magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

私の行く先々で事件が起こる件について 5,6話

5話 八朗とロウ・ガイ

 

真理が出て行った後

アリサはふと最後の言葉に引っかかる。

 

「会場? あれ? 今日の夕食って

お部屋で食べるんじゃなくて

どこか別の所で食べるのかしら? まあいいや」

 

 夕食は美味しいとは聞いていたが

どこで食べるかまでは聞いていなかったアリサ。

 

 と、そこへエレベーターで一度会った

八郎が入ってきた。

身長は180位、緑色のTシャツとジーパンという姿だ。

イケメンだが、少し前髪が後退していて

おでこの面積がやや広い。まだ若いが

苦労しているのであろうか? 

確か彼は八浪していると話していた。

もしやそれが関係しているのか?

 

 このホテルのオーナーですら

前髪がしっかり生え揃っているので

それと比べるとやはり少し気になってしまう。

しかし、それを帽子で隠さず堂々とする姿は

ある意味清々しい。確かママと同じ高校出身で

2年後輩という事は27歳の筈である。

 

「あ、お嬢ちゃんは確か先輩の……

君もこのパンフレットを見てここに来たの?」

アリサを発見し

パンフレットを見せながら声を掛けてくる。

 

「八郎さんこんばんは、アリサっていうんだよ。

小5のレディなのよ!! ここに来たのは

オーナーが遊戯室があるって言ってたの

それで気になって来たの」

 

「アリサちゃんって言うのか、こんばんは! 

可愛い名前だなあ。そうか、レディなんだね? 

言われてみればおしとやかな感じがするよ」

ノリの良い青年である。

アリサは、そのお世辞を真に受け照れ臭そうに頭を掻く。

 

「名前で思い出したけど、どうして八郎って言うの?

八人兄弟の一番下なの?」

気になる事は、はっきりさせるまで聞く。

 

「そうそう、うちは大家族で。 一郎 次郎 美三ミミ 四郎

五子 六江 文七ぶんしち 八郎 九べーと9人兄妹なんだ」

 

「へえー賑やかで楽しそうね。

私は一人っ子だから想像付かないなあ」

 

「五月蝿いだけだよ……下の方だから発言権は無いし

食べ物の奪い合いの喧嘩も毎日の様にあったよ。

当然いつも奪われる側だしさ

上下関係は絶対だし逆らえないからね」

 

「ふうん、大家族には大家族なりの悩みがあるんだねー

しかし、最後の人、なんとなくだけれど

日々魔法少年を作り出していそうな名前よね」

 

「おお、よく分かったね。あいつは日々、これは? 

と思った少年にソウルジュエルをあげて

魔法少年として育てて

魔男を退治する仕事をしているんだって。

最近連絡がないけどちょっと心配だなあ」

 

「世の中には色々な仕事があるのね。でも……

一度でいいから会ってみたいわ。待てよ

アリサの年齢なら魔法少年になれてしまうじゃない。

あっ、でも男の子しかなれないんだったわ。

なら大丈夫か……

ちょっと怖いけど会ってみたいわその人」 

 

「それがさ、その人にってアリサちゃん言っているけども

九べーだけは人間の姿じゃないんだ」

おかしな事を言う八郎。

 

「え? どういう事なの?」

アリサは、八郎の言う事が理解出来なかった。

 

「実は九べーの姿は

白くて大きめの赤い目の猫の様な生物なんだ。

つぶらな瞳で、見る者を不安にさせるのさ。

産んだ母さんもびっくりしたらしいよ。

でも息子は息子。分け隔てなく可愛がったんだ。

そして、あいつの一番の特徴といえば……コホン

♪交わした約束忘れないぜ♪」

何故か彼の特徴を

ミュージカルっぽく歌いながら表現する八郎。

 

「まあ。なんて信頼できる弟さん……って

まんま、あれじゃない。

♪目ーを閉じッ確かめろー♪

押し寄せーた闇ッふりー払ってッでもすーすむぜー♪」

それに呼応し、アリサも歌いだす。

 

てれれれれーーーー

 

どこからとも無く音楽が流れてくる?

クラシックが流れていたスピーカーからであろうか?

ちょうどクラシックが止まり、この曲が流れてきた。 

一体誰の仕業なのだろうか?

 

「アリサちゃん。それ以上はいけない」

 

てーてー↑てーてー↓てーーーーーー ムズムズ

「え? なんでよ、今から盛り上がる所なのよ?

