magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

私の行く先々で事件が起こる件について1話 1、2話

1話の2話分をまとめた物を投稿します。次回は3、4と毎週4話ずつ投稿予定です。

5話投稿すると前回の記事で話していましたが

一気に5話投稿しようとしたら、文字数制限に引っかかってしまいました……

この無料ブログでは5話分の3万文字は駄目らしいです。なので次は2日後の土曜に3、4話を投稿します。その間はなぞなぞとか大喜利などの記事は投稿いたしません。

 

1話ホテルへ

「私はアリサ。小学5年生。

学校では推理クラブに入っているの。副部長なの。

親が刑事なのでその影響。

でも、田舎なので全く事件が起きないの。

平和が一番と言うけれど、ちょっと退屈。

……あ……あれ? 何か面白くなさそうだから

ブラウザバックしちゃおうなんて思っていない?

お願い! もうちょっとだけ待って?

後5000字だけ読んでから判断して?

どんなにつまらない物でも5000文字も読むと

愛着が湧くかもしれないし。ね? いいでしょ?」

 

「そんな事は強制してはいけない!!

大体今話は7500文字位しかないのだ。

そう、ここにただ書いてあるだけの7500文字

そんな物に何の価値もないのだ。

誰にも気づかれる事なくいつしか淘汰されるだけの

7500文字だ。だが、誰かに読んで頂く5000文字とは

遥かに替え難く、尊く、重いのだ。

その6割以上を読んで貰おう等とはおこがましいのでは?

子供というのはこれだから恐ろしい……

無邪気な瞳で無理な事を平気で言う……

読んで頂くにしても

せいぜい4649文字位までであろう!!」

 

「何? あんた誰?

突然現れて怒鳴り散らして何なのよ!

開口一番全世界の子供達をくたしてどういうつもりよ!!

5000文字位読んでくれるわよ! ね? そうよね??」

 

「ぬ? く、腐す? な、何だその言葉は?

それに開口一番などという難しい言葉を使いおって!

貴公も子供なのだから、もっと子供らしい

話し方をしないといけないぞ?」

 

「うるせえハゲ! 質問を質問で返すな!!

そんな事よりあんた誰よ? 質問に答えなさい!」

 

「ぬ……禿げてなどいない! このチビが

少し頭皮が剥き出しなだけで禿げと言うにはまだ若い。

それに貴様が言わなければ誰にも分からぬ事である。

全く、余計な事は言わないでほしいものであるな!

私はこの物語の語り部である。

そんな事を強要しては駄目なのだ!!

それにつまらないなどとは

口が裂けても言ってはいけない!!

確かにこの話、完全につまらないとは思う。

お主以上に私もそれには強く同意している。

それは仕方のない事だ。例えば

元気一杯で皆に素敵な笑顔を与え回っていた少女も

この話を読み終わった後には

一切笑う事のない娘に変わってしまう程にな。

だが

ばれるまではこちらから言うのはご法度なのである。

なんなら、最後まで騙し通す勢いで行かなくては

絶対に駄目である」

 

「ちょっと! チビとか……小さいは余計でしょ?

言わなければ分からないんだから内緒にしとけって!

で?

語り部って事は……あんた、【こっち側】の人間でしょ?

本当は5000文字、いいえ

それ以上に読んで欲しいくせにさ。

なにさかっこつけちゃって!」

 

「んがぐぐっ。そ、それはそうなのだが、皆にも

都合という物があってだな。

5000文字も読んで貰う暇などない訳なのだ」

 

「でも確かに、つまらないは失言だったわ。

でもあんた完全にって……

少女が一生笑わなくなるって……

確かにそうだけど……へこむわ

……ごめんみんな! さっきのは噓なのよ

面白いから5000文字なんてあっという間よ!!」

 

「うむ。多少わざとらしいが

つまらないというよりは遥かに良い」

 

「しかしあんた4649文字って中途半端ね。

いっその事5000文字でいいじゃない

切りもいいし……待てよ?

……もしかして……4649でよろしくって事かしら?

何よあんた意外と礼儀正しいわね!」

 

「ふむ、長い事生きていれば、そういう所にも

気を使える人間になれるのだ。

子供のお主にはわからないであろうがな!

