magisyaのブログ

小説となぞなぞを投稿してます

33話 Θ聖戦Θ

 ЖピカーンЖ 

 

すると5名の筋肉が、頭上に電球を出し

手の平をポンと叩き何かを閃めき

外へ走って行ってしまった。

 

 む? 閃いたり納得している?

まさか筋肉に意識があるというのか?

石像に操られている筈なのだが・・

どうも意識を持って行動している様に見える。

色々不思議な事が続くな。

一体何が起こっているのだろうか?

 

 そして、怪我人が出た時に

出て行った筋肉が戻ってくる。

その手には薬箱を持っていた。

そして、足を怪我した筋肉を治療している。

パシャリ

 

「コレ、ヤダ」

 

む・・この筋肉も言葉を喋っている?

操られ意識は無い筈なのだが・・

見てみると、あの隆之の顔がへばり付いている

このホテル専用の絆創膏を貼られている。

それがどうも嫌だと言うのだ。

 

うーむ。前にもこんな光景が・・

まああの絆創膏を喜んで貼る人間は

この世にいないから仕方がないが・・

 

「ガマンガマン」

そして、治療している筋肉も喋っている。

 

ふむ、どうやら完全に

操られていると言う訳ではないのだろうか?

 

そして、銅像を殴り続けていた筋肉達の一部は

銅像破壊を一旦中止し、軽作業の

隆之の全身を書き写した掛け軸を破り始める。

疲労が蓄積されたのだろうな。

 

ビリビリッビリリダマッ ザクッ ビリーへリントン 

ズバット キリンリキリキザングース ピッピカチュウ

そして力任せに破ったり、手刀で細かく切り刻む。

パシャリ

 

そして、好奇心旺盛の筋肉が

例の宝箱の近くの立て札の前に立って考えている。

 

「アヤシイ、デモミテミタイ」

 

少し考え、開ける事に・・

全く、何が起きても知らないぞ・・

 

ガチャリ

 

パカッ

 

ピョーン

 

「キャアアア」

 

筋肉が、その体躯から考えられぬ

女子の様な甲高い声で、悲鳴を上げる。

・・やはりである。リアルな隆之の顔面が

ばねの力で箱から飛び出してきた。

目の焦点が合っておらず

切り落とされた直後の生首の様なリアルすぎる

斉藤隆之の生首!!

相当の名工の手により生まれたゴミ

筋肉よりも離れた所で見ていた私でも

背筋にヒヤリとする物が走った。

 

全くワンパターンであるな。

だが、ワンパターンでも素材が恐ろしければ

何度経験しても、恐ろしい事には変わらない。

隆之はそこまで考えているというのか? 

これは、要するにミッミクである。

ミミ之と名付けよう。

ラクエでも、死の呪文を操る箱として有名だが

このミッミクは、存在自体が死の呪文の様な物で

存在自体が悪なのだ。幸いこの材質は

紙粘土で形作り彩色した物なので・・

 

涙目になりながらも・・右ストレートを・・

ロー・・ブシン! 放つ!

パシャリ

ミミ之の横っ面は、拳だこまでくっきりと

拳の刻印が施された。

そして・・フライ・・ゴ~~~ンオ~ンオ~ン怨

勢いよく吹っ飛び、鐘に描かれた隆之と

ミミ之は、熱いくちづけを交わす。

そして、大きな音が響き渡る。その音色は

地獄の鬼が集まってきそうな程禍々しい物だった。

 

「アアーオソロシカッタァ」

 

顔から汗を吹き出しつつ胸を撫で下ろす筋肉。

そして、3人の筋肉が帰ってきた。

両手にガスバーナーを持っている。

厨房で肉等を炙る物だ。

ふむ、確か5人で出て行った筈なので

残りの二人は、別行動なのだろうか?