こんなの絶対おかしいぜ」

 

てれれれれーーーー

「それ以上は駄目なんだ、分かってくれ」

 

てーてー↑てーーーーーてーてー↓ ウズウズ

「振って来たのは八郎さんでしょ? ムキー」

 

「♪いーつになったらーなーくしーッたー未来にー♪」

「♪いーつになったらーなーくしーッたー未来にー♪」

アリサ、八郎堪えきれず、同時に歌い始める。

 

「結局歌うんかーい」

「結局歌うんかーい」

アリサ、八郎の同時突っ込み。

 

「いやいや、お互い様だよね。 

しかし、一体誰がこんな音楽を

良いタイミングで流したんだろう?

こんなの歌えって言ってる様なもんだよね?」

 

「そうよね。まあここは遊戯室だし

何があっても不思議じゃないわ」

 

「そうか、そう言えばここ遊戯室だよね成程」

遊戯室万能説を唱えるアリサに、何故か納得する八郎。

 

「気にしたら負けよ、でも楽しかった。

あーなんか物足りないなあ

またカラオケで思いっきり歌いたいわー」

 

「そうか、それもそうだよね。確かに伴奏終わって

1フレーズじゃ物足りないよね。

よーし暇な時に一緒に行こうか?」

 

「えっ? 八郎さん彼女がいるのに私を誘うの?

そんな事したら人気投票で最下位になるわよ?」

 

「え? 何だい? 人気投票って?」 

 

「あ、何でもないの。うーん……まあいいか

八郎さんは優しそうだし。今回だけだからね?

あ、でも彼女さんに悪いかしら? 

こんな美少女を連れ歩くなんて」

 

「いや、彼女も連れて行くよ。

あいつは一度も歌った事無いから何とか歌わせたいんだ。

結構いい声しているし、歌もうまくなると思う。

アリサちゃんが楽しそうに歌う所を見せれば

もしかしたらと思って」

 

「そうなの? じゃあ人が変わりゆく瞬間に

立ち会えるかもしれないのね? 

なんか楽しみになってきちゃった」

にっこり微笑むアリサ。

 

「彼女は内気だから、時間は掛かるとは思うけど

何とかしたいよな。それにしても

実はこの名前あまり気に入っていないんだよ。

8浪しているからさ。『八郎は名前通り八浪だー』って

近所の小学生達にからかわれたよ……

どこで調べたんだよ全く……

親も子供が増えてくるにつれて

名前の付け方がいい加減になってきてるよね。

一郎兄さんは一浪で大学受かったし

次郎兄さんは現役合格だし

四郎兄さんは四浪合格。大体名前通りになっているんだ。

次郎兄さんは字面じづらで得した気がしてならないんだよね。

もし虫の蜂で蜂郎って名前なら

現役合格出来たかも知れないのにさ」

荒唐無稽こうとうむけいな事を言う八郎。

 

「あのー八郎さん? 次郎さんの実力を認めてあげてよ。

あれ? そういえば、彼女さんと来てないの?」

 

「ああ……あいつなー。スマホアプリの

バルキリードラゴンのデイリーミッション終わるまで

出られないとかで、部屋に篭っててさ。

折角外出したんだから行こうぜって誘ったんだけどね」

 

「あーあれねー、私もやってるよ。

友達に勧めて貰って始めたのよ、私は続けているけど

多分その友達は止めちゃった。

あれね、スマホを横にして遊ぶタイプのアプリなの。

いつの間にかその友達、スマホ

縦にしていじっている事が多くなってきたもん。

悲しい気持ちになるよね。いいアプリなんだけどなー

ガチャがくっそ渋いからかな? 

まあ私ももうログイン勢だけどね。

あれ、課金してる人発狂するレベルよ

ガチャにピックアップも確定もないし

個別排出確率表記すらしない。近々サ終待ったなしね」

 

「そ、そうなのかい? 

ま、まあその辺はよく分からないけど

あいつ、あまり外へは出たがらないんだよね。

まあ、あんな事があったから。

仕方ないっちゃ仕方ないんだけどね」

 

「あんな事って? どんな事があったの?」

気になる事があるとすぐに聞いてしまうアリサ。

八郎は少し考えてから語りだした。

 

「確か3年位前だった筈。

あいつの地元の戸奈利町となりまち

ヤンキーが大量に出没するようになった。 

あいつ大人しいからすぐに絡まれて…… 

まあ、そこにたまたま通りかかって

それを見つけ颯爽さっそうと駆けつけて助けたんだ。

と、いっても威勢よく飛び出したはいいけど相手は4人。

すぐにボコボコにされてしまったんだ。

でもその時

運よく警官が通りかかったお陰で助かったけどね」 

 

「八郎さん出て行ったはいいけど、やられちゃったのね? 