ぬぅ。やはり5000文字は多い。

せめて4900文字位には出来ないであろうか?」

 

「くどいわ! 100文字しか変わらないじゃない。

誤差でしょそんな物。

少し文字数を下げて善人ぶっているけど

流石に2000文字位にしておけとは言えないのね。

4000文字以上は結局読んでほしいんでしょ?

あんたのやり方は、1万で売れればいい原価5千の物を

2万と嘘付いて、これ以上値下げしたら赤字ですが

15000円まで値引きしますって言い売る様な物よ!

大人って汚いわ!!」

 

「綺麗な大人など、この世には居ないのだ。

年を重ねて得た経験や知識の代わりに、純粋さを失い

狡賢くなっていくものなのだ

悲しい事であるけれどな……」

 

「あら? 開き直っちゃったよ。

そっかあ大人も大変なのね。

うーん、わかったわ。その言葉に免じて

4925文字位で妥協してあげる。

多分だけどそこまで読んで貰えれば

この話の魅力は伝わる筈だし

75文字削減なんて大サービスだからね?」

 

「いや、4914字では?」

 

「……これ以上は譲歩できないわ……てかまだ言う?

そこまであんたを必死にさせるものは何なのよ?

11文字下げた事で何が変わるの?

不毛な戦いは止めましょう……気がつけば

何か文字数のオークションみたいになってるわよ」

 

「ふぉっふぉっふぉっ。お二人とも

喧嘩は……やめなされ!!!」

 

「お前は何者だ!」

「お前は何者だ!」

 

 

 

 

第一章 ホテルへ

 

明日から夏休み。

どうせ退屈な毎日が待っているんだろうな

って思っていたんだけど……

 

「アリサ、明日から夏休みでしょ?」

 

ママが、一緒に都会に買い物に行こうと誘ってくれた。

断る理由もなく付いていった。でも

これがまさかあんな事件に巻き込まれる事になるとは

思いもしなかった……

 

 長い事電車に揺られ、早朝に出発したにも関わらず

昼より少し前に目的地に辿り着く。

炎天下の中、商店街を歩くアリサとママ。

さんさんと強い日差しが照りつける。

先に昼食をと回ってみるも飲食店はどこも満席で

昼食を取れる時間は無さそうである。

 

「食事は後にして、まずは買い物に専念しましょう。

行くわよアリサ!」

 

「はいっ!」

 

 アリサ達は

夏休みセール全品半額という看板を目にするや否や

店に飛び込む。そして、買い漁る。

爆買い中国人も真っ青。職業は刑事のママ。

日々の仕事から開放され、全く使ってなかった給料

そして、夏のボーナスを使う。

仕事は忙しくてもそんな時間を作る事は大事である。

買い物はママにとっては

ストレス発散の場所でもあるのだろう。

目当ての商品に主婦が一斉に飛び掛って

奪い合う壮絶なバトルも

柔道の心得のあるママの一人勝ちなのだ。

アリサはその壮絶な戦いの熱気に圧倒され

傍から見ているだけなのだ。

 

「私、何しに来たんだろう……」

 

「アリサ、足手まといが嫌なら頭を使いなさい」

 

落ち込むアリサを見て、アドバイスするママ。

 

「え? どういう事?」

 

「気になる商品を、見つけたら撮影よ。

次の店で同じ物を見つけたら

その写真を店員に見せるの。

で、前に行った店こんなに安いんだよ?

あっちで買おうかしらっていえば

おまけしてくれるかも知れないし」

 

「へー、頭いいねママ」

 

「年の功よ。じゃあ次行くわよー」

 

商店街の店を梯子する謎の二人。

そして、日は暮れていく。

 

 

「ふうー。アリサ、一休みしましょう」

 

ママは、両手いっぱいの戦利品を抱えながら

満足そうに公園のベンチに腰を下ろした。

 

「すごい人がいてくたくただわ。アリサ

明後日は筋肉痛よ」

 

携帯をいじりながら言うママ。

 

「えー? 筋肉痛は普通明日に来るんだよー」

 

「……アリサも大人になったらわかるわ……」

 

日は落ちてきて、次第に暗くなってきている。

 

「ママ、もう6時過ぎて暗くなってきたけど

これからどうするの?」

 

「そうね、今ねホテルを探しているの

予約し終わったら、今日はそこに泊まりましょう」

 