筋肉達は何故か喋る事は出来るから

厨房から強奪して来てはいない筈。

 

そして・・ブビィ、ブーバー、ブーバーン

銅像の顔に火を放つ。

マグマッグ バシャーモ ヒードラン

成程、熱で銅像を溶かし顔を平らにしている。

 

「ぎ。ゃああ。熱い、助、けてーこ、れで。は

ハンサムなお顔が不、細工に。なってし。まうー」

 

・・この言葉を聞いても分かるが、信じられぬ事に

隆之は自分の顔を美しいと思っている。

 

しかし、暴走していても、頭脳を使い

体を労わるとは中々考えているな。

これで体力がなくても大丈夫である。

この作業のお陰で効率よく残りの銅像の顔

そして、裸像に限り顔と股間を溶かす。

パシャリ

 

股間だ。けは股、間だけ、はやめて、くれ

ぎ。ゃあああああ。あ」

筋肉は、小便小僧の出っ張っている

イチモツの除去作業を開始する。

その根元に、炎の形を調整して絞って

刃の様に尖った炎を作り

イチモツを切り取る。

ボボボーボボーボボ ヒートロトム

挿絵(By みてみん)

パシャリ

熱で変形し床に落ちた時には

東京銘菓火世子の様な形へと変わっていた。

可愛い物だが、製造元は最悪すぎる。

食べられもしないただの熱せられた銅の塊。

 

「いたた」

 

ぬ?

 

「でも自由になったピヨ」

 

こ、これは??

 

「これから大きくなれば羽も生えて来るのかなあ?

そして大空を飛びたいピヨ!」

 

ヒ、ヒヨコがシャベッタァァァアァ!!

あの銅像股間から生まれたヒヨコ

銅像自体は切り取られた瞬間死に、抜け殻となり

その落ちたイチモツに新しき魂が?

そう、新しきヒヨコの魂が宿ったのか??

まあ不思議な事が続くと感覚が麻痺するというか

余り驚きがないな。だが十分不思議な出来事だ

だ、だが貴公は成長など出来ぬのだぞ?

お前はこのまま一生を終えるのだ。悲しい事だがな。

 

「もし空を飛べるようになったら仲間を

剣で切ってをいじめる左利きの剣士を

やっつけたいピヨ」

 

ぬ? 左利き? ニワトリをいじめる?

分かったぞ。何と、このヒヨコ、SFCソフトの

ゼゼルルダダの伝説のソンワを知っている様だ。

もしやその世界のヒヨコの魂が

このホテルの展示室に導かれ宿ったという事か?

不思議な事も・・まあ、今筋肉達に起こってる事に

比べれば大した事ではないな。

 

ソンワは、ニワトリを剣で切って遊ぶ習性がある。

しかし、いつも返り討ちに会っているのだが

学習能力が無い為何度も何度も繰り返す。

それをヒヨコはよく思っていない様だ。

隆之の銅像の一部から生まれたとは思えぬ程

正義の心が詰まったヒヨコであるな。

だがいずれ気付くであろう

自分の置かれた状況を・・

 

「そして、生き別れのお父さんと

お母さんを探すピヨ」

 

お父さんはすぐそこに・・っと

これを言ってしまったらヒヨコは絶望するだろう・・

彼はお父さんのお父さんそのものが熱で変形して

ヒヨコに変わった物なのだから・・

そして、お母さんはいないのだ・・

 

「そして時が来たら、この宇宙の中で世界一美味しい

鶏肉になって、鶏肉嫌いな子供でも

ほっぺたが落ちるようなチキンになるんだ!

