magisyaのブログ

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14話 宴会場4

第6章 中国妙技団

 

 

「その質問には、私がお答えしましょう」

誰かがアリサに声をかける。

 

「え? だあれ?」

 

そこには、身長175位で、立派な口髭を生やした

男性が立っていた。シェフの格好をしている。

被っているコック帽の長さが他のシェフと比べても

一際長い。かなり偉い人なのだろう。

 

「私は、ロウ・ガイ総合料理長の一番弟子であり

中国妙技団でも一緒だった

桑名光太郎くわなこうたろうと言う者です。

現在、ここの総合料理長を任されております・

彼が引き抜かれたのを知り、妙技団を抜け

このホテルで一緒に仕事させて貰っています。

既に幾つかの妙技を見ているとは思いますが

詳しくはご存じないでしょう?」

 

「そうね。あの爺さんからは詳しく聞いてはいないわ。

しかし、桑名光太郎か。

フルネームで呼びたくなる名前ナンバーワンね

響き、字体、共に完璧だわ」

何故か名前を褒めるアリサ。

 

「そ、そうですか? 

初めて言われました。(///照///)

え? でも字体って、言葉で伝えただけで

伝わるものなのでしょうか?」

頭を掻きながら喜ぶ桑名。

 

「細かい事は気にしないで」

そうなのである。

一々そんな枝葉末節な事で突っ込まれては話が進まない。

 

「そ、そうですか? そうですよね」

謎の圧力で聞くことを止めた桑名。

 

「それで、妙技とは中国妙技団の団長が編み出した

平たく言えば手品の様な不思議な力を

呪文により引き出し

それを皆さんに披露するエンターテイメントでして

リー・ミンシェンという方が作り出しました。

 

 筋力を増幅させたり、集中力を高めて

遠くに正確に物を投げる力を得たり

幻惑を引き起こし別人のように変装したり

空気を操り空中を少しの間浮かんだり

色々な妙技があり、それらを組み合わせて

さまざまな演目を編み出して来たのです。

今は、娘さんのリー・メイリンという方が引き継ぎ

団長をやっています。

その方には私もお世話になりました。

私も妙技団で後続を育成していた者ですが

十分育ってきて任せられると判断し

ガイさんの後を追ってホテルに入った訳です。

私も、ガイさんの料理の大ファンですので」

 

「へえー、そう言えば爺さんもそんな話してたような? 

でもそこまで言われると

あの爺さんの料理食べてみたいなあ」

 

「本当に美味しいですよ、見る目が変わると思います。

あの繊細な味の表現を、あの体躯から生み出される。

そのギャップに驚くと思いますよ。

ところで、ガイさんはどの様な御用事で

ここにいらっしゃっていたのでしょう?」

 

「それは、確か弟子たちが自分の味をしっかり

受け継いでいるかどうかの確認で来たって聞いたよ

でも変装して来ていたけど、突然私をくすぐって来て

苦し紛れに髭を掴んだらその変装を解いちゃって

皆にばれて、途中で逃げたんだよ」

少し色を付けてはいるが大体あっている。

 

「成程。まだ私達を弟子として見ていてくれてのですね。

あの時、もっとしっかりオーナーを説得していれば

こんな事にはならなかったのに・・

これは、私たちの責任でもあるんです。

今更こんな事を言っても仕方の無い事ですが。

許されるなら今から過去に戻って

過去の自分を思いっきりぶん殴りたい気分です」

肩を落とし悔しがる桑名。

 

「でもロウ・ガイそれに関しては怒ってはいなかったよ?

そんなに気にしないで。友達のアリサからも

弟子達に厳しくしないでって言ってあげるから安心して」

いつの間にアリサの中では友達に昇格したロウ・ガイ。

例え歳が離れていようとあれだけの激闘を供にすれば

そうなってもおかしくはない。

 

「アリサさんと仰るのですか。小柄ではありますが

お優しいお嬢さんですね。

少し気が楽になりました、ありがとうございます。 

それではごゆっくりお楽しみください」

桑名は去っていった。

 

「もう! 小柄は余計よ全く!

そういえば時間制限があるんだったよね

今何時かな? ・・・後一時間位か

何か食べないと飲まず食わずで終わるかもしれないわ」

少し焦り始めるアリサ。

 

「お嬢ちゃん、あの方とお知り合いとは

一体何者なんだい?」

もう一人の別のシェフがアリサに声をかける。

 

時間がないのにと思いつつも

「私? 私はアリサ。○×小学校推理クラブ副部長兼

ぶっへ教教祖よ。廊下でナンパされたのよ。

しつこかったから相手してやっているけど

全然本気にしてなんかいないんだからねっ」

 多少尾ひれを付けてはいるが

概ね正しい事を言っている様だ

しかし、所詮小学5年生女子では

語れる肩書きはこれが精一杯である。

因みに私は小5の時○×小学校 飼育委員だった。

文字数で負けはしたが、生物を慈しむといった点では

アリサの肩書きを遥かに凌駕している事を

覚えておいてほしい。

 

「あの方は、神の舌を持つ男、ロウ・ガイ様だよ。

彼の作る料理は、あの林総理もお代わりした位なんだ。

あんな事にならなければ今でもこのホテルの

生きるレジェンドとして活躍してくれた筈なのに・・

悔しいよ。そうだお嬢ちゃん。

あっちの方にここで出している料理を作っている

厨房があるんだけど見に来るかい? 