「わかった、待ってる間公園で遊んでくるね」

 

「そうしなさい」

ダダダダダッ。アリサは滑り台に走る。しゅー

 

「ふむ都会……の公園の滑り台も

うちの近所の公園と変わらないわね

階段はエスカレーターでも付いてるかと思ったのに」

都会に偏見を持つアリサ。

 

「アリサ見つかったわ。あー近くでよかったわ」

 

「うん。夕飯何かなー? お腹減っちゃった」

 

「そうよね何にも食べてないからね。

今日泊まるホテルは美味しいって評判なのよ。

ママも楽しみだわ、さあそろそろ行こうか」

 

「はいっ!」

 

 次第に辺りは暗くなり、街灯が点灯し始める。

夜風が涼しくなり、アリサ達の汗を乾かす。

普段歩いている田舎の田んぼ道と違い

舗装された都会の夜道。

踏み外したら死亡するという厳しいルールを設け

カラフルな舗装ブロックの内

黄色いブロックだけを器用に踏みつつ進む。

昼に大騒ぎしていた蝉達と交代に

鈴虫や蟋蟀の羽音が次第に大きくなり

それに反応するように、蛙達も鳴き始める。

 

「都会にも虫は居るんだね」

 

「そういえばそうね。うーん

ここをこうこうこうで到着かな」

 

 ママは、アリサの言葉を適当に返し

携帯の地図とにらめっこに集中している。

10分程歩き辿りついたホテルは、見上げる様な高さ。

300mはあるのではないだろうか?

暗さで一番上までは見えない程だ。

アリサは、外泊は初めてで、さっきまでの疲れは忘れ

小型犬の様にあちこち走り回っている。

 

「あった! ここよ。中に入りましょう」

 

「うー、なんかドキドキするー」

 

 アリサが小声でママに言う。

さっきまでははしゃいでいたが

いざ入るとなると緊張するらしい。

中に入ると、外との明るさの差に思わず目を薄める。

入り口の傍に、ホテルの施設を紹介する

電光掲示板があった。一定時間で切り替わり

プールや遊戯室の画像が流れている。そこに

丁度このホテルのオーナーらしい人が迎えてくれた。

 

「当ホテルによ。うこそ、自慢の遊戯、室やプールも

ござい。ますの。でお楽し。み下さい! そして

先週から開始したイベ。ントも。ご、ざ。い、ま。す

そのイベ。ントと。は当ホ。テルでは隠、れユッキー

という、物が客室以外のどこ、かに隠されていまして。

見つけたら撮影。して戴きチェ。ックア、ウトの際。に

撮影したユッ。キーを受付に見せて。いた、だければ

その。数、に応じ宿泊費が割引さ。れるシステ。ムと

なって、ますのでど、んど、ん探しちゃっ。て下さい」

 

 不思議な所で言葉を区切りながら

アリサとママを迎えるオーナー。

何故かペットであろう犬を持ってこちらにやってくる。

その丁寧な対応にママが、オーナーに一礼する。すると。

 

「ちょっと待ってママ! 危ないわ!!

離れて!!!」

 

 アリサが近づくオーナーを見て

ママを後ろに逃がそうと腕を引っ張る。

ペットの犬が凶暴そうで引っ張ったのであろうか?

 

 ……否。どうやらそうではない様だ。

その犬はトイプードル。そこまで凶暴ではない。

そう、飼い主のホテルのオーナーから放たれる

最凶のオーラを、誰よりも早くに察知し

ママを避難させようとしたのだ。

 

「ちょっと! 痛いわ。急に何するのよ!」

 

「だってクリーチャーが近づいてきているよ。

絶対危険よ」

 

耳打ちするアリサ。

 

「クリーチャー? 何よそれ?

そんなのどこにもいないわよ? 目、大丈夫?

それともこの犬の事を言ったの?」

 

「ちがうよ! 目の前にいるじゃない。

ママこそ目が見えないの?

あの人どう考えても悪人面だし危険よ」

 

「顔で人を判断しちゃ駄目でしょ!」

 

「お願い。今だけは私を信じて」

 

「あ。の、親子喧。嘩。は止めてく、ださい

この子はお。となしいので

大。丈夫ですよほ、ら橋本挨拶なさい」

犬に警戒したかと勘違いし、犬の安全性を語る。

 

「ハシッハシッ」

 

謎の泣き声を発する犬が吠えて来た。

 

「何でこの人ペットを持って歩いてるのかしら?