待っててね子供達」

 

なんと・・こんな小さい頃から自分の

【真の役割】を知って

なお夢を語っているというのか・・良いヒヨコだ。

だが材質が、子供が食べられるそれではないのだ・・

それすら気付いていないのか・・

 

「でも、それまでは、色々な事をしたいピヨ。

ファイナルファンタジアで

人々を乗せて大地を駆け回ったり

白ヒヨコになってMPを回復させたり

デブヒヨコになって道具を預かったり

腕のいい召喚師に召喚されて、ヒヨコキックで

ゴブリソを蹴散らしたり

黒ヒヨコになって空を飛んだり

海ヒヨコや山ヒヨコになって、飛空艇でも

行けない所までドウラク達を運んだり

キチソラーメソのマスコットキャラになったり

ストレートファイターⅡのリユウやガイノレが

気絶した時頭の上で飛び回ったり

色々やりたいな。

時間が幾らあっても足りないピヨ」

 

・・夢多きヒヨコだ。心の底から

その夢に向かう事が出来ると信じ込んでいる。

だが実際は・・出来る事ならば彼の望みの

一つ位は叶えてやりたいものだが・・

まあこれ位ならば私でもできる

 

ヌイッ

挿絵(By みてみん)

もういっちょ

ヌイッ!!

挿絵(By みてみん)

 

ぬう、彼に真実を語るのはつらいな

一体どうした物か・・

 

そんな話をしている内に新兵器投入の効果もあり

殆どの銅像の顔と股間を消された。

だが、操られた状態で、理知的な行動が出来るのか?

この筋肉達、正に筋力と知性を兼ね備えた

理性ある獣だ、謎はフカマルばかりである。

 

何? さっきから擬音がおかしいだと? 

そんな事は無い!!

そもそも石像が壊れる音や銅像がぶつかり合う音に

定義などあるのであろうか? 

そしてそんな物が仮に存在したとして

一々そのマニュアルと照らし合わせ

大丈夫かな? 違反してないかな?

とビクビクしながら語らねばならないのか?

フッw お話にならないな!

ここは語り部の裁量であろう! 

数少ない私の見せ場ではないか?

 

 展示室で唐突に起こった激しい戦い。

それは、ポカポカとかバキバキだけでは

伝えきれぬ超迫力。臨場感!

私は、その状況を一番近くで見ている傍観者。

冷静に観察し、最適で読者諸君にもその臨場感を

伝えんと正しい擬音で表現しているつもりだ。

信じてほしい。私も君達を信じているし愛しているから。

 

一方その頃アリサは、入り口でその凄まじい光景を

ただずっと見ていた。しかし、様子がおかしい。

 

      <恍> <惚>

 

こんな目をして、室内の惨状を見ている・・

 

「う、美しい・・破壊、衝撃、暴力、火花、粉塵

ぶつかり合う金属音、鼻につく汗と溶ける金属の臭い・・

床に落ちている可愛いひよこ・・ピヨピヨピヨピヨォ

これだ。これこそが真の芸術・・ハァハァ」

 

キュッキュ×2万

何故か興奮している様だ。

そして、何かに取り憑かれた様にその様子を

少年の忘れ物のスケッチブックにマジックで

一心不乱に描画している。

人の物だという事をすっかり忘れてしまった様だ。

インスピレーションが湧いたならすぐに描画。

全く・・アリサは芸術家気質なのだな・・   

 

「やっとただしくつかってくれたね」

 

何者かの声が? しかし誰も聞こえていない。 

 

しかし、どういう事か筋肉達は装飾品や

隆之のポエムや隆之の手形等には目もくれない。

もしやこの状態を解除する方法を

本能的に気づき、展示物の中でも隆之の顔が

表現されている物のみを攻撃対象としている? 

 

だが、絵画の隆之の対処法が

全ての疑問を解決する手がかりとなる。

それは、先程出て行った5人の内

2人の筋肉がマジックを借りて戻ってくる。

ドーブル ミミッキュキュキュ

そして! 何と! 絵画に向け

丁寧に顔をベトベターと塗りケーシィている。

そう、しかもただベトベトン

塗り潰すだけではない!

見ていると、吸い込まれる様な立体的に見える

黒き真円に塗り潰している。

その球体に、あの子が再現していた光沢さえも・・!

更に・・!