でもそれで、仲良くなったんだー。 

八郎さんはあまりモテそうにないもんね。

この位のドラマがなきゃ彼女なんて出来ないよね」

 

「おいおい。アリサちゃん、顔に似合わずの毒舌かよ。

レディなんだからもう少しビブラートに包んでくれよ。

……まあ全くその通りなんだよなあ……情けない話だが。

でも流石アリサちゃんは先輩の娘さんだけあって鋭いね。

そして、後で分かった事だけどそいつら

当時目指していた大学の学生も混ざっていたんだ。

年は遥かに下なのに先輩だったんだ。悔しかったよ」

 

「推理クラブに入ってるもん当然よ。

後ビブラートに包んじゃ駄目よ。

オブラートに包まなきゃ。

ところで、どうしてヤンキー達は急に発生したのかな」

 

「それがよく分からないんだよ。

しかし、当時5浪中の男に彼女が出来るとすれば

アリサちゃんの言う通り

こんなドラマでもない限り絶対ないよなあ。

同期は大学とっくに出て、就職も結婚もしてるんだ。

今ようやく大学生活を始めた人間とは雲泥の差だよね。

で、何人かが嫁さん紹介するから来いよって言われ

合いに行ったら失礼だけど

お世辞にも美人とはいえない人で

彼女と比べたら誰も敵わない。それで思ったよ。

こんな底辺に舞い降りた美人、

絶対大事にしなきゃなってね」

しみじみと天井を見上げながらつぶやく八郎。

 

「あらまあ惚気のろけてくれちゃって。ご馳走様。

そう思うなら、絶対留年はしちゃ駄目よ? 

なんならアリサが勉強教えてあげようか?」

上から目線。生意気な小5である。

 

「はい、よろしくお願いします。先輩」

それに引き換え、平身低頭な八郎。

 

「突っ込まないんだ……そこ……

まあ、若干私の方が精神年齢は高いけど。

そこは小学生に教えて貰う様な事は無いぜ!

って決めてほしかったなあ。

さて、アリサももう一仕事するかな? 

もう一匹位ここに隠れているかしら?」

 

「え? 何の話?」

 

「隠れユッキーよ」

 

「ああ、あれかー。

確か最高で半額になるらしいよね。

更に全部見つければ、賞品も出るらしいし。

確かオーナーの顔写真付きのマグカップ

10万円らしいね。でもこのホテル広いし

コンプリートは難しいんじゃないんかな?」

 

「へえ半額かあ。しかも10万円まで貰えるって

すごい太っ腹よね? 色々な所を見回りたくなるわね! 

更にやる気が沸いてきたわ。正義の味方の勤めも果たせて

お金まで貰えるなんて一石二鳥よね」

アリサが目を輝かせる。

当然オーナーの顔写真付きマグカップには一切触れない。

仮に貰ったとしてもその瞬間に叩き割られるであろう。

 

「えっ? 正義?」

 

「こっちの話!」

 

 その時。 

遊戯室に、また誰か入ってきた。

一度見たら忘れない長い顎髭、ロウ・ガイだった。

つかつかと歩き、ダーツ的の前に置いてある矢を取り

瞑想する。そして、それを額に近づけ

ぶつぶつとなにやら念仏を唱える。

 

「アブラカタブラルータアズラナカ

ハルータアクヨノンモケポイダョシ!」

 

 そして目を見開き、ボードに投げる。

クワッ!

 

「ハァアアアアアアアアッ」

 

ドスッ!!

見事、中央の赤い丸に命中。

 

「おおーロウ・ガイやるじゃん」

アリサが拍手する。

 

「ふぉっふぉっふぉっ。わしなどまだ未熟じゃよ

これは初めてやるのじゃが

なかなか面白いもんじゃのう。

ところでこれはこういうやり方でいいのかの?」

 

「そうだよ、初めてにしては筋が良いから

本気で修行すれば世界狙えるわよ」

しかし、アリサも当然ダーツの事は良く知らない。

 

「アリサちゃん、初対面のお爺さんに対して

老害と言っては駄目だよ」

八郎が叱る。

 

「ちがうもん。八郎さんは大きな誤解をしているわ。 

このおじいさんの本名がロウ・ガイって名前なんだって。

さっき廊下で声掛けて来て、少し話したんだよ」

八郎は、ロウ・ガイの事を知らなかった為

老害と言ったように勘違いしたようだ。

 

「あ、そうなのか。知り合いなんだ。

アリサちゃんかなりの毒舌だから初対面の人にも

平気で老害呼ばわりしたのかと思っちゃったよ」

頬を掻く八郎。

 

「あれ? 八郎さん」

アリサが声をかける。

 