ガイさんの使っていた包丁とかもあるんだ」

 

厨房が会場にあるらしい。アリサは取り敢えず

ユッキーがそこにもいるかもしれないと考え

行く事に。

「へえ、じゃあ行ってみようかしら」

 

「よし、ついておいで」

この青年はたまたまいい人だから良かったが

アリサは悪い人にもこんな感じで

ホイホイ付いて行ってしまう癖がある。

根拠の無い自信があるアリサは、どんな危機でも

絶対に回避出来ると言う思いが強いのだ。

 

「ここだよ」

厨房では数人のコックが調理中で

非常に濃厚な香りが漂っている。

 

すー

アリサはその香りを思いっきり吸い込む。

すると、何も食べた訳でもないのだが

少しだけ空腹感が和らいだ気がした。

 

「いい匂いねー。みんな真剣な顔で仕事してるね。

かっこいいわ」

 

「それはそうだよこの間の食中毒以来

仕事はいつ無くなってもおかしくないって

皆気を引き締めているんだよ」

 

「そうか。もう一度やったら世間も

流石に許してくれそうにないわよね」

と言いつつ辺りを見回す。すると

若かりし頃のまだ髪が黒いロウ・ガイと思われる

男性を中心に、数人の男女の写真が飾ってあった。

 

「あれはロウ・ガイかしら? まだ若いわ。

後、なんとなくママに似た女の人もいるよ」

 

「ああ、この写真はガイさんが飾っていたんだけど

辞める時に忘れていったんだ。

確か妙技団の人達と最後に撮った写真だそうだよ 

でも、いつか取りに戻ってくる所を捕まえて

またここで働かせる為に、ここに飾ったままなんだよ。

皆の憧れなんだ」

 

「そんなすごい人だったんだ。

でもアリサと話している内に自信を無くして

神の舌を訂正して

人の鍛えに鍛えた舌に格下げしていたよ」

 

「え? 君は一体何者なんだい?

まあ、あんな事件を起こしては自分を卑下しても仕方ないな。

 彼は、うちの総合料理長をやっていた。

一度食べた物の味を忘れず寸分の狂いもなく再現する。

絶対音感ってあるだろ? 生活音ですら

音階で分かってしまうって言うあれさ。

それの味覚版を彼は持っていたんだ

僕は、そのスキルの事を

パーフェクトテイスツと呼んでいるが

そのスキルのお陰で

ホテルにはグルメ雑誌を取り扱う記者が押し寄せてきて

沢山の記事が書かれた」

 

「パーフェクトテイスツシェフ」

アリサはシェフのあだ名を作りボソッと呟く。

しかしシェフの耳には届いていない。  

 

「しかし、事件はそんな時に起こった。

稼働率150パーセントくらい行っていただろう。 

見習いが期限が切れて

捨てなくてはいけない食材を誰かに確認も取らずに

勝手に料理してしまい

それがテーブルに並んでしまった。

 

それを食べた浅利新聞の記者が救急車で運ばれた。

暫くしてホテルの食中毒の事を

浅利新聞で記事にされてしまったのさ。

それが原因でガイさんとその新米は責任を取り

首になってしまったんだ。

それからは、本当にシェフたち一丸となって

入念にチェックして食材を選ぶようにしたね」

 

「忙しさ故にチェックが疎かになってしまったのね。

どこにでもありそうな話ね。

でも、ただばれていないだけで

取り上げられるのは氷山の一角よね。 

え? あれ? 何でロウ.ガイまで首になったの?」

 

「それが、その新米のせいなんだ。

そいつ、期限切れの食材をロウ・ガイさんの指示で

料理したと嘘を付いたんだ。

それをオーナーが信じて首になっちゃったって訳だ。

当然、ガイさんはそんな事していないと主張したけど

頭に血が上ってたオーナーは両方首にしちゃったんだ。

長い目で見れば、ガイさんを切るなんてありえないのに」

 

「そうよね、パーフェクトテイスツ持ちは

レアモノだものね。覚えるのに

舌に釘を刺す修業をしたとか言っていたし

習得には根性がいるものね

そんな男を首にできるオーナーは

相当先見の明が無いわね、死ねばいいのに」

 

「死ねなんて酷いを言ってはいけないよ。オーナーは

ホテル存続の事を考えた末の決断だと思うんだ。

それにしても、そんな厳しい修行をしていらしたとは恐れ入る。

でも、そんな事をしたら味蕾に損傷を与えてしまい

味覚どころではないと思うのだが。そうか、奥底にツボがあり

そこを押す事により、舌の潜在能力が開花されるという事か

下手すれば味蕾の未来すら失う行為だって言うのに・・

ムム・・やはり、普通の人がやらない事をやらなくては

その境地には辿り着けないという事なのか・・」

 

「味蕾の未来ってなかなか面白い洒落じゃない」

 

「え? そうですか? えへへへ

君みたいに小さい子でも

この洒落の良さがわかるなんて嬉しいよ

じゃあ君にもこのネタあげるよ。自由に使ってね」

突然褒められ喜ぶシェフ。

 

「うーん? 使う場所ものすごく限られてくるけど

ありがたく頂いとくわね。でもね? 小さいは余計よ?

そうだ、ねえ少しこの中を探して見て良い?」

 

「うん。邪魔にならない程度なら大丈夫だよ」

 

「はいっ!」

 

 

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