 

「サッキョ、コクフウエンノジン」

「サッキョ、コクフウエンノジン」

パシャリ

ああ・・分かったぞ・・やっと分かった・・

これは・・アリサだ・・

筋肉達の行動全てが【アリサ】なのだ。

もし、アリサに筋肉達の様な怪力があれば

迷わずやっているであろう行動を

500人の筋肉集団が代行してくれている?

だが・・何故だ?

 

 アリサは筋肉達とはそこまで面識が無い。

30階でボールを取ってくれた早乙女と

そのリーダー位しか話はしていないし

ましてやアリサの使命は話していない。

だが現実に、アリサの意思を持った集団が

一丸となり、隆之の顔『だけ』を潰している。

一見、暴れている筋肉達。

しかし、その一人一人を観察すれば・・

フッw成程な、よく分かる。

そうなのだ。筋肉同士で傷付け合う事は一切無い。

更に一丸となり顔付きの物のみを徹底的に潰す。

 

顔付きの絆創膏を嫌がっていたのも

6m位の塔の天辺の筋肉が怖がっていたのも

ミミ之に脅かされた時に

女の子の様なリアクションをしていたのも

アリサが操っていたからかもしれない。

 

本来組み体操をやっている筋肉達は

高い所は平気なのだから。

 

そういえば、始めにうおおおおと

雄叫びを上げていた筈だが、それはそれ一回きりで

その後は冷静に行動していた。それが

 

【切り替わり】

 

の合図。

そして、顔付きの展示物が無くなるにつれ

役目を果たし、へたり込み意識を取り戻す。

 

「はっ私は一体?」

 

「あれ? 何でツブテイシや

ゴンロー ゴニャーロが

こんなに落ちているんだ?」

 

「いてて・・あれ? 怪我してる・・

うう何で? こんな汚い顔の絆創膏を

付けてるんだ?」

一人、また一人

暴走してた筋肉の数も減っている。

 

展示室入口でポ、ヤーンと浮かんだ

アリサの石像達を壊したいけど出来ない。

悔しい。と言うあの残留思念。アリサの身長は120 

そして、その40cm上空に、強力な残留思念が留まり

そこを通った全ての筋肉達の脳に入り込んだ。

そして、あの謎のシューンという音は

全ての筋肉達にその残留思念が行き渡ったのを確認し

満足して消失した音であろう。

残留思念は、大体500人位に行き渡れば消えると言う

習性があると、警視庁の調べで分かったという記事も

日本経世済民新聞にも書いてあったし

ぴったりであるな。

 

 因みに残留思念とは、簡単に言うと

肉体はもうそこにはないのに

人間の強い想いだけが、場所や物に残る事。

主に亡くなった人の思いに対し使われる言葉だが

何も死んでなくても強力な思いは残せるのだ。

アリサの様に・・!

 

あの子の感受性は高い。そして、それに比例して

当然残留思念作成能力も高い。筋金入りだ。

あの子の執念深さは、蛇よりもヘビーなのだから

おっと失礼。ダジャレ好きの第2の人格が勝手に・・

 

今まで殆どのユッキーを消してきた自分が

30人も被害者を出してしまった。

そして全員を助ける事は出来たが

自分の実力を過信しすぎ無茶をして

途中で力尽き、戻る事が出来ず

ロウ・ガイに無理をさせてしまった事。

帰りの分の体力を残せなかった未熟さ。

その自分に対する不甲斐無さ、無力さを痛感し

その強く激しい思いが、アリサの頭から40cm上に

留まってもおかしく無い。

そして、隆之の石像等を見て我を失った筋肉達は

本来なら自我を失い無差別に攻撃する筈が

予め脳に入り込んでいたその強い残留思念が

筋肉達の舵取りを行ったという事であろう。

 

ここで、起こった一連の出来事を箇条書きする。

 

1、アリサが悔しくて展示室の入り口の地面から

160cm位の所に残留思念を残す。

 

2、30階に居た桜花ジャパンの方々が

偶然50階に来る。

 

3、彼らはアリサの残した残留思念がある所を通り

全員の脳に入り込む。

 