「ん? なんだい?」

指に絆創膏が巻いてある事に気づくアリサ。

 

「指、どうしたの?」

 

「あ、これかい? バイト中にちょっとやっちゃってね。

まだバイト先変えたばっかりで慣れてなくってね。

いやいや良く気づいたね

まあ大した事はないよ。かすり傷かすり傷!」

 

「へえ。ならよかったわ

でもアリサはそんな悪い子じゃないよ。

それに八郎さんとだってまだ会って間もないのに

アリサの全てを知った気にならないでよねっ」

両手を腰に当て、顎を前に突き出して怒るアリサ。

 

「そうだよね。ごめんね」

八郎は素直に謝る。 

 

「でもさー初めてでいきなり真ん中に当てるって

年なのにすごいよねー」

 

「言ったそばから……年なのに、は毒舌じゃないかな」

八郎の的確な突っ込み。

 

「ありゃ……」

口に手を当てうろたえるアリサ。

 

「あはははは」 

 

「ふぉっふぉっふぉっ」 

和やかな空気が遊戯室を包む。 

ところが! アリサは気付かなかった!! 

アリサは!!! 引いてはいけない引き金を!!!! 

引いてしまったのだ!!!!!

ロウ・ガイが、静かに語り始めた……

頼んでもいないのに……

 

「ふぉっふぉっふぉっアリサよ

嬉しい事を言ってくれるのう。 

あれは、40年も前の話じゃ。いや41年前か? 

いや46億年前じゃったかも? 

と、ともかく若かりし頃のわしは

中国妙技団の専属料理人をしておった。

そこの団長がの、先代が逝った後、後を継いだのじゃが

齢は、なんと15歳じゃったのじゃ。

先代までは国内のみを営業先にしておったが

そやつは海外進出を提案した。

それからは、中国だけでなく韓国、インド、日本にも

訪れた事が有るのじゃよ。

若いのに中々グローバルな考えを持っておったのう。

 そいつがの営業先で、その地域の料理は食べたくないと

わしが作る料理でないと

ヤダヤダァと言って聞かなくてのう(///照///)

妙技の腕は、間違いなく中国一なのじゃが

わがままで困るのう そう思うじゃろ? 思わない? 

わしはそう思うのじゃがのう。価値観の違いかの?

それでの、あれは上海公演の時じゃったか? 

いや香港だったか? うーむ思い出せん、まあいいか? 

……いや、よくないぞい! 情報は正しく伝えなくては

わしまであんな奴らと同じになってしまうぞい。

ウーム。た、確か香港公演の時じゃ。うん、間違いない。

曖昧あいまいじゃないぞい、確かな記憶じゃよ。

何じゃその目は? う、嘘じゃないぞい。

そいつがの、わしにこの中国妙技団 秘中ひちゅう 

先代からの一子相伝いっしそうでんの極意までも…… 

もしも、その技の権利に値段が付くとすれば

数千万は下らぬ筈じゃよ。そんな技を

わしの料理中に何気なーく。

 

「ねえねえ。ガイ、ほら見て。今日はこんな技だよ」

 

などと見せて来たのじゃよ……本当に

いつまで経っても子供のような奴じゃった。じゃが

じゃからこそ柔軟な考えをもっておったのじゃろう。 

先代を超える量の新しいオリジナルの妙技を編み出し

妙技団を大きくしていった。

直接技のやり方も教えられたりもしたのう。

その時のあやつの顔は、俯瞰ふかんで見ても

誰をも惹きつける魅力があったのう。

何時じゃったか? 幾つか技を教えてもらった後にの

 

「ねえ。ガイ、舞台に出てみない?」

 

と誘われ。一度だけ、一匹狼の料理人

ウルフ・ガイという芸名で妙技団の舞台に

立たせてもらった事もあったのじゃ。

料理をしつつ、妙技を披露するというスタイルでな。

初舞台にも関わらず、観客から拍手喝采を浴びたのじゃ。

嬉しかったのう、そして気持ちよかった。

ほんにいい思い出じゃった……

その舞台で披露した技の中にの

狙った的に的確に確実に当てるという妙技もあった。 

わしは今、その妙技を使ったのじゃよ。

腕は鈍っていないか心配じゃったがの」

……どうやら終わったようだ。

 

6話 オーナー乱入

 

「長いー、ロウ・ガイ話がめっちゃ長いー

2行でまとめなさい」

アリサが文句を言う。

 

「無理じゃ、しかしアリサの怒った顔も可愛いのうw

男ロウ.ガイ62歳。本気で心奪われそうじゃわい

わし真剣です、付き合って下さい。なんてのw」

51歳離れた男からの唐突の愛の告白。

 

「やだよ、私には心に決めた人がいる」

心からの拒絶の一言。

 

「0,1秒で振られてしもうたわ、ふぉっふぉっふぉっ

ほほう興味あるのう。心に決めた人とは一体誰じゃ? 