それに、ペットに橋本て……」

 

「それは私の権限。で私のみ。ペットを入れ、ても

良いと言うルール。にしちゃいましたのです

こ。の子の名前はハ。シハシ鳴くから

そういう名にし。ちゃいましたかわいいでし。ょ。う?

それと私は。

クリ。スチャ。ンではなく仏教徒で、す。けど?」

 

 オーナーは、まさか自分の事を

クリーチャー呼ばわりされてるとは思わなかったので

クリスチャン。そう、キリスト教徒ではないかと

聞き間違えている。しかし、オーナー権限とは言え

ペットを持ち込むのはどうなのだろうか?

しかもリードもしておらず、放し飼いの様な物で

大人しい事を知っている人ならまだしも

初見の人からは不安がられるのではないだろうか?

 

「あ、聞こえてた、でも勘違いしているみたいね」

 

「ちょっと黙ってなさいね?

ちょっと疲れていて幻覚でも見えたのよ」

 

「おかしい絶対おかしいおかしい」

 ダンダンダン!

腑に落ちず地団太を踏むアリサ。

 

「ちょっと気になったんだけど

隠れユッキーとはどういう形をしているのかしら?」

 

「そ。それ、は私によ。く似たキャラク、ター

とだけしかいえな。いのです申し。訳ないです」

 

 具体的には教えてくれないが

オーナーに似たキャラクターらしい。

 

「そう、わかったわ、色々な所を探してみれば

何か見つかるという訳ね。

面白そうじゃない、頑張って見つけるわ!!」

 

 やる気満々のママ。宿泊費が割引されるとなれば

刑事の根性で全54階のホテルであろうが

虱潰しに探してしまうかもしれない。

 

それとは対照的にアリサは、オーナーを見るや否や

ホテルのオーナーという肩書きとは余りにも

不釣合いな外見に強烈な嫌悪感を覚えていた。

 

挿絵(By みてみん)

 

 というのも、年齢は50手前位だろうか?

身長170に届かない程度。

ワイシャツのボタンが外れそうな位でっぷりと出た腹

一重瞼ひとえまぶたで垂れた目垂れた頬、そして二重顎

肌の色は不健康そうなこげ茶色。ひび割れて、肌の色と

ほぼ変わらない色のたらこ唇 そして、そのこげ茶色に

隠れてはいるが、まばらに不揃いな髭も生えている。

お世辞にも第一印象はいい男とは言えない。

接客業に従事している者の身だしなみとは思えなかった。

ただ、ママは刑事という職業柄、凶悪犯と何度も

顔を合わせてるだけあり

免疫がある為、そこまで驚かなかった様だ。

 

 髪は白髪交じりで、髪型は三角帽子の様な形で

天井に向かって尖っているが、奇跡的にふさふさで

しっかり生え揃っている。これはどういう事だろう?

彼を作った、悪戯好きな神様が、彼の顔を如何いか

面白く可笑しく作ろうと夢中になってしまい

頭皮の事までは頭に回らなかったのであろうか?

普通ここまで酷ければついでに髪の毛もハゲに

カスタマイズして完璧にする筈なのだが……

全くおっちょこちょいな神様である。

 

まてよ? それとも、これ程までに酷い外見なのだから

情けをかけ一つ位取り柄として健康な頭皮を

提供してあげたのかもしれない。

 

 そして、茶色いスーツに茶色い顔、出っ張ったお腹

先端がとがった頭。この三つの要素からお腹から

頭にかけて横から見ると巻き○その様に見えなくも無い。

ある人物の容姿を例える時

大抵芸能人やアニメの登場人物や動物等で例えるが

この男はどれにも該当せず、唯一似ている物と言ったら

巻き○そと答える他ないのだ。

 

そう、パッと見

頭頂部が白い、巻き○そに手足が生えてる生物なのだ。

頭周りが80cm位、胸囲が120㎝位、腹部は160cm位で

3段構成になっていて、一番上の部分に顔が付いていて

たどたどしい日本語を操り歩き回る

巻き○その様な生物。この男が街中を歩いていたら

巻き○そのコスプレをしている人なのかと

道行く人々に思われてしまうであろう。

そんな者が、何故かこの300mもあるホテルの

オーナーをしているのだ。違和感しかないと

アリサは感じてしまった。

 