4、隆之の石像の魔力で、桜花ジャパンの

殆ど全員の強化+暴走が起こる。

 

5、強化の恩恵を受けた瞬間に

脳内で、隆之の魔力を予め頭に入っていた

アリサの残留思念で他者を攻撃する効果を打ち消し

本来無差別攻撃する筈であったが、ここからは

残留思念の意思に従う様になる。

 

6、強化の恩恵を受けた上に

アリサの隆之を消したい思考を持つ

超桜花ジャパン約500人が誕生した

という事である。

 

そして、展示室内の全ての

隆之の顔の付いてる害術品を粉砕し

世界の平和を勝ち取ったのだ。

 

 人間タワーで高い所から倒れ掛かり

正確に銅像の顔同士をぶつける事に成功したのも

アリサ一人の思念で操られている為

呼吸が揃ったから。

 

 結果的に石像の強化効果を

拝借しての世直しだった。それが無ければ

幾ら筋肉達でも絵画などは塗り潰せるとしても

石像の破壊までは出来なかったであろう。

不服ながらアリサと隆之が共闘し勝利する形となった。

だが、使える物は例え敵でも何でも使えばいいのだ!

先人も、困難に出くわした時は一人で悩まず

皆で協力し、困難な道を切り開き

今に繋いできたのだから!!

 

おかしな事を言うな! とお思いであろうが

そうでなければこの現象の説明がつかない。

 

仮に石像に操られない程の耐性があるとしよう。

そして操られずに害術鑑賞中突然石像に対して

暴れだしたという事になる。おかしくないだろうか?

 

アリサが事前に全員に隆之の恐ろしさを説明し

その石像に対するヘイトを高めたとしても

筋肉達も人間。恐ろしさに尻込みして

逃げる者もいるかもしれない。

全員が同じ

 

「破壊しなくては」

 

と同じ気持ちになるには

死と隣り合わせのリスクを受け入れた上での

全員一致の賛成が必須条件

そんな奇跡は簡単には起こらぬ筈。

 

 それに、仮にそんな奇跡が起こったとして

あの常人離れした筋力を、怒りの爆発のみで

引き起こす事は出来ないのではないだろうか?

ましてや、死と隣り合わせを承知した上で

その恐怖を克服し3倍以上の力を長時間継続する。

そんな事が出来ようが無い。もし

更なる奇跡が重なり怒りで得た筋力だとしても

そんな理性を失った状態で

あの冷静で精密な行動を両立する事は不可能。

故に、私の考えはかなり的を射ている筈。

 

だが、幾つかの偶然が重なり起こった事だが

アリサが意図的に使える様になったら恐ろしい。

だが、使用者がまだアリサで良かったと言える。

他の人間。特に悪しき心を持った者が使えば

残留思念を通し、自分と同じ目的に統一し

それぞれに自我を与え、行動させる力。

一人で世界征服をも成し遂げる事が

出来る能力かもしれぬ。

 

ふむ、これは・・誰もが憧れる能力だ。

まあ強化の部分は隆之の力なので

アリサ自身が修行し習得する必要はあるが。

 

そう、残留思念一つで最大500人を同時に操れ

術者と同じ頭脳を持ち

操られている間、3倍の筋力を持つ超人達。

意のままに操る事が出来たら・・おっと

こんな恐ろしい話はやめておこう。

 

本来この中の3割以上は、隆之を怯える筋肉もいた筈

だが、操られている間はアリサと同等の耐性を持ち

強制的に隆之を攻撃するバーサーカー切り替わる。

故に、何も怖い物は無い。

 

アリサさえいなければ、この展示室は、今も人々を

奴の思い通り、混沌の渦に巻き込み続けていた筈だ。

だが、その醜い外見の所為で彼女の目に止まり

敵に回してしまった。そして当然の様に

ユッキーを消す使命を自然に受け入れ

一つ残らず消そうとしている。

 