まさかそこの若いのか」

 

「残念だけど外れよ。彼女もいるしね。

でも彼、彼女がいるのに

私にカラオケ行こうって誘ってきたけどね」

実際は誘われてまんざらでもなかった癖に

被害者ぶる謎のアリサ。

 

「何じゃと? なんという破廉恥な男じゃ! 

人気投票で最下位確定じゃな」

 

「うん」

と、その時。

 

「ぐっす、うわおんおーん」

八郎が泣いていた。

まるで遊園地で迷子になった子供の様に

人気投票で最下位と言われ泣いているのか? 

まあそれも仕方のない事

私がもし最下位であったとしたら

恐らく発狂し、自らの髪を半分以上毟むしり取り

語り専用マイクを床に叩き付けるであろう。

でももし♡ 上位ランクイン出来たなら

仕事も増える事を想定し

のど飴を舐めたりハーブティを飲んだりして

喉を労わるであろうな。

 

ぬ? お前は登場人物ではないから

その対象ではないであるだと?

ヌ・ヌオオオオオオオォ

……話が脱線した……すまぬ。

いや、違う様だ

恐らくロウ・ガイの長話を聞かされて

大の大人でも泣いてしまったのであろう。

 

「いい友達が居たんですね。

ぐっす、うわおんおーん感動しました!」

ほほう、そっちだったか……

 

「え?」

 

八郎は、話の長さで泣いていたのでは無く

話の内容をしっかり聞いた上で感動して泣いていた。

今時珍しい若者である。

「ふぉっふぉっふぉっ、心の清らかな若者じゃの。

じゃがの、お主の言葉には幾つも間違いがあるぞ」

 

「え?」

 

「団長はまだ生きとるよ。そして

いい友達が、居たと言ってしもうたが、まだ友達じゃ。

妙技団から、このホテルに引き抜かれる時も涙を流し

 

「またいつでもうちの料理人に戻ってくれていいんだよ」

 

と言ってくれたしの。勝手に死なせないでほしいのう」

 

「あ、そうなんですか? 引き抜かれる? 

ガイさんはこのホテルに居たんですか?」

 

「うむ。じゃが、この前の食中毒の件の責任を

全て擦り付けられ首になったのじゃ……

その時のオーナーの怒った顔の憎たらしさときたら

今でも忘れられんぞい。

まるで、怒った巻き○その様じゃった」

髭を弄りながら話すガイ。

 

「腕を見込まれ引き抜かれたのに少しのミスで

捨てられたんですか……勝手ですね。

すいません、嫌な事を思い出させてしまいました。

そして、なんか勝手に死んだ友達から

受け継いだ最後の秘技の話をされていたと

勘違いしてしまいましたし」

涙を手でぬぐいつつ謝る八郎。

 

「わしもこんな所に来るんじゃなかったと

後悔しとるよ。確か30年くらい前じゃったの。

このホテルの前のオーナーが中国妙技団のファンでの

わしが一度だけ舞台に出た時にも見に来てくれてのう。

その時、厨房まで入ってきて話をしている内に

意気投合しての。

一度きりの出演で、本職は料理人です

と話したら、是非私のホテルで料理をして欲しいと

頼んで来たのじゃ。じゃから

雇ってくれた人とクビにした奴は別じゃ

妙技団の方も良い料理人はわしが沢山育てたし

わしが抜けてもやっていけると判断し

移籍を飲んだのじゃ。

 そして、もう一つの理由があったんじゃ

それが近い内にそのホテルに林総理が

泊まりに来るから

是非貴方の最高の料理を作って欲しいと頼まれた。

それがダメ押しとなり、移籍する事になったのじゃ。

わしの料理があの総理の口に入ると思うと

妙技団にも未練があったがそれを上回ってしもうてのう。

今思えば、メイリンには済まぬ事をしたと思うとる。

それと、わしも勘違いする様な事を

言ってしまったかも知れんのじゃ。お互い様じゃの」

 

「そんな事があったのですか……」

神妙な面持ちで聞き入る八郎。

 

「しかしアリサよ、お主はどこかで・・

いや気のせいかのう? 

あやつに目元がそっくりじゃ、だが待てよ? 

髪の色が・・やはり気のせいか?・・」

ぶつぶつ何か言うロウ・ガイ。

 

 

第4章 アリサの力

 

アリサ、ロウ・ガイ、八郎の3人の元に

部屋の隅でポーカーをしてたオーナーが

悪臭を放ちやってきた。愛犬の橋本もついて来ている。

犬は人間より遥か優れた嗅覚の筈だが大丈夫だろうか? 