 まるでファンタジーの世界に迷い込み

巻き○そ型のモンスターと対峙した様な感覚。

ママを無意識の内に引っ張ったのも

肉親を守りたいという事の表れで咄嗟に行った事。

アリサは、正義感に溢れた母親思いの素敵な少女なのだ。

そして、第一印象のみで判断したとしても知性も

高いとは到底思えない。話し方もおかしい所で区切るし

これでは連れているペットの橋本と

知恵比べしても負けそうである。

学業で財を成した様には失礼ながら思えなかった。

 

 左手の全ての指に金ピカの指輪をめていて

その中には、色とりどりの宝石が輝いている。

ただ、彼の指は異様に太く、指輪というよりは

牛の鼻輪くらいの太さであるが

その分大量に金が使われている為高く売れそうである。

 

スーツの腹の付近のポケットは異様に大きく

中には何か入っている様だ。首には純金のネックレスを

そして、右腕にはブランド物の腕時計。

耳には、純金製でダイヤモンドが中に輝くイヤリングを

付けてはいるが彼が付けていると、全てがコントで

使われる安い小道具に見えてしまう。

どこからどう見ても似合わず

哀れみすら覚える姿であった。

 

 そして、喋る度に鼻を突く様な強烈な口臭と

センスの悪い香水とキツイ体臭とタバコの臭いが

ブレンドされた空気が彼の周りを漂っている。なので

身に着けている物は高く売れそうだとは言ったが

そのこびり付いた悪臭を落としてからでないと

到底売れそうに無い。

 

 職業、アクセサリーのセンス、香水のセンス

生まれ持った外見、全てがちぐはぐで

間違った星の下に生まれてきたと思うしかない。

はっきり言って器ではないと思ってしまう。

何でこんな醜い人が、こんな素敵なホテルの

オーナーになれたのだろう?

と疑問に思う程であった。

 

なるべくしてホテルのオーナーに

なったという訳ではなく何か幸運が舞い込んできて

偶然なれたとしか言いようが無い。

どちらかといえば

こんな綺麗なホテルのオーナーというよりかは

銀行に、覆面をして入って、受付の女性に

拳銃を突きつけてお金を貰う仕事や

小学生をさらって

 

「返し。てほ。しけれ。ばお。金を、下。さい」

 

と言って儲ける仕事

をしていると言った方がしっくりくる。

しかし、低身長で6頭身、腕や足は短いがかなり太く

ガッチリとした体格なのでもしかしたら

何かの格闘技などで財を成し引退して

ホテル業を始めたのかもしれないと

勝手に納得するアリサであった。

 

 レセプションでチェックを済ませ

暫くすると、503と書かれたキーを渡された。

 

「向かいのベルデスクにて

お荷物お預かりしますが、いかが致しましょうか?」

 

「いいえ、部屋に持っていくわ。

試着したい服が沢山あるのよ

戦場では試着する暇なかったしね」

 

「戦場……? ……左様でございますか

ではごゆっくりお過ごし下さい

何かありましたらご連絡下さいね」

 

受付はママの言っている事は一知半解であったが

適当に返し、お辞儀をしてママを見送る。

 

「ご親切にどうも、じゃあアリサ行きましょう」

 

「……うん」

オーナーを見てからというもの

少し元気がなくなったアリサ。

ママは、それは旅の疲れが出ているのだろうと

気にも留めなかったが

アリサはこれから起こるであろう厳しくも激しい戦いを、予見していたのだった。

 

2話 謎の暗号

 

 5階までは、エレベーターで行く事に。

2人は乗り込んで5Fのボタンを押した。

閉まろうとする扉に

滑り込む様に2人の男が乗ってきた。

その内の若い方の男が、ママに声を掛けてきた。

 

「ハアハア……何とか乗れた……え……? 

もしかして先輩ですか?」

突然声を掛けられビクッとなるママ。

 

「はい? あ……あら?」

 

「お久し振りです。もしかして忘れちゃいましたか?」

 

「もしかして……こんな所で会うなんて

……久し振りね! 高校以来よね? 10年振り位よね? 