彼女がこのホテルに招き入れられた瞬間

徹底的に隆之の存在全てを塗り潰すのは

正義の心がある彼女の事だ。火を見るより明らか。

斉藤隆之の人生最大のミスを犯した事になる。

クククッ運のない男である。

 

そして、展示室の殆どの作品を壊し終えた時に

筋肉は次々正気に戻っていった。

アリサの残留思念が役目を果たしたと判断し

消えたのだろう。

 

「頑張れもう一息だ、オーエスオーエス

 

 ? 全てが終わったかの様に思えたのだが

隅の方で4人の筋肉が何かをやっている。

始めに暴走せず倒れた筋肉である。

 

一人の筋肉を、二人が頭と足を持ち

伸ばす様に引っ張っている。

 

隣では、壁に頭を何度もぶつけている者もいる。

何をしているのだ?

 

「おい君達、何してるの?」

 

リーダーの男が駆け寄る。しかしその問いには答えず。

 

「後30cm・・否35㎝」

「後30cm・・否35㎝」

うわ言の様に呟く。

 

ああ・・これは・・アリサだ・・悔しがっていた時

最後にポロっと言った、低身長を嘆く愚痴。

それも、しっかり筋肉達の中に刷り込まれていて

一部の筋肉が身長を伸ばそうと頑張っていたのだ。

30伸ばせば警察官の試験に受けられる。だが

ちょっと欲張って、5㎝多く望んでいる。

全く、アリサは欲張り屋さんなのだな・・

 

一人は引っ張って貰い身長を伸ばそうとし。

一人は頭をぶつけ、こぶの分身長を伸ばす。

どれも一時的に伸びるとしても、後で後遺症が残る。

いや、それどころか筋肉の身長が150から160なので

無理して35も伸ばすまで続けたら確実に死んでしまう。

 

不思議だ。賢いアリサが何故こんな原始的な方法で

身長を伸ばせると思ったのか?

正しい身長を伸ばす方法ならユーチューブで

幾らでも出て来るというのに・・

 

「ま、まさか身長を伸ばそうとしている?

何でこんな時に・・そんなに気にしていたのか?

でも! そんな事しても伸びないからやめるんだ!」

 

既に意識を取り戻していた筋肉達が止める。

 

「はっ、私達は一体・・」

これで全ての筋肉は正気に戻った様だ。

アリサの残留思念の中で一番危険なのは意外な事に

身長を伸ばそうとする思いだったとは・・

何が牙を剥くか分からない物であるな。

 

「よかった、一時はどうなるかと思った」

指揮している男が安堵の表情で言う。

 

「私は一体何をしていたんだ? え?

ああ何て事を・・これを私達が? 弁償しないと

故郷の母ちゃんに仕送りしないといけないのに

母ちゃん遅れちまうけど・・ごめん・・」

 

辺りを見回し、粉々になった害術品の残骸を見て

唖然として後悔する筋肉。

・・すると?

 

『ありがとう』

 

『ありがとう』

 

『ありがとう』『ありがとう』

『ありがピヨ! お姉ちゃんと筋肉の人達!

これから大きくなって

お空へいっぱい羽ばたいていくんだ!』

 

『小さいお姉ちゃんと筋肉の人達ありがとう

全然後悔する事は無いよ? 本当にありがとう!』

 

・・これは? ・・フッどうやら

粉々になったイシツブテ

そして、砂粒になった者も銅の塊になった破片も

溶かされ、ヒヨコの形になった物も

破り捨てられた掛け軸の切れ端

破壊されて無残な姿になった物達の声?

体をバラバラにされた筈なのに

皆涙を流し、アリサや筋肉達にお礼を言っている。

 

 そう、醜い姿のままこの部屋でずっと長い間

人々を苦しめる役目を任されてしまった彼ら。

 

『自分達はこんな事の為に生まれたのではない』

 

そう、心で幾ら叫んでも悪の意思を持った

石像の姿で色々な人を苦しめた。

だが、いつか止めてくれる勇者が来る事を信じ

待ち続け、その時が来てくれた。

ついに呪縛から開放された。

粉々に砕かれ、あの姿から開放された喜びを伝える。

数万、いや、数億の破片一つ一つから放たれる

感謝の気持ちが室内を包み込む。

 

そう、元展示室であったこの部屋一面に・・!