それとももう既に悪臭で鼻をやられ機能しないから

平気なのだろうか? 橋本本人に聞かないと分からない。

 

ズササッ

 

アリサはそれに気づき、ロウ・ガイの後ろに隠れる。

 

「やあ、あなた、ダーツ上、手ですね。しか。し

どこかで見た事があ。ります。

前にお会いした、事はあ、りますか?」

相変わらず変な所で息継ぎをするオーナー。

癖なのだろうか?

 

「これはダーツと言うのか。

成程、褒められると嬉しいもんじゃ。

だが、お主とは初対面じゃ、何か用かの?」

ロウ・ガイは嘘を突いた。

当然初対面では無く自分を首にした張本人。

だが、付け髭の変装の効果もあり

オーナーはその事に全く気付いていない。

 

「わが、イーグルスノーホテルの。

遊、戯。室においでな、さった者共に、は

直、接感想を、聞きた、いのです

私がお作りなさったこ、の遊戯室を

楽し。んで♪いますか? よしよ。しいい子。だ、ぞ」

 

橋本を撫でつつ笑顔で聞いてくるオーナー。

笑顔なのだが、3人はその笑顔には返さず

俯いて聞いている。やはり、彼の話し方は

区切る所や敬語の使い方がおかしい。

 

 そして、言葉遣いこそ丁寧だが、所々に

人をイラつかせる表現が見え隠れしている。

変な所で区切るのは、恐らく頭の回転が遅いので

一言喋る度に脳みそと相談し次の言葉を導き出す為

時間が掛かってしまうのだろうか?

 

「ふむ、まだ来てダーツを一回やっただけじゃ。

色々回ってからにしてはくれんか?」

 

「成程。そうでし、たか、そうですよね

色。々回ってからですよねそれは失礼しまし。た

そ。この髪の薄。い若い男にも聞いて、みようかな?」

オーナーは失礼な事を言いつつ八郎に体を向ける。

すると八郎は、ちょっと顔をしかめつつそらす。

 

「ぐがっ、こっここここ、この雰囲気は好きですね。

センスを感じると思いますよ」

 

鼻に直接あの臭いが入ってしまったのか苦しそうな八郎。

何故かお世辞を言っている。

早くどこかへ行って欲しいという感じが見て取れる。

そう、批判を受けると誤解を解きたいと言う考えから

反論が来て、長くなってしまうのだ。だから、褒めて

これ以上相手に何かを言わせない様にする。

それが嫌な人との上手い付き合い方なのだ。

まあ、あの体臭だし

いつまでも近くにいて欲しくないというのは

人類共通の認識であるから仕方が無い。

 

「ほほ、うそ、うですか?、。嬉し。いです。ね

作った甲、斐があり。ますね。では、

後ろのお嬢ちゃ。んこ。この感想はど。うですか?」

 

 アリサがロウ・ガイの陰に隠れた事は

しっかりとオーナーにばれていた。

殴られてもすぐには痛がらずに5秒後に痛がる様な

視界も狭く、愚鈍で重鈍で鈍感な男なのだが

素早く隠れるアリサをしっかりと目で追えていたのだ。

そして、メインディッシュは最後にと言わんばかりに

タニタと笑い黄色い歯を見せながら

こちらに向いて歩いて来ている。

 

「うげげえ……話しかけられた……やだなああいつ……」

本気で嫌がるアリサ。

この声は小声でオーナーには聞こえなかった。

そして嫌々答える。

 

「とっても楽しいわ、(臭ッ歯ぐらい磨けこのタコ)

それにしても凄い指輪ね、その左手の……くっ」

 

……Warning warning!

Abnormal condition occurred……

Alisa became the deadly poison for the breath of the owner.

 

ちょっと引っかかると、何でも聞いてしまうアリサ。 

八郎の様に素直に褒めて会話を終わらせればいいのに

気になると何でも聞いてしまうのだ。

それが例え嫌いな人でも、その癖は変わらない。

 

 お? 警告が……どうやらアリサはこの瞬間に

オーナーの息で猛毒を喰らってしまった。

大丈夫なのであろうか?

しかし、オーナーはそんな事には一切気付かず

待ってましたと言わんばかりの顔をする。

 

「ふ。ふ、ふ、これかい? 綺麗でし。ょう? 

この指。輪は特注。品で私の指にしか入らないんだ」

と言って太い指を見せる。

これは特注でないと入らないだろう。

親指も牛の鼻輪位あるのだ。

 

「私は子、供の頃から戦隊モノ。のファンで

赤レ、ンジャーとか全部で5人でしょ。?