あなた八郎君? 七瀬八郎ななせはちろう君でしょ? 

本当久し振りねー。今何してるの?」

 

「そ、それがまだ大学生なんですよ……

八浪して今年やっと入れましたからね……

本当に色々ありました……」

 

「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」

 

その言葉に、エレベーター内の皆がギョッと驚き

八郎に視線が集中する。

 

「わあ?」

八郎は視線が集中されて驚く。

 

「え……嘘でしょ? は、はははははははは八浪って

……冗談よね? 冗談だろ? ほら! 嘘だピョーン♪ 

って言いなさいよ!! 言え! 早く!! 

小学校の6年間よりも2年も長く同じ勉強をしても

合格できない大学なんてあるの?

あっそうよ! 八郎君だけに八浪しちゃいましたって

いうギャグなのね? そうだと言ってよ はーちぃ!」

自分の関わった後輩に限って、そんな事が

起こり得る筈が無いと現実逃避するママ。

 

「残念ながら本当なんです……」

八郎は、顔だけでなく耳たぶまで赤くなりながら

頭、眉、目、唇の両端、肩、腕、腰、そして

プライドも、人間の落とせそうな部位を

全て落としながら力なく答える。

 

「え、本当にそうだったの? 

ま、まあ運が良くなかったのよね? 

だって高校時代の八郎君

すごい聡明だった記憶があるもの」

 

「いえ……本当実力不足です……」

 

「あ、ごめん・・それで今日は泊まりに来たの? 

しかしすごい偶然よね」

かつての高校時代の後輩八郎から

さらっと衝撃の告白をされ、ドン引きするママ。 

 

「ええ夏休みですし、バイト代をはたいて

彼女と来たんですよ。中々出無精なので

誘うのに苦労しましたが。彼女は今部屋で寝てるんで

暇つぶしに回っていたんです。

先輩は、今何してるんですか? 

お子さんもいるみたいですし専業主婦ですか?」

 

「ふふふ、ただのおばさんに見えるけれど、 

こう見えても新米刑事よ。

今日は、娘と買い物に来たのよ」

 

「え? へえ、刑事さんなんですか!? 

凄いじゃないですか先輩! おばさんって……

まだ30前でしょ? 全然若いですよ。

ギャルですよギャル!

はあ~でも、そんな事聞かされたら

いつまでも燻ってないで頑張らないといけないな

って思ってしまいましたよ……」

かつて、共にバスケ部で汗を流した先輩が

刑事と言う男でも憧れる職業に就いている事を聞き

焦る八郎。

 

「そう、頑張りなさいよ。一刻も早く卒業しないとね

彼女さん泣かせちゃ駄目よ!」 

 

「分かっていますよ……」

ばつが悪そうに頭を掻きつつ、弱気に答える。

 

チーン。4階に到着した様だ。 

「じゃあ先輩、ここで失礼します」

 

「ええ」

八郎達は4階で降りていった。 

 

そして、アリサ達が泊まる部屋のある5階に到着。 

 

「それにしても、こんな所で後輩に会うなんて

驚いたわ、世間は狭いのねー。

あの子、私の2つ後輩の八郎君よ。

アリサ、イケメンだけど

八浪する様な男は彼氏にしちゃだめよ」

 

「でも、八浪してでもそこに受かりたいって

思うのはガッツがあるとは言えないかしら?」

 

「言えないわ」

バッサリ切り落とす。

 

「ですよねっ!」

 

503のドアを探していると、廊下で

女の大声が響いて来た。

 

「何なのよ、この紙切れは!!」

ダダダダダッ

その声を聞くや否や、声の主の元まで

走っていくアリサ。

 

すると一人の女が、このホテルのボーイだと思われる

若い男性に話をしていた。話していると言うよりは

母親が子供を説教している感じの雰囲気。

若干女の方が背が高く、ボーイを

威圧している様に見える。

 

「わ、私は知りません。

お連れの方の残した物ではないですか?」

まだ新米であろうホテルのボーイは

ひどく怯えながら言った。

 

「私は、一人で泊まりに来たのよ! 

偶然でなく私は常に一人なのよ?