 

 

 

【ありがとうのりゅうせいぐんがおそいかかる】

 

 

その美しいありがとうの想いは

その場にいた人全てに伝わる。

そして、残骸達は満足し、淡い光を放ち

天に昇っていく・・

まるで、この地に縛り付けられた地縛霊が

目的を果たし、成仏していくかの如く・・

 

「あ・・そうか、ボクも消えちゃうんだ・・

でも、短い間でも

ボクに命を与えてくれてありがピヨ。

嬉ピかった。幸せだった。

あの化け物の姿から

こんなにかわいいヒヨコとして

生まれ変わる事が出来たピヨ・・

そして、沢山の夢が、見れたピヨ。

みんな。いっぱいいっぱい・・だいすピ」

挿絵(By みてみん)

【石像の破片】 シューン 

 

【顔の潰れた銅像】 シューン 

 

【掛け軸の切れ端】 シューン

 

【ヒヨコ】 シューン

 

【アリサの持つブラックダイア】

 

・・・?

 

ブラックダイアは、消えない!!!!!!

 

アリサの持つブラックダイア以外の

全ての残骸が、跡形もなく消えていった。

不思議な現象だ・・

 

そして、ヒヨコは全てを知っていたのだ。

あの銅像股間から生まれ出でた存在という事も

空を飛んだり山を登ったり

海を渡る事も出来ないし

おいしいチキンになれない事も

それでも、もしかしたらと言う思いから

その気持ちを捨て

ポジティブに未来を語っていた。だが

消えると分かった瞬間、事実を認め

感謝の気持ちを伝えて消えていった。

本当に良いヒヨコであった。

製造元があんな物なのに信じられない。

 

「あれ? 何か急に私

大して悪い事してないかなって思ってきた。

はあ。なんか安心したとたん筋肉痛が・・いてて

それに眠いな。今日はもう部屋に戻ろう」

 

「私も何か足と腹の筋肉が痛いなあ

ちょっと30階のマッサージ行ってこよう」

 

お、この筋肉は・・

5人の塔の根元で土台として頑張っていた筋肉である。

腹筋と足に相当の負担がある筈

ゆっくり休んでくれ。

 

「あっ私も行きまーす!」

 

「マッサージ行きたいです!」

 

展示室を後にする筋肉達

そしてまるで新築の様な茶色い壁の空間だけが残った。

激しい戦いが今まであったとは思えない程の静寂。

しかし、被害総額は幾ら位になるのであろうか?

あれ程あった展示物が全て消失したのだ。

まあ良い。人々を狂わす展示物のせいでこうなった。

弁償する責任などは皆無。

あの害術品は、消えて無くなる事こそが

【完成】となるのだから。

 

「・・小さいは余計・・はっ」

全身汗だくで、筋肉の破壊行動を見て

興奮していたアリサが

残骸達の感謝の言葉の乱れ撃ちで正気に戻る。

そして、何故か広がっていて

何かが書かれているスケッチブックを見る。

 

「あッれー? 何か絵が描いてあるゥ不っ思議ィー」

挿絵(By みてみん)

アリサは、無意識で絵を描いていた様だ。

水性マジックで描かれた筋肉達が

聖剣セキゾカリバーをおおきく振りかぶって

銅像に叩き付けているシーン。

幾度となく石像を銅像に叩き付け、顔が砕け

目玉として存在していたブラックダイアが

手前に転げ落ちているシーン。

 

二体の銅像を、ジャイアントスイング

顔面同士をぶつけ合っている筋肉や

上の筋肉が掛布団になって十字で眠っている。

下の筋肉は、睡眠時無呼吸症候群になっていて

丁度呼吸を再開したシーン。

 