赤青、黄緑桃ってね。私の指も親指から、

ルビー サファイア ト。パーズ エメラルド

そ、して小指にはピン、クダイアの指輪をして

5レンジ。ャーごっこを毎日してるんだよ

例えばこん、な風にね」

 

 オーナーは突然両腕を45度に上げた後

左腕を右腕と前に交差する様なポーズを取り始めた。

 

「宝石戦。隊 ジュエ、レ。ンジャー!! ハ。ッ。

リ。ーダー ルビーレッ、ド シ、ャキ。ーン」

 

「え?」

呆然とするアリサ。そんな事気にも留めず続ける。

そして、ルビーの指輪を嵌めた

常人とは思えない程太い親指を立てながら。

 

「俺は、ルビーレ、ッ。ド。俺のこの真っ、赤に

燃える真紅の輝きで、君た。ちを焼き払う!」

 

そして、次にサファイアの指輪を嵌めた

太すぎる人差し指を立てる。

 

「私は、サファ。イアブルー。

海よ、りも深い青の輝きで、仲、間の傷を癒すわ!!」  

 

そして、トパーズを嵌めた中指を立てつつ。

 

「あたいは、トパーズイ。エロー。

カレーの事な、ら何。でも知っている。 

あなた好み。の最適カ、レーを振舞うわ」

 

「なんか中指立てながら決めてるトパーズ

めっちゃ失礼な奴だなあ」

何故かオーナーの邪魔にならぬ様小声で話すアリサ。

 

そして、エメラルドを嵌めた薬指以下同文

 

「うちは、エメラルドグリーン。

ちょっぴりビビリでシ、ャイな森ガールやで。

関西。弁なのは他。の子と被らん、ようにする為や。

どんな敵でも森のマイナ。スイオンで癒、したるでぇ!」

 

「ボクは、ピンクダイアピンク。

ピ。ンク以外の色、な。んか大っ嫌。い!

こ。のピンク色のスプレ、ーで、

まずは五人の。色をピン、クに統一した後に 

世界中をピン、ク色に染め、上げてみせ。る!」  

 

「5、人合わ。せて ジュエ、レ、ン、ジャ。ー!!」

 

「♪世。界、平和、はージ。ューエル、の、輝。きー♪」

続けて主題歌であろう何かを歌い始める。

 

「もういい。やめて!」

アリサが耐えかねてオーナーを止める。

 

「そ。うか? サビがい。いのに。まあい。いか

は。ぁはぁ決まっ。たよ、これ、さあ

いつも決ま、っちゃうんだよ。

どうだい? かっ、こいいだろ?」

 

苦痛の3分が終わった。

しかし、アリサも指輪の事を聞いた結果

こんな茶番を見せられるとは

夢にも思わなかったであろう。とんだ薮蛇である。

そしてそれを彼はかっこいいと思っている様だ。

そして、橋本はそれを見て尻尾を振っている。

 

「ご主人様のいつもの奴だ♪ 嬉しいハシッ」

 

とでも言っているのであろうか?

 

「かっこいいも何も 

小太りのおっさんが毒でも受けて

もがき苦しんでる様にしか見えなかったわよ。汚い。

こんな物を見せて……慰謝料を請求するわよ!

それにこの戦隊、男女の配分がおかしくない? 

赤以外女子じゃない? 子供向けではないわね。

ハーレム物っぽいじゃない。

大きいお友達向けなのかしら?

ピンクもボクって言っているけど

色から考えてどうせボクっ娘でしょ? 

しかも、まともに戦えそうなのが、赤と青だけで

攻撃技は赤の火属性のみでしょ? 

火属性吸収のレッドドラゴンとかが

敵で居たら詰みじゃないかしら?

後の三人は戦いには連れて行けない

しょぼい能力しか持っていないし

それと、ピンクダイアピンクって? 

バイク川島バイクじゃあるまいし名前が変よ

何とかならなかったの? 後、ピンクの思想

かなり危ないわ。設定をもう少しひねりなさい」

 

 的確に、オーナーの考え出した

これから世に出る訳でもない

架空の戦隊ジュエレンジャーに律儀にも

弱点と改善点を挙げるアリサ。

 

「そ、そうかお嬢さんに、は

この良さが。伝わ。らないか

まあ趣味は人それぞ、れだし仕方ないと思っているよ。

じ。ゃあ話を戻すけどこの小指にあ。るピンクダイア。

これは、と。て。も、珍しい、物ら。しく

この大きさのピンク、ダイアは世界でこれ1つらしいよ。

今でこ、そこの私。の小指に輝いてはいる、が

将。来私の妻にな、る女性に奉げるつもりなのです」

 

自慢と下らない趣味を聞かされ、迂闊に質問した事を

死ぬほど後悔しているアリサ。

しかし、聞き慣れない宝石ピンクダイア。世界で1つ?

