのか?

あんた、おもしれえ笑い方だな。わははははw」

 

「フ。ゴw フゴゴゴ。ゴゴw」

二人の笑い声はこだまする……

 

 

ーイアーイアーイアーイア 

 

え? 何だそれはですって?

 

アイーアイーアイーアイーを

逆さに表記したものです!

 

「何、故あ。んな昔、の話を……

がゃぶ、ぃぐぅ、ぅ辛い早。くトイ、レ……」

 

 彼は過去を思い出し、涙目になっている。

更に辛さが全身をいきわたり汗が噴き出る。

 

彼の頭はカツラだったという事がばれた。

 

 意図せずとも自分のカツラが取れて、見られたら

笑って貰った方が気が楽だ。

だが、誰一人笑いすらせず、重苦しい空間へと変わる。

体を張って繰り出したギャグは、完全に滑った隆之。

 

 ただ、露出した茶色く光る頭頂部は

まるでゴキブリのツヤを連想させる輝きで

見る者全てに嫌悪感を、そして奴が

ひた隠しにしてきた秘密を知った後ろめたさから

罪悪感までもが生まれてしまった。

奴が皆に提供したのは、ただそれだけの事であった。

 

 そんな事よりも、今皆が知りたい事は

この事件の真犯人であるから

横から余計な邪魔が入り

表情にもイラつきが見て取れる。

 

「足が、動かな、いしか。し

トイレに。行かな、いと」

そして、先程の転倒で、足を捻ってしまった様で

歩く事が出来ないのかうつ伏せになり

 

「も、うやるまいと。思ってい。ました。が。

躊。躇う、事は、無い」

 

がさがさがさ

 

 物凄い形相で、逆立ちを始め、足を痛めない様に

腕だけの力で前進を始める。

その姿は下に手の生え、上に足が生えている

う○こ臭いチョココロネだ。

しかし、凄まじい腕力だ。

そして40代後半とは思えない速さだ。

35年経ってもあの腕力は健在なのだ。

到底普通の人間ではこんな事は出来ないだろう

もしかしたら隆之は、本物の怪物なのかもしれぬ。

 

「さあ冒険の始まりだ! どこに行こうかなあ?

そうだ! まずは道具屋で薬草だ

道具欄一杯まで買うかな♪後は武器防具を……」

 

サッ

「うっ? うわああああああああああああああああああ」

 

隆之はトイレに行く途中

希望に満ち溢れた『アタッチメント』を回収しつつ

トイレまで進んでいった。

 さようならアタッチメント君

君の事は忘れない……

 

隆之がトイレに腕で走っていった姿は

当然誰にも見向きもされなかった。

 

 そんな中、被験者達も次第に辛さが消え

落ち着き始める。

辺りの事にも気を配る事が出来る様になり

警察官以外で唯一苦しむ事無く

落ち着いている者がいる事に気づき始める。

 

「辛かったー辛いって漢字がつらいって読む

意味が分かった希ガス

 

「俺なんかまだ舌がまだ痺れてるぞ!」

 

「お嬢ちゃん、飲んだけど犯人分かったの?」

 

「あれ? あの人、飲み干してるよ?」

 

「本当だわ。辛くないのかしら」

 

次第にその人物に、会場内の全ての視線が集中する。 

そう

警官以外で、普通のジュースを飲んだ

 

【仲間外れ】

 

が一人だけ居たのだ……

アリサは、その【仲間外れ】の前に歩み寄る。

 

「ついに……見つけた」

 

 犯人の大体の予想は付いていたアリサ。

だが、その人物がそれを回避する事を見届けるまでは

確信は出来なかった。だが……

確信に……変わった。

 

 そして、感情豊かなアリサが

まるで塑像の様に無表情。感情が一切ない口調……

 

……静かに、深く、瞳を閉じた……

左手人差し指を、眉間みけんに当てる……

 

 

そして……

 

 

脳みそを

 

 

最大限まで

 

 

回転させ始める……!

 

 

キュン、キ、キュン…… ク、クルルル……キュルルル……

 

 

 

まだ、早くなる…… ギュルルルルルルルルルルル……

 

 

 

まだ、速く…… ゴオオオオオオオオオオオオオォ!

 

 

 

更に、速く…… グゥオオオオオオオオオオオオ……

ギャオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 

更に、更に、疾く! ……怒号ォ嗚嗚悪雄嗚嗚オ嗚嗚嗚乎

嗚嗚ォ嗚乎嗚轟嗚濠オオ剛オ皇オオ王ッ!!!!

 

 

 

 

カッ          <勝> <負>

 

 

 

 

--------------------------Final battle start------------------------

Alisa VS Unknown

 

私の書いている小説です

 

https://novelup.plus/story/200614035

 

https://estar.jp/novels/25602974

 

https://ncode.syosetu.com/n3869fw/

 

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