そして、右隅には砕け散って、至る所に転がっている

イシツブテをまとめている筋肉のシーン。

 

5人が塔となり、仰向けになった銅像に目掛け

天辺の筋肉が持った銅像の顔を

丁度当たるよう計算した状態で叩き付け

片方は、あり得ない方向に首が曲がり

もう片方は、首が真上に吹っ飛び

先端が天井に突き刺さっているシーンも・・

 

奥には、キリンリキリキザングースっと

掛け軸に向かってジャンピング手刀から発生する

真空派で真っ二つにしている筋肉もいるし

怪我をしている筋肉の足を治療をしている

者のシーンまでも・・

 

立札で

 

「ご、自由。に。お開け下さ。い」

 

と言う露骨な警告がしてあるというのに

それを気にせずに祭壇の上のビックリ箱を開け

飛び出てきたミミ之に驚き右ストレートで吹っ飛ばし

汚い顔面が寺院の鐘に激突しているシーン。

 

バーナーで股間を焼き切り

それが地面に落ちるシーンまで・・

そして、絵画をマジックで

塗り潰している筋肉達の様子までも描いている。

 

これらの出来事は、同時には起こっていない

そして、その世直しが行われている

実際の場所とも違う。

だがアリサは、全ての世直しの瞬間を

独自の感覚で配置し

スケッチブックの全体を使い表現した。

 

頭の中で世直しが起こった時間を無視し

そこで起こった印象的な部分部分

そう、筋肉達が成し遂げたハイライトシーン

筋肉達の人生の中で、最も輝いた瞬間を

克明に描き表し、一つのキャンバスに贅沢に

纏めてしまっている。恐るべき記憶力である。

 

そう、何回か響いていた謎のパシャリと言う擬音。

それは、アリサがスケッチブックに

残さなくてはいけないと本能的に判断した瞬間を

頭の中のカメラで撮影していたのだ。

 

そしてマジックで書いたとは思えぬ

実写の様なリアルさも注目して頂きたい。

トランス状態で、携帯電話を使用できなかったが

頭の中には何冊もの瞬時に開く事の出来る

アルバムが存在するという事だ。そこに保存し

その写真を頭の中で再生しつつ描画した訳だ。

リアルに再現できているのも納得できる。

 

必殺技の撮去を習得し、それを応用しての作画。

人の領域を超えた速さで描き上げた。

速さ、精度共に人知を超えている。

 

アリサの空間把握能力は、トランス状態に陥って

更に強化されたのかもしれない。

マジックの先端の角度を変え

様々な太さの線を、一本のマジックで再現。

そして、濃淡の加減は、筆圧の強弱で描きぬく。

天井のライトや、石像や筋肉達等の陰影までも・・!

ありとあらゆる物を精密に描写している!

酷使したマジックの残量はもう限界が来ている。

この短期間でここまで書けるとは

筋肉達えいゆう以外は害術品共も混ざった作品だが

私の目がおかしいのか?

数億の値が付いてもおかしくない様な

芸術品として認識してしまう。

 

フッアリサよ・・お前は成長したな。

もう私から教える事は何もない。

 

そして、よく見ると下の方に

一匹のヒヨコがこちらを見ている。

銅像股間から生まれたあのヒヨコだろうか?

生まれは最悪だが、姿はすっげえ可愛いヒヨコ。

現実では消えてしまい、少々名残惜しい気もするな。

だが、安心してほしい。

絵画には、そのヒヨコも永遠に残る事となる。

 

ヒヨコフォーエバー。

 

この芸術にタイトルをつけるなら当然。

 

                 Θ聖戦Θ

 

だろうな。

 

すると

 

「アリサちゃん! 取り敢えずペットボトル4本だけ

頂いて来たよ」

先程最後に助けた男が

4本の青汁ペットボトルを持って戻ってくる。

 

「早いね! 気分が悪い人を優先に飲ませてね」

 

「分かった」

 

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私が書いている小説です。

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