今までもそう、そして多分これからも……

そんな私に、お連れの方なんて人は居ないのよ!!」

 

どこか悲しいセリフが5階中に響き渡る。

その時、女の頬にはキラリと一筋の何かが

光った様に見えたが気のせいだろうか?

 

「気のせいじゃないわよ! ぐすん」

ぬがっ?

 

「ところであなた……よく見たらかっこいいじゃない

彼女はいる? もし居なければ付き合……あれれー?」

女が何かを言い終わる前に、危険を察したボーイは

まるでヘッドバットを相手にかます程の激しい勢いで

一礼して去って行った。

丁度エレベーターのあるアリサの方に逃げてきたので

ボーイに声をかけてみる。

 

「何かあったの? あら、泣いているじゃない!」

ボーイは自分よりも大きい女性に

自分より遥かに大きい声で怒鳴られ

完全に戦意喪失し

涙の後が頬にくっきり残っている。

 

「うう、怖かったです。まだここに入って

一ヶ月目なんですが

大迫力のお客様につかまってしまい

何がなんだか分からなくなってしまって、くすん」

 

「そうだったの。あ、あの人ずっとこっちを見てるわ。

ごめんね、呼び止めちゃって。さあお逃げっ」

 

「はい、あなたは小さいのに優しいのですね」

ボーイはそそくさと逃げていった。

 

「全く、小さいは余計なのに!」

アリサは、文句を言いつつその女の所へ向かってみる。

 

「全くもう、照れ屋さんなんだから。まあいいわ

あっ、これツイートしないと。

謎の紙切れ届くナウ

そして……失恋するナウ……と」

携帯で暗号を撮影し、ツイッターに呟き始める女。

どうやら何かがこの女に届いた様で

それに怒っていたのか?

そんなやり取りを尻目に、アリサはこそこそ近づき

その紙を覗き込んでみた。

アリサはこういうのが大好物なのだ。

見るなと言われても必ず見てしまうだろう。

例えどんな卑劣な手を使ってでも……

挿絵(By みてみん)

 

カタカナのサの中に、小さいカタカナのス

が入っているような記号?

(まだ習った事は無いけど

中学生位で習う何かの単位のマークなのかな?

下の方には、よく見えないけど

赤と緑色の文字が書いてある、一体何かな?)

 

「こら! そこの子供! 何を勝手に見ているの?

もしかしてあんたがこの悪戯をやったの? 

さあ! 白状しなさい!!」

 

 女が、アリサに気付き、聞こえていると言うのに

態々(わざわざ)大きい声で話し掛けてくる。

 

「しっ知らないですよー

ちょっと気になったから見ただけですよー」

突然必要以上に大きい声をかけられ

声が裏返り敬語で話すアリサ。

 

「こらアリサ!! すいません。

この子好奇心旺盛でして。

503号室はあっちでしょ? 早く来なさい!!」

ママが駆けつけ謝る。

 

「全く……一体何の悪戯かしら?

……ふう、何か熱いわね……」

 

 ママを一瞥いちべつすらせず、態々足音を

ドスドスと立てて去っていった。

 

 あの女、語気が荒くかなり怒っていた様だ。

額からも脂汗をだらだら流していた。

夏休みに入ったばかりで暑いとはいえ

空調の効いたホテルの廊下でそんなに汗が出るのかと

心配になる程の量だった。

何かに怯えている様な、焦ってる様な雰囲気さえ感じた。

 

「アリサ、余計な事に首を突っ込んだら危ないわよ」

 

「分ったよー。でも何だったのかしら? 

あの暗号、気になるー」

 

 しかし。このアリサの言動。

ママの言った事が分っていない様にも見える。

色々あったがようやく503号室に入る。

客室は、スイートルームが53階にのみあるが

それ以外は皆同じ間取りである。

12畳位のリビングに、コーヒーにミルクを入れ

かき混ぜた様な茶色と白のマーブル模様のテーブル。

椅子は2脚で、テーブルの上には

同様にマーブル模様の花瓶があり

色鮮やかな花が飾ってある。

大体の家具は、その茶色で統一されている様だ。

窓の外にベランダがあり、明るければ街を見渡せる。

シャワールームもあり

寝室には大きなベッドが2つあった。

 

「食器棚に色々入ってるね。

都会のお皿はどんな綺麗な物のかなあ。……あれ?」

皿の中央に何か茶色い物がある。

皿を洗わず食器棚に戻したのであろうか?