そんな物を持っているという事は

相当金持ちだという事が分かる。しかし

オーナーの小指は普通の成人女性の薬指3本分なので

指輪としては使えそうに無い。

しかもオーナーの悪臭が染み付いているので余程

消臭、殺菌、消毒、表面研磨をしないと使えそうに無い。

 

「へえ、ホテルも所持していて

お金持ちっぽいのにまだ結婚していないんだ。

結婚しない主義なの? それとも 

余計な事にお金を使いたくないから結婚しないの?

お金持ちはどんどんお金を使ってくれなきゃ

経済が停滞しっぱなしよ?」

小学生が心配する話ではないと思うが。

 

「ま、さ、か! 今すぐに、でも欲し。い位、だよ。

でも私は、第一印象でどうし。てもオッケー

くれ、る人が居なくてね。

そう。だ、お嬢ちゃん、私のお、嫁に来るかい?」

第一印象もそうであるが

人類全てに致命効果のある悪臭を所持している男なので

見つかるのは稀ではないだろうか? 

そんな彼が、半分冗談だろうがアリサに求婚してくる。

アリサも女性ではあるが、まだまだ子供

この男、見境がない気がしてならない。

 

「嬉しいお誘いだけど、年が離れすぎているわ。

他を当たって!!」

(冗談じゃない。あんなもんと結婚する位なら

死んだほうがましよ!!

こんな臭い男と誰か結婚するのかしら)

私のお、嫁、の辺りで、食い気味で断るアリサ。

 

「そ。んな急、いで断らなくても……

丁度君で千、人目のお断りを食らったよ。

はぁ~一生独身かもし、れないね。

女性恐、怖症になりそうだ。折角お、金持ちになれても、

結婚出来ないって言うの。は辛いよ。

外見ば、かりでなく、少し。は、

私の内面も見。て欲しいもんだよ」

オーナーから哀愁が漂う。

千人に断られても未だに気づけないのだろうか?

しかし、折角お金持ちになれたという言葉が

何となく引っかかったがアリサはここでは気に留めず。

 

「ところで、ホテルの名前。イーグルスノーって

珍しい名前ね。一体何の意味があるの?」

瞬速で断った負い目もあり

アリサがもう一つ気になっていた質問をする。

 

「実は私の、本名が、斉藤隆之さいとうたかゆきとおっし。ゃいまして。

ホテルの名前は色々、考えなさ、りましたが

自分の名前、を英語になさろうとなさ。ったんです。

ところが隆之、を1文字ず。つ英語しなさっ、ても

お分かりにくかったので

当て字で、鳥の鷹と、冬に降る雪で鷹雪。

それを英語に、なさり。イーグルスノーです。

雪の日に鷹が、この、ホテルの陰に隠れ、

雪が通り過、ぎるまで羽を休め。る。

そんなホテルに。なさりたい、と言うイメージで

こ、の名前になさりました。お嬢、さんも

その美。しいイメ。ー。ジを、を描けた事でしょう」

陳腐なイメージを押し付けてくる隆之。

少年の様な純粋な心を持ってるアピールが半端なかった。

 

 そのアピールに気付いたアリサ。

隆之に対する嫌悪感が更に高まる!

そして同時に、隆之の幾つかの間違いにも気づいた。

アリサは一瞬でそれら事柄を効率よく組み立てる。

隆之が最も嫌がる様に考え抜かれた組み合わせを……

まるで、バラバラになったパズルのピースを

頭の中で完成させるかの如く。脳内で高速処理を行う。

そして、キュルルル……最大限まで脳みそを回転させ

可能な限り早口モードに変化する為、呪文を唱える! 

 

「ありんこあかいなあいうえお

いなえおでめてぎすちくやはんゃちばおのいさくゃぎ」

すうーー、はあーー。

先程のロウ・ガイもやっていた呪文の様な物を

見様見真似で唱えるアリサ。

その後に、深呼吸をする。そして反論が始まる……!

 

--------------------------------Battle start--------------------------------

Alisa VS Takayuki Saitou

 

私の書いている小説です

 

https://novelup.plus/story/200614035

 

https://estar.jp/novels/25602974

 

https://ncode.syosetu.com/n3869fw/

 

人気ブログランキングに参加しています

応援よろしくお願いします!

人気ブログランキングへ