近くで見てみると……!!

なんと、先程のオーナーの笑顔のプリントがされていた!

イラストではなく、実際に撮った写真をプリントしたので

無精髭とかまでリアルにしっかり印刷されていた。

自己主張の強い男なのであろう。

 

「きゃああああああ! 

何で? 気持ち悪いよ、こんなお皿。

誰がこれに食べ物乗せるのよ? 

割りたい、割りたい、これ割りたい!」

アリサは発狂する。

 

「アリサ、割っちゃ駄目よ。

この部屋に泊まる前に名前と住所を

書いてしまっている訳だから

そこから調べられて請求書送りつけられるわよ?

多分夏だから肝試しの一環で

こういうサプライズを仕込んでいるのよ。

お洒落じゃない?」

 

腑に落ちない事を言うママ。何故我が母親の口から

こんな意味不明で理不尽な言葉が出て来るのだろうと

不思議でならなかった。

きっと何か理由があるのか? 

それはまだ幼いアリサには分からなかった。

 

「お洒落? これの何が? 

でもお金取られるのは駄目よね……分かった、割らない」

 

「偉い!」

 

 そして、アリサは周りをもう一度良く見てみる事に。

すると……あった。ワイングラス、ティーカップ

コップにもその顔のシールが貼られている。

更によく見ると食器棚の側面の下にも

テーブルの裏にも、それ以外の家具にも、至る所に

茶色い色に紛れ込み顔のシールが貼ってある。

アリサは無言でそれらを探しては剥がしを繰り返し

丸めてゴミ箱へ捨てた。余程嫌いだったのだろう。

だが皿を割ってしまうよりはまだましである。

 

「あ、ママ閃いたわ。

お皿のこれが、隠れユッキーなのかしら?

確かオーナーに似ているって話だったわよね?」

 

「それは無いと思うよ。

確か客室には隠れていないって言っていたわ。

確かに他の宿泊客の部屋に入ってまで探すのは

お互い嫌でしょうし」

 

「ああ、そういえばそんな事言ってたわね。

記憶力いいわね。分かったわアリサ

じゃあ私はシャワーに行きたいけど先にいい?

その後、隠れユッキーを捜しに行くから」

 

「別にいいよ」

アリサは、取りあえずふかふかのベッドに寝転がった。

柔らかい羽毛のベッドなのか

体がズブズブとベッドの中に沈んで行く。

しかし、疲れている筈なのに、興奮から全く眠れない。

ぼうっと天井を眺めていると

何故か先程会ったオーナーの顔が浮かんでくる。

モヤーン

それもその筈。

ホテルに入ってすぐに出会っただけでなく

色々な家具にもそれは付いていて、可哀想な事に

アリサの脳裏に焼きついてしまっている。

小5の女の子にはインパクトが強すぎる顔。

 

「わー! 何よこれ! やだ。別の事しなきゃ!」

バッ!

 

 アリサはそのイメージを振り払う様に飛び起きる。

仕方ないので気を紛らわす為に

今日買った買物袋の中を物色する事に。

買い物袋は大きい紙袋2つと、小さい物が1つ

後はリュックにもパンパンに詰まっている。

アリサの服も幾つかあったので、試着を楽しむ事に。

 

ガサゴソ

「あ、これ可愛いなあ♪ 着ちゃおっと」

 

 袋の中にあった、苺柄のワンピースを

勝手に取り出し着替える。そして

イチゴ模様のサンダルもあったのでそれも拝借する。

夕食は8時半に行われるらしい。

それまでに少し時間がある。

お気に入りの服も見つかり満足なアリサ。

時間はまだあるので、イチゴのサンダルを装備して

少し出歩いて見る事にした。

 

「ママー、ちょっとお出掛けしてくるー」

 

「わかった、でも迷わないようにね。

そうそうユッキーも見つけられたら捜してね」

 

「はいっ!」 

 

https://novelup.plus/story/200614035

https://estar.jp/novels/25602974

https://ncode.syosetu.com/n3869fw/

私が書いている小説です。

現在2話執筆中です。絶対書き通します!

 

人気ブログランキングに参加しています

応援よろしくお願いします!

人気ブログランキングへ